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- エントモノチスを求めて-




画像: 妙ヶ谷の産地にて
撮影:1976年8月1日

採集地:岐阜県揖斐郡春日村妙ヶ谷
採集日:1976年8月1日
採集化石:エントモノチス
時代:三畳紀後期

  岐阜県の春日村というところに、三畳紀の化石が採集できると聞き出かけたことがある。採集できるのは三畳紀後期の示準化石であるエントモノチスだ。三畳紀の化石は日本では産地が少なく、こんな近くに産地があるとは意外だった。

 産地は林道に入った奥のほうのようだが、あいにく林道は入り口付近で土砂崩れのため寸断されていた。仕方なく、そこから父と二人で歩くことにした。何キロくらい歩いただろうか?それらしい場所は見当たらない。「やはり、産地を知った人に案内してもらわないとわからないなぁ」とあきらめて、引き返し始めた。後ろ髪を引かれる思いがしたが、まったく人気のないきれいな清流が流れる自然の中を歩けたことで、満足することにした。

 かなり、引き返したところで後ろから一台のマイクロバスがやってきて、我々のところで止まった。何をしにきたのか聞かれたので、化石を探しにきたが産地が分からないので帰るところだというと、何と産地を知っているので案内してあげるというのだ。大変ラッキーだった。マイクロバスに乗せてもらい道を引返した。

 産地は先ほど引返した付近で、小さな沢を登った幅2メートルくらいの小さな露頭だった。こんな場所では案内がないと絶対分からないと思った。岩質は青みががかった砂質泥岩で露頭の中にエントモノチスが密集していた。しかし、殻自体は解け去り全て印象のみとなっていた。露頭付近には大量のズリが見られ、かなりの人が採集に来ていることが窺い知れる。露頭から化石を切り出すのは難しいように思えたので、ズリの中から探す事にした。それでも、かなりの化石が採集できた。

 その後、もう一度産地を訪れることがあったが、大雨で沢を登ることができず引返しているので、採集したのはこの時一度だけだ。その後、産地がどうなったのか分からないが、草木に覆われて採集できなくなったと聞いている。ただ、もう一度珍しいエントモノチスを採集してみたいと思う。


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