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- 魚類化石の宝庫 -




画像: 伊根町の産地にて
撮影:1976年10月10日

採集地:京都府与謝郡伊根町
採集日:1976年10月10日、1978年8月14日
採集化石:魚類
時代:中新世中期

 京都府の丹後半島にある伊根町というところから、魚の化石がでると聞き父と出かけたことがある。当時住んでいた岐阜市からは、かなりの距離だが、魚類の化石は採集したことがなく、どうしても行ってみたかった。はたして採集できるのかどうか分からなかったが、出たという実績があるのだから一つくらい取れるだろうと期待して出かけた。

 産地は伊根町の山中だったが、いつものように地名だけできているので場所がわからない。たまたま通りかかった若い男の人に聞くと、バス停の少し手前の露頭だという。その人はずいぶん詳しい人で、黒っぽい炭化物のすぐ上の層から出てくると教えてくれた。採集した経験のある人なのだろう。さっそく露頭によじ登り地層を剥がしにかかった。

 ほどなく魚体の化石が出てきた。いくつも、いくつも出てきた。中には完全体もあり保存状態はすばらしく良い。脊椎骨の一つ一つが完全に残っているものも出てきた。ほとんどがニシン科の魚と思われるものだったが、中にはヒラメの仲間と思われるものも含まれていた。私は興奮し、夢中になって採集した。すると通りがかかった人が「側溝が埋まってしまうから、後かたづけをしてください。」と言われた。最初は怒られるのかと思ったが、地元の人は理解があるようだ。しかし、側溝に落ちた石をそのままにして帰る人がいるのだろう。その後通りがかった人にも同じように注意された。

 採集の後かたづけをするのは、最低限のマナーだと思う。そうしないと地元の人に迷惑をかける事になるし、化石採集自体を禁じられることになり兼ねないのだ。もちろん我々はスコップで埋まった側溝の復元をして帰った。

 それにしても沢山の魚の化石が採集できた。この後もう一度採集に出かけたが、このときも相当量の魚が出てきた。しかし、出てくるのは魚の化石ばかりでこの2回の採集で他の化石は木の葉の化石がわずかに産出しただけだ。これはどういう事なのだろう?一度よく考えてみたいと思っている。

 なお、この産地の露頭はコンクリートが吹き付けられ、現在採集は不可能となっている。


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