File16

- 哺乳類の化石発見! -




画像: 化石骨が見つかった石灰岩の裂け目
撮影:1978年11月3日

採集地:静岡県引佐郡引佐町谷下
採集日:1978年11月3日
採集化石:哺乳類、サワガニ、魚骨
時代:更新世

 私が小学生の頃だったと思う。確か東海化石趣味の会(現東海化石研究会)主催の恐竜展があって、父親と見に行った記憶がある。アメリカに行って実際に採集してきた恐竜の骨などが展示してあって、それなりに目を引いたが、実際アメリカに行って採集することなどは、とても出来ない。むしろ、同時展示してある国産の化石は現実味があるので、どうしてもそちらに注意がいってしまう。その中で我々が目を引いたのは、確か沖縄産の哺乳類の化石だった。多分石灰岩の裂け目から出た第四紀のものだろうが、それは見事な頭骨だった。父は特に強い関心を持ったようだ。そこで、このような化石が採集できそうな場所を調べた所、静岡県の谷下という所が採集できそうだと分かった。ここからは、1頭分のワニの化石が見つかっている。早速、出かけてみることにした。

 場所は石灰岩の採石場で、所々に石灰岩の裂け目があり、その中に赤土が詰まっている。父はその一つをツルハシで掘り出した。私は、あちらこちらの裂け目を見てまわった。崖の上の方に登れそうな場所があるので、登ってみると赤土が堆積した小さな露頭があった。よく見ると白っぽい層がある。掘り返してみると、それは魚骨の密集層だった。後で分かったのだが、これはコイの仲間のもので、魚層と呼ばれているものらしい。私はいくつか塊を取り出して、父の所へ戻ると、父も何か見つけたようで、新聞紙の上にいくつか何かが置いてある。みると土が付いているので分かり難かったが、明らかに骨だ。僕は興奮した。まさか、本当に骨が出るとは思っていなかったのだ。後で、地元の中学生が来て、父が採集した物を見て感心していた。

 それにしても、この当時、初めての産地に行って全く収獲がなかったということは、ほとんどなかった。特に父は必ず何か見つけるのだ。今、父は化石とは離れてしまっているが、何か動物的なカンというか、特殊な才能を持っていると思えてならない。

 その後この地にはもう一度採集に出かけているが、最初に見つけたような骨は見つからず、その代わりサワガニの化石や、コウモリと思われる頭骨を見つけることが出来た。
 その後、谷下の採石場は閉鎖されたと聞いている。現在、化石が採集できるかどうかは確認できていない。


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