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- 瑞浪の化石 -




画像: 松ヶ瀬「化石発掘学習地」採集風景
撮影:1976年8月17日

採集地:岐阜県瑞浪市
採集日:1974年〜1976年
採集化石:貝類・植物・カニ・ウニ
時代:新第三紀中新世


 いつのころだったか、中央高速道路瑞浪インターチェンジの建設中に沢山の化石が産出したと新聞に載っていた。さっそく父とともに出かけることにした。

 私たちが行ったころは、すでに工事は終わっていたが、削られたばかりの露頭や工事の際に出た転石があちらこちらに見られた。そのどこにも大量の化石が含まれており、それらを無造作にかき集めたという記憶がある。その時に我々より先に採集に来ていた人に採集品を見せてもらったのが、それは三角形をした化石で、「骨のようなもの」という印象を受けた。当時は知識がなかったのでわからなかったのだが、今思うとそれはムカシオオホオジロザメ(Carcharocles megalodon)の歯だったのだ。とにかく素晴らしい化石がたくさん産出していたのは事実だ。

 その後、何度か採集に訪れ、ホタテガイやユキノアシタガイなどの多くの貝類や美しい木の葉、カニなど沢山の化石を採集した。また、当時は大きな防空壕の跡があちらこちらに見られ、その中にも沢山の化石が見つかった。懐中電灯を片手に冒険気分で採集したりして、少年だった私には瑞浪はとても楽しい採集地だった。懐中電灯に照らされたトンネルの天井や壁面に、無数の化石が浮かび上がった時の感動は今も忘れない。残念ながらこのころに採集した標本は保管方法が悪く、すべて無くしてしまった。

 やがて、瑞浪化石博物館が出来た。瑞浪の化石を中心にした見ごたえのある博物館で採集の度に訪れ勉強をした。今でこそ各地に自然史関係の博物館が沢山あるが、当時は化石だけを専門に展示してある博物館はここだけだったのではないだろうか?展示も工夫が有り、瑞浪層群の各地層を実物の石のブロックを使って説明されているし、微化石を実際の顕微鏡を使ってで見ることができたり、実物の化石を触るコーナーがあったりして、素人や初心者にはずいぶん馴染みやすい博物館だと今でも思う。

 しかし、この博物館ができて、しばらくすると瑞浪市内全域が化石採集禁止になってしまった。また、冒険した防空壕跡のトンネルも、今は塞がれたり展示施設として再利用されたりしている。化石の産状が観察できるのは瑞浪化石博物館横にあるトンネルくらいのものだ。しかし、ここも苔むしたりしてよく観察できなくなっている。

 その後採集できる場所は、瑞浪市が採集学習地の指定をしている松ヶ瀬のみとなった。しかし、休日になると多くの人が採集に訪れており、良いものは採り尽くされている感がある。瑞浪層群の化石を採集するには、採集が禁じられていない土岐市や多治見市がねらい目だが、私自身採集の経験がないので採集できるかどうかわからない。最近はこのあたりも開発が進んでいるので、採集できるような露頭が存在するのかどうか疑問だ。むしろ、少し離れているが同じ時代の地層が分布している岩村町や山岡町などの方がいい収穫があるかもしれない。以前採集に行ったときは、それなりの収獲があったので、近いうちに訪れてみたい。



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