File9

- 榊原温泉の化石 -




画像: 貝石山の露頭にて
撮影:1976年3月7日

採集地:三重県久居市榊原町貝石山
採集日:1976年3月7日
採集化石:貝類
時代:中新世前期

 三重県の一志郡にある榊原温泉に中新世の化石が産出しているとの情報があり、出かけたことがある。場所は榊原温泉郷にある貝石山というところだった。川沿いに大きな露頭があり「天然記念物 貝石山」と看板が出ている。採集することは憚れたが、せっかく来たのだからと崖下に行ってみた。岩相は頁岩でかなり硬い。化石は所々露頭に覗いているのだが、なかなか取り出すことができない。ハンマーとタガネで格闘していると、その内対岸の旅館に宿泊している人に「うるさい」と怒られた。朝早かったので、まだ寝ている人がいるのだろう。しかたなく、川原に降りて転石を拾うことにした。そんなに沢山の転石はなかったが、それでも、ツノガイシラトリガイなどの化石を採集することができた。ここの化石は、瑞浪市ほど保存が良くない。貝類の殻などは辛うじて残っているものの地圧のせいだろうか、どれも潰れている。しかし、化石は油を塗ったかのように光沢があり、なかなか美しい。それが、かえって化石らしく感じられて私は気に入っている。

 あまり、収獲が少ないので他の場所へ移動することにした。しかし、どこに産地があるのか分からない。当てもなく、農道を車で走らせていると、小さな露頭があったので車を降りてみた。岩相は先ほどと違い、やわらかい砂岩で随分掘りやすかった。その砂岩の中からツノガイや大きな巻き貝フルゴラリアなどが出てきた。しかし、どれも保存状態はそれほど良くなく、全て印象化石であった。

 結局、この時の採集はそこで切り上げたが、付近にはまだ、沢山の産地がある。特に隣の美里村付近ではサメの歯や獣骨が多産しているという。この付近は、なかなか魅力のある産地のようだ。



File8へ   第一章インデックスへ戻る       File10へ