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- 腕足がいっぱい! -




カルスト地形が見られる産地


  岐阜県のちょうど真中あたり八幡町という町がある。ここは「郡上おどり」が有名な町で、お盆前後に行われる「徹夜おどり」のころは多くの観光客でにぎわうところである。また、この付近には多くの鍾乳洞があり、これもこの町の観光名所となっている。鍾乳洞があるということは、この辺りに石灰岩が分布しているということで、化石が含まれても不思議はない。調べてみると、やはり化石は産出しているようで、フズリナや腕足類、それに三葉虫まで見つかっているようだ。実は八幡町は家内の親類の家があり、ちょうど出かけることになっていた。そこでこれを機会に八幡町の産地を探してみることにした。

 当日家族を親類の家で降ろし、早速産地の方面に向かう。例によってSさんに大体の場所を教えてもらっていたものの、よく分からず付近を探しまわった。すると林道工事をしているところがあり、そこには石灰岩が露出していた。車を降りて、化石を探してみるがそれらしいものは見当たらない。しかし、何となくこの付近が怪しいと思われた。そこでその付近から山の中に入ってみることにした。すると人が通ったような痕跡が見つかった。それをたどりながら進んでみると程なく石灰岩特有のカルスト地形があるのを確認。さらに進むと露頭にたどり着いた。どうやら現場はここのようである。すぐにでも採集をしたかったが、ヤブ蚊が多いと聞いていたので、まず防虫スプレーと蚊取り線香で対策を施す。

 石灰岩は白っぽく、少し薄暗いこの場所では化石を見分けるのは苦労しそうだ。まず転石を割ってみる。すぐに腕足類が出てきた。分離は良いほうで、うまくすれば個体で飛び出してきそうな感じだ。結構密集しているようで、落ちている石を割るだけで結構な数を採集することができた。しばらく転石を割ったところで、露頭を観察してみることにする。すると腕足類が密集して浮き出ている所があった。この部分を切り出すことができないかと、ハンマーとタガネでしばらく格闘したが、固くて歯が立たない。しかたなくそのままにしておくことにし、再び転石を割って探した。

 結果、エンテレテスプロダクタスの仲間など多くの腕足類や、2歳の息子が「チョウチン」と名づけた化石などを沢山採集できた。実は三葉虫を内心狙っていたのだが、この収穫に満足して帰途についたのだった。


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