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- 息子の化石デビュー -




ウニが多産した露頭にて。(1978年ごろ撮影)
息子とここに再び化石採集に訪れることになるとは、思ってもみなかった。


 朝、息子に起こされて目が覚めた。この日は妻が外出するため、一日子守りだ。息子に「パパとどこかに行く?」と聞くと、「化石採りに行く」と言い出した。3歳の子どもが何でそんな事を言い出したのか分からないが、行きたいというなら連れていってやろうと、慌てて準備を始めた。行き先は子どもが行っても比較的安全な場所ということで、昔行ったことのある南知多町内海の産地に行く事にした。あそこなら危険はなさそうだし、帰りに海岸で遊んでやったり出来ると思ったからからだ。

 名古屋高速から知多半島道路、南知多半島道路と進み1時間足らずで内海に着いた。しかし、産地への入り口がはっきり分からない。なにしろ、中学の時に一度行ったきりなので、記憶が曖昧なのだ。それらしい道に入ったが、すぐに道が狭くなり車で入るのは難しそうだ。仕方なく、空き地に車を止めて息子の手を引きながら、山道を登る事にした。その狭い道は、この地方の特産物のみかんの畑に向かう農道のようだ。どうやら、以前入った道ではなさそうだ。しかし、息子は喜んで歩いている。そこで、散策するつもりで行ける所まで行こうと坂を登っていった。結構きつい坂だが、みかん畑を見たり鳥や虫が居たりして息子は結構楽しんでいるようだ。普段、町中に住んでいるこの子にとっては、こうした田舎の風景が新鮮に映るのだろう。「時々は連れてきてやろう」と思う。

 しばらくすると見覚えのある道に出た。やはり、道を間違えていたようだ。坂を下ってしばらくすると露頭がある。以前来た産地だ。しかし、ウニが沢山出た露頭は草木に覆われて観察さえ出来ない。仕方なく、道端に落ちている転石を割る事にした。息子用に用意した普段クリーニング用に使っている小型ハンマーを渡すと、息子は喜んで石を割り始めた。「結構スジがいい」と親馬鹿にも思ったりした。15分ほど探してアキラナというソデガイの仲間と少し大きめのソデガイを採集して、引き上げることにした。そう言えば新生代の化石は、化石を再開してこの時が始めて採集した。新生代の化石はほとんど手元に残っていないので、この地方では多いソデガイも僕のコレクションには一つも無い。そういう意味ではまずまずの成果だったと思う。近いので機会を作って、たびたびでかけようと思った。

 帰りに内海の海岸で、貝拾いをして、ついでにクリーニングに使う砂袋用の砂を袋につめて持って帰った。

 帰りの車中で息子はぐっすり眠っている。かなりはしゃいでいたから疲れたのだろう。息子の寝顔を見て「この子も化石採集に夢中になるのだろうか?」と期待半分で思ったりしたのだった。


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