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歌月十夜 感想

概要

メインシナリオ『Twilight Grass Moon,Fairy Tale Princess  黄昏草月』。
それをプレイして、条件を満たすと選択可能となる『夢十夜』(お話10本)。
エピローグである『夏祭り』。
そして+1本という構成から成る月姫のファンディスクです。

Twilight Grass Moon,Fairy Tale Princess  黄昏草月

メインシナリオ。

月姫の主人公――遠野志貴の繰り返される日常。

学校に行ったり、街へ遊びに出かけたり、文化祭だったり、体育祭だったり、秋葉が同じ高校に通っていたりそうでなかったり、誰と遊ぶも良しの平凡な日常。

強く感じる違和感。
昨日が思い出せない毎日。明日がやってこない毎日。『今日』しかない時間の流れ。
誰に尋ねても、志貴は、昨日自分と一緒に居たと答える。ふざけている様子も無く、極自然にそう答える。

時間を巡るごとに、色々と気付きだす。

あちこちに見られる世界の綻び。奔走し、それを繕おうとする黒い少女。
確かに大切だったのに、この世界では会う事のない誰か達。
夜毎に出現する己と同じ顔の殺人鬼。死の具現のような紅の男。

広がっていく世界の死。

――この世界とは?

という話です。
有り体にいうと、しんみりさせたりドタバタしたり、(志貴にとっては)平凡な毎日を繰り返し、その中でとった行動によりフラグが立ち、話自体が進んでいくシステムです。

眠りに就くか死ぬ事によって、一日が終了し、また朝が始まります。
原則的には、違和感の元に何点か気付いていくと選択肢が増えるので、それを選択すれば話が進み、選択しなければまた普通の日常を送ることも可能です。

尤も、夜になると勝手に話が進んでしまう段階もありますが。

逆に、行ききってしまえば、最強の敵にひとりで向かってしまった彼女を放置して、文化祭だのひざまくらだのを楽しむこともできます。

ヘルプもしくは攻略サイト等を参考にしないと、クリアさえ難しいと思います。(コンプリートは、ヘルプだけでは辛いと思います)
ちなみに私は、ヘルプだけを参考にしていたら、初回プレイは七夜に負けるイベント、レンとの夢でのアレ、レンと契約のアレを落としました。……時限イベントは、皆、落としたってことですか。

細かいイベントは腐るほどおとしてましたし。まあ、通常のイベントは、いつでも見られますけれど。

個人的に好きなイベント
・アルクに朝ご飯を作ってあげる。
→一般的な常識から、にんにくは避けてあげなさい。

・朱い月とこんにちは
→美人だなーと。十八分割にしてくれるという大人げの無さも素敵だ

・カレー命のシエル先輩。
→イベントより先に、メシアンに夕食に行ったため、デジャブで何があったのか不思議でした。先輩とデートに行って納得しましたが。ところで、彼女の厨房への侵入を防いだ従業員たちはスゲエ。

・シエル先輩、演劇イベントボツイベント(長い)
→どうせシエルだしの辺りの笑顔が最高でした。傘持って去ってく姿も凄まじい。

・体育祭
→弁当バッティングのベタベタさも良いが、秋葉と先輩の体操服のラインがあからさまに違うのが、また良い。

・文化祭
→確実に何か間違っている夜間鶴とか、色々違う筈の秋葉化け猫とか、ケーキ貪るレンとか、チャイナ琥珀さんとか、梅サンドとか印象深い。
あれ……演劇ボツもここなのに。どうもあれはインパクトが強かった。

・あきらちゃんを苛める際の秋葉
→素敵だった。余裕で紅赤朱になってそうなところとか。
ボイラーの故障のせいにし続けた志貴も凄いと思いましたさ。

・ひとり綺麗な翡翠の膝枕
→皆、相当に壊れているのに、彼女のイベントはあくまでも美しい
(梅サンドは?そして、夢十夜は?)
離れでの静かな時間は良いです。

・アルク装束の翡翠
→メイドなアルクよりも、ぶかぶかハイネックの彼女にきました。不思議。

・まじかるアンバー
→対してヨゴレを一身に(シエルと二分かも)背負う琥珀さん。
初めて見たとき、結構本気で硬直しました。

・金庫の鍵イベント
→特に幼翡翠へのキス写真を見たときの琥珀さんは、とても愛らしかった。
幼アルクへのキスのときが、嘘のように……。

・路地裏で作業中のレン
→声を掛けられたときの驚き具合がらぶりー。
雪の街での必死な表情も可愛かったですけど。

・七夜に組み敷かれても反応しないレン
→危ないんだが可愛い。何してるの?くらいな感じだったんだろうか。

・魔術師の最期
→確かに最期だけ優しさを見せて逝くのは、反則かと。


・対七夜戦
→どっちも好きですが、殺される方が更に好きだったり。
『今宵影絵ノ街デ君ヲ待ツ』といい、本編秋葉戦で片鱗だけ見せた七夜の立体的な体術といい、極めつけは、極死――七夜。
最期の、兄弟喧嘩みたいにレベルが下がった言い争いも良いですが。あれ、ナイフ揮い合いながら、口喧嘩してるんだよな。ある意味凄い。

・ラーメン屋の有彦との会話
→良いキャラながら、月姫本編では後半出番が皆無な為に印象の薄かった彼ですが、歌月では面目躍如。友情っていいよな。


ちなみにワタクシ、シエル先生の最後の最後の教え『始まりの場所へ行く』が本気で分からず、a dayの中で交差点へ行ったり、レンが居そうな所を探したり、大変でした。気付けたときは、声を上げました、マジで。

夢十夜

本編でのイベントを経験することで、話が追加されていきます。
条件は、教えろアルク先生にて、ずばり教えてくれます。


「がんばれ知得留先生」
久我峰校長とネロ造メイン。ある意味でロア助。
という話……ではないけれど、個人的に印象深いのは、そんな順です。
本当は、タイトル通り知得留先生が頑張る話なのに。しかし何味だ!!といい、『おまけ』でのラジオ体操といい、ロアさんは堕ちてくなぁ。ネロさんは、むしろちょっと格好良いのに。

さっちんも不遇だなぁと思いました。つーか知得留先生非道い。
『わー、大人って汚い』のさっちんの表情には、結構笑いました。

ちなみにまじかるアンバーの問題の答えは、ネロ造くんが教えてくれます。校長先生がメモを取った方が良いと言ったときの数字の羅列です。……あれ、自力で解いたのになぁ。何度も地下室に落とされながら。

ところでオチですが、第四回の人気投票では、琥珀はなんと秋葉を抜いて二位(シエル四位)でしたが、ふたりの友情は今でも続くのでしょうかね。


「宵待閑話」
秋葉トゥルーEDの後日談――ということで宜しいのでしょうか。
秋葉が浅上女学園に戻り、ED時に感じた志貴の生命を信じて待ち続ける話。

寮制の女子高らしく、怪談(七不思議)も絡んでいます。
そういえば、私の卒業した学校にも、夜中聖母マリア像が動くってのがあったなぁ。二宮尊徳像から考えると、目撃者には背中の薪ならぬ腕の中の子を投げてくるのだろうか。怖。

まあ、それはともかく、秋葉は本当に素人だなと思いました。力と性格は凄いのに……。
いくらなんでも、あんな普通の子に、背後から突き落とされちゃまずいだろ。アルク・シエル・志貴・シキ辺りは絶対に喰らわないだろうに。七夜志貴の突っ込みは一々正しかったってことか。

彼女だけかわいそうだったので、これは良かったと思います。
ナイフを抱えて泣く彼女に感動したのも、本当だけれど、それでも。


「朱い月」
髪長バージョンアルクとロアと中に入った志貴の話。
どうやら裏設定に関わることらしく、関連書籍等を所持していない私には分かりにくかったのですが。あれは、アルクであってそうでない存在……なんでしょうか。
昔のコバルト文庫にあった話に近いのか。
→神の末裔一族っぽいのが存在し、稀に器という、神を受け入れられる者が生まれる。その器には、本来の人格と神とが存在しているという感じの。
朱い月が神みたいなもので、アルクが入るに相応しい器で、真祖ってのは、受け入れ候補だったけど駄目だった連中なのかと。

いや、わかんないですけど。

ともかく、鎖に封じられたアルクが印象的でした。あとはビックリ顔の朱い月が可愛いって事が。


「赤い鬼神」
志貴の実父である七夜黄理と、遠野(鬼)側の純血種、軋間紅摩の因縁の話。
七夜一族の説明などもされます。存在の説明から、滅亡までが。

軋間紅摩は、月姫本編で少しだけ出てくる、幼い志貴が見たトマトの光景の作り手です。会話できたということは、今でも理性が残っていて、志貴が育つのを待っているのか、とうに狂っているのか。
ただ、その時の七夜志貴は、『あれでは長くもたない』と考えてましたから、やはり死んでるのか。

それにしても、この人たち可哀想だ。
衝動も殺意もなく、職人のようにただ手際よく行動することを至上としていた黄理も、破壊衝動を押さえ込んで、家族を守っていた紅摩も。

出会わなければ良かったのに。
紅摩は一生を牢で終えたかもしれないし、黄理も殺人機械のまま対象者を殺し続けていたかもしれないけれど。それでも。

この二人は強すぎて、互いに闘うまで、殺し合いをしたことがなかったというのも切ない。一方的な殺戮はあっても、命の遣り取りはなかった事が。

共通点も多かったし、出会い方が違えば――と考えてしまいます。

しかし、軋間紅摩の遠野としての力は『灼熱』だそうですが、どう考えてもその身体と馬鹿力の方が怖いよ。


「ななこちゃんSOS!」

シエルの持つ第七聖典を拾った乾有彦の受難の日々。
第七聖典に宿る少女姿の精霊セブン=ななこが、見た目と違い、実は相当に腹黒なのが、愛らしいかと。

コメディに見せかけて、有彦の重い過去や志貴との出会いの話など、色々入っています。
確かに志貴みたいに悟りきったガキは、子供の中ではなんだか浮くだろうし、その違和感が気になったのが、同じく死を間近に感じたことがある有彦だったというのは、分かります。

正直、月姫では存在感薄かったけれども、親友だなぁとやっと実感。
……ボツイベントで、有彦も吸血鬼になって敵対するというのもあったという話も聞きました。それだったら存在感濃くなったでしょうが……良かったなボツで。

最後のあっさりした別れも、彼らしかったです。


「妹切草」
遠野家によるホラー(?)。
言わずと知れた弟切草のパロディーです。といっても、ワタクシ弟切草、未プレイなんですが。
選択肢が出るのに、選択できないという衝撃的な作りになっています。私は、三個目まで、本文と同じ方を選んでいたので、しばらく気付きませんでした。

個人的なツボは、翡翠よりも妹切草の花言葉『お前では俺に勝てん』と、恐怖系の全プレイヤーを代表した志貴の心の叫び『勝手な行動をとるな』でした。

翡翠拳面白かったんですけどね。ただ、確かに予告の方が面白そうかも。


「タナトスの花」
空中大決戦、メガネ対双子。えろえろよー。

アルク先生、端的過ぎて正しい。
確かにそんな感じの話。


「翡翠ちゃん、反転衝動!」
後のは、読者投稿の優秀作品だそうです。
これは翡翠ハッピーED後の話なので、アルクを皆が知らなくて、琥珀も七夜さんです。

『バレットで散々いたぶって(中略)チョッピングライトで叩きつける』に笑いました。それやる翡翠嫌過ぎ。


「遠野家のコン・ゲーム」
ほぼオールキャラによる鬼(吸血鬼)ごっこ。
なんだかネロ教授に惚れそうだ。
そしてここでは四季もバカで良い。特に、俺が行くほうにお前がいるんだの辺りは、子供ってこういうこと言うよなーとホンワカする事しきり。
ここが俺の部屋だろう、本来お前は離れだとか、ああ幼馴染だなーと。

しかしシスコンっぷりが凄い。
あのまま反転自体が起きなくても、秋葉と志貴がくっついたりしたら、殺し合い寸前の闘い程度には、なりそうだ。まあ、普通の四季と七夜のままの志貴じゃ、ほぼ確実に志貴が勝ちそうだけど。

最後の方の、アルバムの話も笑えました。
背景が全く変わらない四季とか、こまめに活動記録をとるネロとか。

楽しませつつ、最初と最後で、琥珀さんの為の騒動だったことを認識、しんみりさせるあたりは素晴らしいと思いました。


「黎明」
一人称で、なんか変だなとは思いましたが、主観なので、自分が誰なのか、しばらく分かりませんでした。
アルクに襲われた時点で、志貴ではないのだということくらいは分かりましたが。

そういえば、ネロに喰われた女の子のことを、秋葉ルート行くまでは、さっちんなのかと思っていました。……出てこないから。

それにしても、志貴がもっと前から例の人格を出していれば、彼女は死なずに済んだのですよね……。

妹の誕生日に、ただお別れが言いたかったという辺りでは、泣きかけていました。

あと、志貴は眼鏡を外すと、本当に目付きが変わるのだなと実感しました。目が青いってことよりも、細まることに驚き。


「酔夢月」
+1本。これだけ、出現する箇所が違います。

志貴と四季の夢現の、酒を酌み交わしながらの会話。
琥珀ルートでの四季との会話といい、どうも彼が悪い人間とは考えにくかったので、この話は本当に嬉しかったです。

ロアが転生しなければ、いっそ槙久が志貴の記憶を消さず、志貴が四季のことを覚えていられたら、槙久が琥珀を非道に扱い続けなかったら、琥珀が壊れなければ。
どれか一つでもイフが真実であれば、避けられたかもしれない悲劇だったからこそ、彼らが互いの為に泣くシーンで哀しくなりました。

運命の掛け違いから殺し合うことになった彼ら兄弟が、やっと救われたんだなあと思って。

夏祭り

エピローグ。
ヒロインと夏祭りへGO。
見所は、それぞれの浴衣姿か。

シエル先輩、食い過ぎ。秋葉の髪型はあまり似合わない。

これの感想は、そんなところでしょうか。


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