アルクルート |
十七分割される吸血姫と、その実行した殺人貴という、素敵な馴れ初めを持つ正ヒロインと主人公。
連続殺人の犯人である吸血鬼を追ってきた処刑者であるアルクと、その敵との間に自分も因縁があった主人公と、全ルート中で一番王道の話なのですが、余裕で泣きました。
アルクの無邪気さが、それまでの不遇さを物語っていて、……もう。
兵器として造られてそうやって扱われてきたことが、ありありと分かる話をあっけらかんと語られると、抱きしめてあげたかったですよ。
ラストの志貴が『遠野志貴』のままで見せる凄みも、格好良かった。本人のまま『モノ』まで殺している彼は、能力的にはこのルートが一番強いのでは?
ペラペラと勝ち誇っていたロアに、静かに言った『二つ聞きたいことがあって、一つだけ教えてやることがある』が、またイイ。
トゥルーEDで、約束した教室でアルクを待ち続ける志貴の姿。そして会えたけど、永遠の別れになってしまう結末にも、また涙が。
しかし、彼らは純然な幸せな未来が想像しにくくて哀れだ。
志貴が人間のままならば、そう遠くない未来に別れはやってきますし、死徒になってしまうと、どうにも従者っぽくなってしまうし。
初めてのバットエンドは、秋葉の言う事を聞かずにアルクに会いに行って、翌日学校で刺されました。ちょっとビビり、その後の教えてシエル先生を見て、ああ面白い、もっとあからさまなバットエンドに行きそうな選択肢も見ておけば良かった、と思いました。
|
シエルルート |
はい、正直、アルクルートを裏から見られるだけだと思ってました。
甘かった。
中ボスまでは大体同じだったので、余計に騙されました。
ラスボスだった人が、やけにあっさりと殺されたと思ったら、その後、二戦もあるとは。
ここのシキは、能力的にやけにショボイし。
死線も見えて無さそうだったし、四季としての能力も、使えて無さそうだったし。
単に、彼が活動すると、志貴のエネルギーを奪うんで志貴が動けなくなるってだけだったような。
アルクは勿論、シエルにとっても、人質さえとられてなければ楽勝だったのでは。
その後の肝心な二戦。
一つ目の、『先輩が嘘でも、関係ない。俺は、すごく楽しかった。……ありがとう』的なことを言って抵抗を諦める志貴に、既にやばかったのに、直後に泣き出してしまうシエルに、クリティカルヒット。
あんな事を言われたら、好きな男殺せないよなぁ。元々、あのシエルは、志貴を殺したら、自殺するつもりだったと思うけれど。
アルクルートでは、さらっと流された彼女が先代ロアの依り代という話も、こっちで見ると可哀想で。
気が遠くなるほど殺され続けた過去とか、ロアが顕現しないように、必死で耐えようとしていた様子とか。
ちなみに、アルクルートだけだったら、ずっと大嫌いだったと思うロアも、シエルルートで明かされる『生涯でたった一度、白い少女に恋をした』という想いを知って、ややマシに。
まあ、てめぇが素直に告白でもしていれば、こんな大量の悲劇は無かったんだぞとも、思ってしまいますが。
その後は、アルク怖い。あんなに可愛かったのに。
確かに隙を見て喉掻っ捌いた志貴もどうかとは思いますが、手足引っこ抜いて、臓器掻き回して「ころ して あげ る」って想われても、ボク、コマリマス。
それでも、キレたアルクさえ退ける志貴も凄い。
|
秋葉ルート |
一挙に展開もボスも変わるルート。
さ……さっちん。
表ルートにて彼女の行方不明を聞いたときから、いつ敵で出てくるのか不安で仕方なかったのですが、最後まで出てこなかったので、イベントがボツになったのかなと思ってましたよ……。
志貴みたいに人に対して、関心が薄い人間の気持ちが非常に分かるのですが、数年間同じクラスで、ずっと好きで、ロクに認識されていなかった彼女も哀れだとは思います。
初めてまともに見てくれたのは、殺してくれるときだったというのは辛い。
って、これではさっちんのことだけだ。
遠野家ルートでの彼は、比較的正気を保っていますが、秋葉ルートでは、妹ラヴという意味ではオカシイですが、特にまともです。
バトル直前の『秋葉の兄はオレだけだ』『ああ、そうだな。秋葉は俺の妹じゃない。…(タメ時間)…あいつは俺の女だ』『ムッキッーー!!』というやり取りは、単なるシスコンの兄との喧嘩のようです。実際は、本格的な殺し合いですが。
ちなみに、狙っていないバットエンドは、ここが二回目でした。血を拭わずに後を追ってしまって。その後のは、あからさまに狙いだと分かったんですけど、こっちはね。……ロア先生の教えにちょっとむかつきました。やっぱオマエは、まだ少し嫌いだ。
このルートに来るまでは、実は可愛いのは、そりゃ分かってました。が、秋葉がちょっと苦手でした。素直じゃないきつい性格というのは苦手気味で。
が、まさかあそこまで献身的に、志貴を支えてくれたとは。
一族を敵に回してでも、叶うことの無い想いの為だけに、志貴を呼び戻して……。己の正気すら削って、志貴の命を繋いでいたなんて。
紅い髪で、和服で、人形のようになってしまった彼女を、こんどはこちらがずっと支えていたかった。秋葉は、吸血しても殺してしまわないのだから、そこら辺の人間を、志貴が狩ってきて与えるというバッドがあっても良かったのにな――と物騒な感想を持ったり。
トゥルーでは、自分は共にいてあげられないし(本編時点では)、ノーマルエンドでは、いつかふたりに緩やかな破滅がやってきてしまう。それなら、バッドでも、共に生きる道も欲しかった。志貴はその程度のダークさには、耐えられるだろうし。
|
翡翠ルート |
あ゛〜〜〜。
『彼女』が何かおかしいのは薄々感じていたけれど、あの指を怪我したシーンの表情は怖かった。まさに『目が笑ってない笑顔』ってやつで。
このルートは、志貴も本当に辛そうだし、全ての人が哀しい。
妹の為に身を差し出していた幼少の琥珀も、それを知って男性恐怖症に『なった』翡翠も。
おそらくは全てを勘付いた上で、琥珀の血を吸っていた秋葉も。
トゥルーのラスト付近で、虚ろな笑みで全ての問いを肯定する琥珀も。
表情を失ったかに見えた人が本当は正気で、一番まともに見えた人が、遥か昔におかしくなってしまっていたという対比が、また辛くて。
翡翠のトゥルーは、四季までもが可哀想つーか。自分の手で秋葉を殺してしまうなんて、考えもつかなかったろうに。
ふたりだけとなった屋敷で暮らすトゥルーEDは寂しすぎるけれど、飛んでいくリボンまでの一連の流れが、凄みさえあると思う。
|
琥珀ルート |
『タスケテ』だけが書かれた日記帳の頃の話をじっくりと語られたら、痛いよなと危惧していましたが、その辺りは割とサラリと流されて、助かりました。
このルートは、琥珀のせいではありますが、『七夜志貴』が強く顕現していて、不思議な感じです。
路地裏での死体をバラしたのは、実際は四季のようですが、あっさり自分がやったのだと納得して、やってくる目撃者を殺そうとした所では、躊躇いなど何処にも無かったんですから。
あんなの四季レベルでなければ、普通に殺されてたでしょうし。秋葉でも危ないと思う。
そもそもあのシーンは、殺したわけでもないのに、両手にべったりと血が付いていたというのは、死体を見つけて、羨ましそうにかき混ぜていたということになるのだから、考えようによっては、普通に殺すよりも怖いような気がします。
その後の、四季と志貴の、路地裏から公園にかけての会話は、笑っちゃうかと思いました。いや、議題は、凄いんですがね。
この時の四季が語った、昔の『友人』の話に、つくづく、ロアが憑依しなければなぁと思いました。妹バカになるのは免れなかったっぽいですが、その上で友人として、やっていけたはず。
……もしかして、このルートは、彼も彼女も救えるのかな――と、一瞬思いました。すぐ後に、ああ彼は何処でも幸せになれないんだなと、分かりましたけど。
奴さえ憑依しなければ、反転していない彼ならば、きっと琥珀をあんな扱いはしなくて、彼女もああならなかったはず。
槙久から解放されたと思ったら、反転した四季に宛がわれ、そして同様の扱いをされたことが、決定打だったと思うので。本来の四季ならば、たとえ衝動で彼女に乱暴しても、正気に戻れば謝りそうなのに。
で、彼はあっさりと彼女に狩られてしまいますが、その彼女の似合うラスボスっぷりが可哀想で。
既に彼女がどんな想いで、命を共有してくれて、そして志貴を家に呼び寄せたか知っているのに。実の兄を狩るところまでは、確実に、志貴を想ってのことだったのに。
これも全て吸収してしまったロアがいけないのか、それとも遠野の血には、そういうやたらと人を想いすぎるところがあるのか。
この狩られる彼の箇所も、志貴と思えなくも無いようにして、でも紛れも無く四季の語りだというのも、ちょっと凄いと思いました。
『琥珀』の薬を飲んだという呼び捨てから、普段どおり『学校に居た』とか、秋葉の顔くらい見ていこうかと思ったが止めとくとか、一々志貴っぽいのに、確かに四季の言葉で。
ここでの志貴は赤字の突っ込みのみなんですね。
対秋葉の志貴(というか七夜志貴になってますが)の、凶悪な強さは如何なものかと。
格好良いけどさ。特に、バッドエンドの、即殺す決心をして実行するアレの、立体的な動きを駆使した闘いは。
本気になれば、プロの彼にとって、アマの彼女など、どれほど強大な力を持っていようと隙だらけの存在であり、簡単に殺せるのだということが、怖かったです。エンディングへ至る選択肢でも、雰囲気に浸っている秋葉への冷静な感想が、また怖い。
コーヒーを飲みながら志貴が四季に言った台詞
「そりゃ、生き物としてアンタのほうが強いけど────だが、それが殺し合いなら、アンタより、俺のほうが優れてる」
というのは、真実だったんだと、つくづく感じさせられて。
結局、お互いに殺せない(途中の選択肢によっては、お互い殺しますが……)彼らも、そして琥珀も、哀しかった。それならやらなきゃ良いじゃんかと思わなくもないですが、結局、そうでも目的を持たなくては生きていられなかった琥珀の過去や、志貴を奪った琥珀を衝動で殺しかけるほどの秋葉の志貴への想いとか、全てが重かったと。
ラストの本当の笑顔の琥珀には、じ〜んときました。
ああ、これで彼女は、もう人形じゃないんだと、実感できて。
しかし、バッドエンドの『殺人貴』での、志貴に殺されている髪の長い女って、秋葉?
その時に殺される男は、四季ですよね?
七夜の血は、人でないモノに対して殺害衝動を抱くはずなのに、バッド系では、割に容易く人を殺している志貴は、結構怖いんではないのかと、思いました。
この志貴を眺めながら嘲っていた少女(多分琥珀)は、その後はどうしたんでしょうか。もしかして放置?それって物凄く恐ろしいような。
|
遠野 志貴 |
この上なく不幸な境遇にありながらも、そう思っていない人。
四季曰く『なにが悲惨かって、そりゃあさ。その悲惨なヤツ本人が自分が悲惨だって気がついていないで、自分が幸せなんだって思ってる事なんじゃないか』。
志貴の今までの考えは『でも、きっと幸せですよ。だって今まで楽しかったんです。だからきっと、これからだって楽しいんだ』。
近親婚を繰り返すことにより血の純度を保ち、特殊な能力を持つ『人間』を多く輩出してきた退魔の家系:七夜の唯一の生き残り。七夜は、嘗ては、人外の者専門の暗殺を生業としていたが、志貴の父の代に、廃業していた。
一族自体は、その力を恐れた人外の者の集団である遠野と、その手の者の不意の襲撃により、滅ぼされている。
襲撃の際に、志貴は、当主の息子・幼子・槙久の息子と同じ名を持つなどの理由から、半ば槙久の気まぐれといった感じで、遠野の家の養子として引き取られている。
彼自身は九歳の時の大事故(実際は、ロアの憑依から反転を起こした四季によって、殺されかけた)とその後の槙久の暗示によって記憶が不確かとなってしまい、七夜のことは、殆ど記憶に無い。
『歌月』の時に対峙した七夜志貴の言動から考えるに、それまでは覚えていたらしい。
本来の彼の能力は、見えないものを見る眼であるようだが、死に瀕した経験により、そのチャンネルは強く死にあったしまい、伝説とまで言われる『直死の魔眼』を得てしまう。
通常は、昔出会った女性がくれた魔眼殺しの力が込められた眼鏡を掛けて、死線が見えないようにしている。
天然の殺し文句吐きでもあると思います。
|
アルクェイド |
吸血鬼の王族であるブリュンスタッド姓を持ち、姫君と呼ばれる真祖。
志貴に『殺され』、その再生に大量に力を消費したため、半ば脅すような形で、志貴に探しモノを手伝わせることになる。
王族の名を持ちながらも、彼女は堕ちた同族を始末するために造られた、最高の性能を持つ兵器といった方が正しい。
志貴に会うまで(正確には殺されるまで)は、必要に応じて目覚め、屠り、また眠りにつくことの繰り返しだった。
今までに吸血した経験は一度だけであり、幾度滅ぼしても無限に転生して逃げるその相手を、今でも追っていた。
人と語り合うこともなく、的確に無駄なく殺戮するだけの彼女が、兵器としては狂ってしまったのは、志貴が殺したからなのでしょうが、それで良かったと思う。
ネロならまだしも、ロアにまで不覚をとり、一度は殺された以上、彼女の兵器としての能力は、深刻なところまで低下しているのかもしれない。
それでも、無駄な事を、無意味な事を――とても楽しいと笑えた彼女が、生まれたのだから。
|
シエル/エレイシア |
法王庁の異端者を審問する埋葬機関の、腕利き処刑人。
不死の身体を持ち、黒鍵と呼ばれる投擲剣と第七聖典という転生を否定する一角獣の角を銃身とした武器によって魔を滅する。
あーあーあー、もう悲惨な人だ。
ただ霊的資質が高かったから、それだけの理由でロアの憑依先として選ばれてしまったパン屋の娘さんが、なんだってこんな目に。
自分の姿をしたものが、家族を、街中の人間を殺戮するところが記憶に残っている上に、死徒処刑者であるアルクの来訪によって、やっと解放されたかと思えば、新たなる悲劇の始まりだったと。
世界から修正される存在となり、幾度殺されようと蘇る彼女は、当初は埋葬機関にて、殺され続け、そして、機関の一員として死徒を狩る側の立場に立ちますが……古傷抉られるどころの気持ちではなかったでしょう。
ロアが新たに志貴に憑依したと知ったときの態度は、ロアへの憎悪ではなく、志貴に自分と同じ想いを、望まずに近しい人々を殺害した苦しみを味あわせたくなかったからだと思います。自分で殺してでも、そうなる前に止めてあげたかったのだと。
どれほど心を強く保とうとも、蝕まれていく事を防げないと、誰よりも理解しているから。
|
遠野 秋葉 |
鬼種とよばれる人でないモノの血を取り込んだ遠野家の現当主。
遠野家とその縁者は、特異な力を有するが、常に鬼の血に引きずられ、そして二度と人に戻れぬ『反転』の危険を孕んでいる。
遠野本家の当主とは、反転し、人で無くなった一族『紅赤朱』を狩るという役目も担っている。
本来の秋葉は、血に潜む力は強いものの、鬼の血の濃さはそれほどでもなく、兄に比べると反転の危険性は低いとされていた。
が、ロアの影響にてあまりに早く反転した『兄』から自分を庇って死した『義兄』の命を救うため、己の命を義兄と共有した。
ゆえに反転を抑えるために力を十分に使う事が出来ず、貧血と偽っているが、反転の兆候に幾度か襲われている。
真紅の髪になり、視たものの熱を略奪する彼女の力は、肝心の秋葉ルートでは覚醒していないようで、四季に成す術も無く捕らわれてしまう。
翡翠・琥珀ルートでは、志貴を護らなくてはならないから覚醒し、秋葉ルートでは、志貴が護ってくれるから、そのままであったのかもしれない。
こんなにも純粋な子なのに、ゆえに琥珀ルートでの怖いまでの狂気っぷりが哀しい。
アルクのときもそうだったけれど、優しい彼女を知っているからこそ、敵の彼女が怖すぎるというか。
とか言いつつも、実は七夜になってあっさりと秋葉を殺してしまうバッドEDは割と好きです。もちろんとんでもないバッドですが、紅い月が凄まじく綺麗で。
|
翡翠 |
退魔の一族である四つの家系の一つの血を引く少女。
『感応者』と呼ばれる、他者の力を増幅させる能力を持つ。その契約は、相手と体液を交換することによって為され、契約者が同性の場合は効果が薄い。
翡翠ルートでは、体力を限界まで失った志貴を救うため、彼と契約する。
ちなみに、こんな契約の証として君を抱くのは嫌だ――と、あの体力で二回ヤる志貴くんは凄いと思った。
献身的なのに……けなげなのに。
可愛いのにどうも印象が薄い。個人的には、影が薄いことの代名詞の某先輩よりも薄い。
多分、彼女は不幸が少ないからか――と。
もちろん世間一般から考えれば、十分に哀しいとは思うのですが、他ヒロインがあまりにも辛い過去持ちなので、どうにも。
本当に可愛いと思うんですけどね。
|
琥珀 |
翡翠と同じく『感応者』の能力を持ち、嘗ては槙久、四季らと契約を、現在は秋葉と仮契約をしている。
本当に幼い頃より――完全に幼女である頃より、槙久の反転衝動を鎮める為に、身体を奪われていた。妹を護る為に、自分だけ犠牲になることを選び、ずっと人形のように何も求めず生きていた。だが、それは優しく呼びかけてくる志貴の存在により、壊れてしまった。
志貴が屋敷から去り、大人しくなってしまった翡翠の代わりに、嘗ての彼女のように明るく朗らかな少女を演じている。
四季に父親を殺させたのも、彼を地下牢から出したのも、志貴を憎ませたのも、その容姿を正しく教えなかったのも、全ては彼女の策略。遠野の家の者を殺す為に、彼女が紡いだ蜘蛛の糸。
とっくに壊れていたと、同じく壊れた秋葉が嘲っていたけれど、本当に壊れていたら、時折悲しみを出さなかっただろうに。
こんなんじゃ嫌だと、ただ琥珀さんが好きだから抱きたいと、例によって志貴が言ったときに、そんなのしたことないと顔を赤らめた彼女が可愛くて可哀想だった。
妹のプレイ中に後ろから覗いていて気付きましたが、結構ちょくちょく彼女は翡翠の振りをしているのですね。アルクを殺してしまったと、制服に血が付いていただろうと取り乱す志貴に、そんなことは無かったと否定した『翡翠』は、琥珀のことを『姉』と呼んでいたのだし。
琥珀EDの彼女の微笑みは、本当に嬉しかった。
ただ、逆に考えると、表ルートの彼女は、仮面をはがさないままいつも通り生きていくのだな――と哀しくなりました。
|
弓塚 さつき |
遠野家ルート中ボス。
志貴に似た人物が、深夜に繁華街をうろついているという噂を聞き、心配になって確かめに行き、そして悲劇に遭遇した。
吸血鬼としての潜在能力が非常に高かったようで、シキに吸われた直後に、通常の過程であるグールやリビングデッドをすっとばして死徒の段階に達してしまった。
いつも志貴を見つめていた為、彼の危うい雰囲気には気付いていたが、それが何かは分かっていなかった。吸血鬼となり死に近くなった為に、志貴が類稀な殺人鬼だと理解できるようになり、近い存在になれたことが嬉しくて迎えに来た。それが遠野家ルート。
表ルートでは、先輩かアルクにひっそり狩られているのかと思うと、泣きたくなります。中学の時に志貴に助けられて、助けた相手はそんな出来事自体をよく覚えていなかったのに、彼女はずっと大切な思い出として、志貴を好きでいて。
あの日、偶然志貴と一緒に帰れたことが、本当に最期の思い出になってしまったなんて、哀しすぎます。
|
ネロ カオス |
表ルート中ボス。
混沌の二つ名を持つ、死徒二十七祖のひとり。
真祖から直接吸血された強力な力を持つ二十七祖の中でも、一際強大な力を持つ異端者。
体内に666の獣を内包した混沌を持ち、そこから何が生まれるかは本人ですら制御できない。倒した混沌は、通常ならば彼の体内の混沌に戻り、再び形をとることが可能で、万全の状態のアルクでさえ、容易に消滅させることはできないほどの死徒。
それも七夜の顕現した志貴により、存在そのものを殺されることで消滅することになりますが、この人は結構嫌いじゃなかった。殺されたホテルの人たちは不幸だと思いますが、妙に学者肌なところとか、割と好きです。
歌月での印象もあるのかもしれませんが、教えて知得留先生に出てくる際のネロ教授が割と素敵だからかもしれません。
|
シキ/ロア |
アルクルート ラスボス、シエルルート中ボス(もしくは雑魚)
嘗て己が吸血鬼であることもよく理解していなかったアルクに、吸血衝動を利用して吸血させ、彼女の力を一部奪って逃走した、アルクの唯一の死徒。
無限転生者と呼ばれ、死しても依り代を乗っ取る形で、生まれ変わる。
依り代として選ばれるのは、基本的には強力な魔の力を有した古き家の者であり、かつ財産的に恵まれた赤子に転生し、成長してから元々の自我を喰らい顕現する。
八年前にシエルであったロアがアルクに殺されたため、彼は四季へと転生した。その影響で、四季はあまりに早い反転を起こし、秋葉に襲い掛かり志貴を殺した。
こいつさえいなければと思うことNO.1。(次点槙久)
アルクルートでは、死線らしきものと命の元である点を見ることが出来た。尤も、死そのものを直死する志貴とでは、レベルが違ったが。シエルルートに至っては、特殊な能力があったのか不明。只彼が行動すると、志貴が生命力が足りなくなって動けなくなるという程度であった気が。
永遠を探求し、無限に存在し続ける為というお題目はあったが、何の事は無い……全ての悲劇の元は、彼のアルクへの一目惚れ。
虚ろな瞳で、言葉を発する事も無い、白の人形姫が、月を眺める姿に恋をしただけ。
その説明があってもなお、結構嫌い。アルクルート終了時点では、本気で嫌いでした。月姫本家のサイトさんによる第一回人気投票では、メインキャラでありながら0票獲得という快挙を成し遂げた。……ゾンビサラリーマンとかにも投票があったのに。
|
シキ/四季 |
秋葉ルートは紛うことなきラスボス。翡翠ルートでは立場的にはラスボス。琥珀ルートでは、偶然出会った気の合う男。
秋葉の実兄であり、本当のトオノ シキ。八年前に反転し、当主である槙久に処分されかけたが、志貴の命を半分奪い、生き続けた。流石の槙久も息子は殺したくなかったらしく、地下牢で人知れず彼を生かしておいた。
共融と不死の能力を持ち、中々死に難い。
遠野家ルートでは(おそらく)琥珀の投薬により、人格が壊されかけている為に、ロアが表に顕現することができず、表ルートのシキとは違い、白の髪に赤の目というアルビノの外見で和服を纏っている。
ああ……本当に、ロアが転生しなければ。
コーヒーを飲みながら語り合った際の殺人について彼が語った言葉『楽しいのならいつでもやっている。そうではなく、始めたら熱中してしまう』から判断するに、殺人鬼であることは変わりないのだろうけれど。
お互いに本来のままであれば、四季が殺人欲を催したら、志貴が止めてやれば良かったのかもしれないし。問題は、そんなことを繰り返していたら、ふたりともどんどん強くなってしまうことか。
死に難い不死の身体に生命の大元を視る眼、今にも壊れそうな脆い身体に何でも殺す直死の眼。
魔の一族の長男と退魔の一族の長男。
逆の立場で逆の能力で、それでもよく似ていた彼らが、友人のままで兄弟のままでいられれば良かったのに。
|