ハーメンツに到着すると、何やら騒がしいのに気がついた。。

      一体何事かと思い、はその中心へと向かう。


      騒ぎたてている宿らしき建物の近くまで来て、とりあえずリオンの姿を探す。

      が、兵士達の姿はあってもリオンはどこにもいない。


      「遅い。」

      「うぉわっ!」

      「・・・もう少し色気のある声は出せんのか・・・?」

      「わ、悪かったな色気がなくて!というか驚かすな!」


      彼は後ろから話しかけるのが好きなのだろうか。

      それともを驚かせるのが好きなのだろうか。

      はとりあえず気を取りなおして、今回の仕事の内容を聞くことにした。


      目の前にある宿で、ある盗賊が潜伏しているらしい。

      幸い、彼らはまだ兵士達に気付いていないようで

      まだ動きはない。


      「じゃあ、そいつらを捕獲すればいいってわけね。」

      「とりあえず兵士達に任せてみる。僕らの出番はそれからだ。」

      「了解。」


      二人は宿から少し離れたところから様子を窺う。

      今はまだ午前8時。

      盗賊達はまだ起きていないのかもしれない。


      「あのさリオン。」

      「何だ。」

      「なんか話があるとか言ってたよね。あれは・・・。」

      「今は仕事中だ。・・・時間があるときに話す。」

      「・・・そう。」


      リオンの顔を見ていると、やけに真剣な表情をしているので

      その話というのは余程大事な事なんだろうと思う。

      だが何の話なのだろう。

      マリアンに関してのことだろうか。

      リオンがここまで真剣になることは、マリアンのこと以外に考えられない。


      ・・・もしかして彼女が好きだから協力しろ、だとか。


      そんな考えが頭に浮かんだが、あまりにも的外れなような気がして

      我ながら馬鹿だなぁと少し呆れる。






      「うわぁっ!」





      どうやらが考え事をしている間に、事件が進んだようだ。

      ふと宿の方へ目を向けてみると、兵士達と戦っている人間が3人。


      「男一人に女二人か・・・。」

      「・・・・・。」

      「リオン?」

      「どうやらあいつらには荷が重過ぎたようだな。」

      「えぇ?」

      「行くぞ。」


      リオンはシャルティエを抜いて彼らの方へゆっくりと歩み寄り、もそれに続く。


      「チッ、全く役立たずどもが・・・。」

      「これは・・・派手にやられたね・・・大丈夫?」

      「放っておけ。」

      「そういうわけにもいかんだろう。」


      は朝に買いこんでおいたアップルグミを兵士達に配る。

      何故かリオンは苛ついていたが、怪我人を放っておくわけにもいかないし。


      「次の相手はアンタ?言っとくけどガキだからって手加減しないわよ。」


      三人組の一人である黒髪の女性が威勢よく剣を構えた。

      リオンはさほど気にもせずに鼻で笑う。


      「愚かだな。」

      「・・・とりあえず捕獲しようよ捕獲。」


      肩口の傷も気になるし、今はとにかく早く帰りたい。


      「アンタ達なんかに捕まるわけないでしょ!」

      「あれま。沸点の低いお嬢さんだなー。」


      ブツブツ言いながらもゆっくりと刀を抜くが、リオンがそれを制止する。

      どうやら一人でやると言いたいらしい。

      は小さく、分かった、と頷くと刀を鞘に収めた。


      まず動いたのは背の高い女性。

      何故か彼女の表情は、どこか楽しそうだ。

      じっくりと戦い振りを見てみると、その理由もわかるような気がする。

      彼女は純粋に戦いというものを楽しんでいるようだった。

      一番手強いとすれば、この女性だろう。


      次に動き出したのは金髪の青年。

      こちらはもうヤケになっているような。

      素質は十分あるとは思うのだが、まだ経験が浅いらしく迷いが感じられる。


      最後に、少し小さな剣を持った黒髪の女性。

      なんとなく雰囲気がリオンに似ているというのは気のせいだろうか。

      見たところ、この女性がリーダーのようだ。


      (うーん・・・本当に盗賊・・・なのかな?特にあの青年は違うような気が・・・。)



      盗賊にしては真っ直ぐな瞳をしている。



      「・・・お、片付いたか。」


      金髪青年が頑張っていたようだが、リオンとは経験が違いすぎる。

      あっという間に兵士達に縄で縛られしまった。


      『全く、坊ちゃんに逆らうからだよ。』


      『・・・!お前はシャルティエ!』



      ん?とは首を傾げた。

      何か今シャルティエ以外の声が聞こえたような・・・。


      「こいつらもソーディアン使いだ。」

      「あ、なるほど。」

      『私達の声が聞こえるということは・・・あなたもソーディアン使いなの?』

      「女の人もいるんだ・・・。いいや、素質があるだけらしいよ。」


      「一体どうなってるんだ!?おいディムロス!説明しろ!」

      『シャルティエは昔の仲間だ。』


      金髪の青年が持っているのがディムロス。

      そして・・・。


      「何よ!同じソーディアン使いなら見逃してくれたっていいじゃない!」


      あの黒髪の女性が持っているのがアトワイトというソーディアンらしい。

      は先日読んだ文献を思い出していた。


      「・・・ね、君の名前は?」

      「えっ?お、俺?」

      「うん、君。」

      「俺は・・・スタン・エルロン。」

      「スタン、ね。はいアップルグミ。」


      スタンの手にアップルグミを握らせて、は早々に離れる。

      次に黒髪の女性と背の高い女性に歩み寄り、グミを手渡す。


      「君は?」

      「・・・ルーティ。」

      「じゃあそっちのお姉さんは?」

      「マリー・エージェントだ。」


      「おい。罪人にそんなもの必要ないだろうが。」

      「いいじゃないか別に。」

      「良くない。逃げられたらどうするんだ。」








      「その時は足でも斬れば逃げないさ。」








      あまりにも爽やかに言われてしまい、周囲は反応することが出来なかった。





















      三人組はダリルシェイドに連行され地下牢に押し込まれることとなった。

      これから彼らを待っているものは、最悪の場合処刑。

      としては、このまま釈放してやっても構わないと思う。

      特にあのスタンという青年に関しては何の問題もない。




      「、どうかした?」

      「・・・ううん何でもない。リオン遅いなぁと思って。」

      「そうね・・・謁見が長引いているかもしれないわ。」




      ただいまリオンはあの3人組みの処遇について、セインガルド王達と話している。

      はここで留守番だ。


      「・・・、あの子はちゃんと貴方と接している?」

      「なに、リオンのこと?」

      「ええ・・・とにかく他人を寄せ付けたがらないから・・・少し心配で。」


      こうして見ると、マリアンは本当にリオンの母親のようだ。




      「確かに誤解されやすい性格だよねぇ。」

      「・・・あの子は小さい頃に

      「ストップ。あいつが自分から話してくれるまで気長に待つから。」

      「・・・、・・・そうね、それがいいわね。」

      「ああ。」


      それは、もしかしたらずっと先のことかもしれないけれど。

      あくまでリオン自身が話してくれるのを待ちたい。

      見るからに自分のことを他人に知られたくないような性格だろうし。




      「あっ、ヒューゴ様。」

      「はいるかね。」

      「はい、奥に・・・。」

      「借りていく。」

      「はい。」




      どうも考え事をしている時に限って、事が進んでいってしまうらしい。

      これからはもう少し周囲に気を配ろうと思っただった。


      「どうされました総帥?」

      「いやなに、ソーディアンを見たいだろうと思ってね。」

      「ソーディアンを・・・?あの青年達はどうなったんですか?」

      「監視付きの特別任務を言い渡した。君が心配するような事態にはなっていないから

       安心したまえ。」


      ヒューゴのその言葉に、は心底ホッとした。

      彼らが処刑されるという事だけは嫌だったから。






      「ああ、そうだ。これを返しておこう。」


      そう言って、ヒューゴが懐から取り出したのは、あのピアスだった。


      「これ・・・どこで?」

      「廊下に落ちているのをメイドの一人が拾ってね。渡そうと思っていたのだが。」

      「・・・ありがとうございます。」

      「見たところレンズが組み込まれているようだが・・・それは?」

      「ああ、ただ宝石の輝きを増すためのレンズらしいですよ。詳しくは知りませんけど。」


      は何故か正直に話す気にはなれなかった。

      この変換装置は、悪用しようとすれば簡単に出来てしまう。

      完全な別人にはなれないし、特に気にすることもないとは思ったが

      どうしてもこのヒューゴという男に教えることは出来なかった。


      「そうか・・・。」

      「扉、開けますよ。」



      大広間の扉を開けると、テーブルの上には彼らが持っていたソーディアンが並べてあった。

      スタンが持っていたディムロス。

      そしてルーティが持っていたアトワイト。


      これでソーディアンは3本揃った。


      「確か・・・ディムロスの属性が火、アトワイトが水・・・だっけ?」

      『よく知っているわね。』


      アトワイトの感心したような声が聞こえてきた。


      「本で読んだんだ。そしてシャルティエが地、クレメンテが雷、イクティノスが風。

       ・・・そしてベルセリオスが光と闇か。」


      ソーディアンは全部で6本。

      だが天地戦争時代末期、ベルセリオスは天上軍の王ミクトランと刺し違え

      命を落としたため、今残っているのは5本。

      後は、クレメンテとイクティノス。



      繁々とソーディアンを観察していると、扉がノックされ開かれる。


      「リオンか。」


      リオンの後ろを見ると、スタン達の姿が見えた。


      「あ、アンタは確か・・・。」

      「・・・後にしろ。さっさと座れ。」


      ルーティは何か言いたげであったが、黙って用意された椅子に座る。

      全員が椅子に座ると、ヒューゴが話を進め始めた。


      特別任務というのは、これからストレイライズ神殿へ行き

      神の眼と呼ばれる巨大なレンズの様子をセインガルド王へ報告すること。

      彼らはソーディアン使いということもあり、それが終われば釈放されるそうだ。


      「よかったじゃないかスタン。」

      「一応・・・助かったよ・・・。」

      「ちっともよかないわよ!頭に変なもの乗せられるわ

       こんなガキの言うこと聞かなきゃなんないわ・・・!」

      「・・・フン。」


      懐から何か取りだし、リオンは何かのボタンを押した。


      「きゃああぁぁあっ!」


      するとティアラから電撃が走り、ルーティはその場にへたり込む。


      「な、なにそれ?」

      「逃亡防止用の装置だ。このリモコンで操作できる。」


      無理に外そうとすれば、致死量の電撃が流れるようになっているらしい。


      「ルーティ・・・ヘタなこと言わない方がいいと思うよ・・・。」

      「私もそう思うぞ。」


      スタンとマリーにそう言われ、ルーティは苦虫を噛み潰したような顔で沈黙した。






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      キャラが増えると、誰のセリフなのか
      全くわかりませんな・・・。
      もうちっとわかりやすく書くよう気をつけます・・・。