検証!! N DIGITALの夜景撮影限界点はどこか??

先の"緊急レポート 検証!! N DIGITAL (とりあえず暫定UP)"で、 (いつになったら、"とりあえず暫定UP"がなくなるの? という突っ込みは受け付けません(爆)) N DIGITALの長時間露光機能にとんでもない弱点があることが露呈されてしまった 訳ですが、では・具体的にどの程度の長時間露光が実用可能な領域なのか? また、 何らかの方法でブレークスルーすることは出来ないのか? といった疑問が沸いて 来ます。

そこで、夜景についてはちょっとうるさい5taroとしては、これは何とかしなくてはと思い、 メーカーに問い合わせたり、N DIGITALユーザーの方々とも情報交換しながら、 フィールドテストを行ってみました。





その1(シャッター速度によるノイズの変化)
まずはストレートに撮影してみて、露光時間がどの程度ノイズに影響するか?相関を 取ってみました。撮影条件は基本的に同じで、シャッター速度のみ変更しながら 撮影しています。共通の撮影条件は次の通りです。

使用機材
露出モード
ISO感度
ホワイトバランス
記録モード
階調
コントラスト
N DIGITAL + Planar T* 50mm f1.4
マニュアル
50
5500KB
JPEG2
硬調
+

海田大橋 1/2sec 部分UP 1/2sec
F2.0
海田大橋 1sec 部分UP 1sec
F2.8
海田大橋 2sec 部分UP 2sec
F4.0
海田大橋 4sec 部分UP 4sec
F5.7

一応、N DIGITALにとって最も画質的に有利と思われるISO50を使用し、 露出計の指示値が一定になるように絞りをコントロールしています。

同列に並べて比較しやすくするためと、サーバ容量の関係で縮小・圧縮した データでしかお見せ出来なくて申し訳ありませんが、そこはいつもの通り 文章でフォローということで・・・(笑)

不覚にも1/2secで撮影したデータは少々ピントが甘く(絞りが開きすぎている為かも?) ・多少ブレていますが、手ブレしていようがピンぼけだろうがノイズには関係ないので、 比較にはなると思います。(^_^;

撮影日が比較的涼しい6/13 20時頃で、しかも海縁という条件もあってか? 1/2secあたりでは全くノイズは出ていません。が、この数日後に撮影した 広島市内の夜景は、これ以上にノイズが出ていました。もう少しシビアに 気温を調べて、温度との相関も見た方が良さそうな感じです。

1secあたりになってくると、所々に輝点ノイズが出てきます。また、 空の暗部もわずかですがざわついた様な感じが出てますが、これなら まだ許容範囲だと思います。

2secになると、結構ノイズは激しくなっています。そろそろノイズリダクション を行わないと・・・ といった感じですが、救いようがありそうです。

4secでは、そろそろ気の利いたコンシューマーデジカメには勝てそうも ありません。ノイズが激しくなって暗部のしまりもなくなっています。 あと、画面左上側には、わずかながら前回レポートでも出てきた、 ストラップがレンズに被さったかの様な正体不明な影が現れています。

ちなみに、原寸大表示の画像は、PhotoShopで切り出した後に、かなり高い 圧縮をかけているのでノイズのエッジが落ちていて、マイルドになって いますが、実際にはもう少しノイズが目立ちます。

それから、4sec以上での撮影ではどうなるの? との指摘を受けそうですが、 やるだけ無駄というか、やってる私の気分が悪くなるのでテストしてません。(爆)






その2(PhotoShopを使ったノイズリダクション効果の検証)

今度は、この画像に対してPhotoShopでノイズリダクションを行って みます。考え方としては、OLYMPUS E-20やCANON EOS D30などで採用されている ものと基本的には同じで、1枚目を撮影した後に、同じシャッター速度にして レンズキャップを付けて真っ黒な画像を撮影し、後からPhotoShop上で、レイヤー合成 する際に、"差の絶対値"を取るというものです。
(情報提供:yoiiroさん どうもありがとうございました。)

N DIGITALのRAWデータ現像ソフトにも、これと同等の機能がありますが、 何せあまりにも高価な割には性能がよろしくないと評判なので(笑)、とりあえず 私は採用を見送ってます。

それと、CCDから生ずるノイズは気温と密接な関係があるというのは、このサイトを 立ち上げた最初の頃の実験でも検証済みであり、それを考えると、あらかじめ カメラ付属のCD-Rに入っているノイズ画像とは異なる撮影条件では、 必ずしもノイズの出方が一致するとは限らず、それを考慮した場合、 RAWデータ現像ソフトよりPhotoShopで手作業のノイズリダクションを行う方が 良いのではないか? という読みもあります。

以下にノイズリダクションした画像を並べてみました。

海田大橋 1/2sec 部分UP 1/2sec
F2.0
海田大橋 1sec 部分UP 1sec
F2.8
海田大橋 2sec 部分UP 2sec
F4.0
海田大橋 4sec 部分UP 4sec
F5.7

写真は上段で使用しているものと全く同じで、元画像と一緒に撮影しておいた ノイズ画像をレイヤー合成しています。ただし、ブレンド条件とかは何も つついていません。デフォルト値のままです。

もう、見たままなので、あまり言うことも無いですが、ノイズが確実に 減少して、かつシャドー部が引き締まっていることが解ると思います。また、 シャッター速度4secで撮影したデータの場合、問題の影も綺麗に無くなり、 さらにCCDのステッチングによって発生していた黒い線も消えています。

このテストデータで見る限り、ちょうどシャッター速度1段分稼げたといった 感じで、リダクション前の1secとリダクション後の2secがほぼ同等・リダクション前の 2secとリダクション後の4secがほぼ同等といった感じに見えます。しかし、4secあたりで ノイズリダクション処理を行うと、今度はハイライト部に元画像に無いノイズを 被せてしまうため、ハイライトにノイズが乗ってしまっています。

このあたりは、レイヤー合成のブレンド条件を元画像を見ながらチューニングしてやって 最適値を出すのが吉だと思われます。

ちなみに、N DIGITALに採用されているCCDはかなり特殊な代物で、サイズ的に大きなCCDで あるため、回路のパターンを焼き付ける際、3回にわけて行っています。このためわずかながら 接合面が生じてしまい、その部分はいわば画素欠けと同じ様な状態になって、縦線を発生させている 訳ですが、メーカーのコメントでは隣接する画素からの補完を行うことで、見えない 事になっています。

しかし、現実はノイズが多いときは、素人目にもはっきり解るほどの線が現れますし、 1/4secとかいった割合早いシャッター速度で、わずかに空の青さが残っているような コンディションの時・つまりノイズが無いような状態でも、暗部に縦線が写る事があります。 これって、単純に隣接する画素のデータを乗せるだけで良いレベルの話なので、本来なら どーやってでも補正できそうなものだと思うのは私だけでしょうか???

この実験以外にも何度か夜景撮影をやってみた結果を総合すると、このカメラに相応しい 画質を確実にキープ出来るのはISO50で1/4secまで、ノイズリダクションを行った場合で 1secまで、コンシューマーデジカメと同等であれば2sec程度が限界かな? と思います。

ただ、ここではノイズにのみ着眼しているのでその意味で厳しめの評価ですが、600万画素という 画素数を考えると、解像度の高さでノイズをある程度ごまかす事も可能ですから、 コンシューマー機との比較なら、もう少し基準を甘くしても良いかも知れません。

実に情けない話ですが・・・(^_^;






その3(所感などなど・・・)

デジカメの難しいところは、従来の光学系デバイスのみならず、画像処理エンジンをドライブさせる ソフトウェアがしめる比重がかなり高いため、いくら優秀な光学系を持っていても、その 画像処理如何で性能をスポイルされてしまう可能性は非常に高いです。
(裏を返せば、かの有名なハッブル宇宙望遠鏡みたいに、光学系がおかしくても、 ソフトウェアによる補正で適正な画像を得ることも可能だという話もあるのですが・・・)

N DIGITALの場合、光学系はCarl Zeissブランドの名を冠したレンズをはじめ、京セラ が誇る高複屈折ニオブ酸リチウムを用いたローパスフィルターなど、間違いなく一流だと 思いますし、画像処理エンジンに使用されているDSPなどの性能も充分水準に達している ものだと思うのですが、これら個々のデバイスは優秀でも、それらをまとめ上げるソフトウェア面での 問題点が目立ちます。

こういったノイズリダクション処理はカメラ内部のソフトウェアである程度対処可能な 事柄ですし、他にも貧弱な電源管理アルゴリズムやRAWデータをプレビュー表示出来ない 制約など、完全に他社のデジカメと比較して立ち後れています。

やはり、経験不足が大きく響いている感は否めません。

また、仮にも画質至上主義を謳ってデビューしたこのカメラにあって、(CCDの機能上の制約とか 理由はあるにせよ)スペック上は長時間露光が可能であるとしておきながら、事実上使いものに ならない画質・確かに、メーカーのHPやカタログでは"ノイズが出ることがあります。"と但し書きはある ものの、とても"出ることがあります。"レベルでは済まされない画質であるにも関わらず、"それが仕様だ"と 平然と言ってのけるあたり、性能がどうこうという問題より、企業姿勢を疑うべき問題だと私は思います。 (恥ずかしくないんでしょうか?)

おそらく、こんな使えない機能が載っているのは、母体となったCONTAX N1の機能を継承して いるというセールスポイントを押さえておきたかったからだとは思いますが、基本的に素性の良い カメラなのだから、もう少しソフトウェア熟成させた上で、シャッター速度の下限を2〜4secに止める など、カタログスペックを落とす・あるいはその点について明文化しておくなどして、ユーザーの 信頼を取った方が、このカメラの評価を高める事になったのは間違いないと思います。
(最初から出来ない事に対しては、誰も文句は言いませんし、これを扱うユーザーともなれば、 少なくとも初心者ではありませんから、然るべき説明がなされていれば納得される方がほとんどかと・・・)

発売前の度重なる発売延期・しかも発売当日になって発表するなどという、メーカーとしては 最も避けるべき失態を何度となく演じたり、電源系のトラブルにしても、リコールして然るべき 内容であるにも関わらず、未だ公表しないなど・・・

このカメラの最も不運なところは、発売した会社が悪かった・・・ではないでしょうか?




〜 End of text 〜




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