コラム

事業継続や防災に関するコラム・ワンポイントアドバイスを公開します。

◆カタストロフ的な災害対応を迫られる新型コロナウイルス対応


新型コロナウイルスの感染拡大は世界規模の災害となった。
すでに多数の人命を奪い、多くの国々で社会・経済が停止している。これにより市場が失われ、サプライチェーンは崩壊した。しかも広域に被害が及んでおり、物流への影響が大きいため事業継続における「代替え戦略」の多くが機能不全に陥っている。
また、地震などの発生事象に対する対応計画の延長として事業継続を考えていた企業では、徐々に影響が拡大する感染症への対応が不十分となったケースも見られる。
地震や風水害も感染症も企業の市場・資源・サプライチェーンなどに影響することには変わりは無いが、破壊の程度と影響の大きさについては共通するものと趣が異なるものとがある。
人命は何れの事象でも危険にさらされるが、感染症の場合は建物や設備などの「ハード面」に対しての影響は比較的小さい。一方、病気の正体が不明・収束が見えない等の「ハート面」には大きな爪痕を長く残す。これに対しては避難訓練などの防災訓練だけの「ソフト面」では不十分となる。
また、感染症対応として普及しているテレワークなどの社会的な変革に対しても対応が必要となる。「災害はトレンドを加速する」と言われる。これまで社会制度や企業風土による抵抗で浸透が遅かった先進的取り組みが、世界規模で進むことが予想される。
事業継続は企業戦略である。すでに事業の撤退や従業員の解雇に踏み切にせざるを得ない企業もある。分野外の製品生産や業態転換を強いられている企業もある。
「供給責任」や「雇用継続」は企業に余力がある場合には実施できるが、追い込まれた状況下では企業存続を最優先にせざるを得ない。新型コロナウイルスは綺麗ごとだけではない事案対応の厳しさを我々に突きつけている。
厳しい状況下であっても企業の存続を図るために「撤退条件」を把握し、事前の資金手当てや雇用対策、投資計画等を行い「撤退条件」をより遠い存在とすることは経営活動そのものである。故に、事業継続にはテンプレートや便利なひな型は無く、経営陣が自ら知恵を絞る必要がある。