kitmaking  2-1
Back to Making index

Back to kitmaking 1
キット製作仲間、集まれッ 2 リンタロウくんとパパ 2011 8, HOME
Next  2-2

はじまりは一本のメール、

発信したTさんの、息子さんを思うママの気持ちに答えたい、と考えて即座にOKの即答。(以下は、そのメール)

私は3人の子供を持つ主婦です。

いえ、11歳(小6)の息子を持つママで、その息子の名前はリンタロウといいます。

この夏の宿題は「将来の自分に近づく試み」をレポートするのですが、

このごろ「バイオリン製作者」に興味を持ち出し 調べてみたいと言い出しました。

関連書籍を探したり、ためしにパパとキットの製作にチャレンジしてみようか・・・と

取り寄せてみたり、と動き出していたところ すみやさんのホームページを見つけました。

突然であつかましいのですいが、もしお許しいただけるなら、工房を一度訪ねさせてはいただけませんでしょうか?

わずかな時間でも構わないのです。製作についての具体的なイメージがもてたら最高だな・・・と。

がんばることを最も苦手とする彼に、何かをつかんでほしいな、そんな気持ちでおります。


さて、キットの組立に関しては、いままでもいろいろと記載してきていますから(Kit Making)、ここでは変わったことを記します。

リンタロウくんのパパは技術系の会社員、
しかも、その会社は当地、裾野市に富士工場があるのです。

リンタロウくんはいかにも繊細で神経質っぽい少年。

一方、パパは大学時代はハンマー投げの選手、体育会系の
がっしりした体格で、いかにもやさしいムーミン・パパタイプの方。

今回は、とくにリンタロウくんのために、私の遊びごころで、
「すみやモデルの組立キット」をつくりました。

つまり、市販のキットはパパの仕事にして、
こちらをリンタロウくん用にと考えたのです。
すみやモデルの組立キット Rint-2号
これは、以前つくった シャノー・モデルの変形 を、
さらに少し小型にして、やさしいプロポーションに変えたもの。

ボール紙にプロポーションを描いてから切り抜き、少し大きい紙に、
左右・裏返して転写、全体のプロポーションを確認。

前のモデルから、第一段階で変えたものをさらに視覚修整し、
自分の好む形に変えたのです。

つまりリンタロウくんのためにつくった、二段階目のバージョンという意味から、Rint-2号モデルとネーミング。
その型紙から、内型用と外形用のテンプレートを、
例によって2.5mmベニヤに転写して切り抜きました。

なお、内型を先につくっておき、所定の幅があるワッシャーを使って、内型よりおよそ3mmほど大きめに外形用の型もつくりました。

それは、リブ材の板厚分と、エッジの出の部分を考慮した大きさになります。

内型用のテンプレートから内型をつくり、リブを組み立てます。材料に費用をかけさせたくなかったので、 「原木からつくった最初のもの」と同様、在庫になっていた富士山のカエデ材を使いました。
リブが組み上がりました。


内型は、板厚15mmのラワン・ランバート板を使いましたから、 下側におよそ7mmほどの下駄を履かせて浮かした状態になっています。つまり、その開いた部分がライニングを貼るところになります。

この外枠が、最初につくったモデルのもの。若干、スマートになっているのがお分かりいただけると思います。



ノミやカンナは危ないので、私がやり・・


スクレーパーでの削りはリンタロウくんの仕事。
裏板の板厚をチェック、内側をスクレーパーで削るリンタロウくん。
キットで一度経験しているので、だまって、どんどん進めました。
表板は、建築資材の端材・北米産のスプルースです。
バスバーは、ストップの位置に重心(中心ではなく目方の中点)をもっていくのがすみや流。
全体がこんな形ですから、
ネックだって普通では面白くありません。

それで、ご覧のように、変わったデザインのものを紙に書いて切り抜き、その紙をそのまま型紙として使いました。
ペグを仮に挿してみて、プロポーションを確認しています。
スクロールの彫刻も、今までにはない、エッジ部分を鉛筆の線一本分を残し、出っ張らせる仕上げにしました。

角を、ただ45度の面をとるだけなら簡単ですが、今回、はじめてふくらめてみました。
当初、ライニングは省略するつもりでしたが、
入れることにしました。

リンくんは、お父さんが入れるパフリング材を濡らし、
アイロンで、上手に曲げています。
パフリングを入れるのも久しぶり、特殊な形だからカッターの刃の位置も、丁寧にノギスでチェックしながら調整。
二筋引いた切り込みの中間をクリーナー
(極細の彫刻刀でこれもお手作り)を使い、
丁寧に彫っていきます。
その溝に、曲げたパフ材を差し入れていきます。

ちょっと薄く削りすぎた表板の内側に、和紙を切り貼り。

柔らかすぎるほどの素材で、つい、ノミが深掘りしてしまったため。

和紙も、もともとは木の繊維、(元・本業の内装業=襖張りの要領で)下張り用の和紙を「食い裂き」という方法でカット。

これは、カッターナイフで切るのではなく、
少し、濡らして定規をあてがって切り裂く。

すると、繊維が引っ張られるようにちぎれ、
重ねて貼っても、紙の厚さの段差がつきにくくなるのです。

乾いたら、全体を薄いニカワでニカワ・メッキ?しました。

これは、和紙や、柔らかい木の表面を
ニカワのゼラチンで固めるための処置。
表板をボディに貼り付けるのですが、汚れ防止の
アルコール系のラック・ニスを二度、塗った。
また、さらに、オイル系のニスを10回以上塗った。
バックには、二胡モドキも一緒にニス塗りです。


弦を張り、駒やペグをつけて、一応、完成。
ただし、駒は高さが合う古いものを流用したから、
また、変わった形のものをあらためてつくるつもりです。

音はどうかって? 変わり型ですが、
しっかりとヴァイオリンの音で鳴っています。

詳細は、リンタロウくんが次回きたら、じっくりと弾かせ、
彼の感想を聞き出します。

次のページには、リンタロウくんにヴァイオリンの
ルーツや歴史を説明したので、そのことを中心に書きました。

そして、実験として、ヴァイオリンの古代の形である
「二胡もどき」や矢竹でつくった古代弓もつくりました。

Back to Kit Making1 Next to 2-2 HOME