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キット製作・仲間集まれ〜ッ T |
・・・・ということで、我が家の工房に集まったキットづくりの仲間たち
◇ 久々のキット仲間が・・・、リンタロウとそのパパ (Aug. /'11) |
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◇ キットは、そのまま組み立ててもOK?だが | |
◇ 安物キットでも、材料は本物 | |
◇ 手工品と同じように仕上げる | |
◇ 胴体が仕上がるとネックの取り付け | |
◇ ニス塗りから仕上げ | |
◇ 新しい仲間たち! | |
◇ つぎつぎに完成 | |
◇ Yさんもついて完成 (02年4/7追加) |
Luquackさん(お若い主婦)のケース |
筆者の作品の一部を紹介
原木からつくった二号機 | キットのつぎには、原木から切り出して製作 |
9号機・背面 | 表紙ページの写真 |
小型ヴィオラ | 1999年制作、米国の制作者ヘンリー・A・ストローベル設計のもの |
キット仲間・集まれ〜ッ |
そのまま、なにもしないで組み立てるだけでも、とりあえずヴァイオリンにはなります。 でも、折角マイ・ヴァイオリンにするのですから、 少しでもいい音に、そして、少しでも見てくれのいいものにしたいものです。 そのためには、キツトといっても、一通りの工程と製作方法のポイントを学ぶ必要があります。 それに、板の削りにはスクレーパー、パフリング(象嵌)の曲げには ベンディング・アイロン、 バスバーを貼ったり胴体の組み立て時には、特別な締め具・ クランパーも必要です。 |
キットは、そのまま組み立ててもOKだか ・・・ |
「キットだからボンドで貼ればいいや」、という方には必要ではありませんが、 本格的にニカワで貼ろうとすると、ニカワを溶かして使うための 「湯煎する道具」も必要になります。 ニカワの取り扱い等、詳細は こちら→ では、ニカワとボンドの違いは???というと、ニカワの原料は動物質のコラーゲン、 獣の皮や骨をよく煮出してつくる「煮こごり」を乾燥させてミイラ化?したもの。 一方のボンドは高分子化学で合成してつくる酢酸ビニル・エマルジョンタイプ。 ニカワは、熱と湿りで溶かして剥がすことができますが、ボンドではそうはいきません。 ボンドでは、接着面を破断させなければ剥がすことは不可能でしょう。 つまり、ニカワだと剥がして修理が可能・・・という最大の利点があるのです。 やはり、いちばんのネックは、音色に関わりの深い 「板の厚みを正確に計るための」キャリパー でしょう。 市販の安いものでも2〜3万、高いものだと8〜9万もするようです。 セットで2万円もしないたった一台のキットのために、普段使いもしない道具に何万円も払うのはナンセンス。 中には、組立キット1台のために、手工品ヴァイオリン専用のニス・セットを、2万5千円も出して買った方も・・。 売る方の『ストラドも使った・・』という宣伝にほだされて、特殊な赤の天然樹脂(竜血や麒麟血など) を材料にした高級「ニス」のセットを買ったのですが、 それでさえ、主客転倒という感じさえ私はしています。 そこで、『我が家なら、一通りの道具や工具がそろっているから、ご一緒にいかがですか?』というこ呼びかけで、 お仲間たちが我が工房に集結したわけです。 赤色系の天然着色・樹脂としての竜血(ドラゴンズ・ブラッドdragon's blood、左の写真)や麒麟血(キリンケツジュ)は、 いずれもドラセナやアロエに近い種類のリュウゼツラン科の植物から抽出した樹脂で、古くからニスの着色料としてに使われてきたもの。 黄色系では、ガンボージという東南アジア原産のオトギリソウ科フクギ属の常緑高木[ガンボージ]の木から採取した樹脂がわく使われる。 カレーに使われているターメリック(ウコン)もよく普及している黄色系、こちらは樹脂ではなく根の粉末。 シュラックも、黄色から赤味がかった結晶化した樹脂もあるし、弓のスティックに使われるフェルナンブーコ も着色剤として使われる。 西洋茜 madder rootやサンダロ sandaloなどや、特殊なものとしてミツバチが集める樹脂のプロポリスもアンバー系の色にしたいときや、 やわらかいニスにしたいときにブレンドするなど、いろいろな樹脂があります。 |
安いキットでも、材料は本物だから・・・ |
フレーム(ヴァイオリン杢)こそ入っていなくても、裏板や側板、ネックは北米産の カエデ、表板はホワイト・スプルース。 とりあえず、材料(というか、材質)だけは本物。だから、正しい?厚みに削り直したり、 ちゃんとしたつくりにすれば、音はある程度、期待できるというものです。 そこで、皆さんにはそれぞれマイ・スクレーパーをひとつずつ作って差しあげ、板の削りから入りました。 表板は単独になっていますが、裏板は、すでに貼り付けてありす。 それでも、なんとか理想(標準的な)の厚さになるまで削って仕上げました。 |
キットの側板には、すでに裏板が貼られている半完成品の状態ですが適度の厚さになるまで、
スクレーパーで削り込んでいきます。 同じ市内からきている、お祭りの笛の仲間 Mさんの真剣な面もち・・・。 |
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厚さが整うと、パフリングにかかります。 手前側に立ててある半田コテ改造のアイロンで、お二人ともとてもきれいに曲げ、はめ込みました。とくに、C部の先端、2本の合わせ目がポイント。 そして、翌日にはチャンネル彫りまで完成。 はるばる県外から「すみやキット製作教室?」にきたYさん、「本当に、ヴァイオリンをつくっているという実感がする・・・」と、わくわく大喜び! |
削りながらときどき、周辺部から中央部にかけ、各所の板厚をチェック。 |
このお二人のほかに、80歳になるご老人のAさん、
そして四十代?の中年女性のKさんの、あわせて4人のお仲間がキットづくりに加わりました。
手工品と同じような仕上げに
◇ パフリング後のチャンネル彫り 板厚の調整、パフリング、バスバー貼り付け、チャンネル彫りが済んで響板の貼り付け。 かなり圧縮した写真ですが、チャンネル彫りでエッジの立ち上がりがシャープになっているのがお分かりいただけると思います。 チャンネル彫りすることで、手工品らしいシャープな仕上がりになることは当然ですが、エッジ付近がそれだけ薄くなりますから、 よく振動するボディになるという効果も期待できます。 |
共鳴箱本体にネックの取付用のホゾ穴を掘りますが、
指板をつけた状態での高さと角度、それに全体としての垂直性など、このホゾ穴彫りは、もっとも注意を要する作業です。 つまり、指板が正しく取り付けられる状態でネックがついていなければ、 音響的にも演奏する上での操作性にしても支障をきたすからです。標準の寸法では、指板先端のトップが響板から21〜22ミリ程度の高さになることを、ひとつの目標になるようにホゾ穴を掘ります。 そうすると、指板の延長線が駒の位置でおよそ27ミリほどになります。 しかも、ネックをはめ込むとき、キューと木がきしむぐらいにゆるすぎず、固すぎず、正確に彫ります。 |
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エンドピン側には、テール・ピースのワイヤーがかかる「サドル」を 正しく削り、同様にホゾを空けます。ネックもサドルも、ニカワ付けには本体に少しのキズもつけないよう、さらに正しく取り付けるように、 細心の注意を払います。クランプの押さえ部分にはコルクシートが貼ってありますが、さらにボロ布を巻いて締めています。 |
ネックやサドルがついたら、さぁ、仕上げに入ります。 木地には、400〜600番程度のペーパーで、丁寧にペーパー掛けし、きれいな肌にしあげます。 この下地の処理如何が、ニスの上塗りをしたときに、仕上げ全体の出来、 不出来に大きな影響を与えます。 それから、クチナシの実からメタノールで抽出した黄色い染料で2回ほど着色、 生地の目つぶしを目的とする下塗りも2回かけました。 そして、ペーパー掛け、上塗りも2、3回に一度ずつ、 600番、1000番、1200番と、徐々に細かなペーパーを掛けながら、都合18回塗りました。 M君には本人の希望色、アルコール系のシュラック・ベースにプ、ロポリスをブレンドしたニスを塗りました。 後はエンドピンを差し込み、ナットの弦の通り道になる「溝切り」、ペグの調整、魂柱立て、それに駒を合わせて削れば弦を張るだけ。 「都合100時間はかかりましたが、よかった!」と、M君は大喜び。 試奏し、思った以上に鳴ってくれたので、M君はさらに大満足でした。 (^o^)! |
沼津から幾日も通い続け、ついに完成。 「この歳になって、大きな財産を残した気がします」とご満悦の朝香さん。(〜ボクが所属する蘭友会の会長さん。ご自宅の書斎で撮影) |
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Iさんは、完成した白木のヴァイオリンにいよいよ着色。 クチナシの黄色い着色料を塗っています。 |
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K女史は、ネックスクロールの成形 11月15日に 完成したK女史のものはこちら |
Kさんの後日談 その後、同居していたお母さんの具合が悪くなり、そのお母さんのご実家がある山形に転居。 「万一の時には、生まれ故郷で・・」というお母さんのお気持ちを考えてのこと。そして、何年ぶりかで、久々に、何枚かの続きの年賀状を頂きました。 それによると、地元の音楽仲間に誘われてアンサンブルに加入したこと。また、あちらでいい先生に恵まれ、レッスンを再開されたこと・・・などでした。 その、ヴァイオリンの先生から「本当にこれ、Kさんがつくったの?」と聞かれ、顛末をくわしく説明したところ、「そんな値段で・・・、よほど感謝してお礼しなくちゃ・・」といわれたそうです。 それで、嬉しさのあまりの連続した賀状になったわけです。('07.12追記) |
Sさんは、以前、ヴァイオリンを趣味でつくっていたお仲人さんから分けてもらった、
半・機械加工の部材をもっていましたから、内型からつくらなければなりません。 その型にブロック材を貼り、貼れたブロックから成形。(6/3) |
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つぎの日曜日は、側板の曲げです。 私のアイロンは60Wの半田ゴテ+ 銅製の筒。 Sさんのものは150Wの半田ゴテ + ステンレスの筒。 少し熱くなりすぎるのでは心配しましたが、問題なく、きれいな曲線に曲がりました。 ステンレス加工は、半田ゴテに合わせて知り合いの鉄工場でつくってもらったもの。(6/10) |
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01年11月 15日、K女史のものもようやく完成。 できあがって弦を張り、初めて音を出すときには、いつも感動があります。 一部、ちょっと薄く削りすぎたところもありましが、添付されていた安いスチール弦ではなく、 ドミナントを使ったこともあり、よく鳴り響いてくれました。 現在、彼女がお持ちの楽器がくすんだ赤系のため、 本人の要望で、手工品らしく明るい黄色系のニスで仕上げました。 ご本人も大喜び、まずは、めでたしめでたし! |
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Yさんは、もともと、当ホームページで知り合ったメーラーさんのおひとり。 県外から、熱心に何回も通ってきて、いよいよ02年、4月7日に完成。 前の晩に、駒を削ったりフィッティングの作業はだいたい済ませ、 その日の朝から、魂柱を入れたり、 ドミナントを張って仕上がり。 弦を張って調弦まではわたしがやり、あとの初弾きは、ご本人に。 Yさんが思っていた以上の声量があり、音色も遜色なく、大喜び! この日シトシトとあいにくの春雨、当地・裾野の観光もできず、彼女は産声をあげた 楽器を手にし、私と二人でバッハ『ドッペル』の第1、第2を入れ替えながらデュオ。 腕が疲れるほど弾きまくりました。本当に頑張って、よく仕上げまでやりました。 欲をいえば、あと2、3回ぐらいはニスを塗りたいと、わたしの総評。 |
当初は、ヴァイオリンの材料がどこで売っているのか、入手経路も分かりません。
そのため、裏板、側板、ネックは手近で入手することができた「富士山のカエデ」。
指板やテールピース用の黒檀も手に入らなかったため、ホームセンターで売っていたツゲ(ボックス・ウッド)
表板のスブルースは、北米産の建築資材(ホワイト・スプルース)や廃材から選別したもので製作。
いずれも富士山直下にある知人の製材所や、大工さんたちから分けていただいたもの。
とくに、顎当ては自分のあごにあわせて削りましたから、肩当てをしなくとも、ぴったりフィットしています。
その結果、いかにもバロックヴァイオリンみたいで、今では『お気に入り』の1台。
中1になる孫娘の稽古用として、十分、鳴ってくれています。
この富士山のカエデも、ボクのところにもらわれずにいたら、まもなく製材所のお風呂のマキになるところでした。
永らく在庫していたので、一部、下の方に腐れがきていたため、建築資材としての商品にはならない状態だったのです。
この製作がきっかけになり、原木からのカット(木取り)、削りだしなど、いろいろな基本的技術を習得することができたし、
必要不可欠な道具や工具もそろい、ボクの、ヴァイオリン製作の原点になった一台です。
(May 2000)
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この9号機バックの素材については、「木について考えるT」ページの下の方に詳細を記してあります。
これには、北米産のカエデ「カーリー・メイプル」を使用しています。
ヘンリー・A・ストローベル氏の設計による小型ヴィオラ |
1999年 11月制作
ボディ本体は、397mm、とくにリブは、エンドピン側の方が、巾がやや高く、ネック側が低くなっている。
アッパー・バウツ、ロウアー・バウツとも市販のものより大きくとってあるので、
小型ながらボディの内容積が大きく、低音(C線)の響きはいい。
表板は、ヴァイオリン用に取り寄せたヨーロッパ材の、少し大きいものが使えたのでそれを使い、
裏板、リブ、ネックは9号機と同じ、北米産のカーリー・メイプルを使用。
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