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ヴィオラ用 ハードケースの製作 木工製品?

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私には、'99年と'06年にそれぞれ一台ずつ制作したヴィオラを持っていますが、ケースは1台分だけ。

それで、以前にも
ウクレレ・ケース をつくった経験があるので、今回も同様な形でつくってみようと思い立った次第。
まぁ、半分は、いつもの衝動的な遊び心といった動機です。( Sept.07 )

現物に合わせ、側板の板厚やパッキンを入れる必要な巾や大きさ、型をきめ、

まず、大きめの紙を使い半割のテンプレートつくります。
 
それをコンパネに転写し、ジクソーでくりぬいた内側のものが、この写真の下に置いたベニヤ。
 
ケースの外形を安定させるために、このくりぬいた内径から、

さらにリブの板厚を差し引いて切り出せば内型もつくることができるように、 ここは、しっかり正確に切り出します。
    ◇ 型作りと側板(リブ)の曲げと組立   
それを、右の写真のように上下、同じものを2枚つくり、チェロ修理のときの内型製作と同様、 中間に木のスペーサーを加えて厚さをだします。

リブの素材は、板厚9mmの外国産の「桐もどき?」。

以前、知り合いの大工さんから、クローゼットの収納壁に使った建材屋ルートの切り落としの端材をいただき、今回はその材料を使いました。

ケース自体を軽くするためにも、木の中でも軽い「桐」は最適といえますが、柔らかいだけに刃物がよく切れなくてはなりません。

後日、ホームセンターの木材売り場で市販されているものを確認しましたが、 この桐もどきには「ファルカタ」という樹種名がラベルに書かれていました。

9mmmもある板を曲げるのにはどうするか? 

写真のように丸鋸の刃を、板厚の1/4が切れるようにセットしておき、このように、曲げの大きい所ほど密に、 ゆるやかな所は粗めに、あらかじめ平行した切り込みを入れます。
    
このテクは、
ウクレレ・ケース をつくった経験があるので、適当な間隔で切りましたが、だいたいうまくいきました。
板を十分、濡らし、一定の時間をおいてから、ゆっくり折らないように、曲げて様子を見ます。

さらに、切り込んだ筋の中にも、霧吹きで、たっぷり、水を含ませました。

とき同じ頃、仕事の出先で、物置の端に置かれていたのがこの木工製品。

年も私とほぼ同年代の、そのご主人のSさんに伺ったところ、これは奥様をもらったときの、結納の品々を乗せたお盆だったとのこと。

スギの柾目を使い、胴突きノコで皮一枚残すようなひき方で、見事な曲線に曲げていました。
その側板を外型にあて、切り込んだ筋にもたっぷり木工用ボンドを塗り込み、型に沿わせるようにクランプします。

ようやく、リブの全体ができたところです。 リブができたところで、同時進行で蓋と底になる部材の実験に取りかかりました。
 ◇ 蓋のカバー(フロント)と底にあたる部材(バック) 


アーチをプレスするための当て木

上下の蓋になる部材には3mmベニヤを使い、なおかつ、ゆるやかなアーチをつけたいと考えています。
底部はごくゆるやかに、蓋の方は駒の出っ張っている分、少し大きめにとろうと思います。
さて、平面のベニヤをどうしてアーチにするか。
たった3mmとはいっても、ふっくらと膨らませることはなかなかできません。
それは、2次元のベニヤを3次元のものに使用とするわけですから、 多少、無理を通してでも道理をひっころる手法に頼らざるを得ません。

まず、ベニヤを少し大きめにカットし、全体を濡らします。少なくとも、お風呂につけるほど全体に水をしみ込ませるのです。
それから、ベニヤに当てる部分だけを「かまぼこ型」にカットした「当て木」をあてクランプで圧をかけます。

プレスする台には、外枠の一枚の周囲を使いました。内川の角は、ゆるやかに大面を取りました。
水平面から見て、およそ15mmほど押し込み、凹ませましたが、濡らして十分柔らかくしたベニヤは、この程度の締め付けでは、 ミシミシ、メリメリと異音を出すほどではなく、まだまだ余裕がありました。
乾いてからクランプを外すと、当然、戻りがありますから、ここは少し強めにします。
今回のケースでは、平面から見て、およそ14mmほどへこませました。
2昼夜放置して乾かしたり安定させ、プレスを外しました。その結果は、およそ半分ほどは戻り、最大で8mmの、 ゆるやかなアーチができました。
この程度の戻りは、当然、想定内のこと。
このままでも底板には、十分、使えますが、しっかり固定するための、ベニヤのスリットを貼ろうと考えています。
また、所詮、できあがってからローア部に二カ所、ネックあたりの裏側に一カ所、ケースを床においたときに足?になる、 ゴムプッシュのようなボタンをつけようと考えていますから、それの受けにもなります。

ヴァイオリンのようにリブの板厚が厚いので、 裏板や表板を貼るのに、本来ならライニングは不要ですが、曲線部を安定させるために、ここではあえてライニングを貼ります。

そのために一旦、ビスでスペーサーを固定した型からビスを抜き、スペーサーの木を横にし、再度ビス止めして、まず、下部の水平面からライニングを貼ります。
ライニングは、エゾマツの端材から、板厚3mm、巾15程度のものを切り出し、 こちらは、ヴァイオリンづくり同様、十分、濡らしてからアイロンで曲げ、ボンドで貼りつけました。
なお、上下の蓋にアーチをつけるわけですから、リブのカットにはテーパーが必要になります。
その分、ライニングはほぼ1mm程度出っ張らせて貼り付けてあります。

実際のものですが、ご覧のように、 それぞれ必要なだ諸・位置に添え木になる3mmベニヤの切片を貼り付けながら、あらためてプレスし直したものです。

そのスリットも、ギターのいわゆる「力木」のような役割をして貼りますし、底部には、ネックの支えになる 「枕」のような部材も貼りますから、アーチもよりしっかりしたものになるはずです。

これらの写真でお分かりになるかどうか、両方ともほぼイメージ通りの、ゆるやかなアーチ(ふくらみ)を保った蓋ができました。
上がケースの底になる方でアーチもやや緩やか、 下が蓋になります。底になる方は、ボディのいちばんふくらんだところをさけ、 添え木には、同じ3mmベニヤをくりぬいて、上から圧をかけますから、アーチの押さえと同時に貼りました。

一方、蓋の方は、弓を固定する部品をつけるための場所(右)と、アーチを固定させるための力木にする、 中央と、左側をベニヤでサポートしました。

ライニングを貼り終わった時点の写真です。 外型を動かしたりずらしてみても、かなり曲線は安定していました。

すっかり外型を外したところです。この時点では、リブの巾に、まだ段差がついています。
ライニングを貼ったせいか、あるいは、曲線の切り込み具合がよかったせいか、リブは型を外しても、リブの外形は予想以上に安定していました。
巾の違いは、もし、蓋のアーチが思うようにふくらまなかった場合、 このずらして斜めにした外型のように、エンド側を厚く、ヘッド側を薄く、リブ巾に変化をつけて補うこともあるかと考えてのことでした。

蓋になる裏板と表板とも、ともにアーチがあるということは、ヴァイオリンの削りだしと違い、接着面がやや斜めになります。
つまり、エッジ近くのところは、少なくとも、この写真の隙間の分だけ、リブにテーパーが必要になるわけです。
そんな理由から、上述したとおり、ライニングを貼る際にもそのことを承知し、通常より多めに、1mmほど出っ張らせて貼ったわけです。
テーパーをつける際にも、その方が、削るのが楽になりますからね。

その角度を念頭に置き、やや斜めにカンナをもち、その段差がなくなるまで斜めに削ることで、削り過ぎも、削り残しもなく、
全体の水平面は保たせることができることになります。

蓋のベニヤも仕上がり、リブのライニングが貼れたら、いよいよ蓋を貼りますが、クランプする当て木には、不要になった内枠の一枚を細めに切り抜き、これを使います。 ベニヤに接する面は、当たりを柔らかくするために、ご覧のように大きく面をとってゆるやかにしてあります。

クランプに際しては、もう一枚の外型もクランプが入る巾に、細く切り抜き、 さらに水平面を維持するための底になるものを同型のコンパネで切り取り、その二枚をビスで固定した台を使っての圧着です。

そうする方が、外形の安定にもなるからです。
底が貼れたら、今度は蓋の部分です。ここで、駒のいちばん出ている分と、蓋のベニヤのふくらみを考慮し、 あらためてケースの厚さ(高さ)を、決定。
写真ののようにして、蓋のふくらみと多少のゆるみも含め、最低必要になるリブの巾を確認し、その巾でリブを成形します。

蓋も貼り上がり、できたものを水平面に置いた様子です。
ご覧のように、ゆるやかなアーチで、浮いて見えるのがお分かりいただけと思います。
上の水平面にカメラを移動して写すと、このように蓋のアーチも分かります。
なお、リブの曲線が想像以上安定していたため、蓋の方にはライニングは省略しました。


ホワイト・ヴァイオリンならず、これで、ホワイト・ケース本体の完成です。

上下の角は、大きく、丸い面をとり、全体から見ても柔らかい曲線を強調させています。
これから、底になる部分と、蓋にする部分、およそ7 : 3 程度に中央をカットします。
このように、蓋も底も、当初から一体化してつくり、あとからカットしますから、蓋と底の、上下の勘合に狂いはでません。
(当たり前ですよね。)

『馬子にも衣装』、ここまで仕上がると、事前に買っておいたパッチン金具や取っ手、蝶番をつけてみたくなります。 その蓋の開閉具合をチェック。取っ手は、不要になった古い壁紙の見本帳から外したものを流用しました。
もちろん、取っ手の取り付けは、本体を中に収容し、適当な棒の上にケースを置き、シーソーのようにして、その重心をセンターにしています。

ウクレレ・ケースの外装は、ビニル製の粘着シートを貼りましたが、今回はメタリック塗装で仕上げようと思い、 同系色の水性塗料で三回塗り、800番のペーパーをかけながら目止めにしました。

というのは、最近、ヴァイオリン・ケースでも、樹脂のチェロ・ケースのようなメタリックなものも出回っているし、 そんなメタリックもいいかなぁ・・・とも。

作業は塗装の方がずっと楽ですが、ぶつかったりしたときなど、剥げやすいのが欠点でしょうかね。

そんなことを考慮し、手持ちの、茶色の塗料で塗ったのです。

アーチと全体の強度を考慮し、底のヘッド部にはロジンなどの小物入れ、 それにネックの枕になる仕切り材を切り出して貼り付けてあります。

弓止め部品も、黒檀の端材から切り出し・・・、 ノミや彫刻刀、鉄工ヤスリやスクレーパーで成形、削りだしました。

上のものは、既製品のハードケースに着いていたプラスチック製のもの。
多分、この部品はヴァイオリンをあまり弾かない方の設計でしょうか?

弓を外す際、ときとして毛を噛んでしまうことがあるのです。

この部品だと支柱が弓を抜く方向に、三角になっていること。

それは、この構造だと無条件に回転部の隙間に毛を集めてしまう構造になっているからでしょう。

それに、裏側を少しオーバーハングさせた回転部の形や取り付け具合、また成型のバリが残っていたりして仕上げもあまりよくありません。
右の写真・下が、切り出した黒檀の荒削り状態のもの(左)と、ほぼ完成に近いもの(右)。

ヴァイオリンのナットやサドルをきれいに削り出す要領で、上下、二カ所に使いますから、全く、同じ大きさ、形に、二組分を成形します。

左右のものが、ただいまつくっているもの。真ん中が既製品の見本。

そんな小物をつくりながら、一方ではアルミ・ラッカー・スプレーで吹き付けします。
下塗りに、茶系の水性をベーカー掛けしながら3回塗ってありますから、缶スプレーですが乗りはいいです。

メタリックのダークブラウンを二度吹いてから、クリアーも二度吹いて仕上げにしました。

内装には、茶色の同系色・ベージュ色の、ベルベットのカーテン地(半端もの)を貼りました。

なお、蓋の開き具合のストップには、専用の金具が短すぎ、やむなく携帯のストラップのような、巾の狭いナイロンテープをビスで固定。

実はこのテープ、フラッシュメモリーに着いていたストラップ。

ナイロンですから、必要な長さにカットした切り口はライターで焼いて溶かし、ビス穴も目打ちをライターで焼いたもので穴を空けています。

そうすることで、ほつれ防止にもなり、しっかりするからです。
小物入れの蓋にも布を貼り、その黄色い取っ手には画鋲を使用。

小物入れの蓋の裏側水平面には、リブにライニング貼ってストップになるようにし、蓋の水平を保持しています。

小物入れの蓋には、和紙を裏表二枚貼り、それが蝶番の代わり。 なお、小物入れ以外の、本体部の周囲には、イラストのように、 少し面をとったライニングを貼り、これが底と蓋とのかみ合わせをよりしっかりしたものになり、完全に、隙間のないようになっています。

底には、家具用の硬質フェルトの足を三カ所打ちつけ・・・ これで、テーブルや床の上に置いても安定しています。



まだ、C部のくびれやエンド部のパッキンを考えていますが、とりあえずケースとして持ち運びできる状態にできました。

惜しむらくは、内装で、3mmベニヤの切片で補強した、蓋の段差が目立つこと。

それに、結納のお盆ではありませんが、もっと薄いスギ材の柾目でつくったらベターだっと、自己批判しています。

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