Remaking 3-3
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グラデュエイション(板厚)は、ヴァイオリンの音にとってはとても重要な要素。
厚すぎても、薄すぎてもよくありません。
さりとて、薄いものは直しようがありませんが、厚すぎるものは削りなおすことができます。
そのため、リメイクするに際しては、もともとのグラデュエイションを綿密にチェックする必要があります。

V-3 ◇ 元のグラデュエイション
◇ 仕上げたグラデュエイション
◇ スクロールの整形
□ 博士のちょっとしたミス
◇ 最終組立て

   ◇ 元のグラデュエイション   
元々の表板板厚 元々の裏板板厚
上のイラストをクリックすると、拡大図のページが開きます。
   ◇ 仕上げたグラデーション   
・表板では、気になるところがいくつかありました。上の拡大図で見ていただくと分かると思いますが、 中心部の一部と右上に4.0mmを越えるところがあったり、周辺部でも平均して厚めでした。
とりわけ所見で書きましたとおり、低音特性が悪かったこともあり、とくに周辺部をもう少し薄くして、全体としても、厚いところでも3.5mm以下にするようにしました。
また、周辺に関しては、たった1mm程度ですがもう少し深めのチャンネル彫りをすることで、平均して薄くすることができます。

・裏板の方はまあまあというところでしたが、ついでのことで、周辺と、厚めのところをすき取ることにしました。裏板も、チャンネル彫りをしますから、だまっていても周辺は薄くなります。両方とも、薄すぎると思われるところはできるだけ触らず、そのままにします。

いずれも、『所定のポリシーがあって、その厚さに仕上げた』という根拠は見あたらず、ただ、削りのムラのように私は感じました。
・やや厚かった裏板は、低音特性を考え、とくにG線側の周辺部は2.5mmより少し薄めにし、中心部でも4.0mm以下を目標にしました。

高音側は、それよりやや厚めにしましたが、当初より2.0mm以下の所はそのまま。上のイラストで、表板は青い字が、裏板では赤い字が仕上げた厚さ。
クレモナ派の岩井孝夫氏は、裏板の理想の厚さを重さで量る120g程度になる、 といっています。
参考までに、この仕上げた裏板を測ったら106gでした。

国産?カエデで、削った感じでちょっと堅い感じでしたから、やや薄めでもよいと思うのです。
それでも、タップトーン(板をたたいた音)はD(レ)よりほんの少し低い程度でした。

板厚の調整が済み、バスバーを定位置に貼りつければ裏板を元通り圧着するのみ。

   ◇ スクロールの整形   

少しいびつだったスクロールも形を整えて修整しました。写真は、外形の丸を整えて削った状態。
ただ、スクロールの溝があごの奥まで彫ってなくて、 正面から見てもなんとなく未完成のようで、中半端でした。このように、ある程度、できあがっているものを修整する際には、 どこを、どれくらい削っていくか、縦横、斜めから見回して、細心の注意をはらっておこないます。
あごの付け根まで、というか一番奥まで溝を彫り、その曲線のままで素直に側面の渦に向かっていくようにするのが私の流儀。

それには、狭い左右の端から平彫刻刀を使い、えぐるようにして溝を彫ったり、細い切り出しナイフ(リペアー・ナイフでも可)を使い、正面から溝に沿って刃を入れて削っていきます。
手前から直接丸彫刻刀で彫ろうと思っても、当然、逆目になるわけですから、きれいに、上手く彫れるはずはありません。
そのようにして、荒削りしてから半丸のヤスリやペーパーで、きれいな丸い溝に仕上げていきます。

写真は、スクロールの溝をだいたい彫り終えたところ。面取りもしていなかったので、1mm程度の面もとりました。
この方が前から見ても、後から見ても、ずっといいはず。

   □ 博士のちょっとしたミス   

ネックのボディへの取り付けは、 標準としてはエッジより6mm食い込ませるようにホゾ穴を彫ります。 (下の写真・左では、右側の小さな縦線)ところが、本器の場合、9mm弱ほど、3mmも余分にネックが本体に食い込んでいるのです。

当初の所見で、裏板のボタンが小さく、貧弱に見えると書きましたが、寸法をあたってみて、はっきりとその理由が分かりました。
要は、ネックをボディに食い込ませ過ぎて、その分、ボタンがめり込んでしまい、小さくなったわけでした。
つまり、本体にネックのホゾ穴を彫る際に、3mmほと゜余計に彫りすぎた、ということになります。

ネックがボディに深く食い込みすぎでいる。 そのため、ボタンがきわめて貧弱。 右は筆者の作品例。

上の写真・右の左側が本器、右側は去年リメイクした鈴木のもので、 私の好みに合わせてやや半円状に修正してあります。
このことは、川上氏のマニュアルにもあるとおり、ボタンは、通常エッジの円弧より2mm外側に、
直径21.5mmの円の中心をとり、きれいに丸く納めるのが正しいとされています。

その全体の丸さが、本器のこの形のように半円より少ないものとか、楕円ではなく、
どちらかというと円の55〜60%程度の形がわたしの好み。
ネックをがボディにより多く食い込んだその結果として、ネックの長さが3mmほど短くなることとなります。
ヴァイオリンよりヴィオラ・・の理屈どおり、理論上、ネックの短い分だけ低音域が悪くなるのは必至。
では、どれくらいの影響が出るか・・・?
ヴァイオリンの有効弦長は、およ33センチ、3mmだと、およそ、その1パーセント。
数値では、たったの1%にしか過ぎませんが、これは絶対に見過ごしにはできません。
そこで、ペグボックス内に、厚さ2mmほどのカエデの端材を埋木して
ナットの貼り付け位置を伸ばし、これに対応させました。
残り1mmは、ナットをボックスの上に出っ張るようにすることで、
なんとか、標準の有効弦長は保持できる結果となるわけです。
   ◇ 最終組立て   
バスバーを貼ると、いよいよ表板の接着。

エフ字孔から出ている白い紐は「あれは、なんだ?」と思うでしょうね。
本体の右側には、割り箸が一膳、置いてありますが、それも今回の小道具のひとつ。
 
博士の貼り方(クランプ)で、エッジが、それぞれの周辺の出がまちまち(1ページ目に写真あり)だったことから、
できるだけ均一に貼りたいと考えて割り箸を利用しました。
右の写真のように、側板の凹んだところを出っ張らせるためのつっかい棒だったのです。
さらに、後から、狭いエフ字孔から楽に箸が抜けるように、それぞれの順番を決め、凧糸をつけたわけ。

ニス仕上げは、アルコール系の着色剤で2回ほど塗り、元の色 + 自分の好みの色にしました。

ニスが乾く間に、指板も新しくつくりなおしました。
ボディの上、二本黒く写っているのが指板で、左が元のもの、右が新しくつくったものです。
写真は、着色後にオイルニスを一回塗ったところ。

当初、ただの茶色だったし、色も暗い感じでしたが、少しだけ赤や黄色を加え、
温かみのある、明る目の色に仕上げました。

これから、まだ数回は塗ります。
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