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リ メ イ ク |
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リメイクの目的と結果 | 修復や再調整について・・・ |
最初のリメイク 鈴木バイオリン初代・鈴木政吉 | 入手経路、楽器のグレード、ばらし、削り、ニス仕上げ、フィッティングなどとその結果。 |
チェコ製スタイナー型オールド | 「古いものを手に入れたので、使えるようにして欲しい」と、友人からの依頼。 |
一枚板・手工品?オールド | オークションで手に入れた古いもの。裏板は、バーズ・アイ・メイプルの一枚物。 |
鈴木政吉・W4 | 知人に頼まれて、故人の遺品だったものを使える状態に・・・と。 Dec.2001追記 |
鈴木ヴァイオリン・特No.2修復 1966年製 | アンサンブル仲間=ピアノ教室・ Y先生から〜お弟子さんが使っていたもの。 |
糸川英夫博士製作の3号機 2004.4 | K.Iさんから譲っていただいた、糸川博士の習作だったものを使える状態に・・・。 |
オーストリア製のリメイク 2008.5 | オークションで、安く手に入れたやや古い欠陥品。 |
チェコ・1924年 のリメイク 2008.11 | オークションで手に入れた少し古いもの、裏板が一枚板で結構いいもの。 |
マッジーニ・タイプ オールドの修復 (08.11) | 本物なら、すっごい掘り出し物ですが・・・? こちらはリペアーのページです。 |
中を空けてみると、自分のやり方でない方法を見たり、かわった手法など、細かな部分であらたな発見があります。 |
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◇ リメイクの目的と結果 リメイクの基本は、改善であって、決して改悪であってはなりません。 しかも、その楽器がもつオリジナリティを大切にして、破壊であってはならないと思います。 もし、その楽器が、本当に古い、有名な製作者の手によるいい楽器であったら、私は絶対に手を出しません。 技術がそこまでいっていない自分が手を入れてしまい、変に改造するということは、 楽器そのものの骨董的な価値だけではなく、その楽器の真価を半減させてしまうからです。 このページでいう「リメイク」とは、そうしたおそれのない量産品やレッスン生向きの楽器、 名もないメーカーのひどく壊れているもの、また、長期間、使われないで保存状態が悪く、 手入れしなければ使い物にならないもの、あるいは楽器店で修理を断られたもの、 そういったものを対象にした改造であり、取りあげて書いていることを、ぜひ、ご理解下さい。 そして、週刊誌の裏の広告によくある美容器具の、「使用前・使用後」のCMではありませんが、 少なくとも外観については、蝶が、さなぎから羽化して大変身するような、そんな違いを期待したいものです。 それに、完全にフィッティングすることで声量があがり、音色も一段とよくなれば、リメイクは大成功といえるでしょう。 |
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◇ 最初のリメイク
鈴木ヴァイオリンの初代「鈴木政吉・製作」(大正末期か昭和初期の量産品)
稽古用として使おうと思っていたので、 できあがったものの弦にはドミナントを張った。 DTM用のパソコンデスクの横にある書棚に、むき出しでおさめ、練習の度に出して弾いているが、 リメイクしてちょうど1年(H12年12月)、思った以上に鳴っているのが嬉しい。 |
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◇
チェコ製スタイナー型オールド 8月、レッスン日のある日、事務局のE女史から相談を持ちかけられた。 同じ教室の、フルートやケーナの講師をしているK氏が古いヴァイオリンを手に入れ、それを見て欲しいという。 彼は、ヴァイオリンもやりたくて、知人から譲ってもらったものだというのだが、 ともかくレッスン用として機能するかどうか見てもらいたいというのだ。 昔ながらの卵形のケースに入れてあり、楽器はキズだらけで、汚れもはなはだしい。 弓は杉藤のものがついていたが、馬毛は1/3ぐらいしか残っていないし、真っ茶色に変色している。 ただ、弦や駒は全く新しいものがついていたが、弦はスチール弦だし、 その弦を素人がつけたものか、ペグがG線、D線が逆に、入れ替わってつけたあった。 そして、駒は市販品をそのままはめ込んだ、極めて高すぎる状態だった。魂柱は、やや斜めに立っているが健在。 裏板ボタンのところに{ Steiner }の焼き印が押され、ラベルには、次のように書かれていた。 Jacobs Stainer in Absam Prope Oeniponfum 1765 Made in C'zechoslovakia チェコ製と書いてあることからも、 スタイナー型を模してつくったもの、という意味でわたしはとらえた。 確かに、裏板・表板ともふっくらしていて、本で読んだことのあるハイアーチのスタイナー型であった。 アブサムは、スタイナーの生まれた南ドイツのアブサム村の意味であろう。 しかし、年号の前の2語は英語ではなく、チェコ語か?意味不明。 現状を見せてもらって調弦し、試奏しているときに、ちょうど、わたしの習っている先生の Aさんが近づいてきた。 事情を話して、彼にも弾いてもらった。 「どうでしょう?」と聞くと、「これでは、駄目でしょう」とA先生はうんざり顔で答えた。 でも、現状でこの程度に鳴っていれば、手を加えることで、 十分レッスン用として使い物になるとわたしは確信した。 この先生に、初めて、父の遺品である古いドイツ製ヴァイオリンを見てもらったときにも、 その後、自分でフィットし直して 半年、1年したときには、「お父さんの楽器、よく鳴りますね」と、その論評が大きく変わっている。 若さのせいか、芸大・大学院まで出ていて演奏技術はあるかも知れないが、 楽器を見る目(耳)はそれほどあるとは思えない。(先生、失礼!) それは、正面から見てもプロポーションそのものの形を崩している。 右の写真のように裏板の肩にも3センチほどの、三角彫刻刀で彫った様な切り込みもあった。 表板の右上には、3センチほど木地が露出したすり傷も見られた。 特徴的だったのは、指板のE線2、3、4ポジあたりが著しく減り、 完全なくぼみすらできていて、かなり使い込んだ楽器ということが分かる。 そして、右C部の内湾曲部は、弓のフロッグ半月リングで、年中、突き当てたようなキズだらけだった。 多分、新宿の歌舞伎町にある生バンドの楽士か、流しのヴァイオリン弾きのような誰かが、 かつて、毎日、毎晩、同じ曲ばかりを弾きまくったのではなかろうかと、わたしは推測した。 結局、K氏とは、メールで打ち合わせしながら、ローコストでリメイクすることになった。 汚れ落とし これも鈴木政吉同様、アルコールで拭くことで2〜3層のニスを落としながら、すっかり汚れを取ることができた。 指板の削り直し 指板の凹みは、スクレーパーと、 平らな板につけた400番のサンドペーパーできれいに平らにならすことができた。 指板などの、部品の制作・その詳細は、こちら → ニス仕上げとフィッティング ニスは、前回と同様のものを5、6回ずつ塗って仕上げた。K氏の要望もあり、同じローズウッドのアクセサリーで飾った。 ◇ 一枚板・手工品?オールド
同じ製作をこころざすメーラーさんのひとり、広島のM氏から、 『ネット・オークションにいろいろなヴァイオリンが出ているよ』、との連絡をいただいた。 早速、アクセスしてみたら、あるはあるは、数千円の通販用の中国品の返品か不良品などから、 百数十万円のものまで出されていた。 その中で、わたしの気をひいたのが真っ黒いニスのオールド。映画「レッドヴァイオリン」にでてきたような、 上に、下げるための取手のついた古い木製の箱がついていた。 オークションの写真で見る限り、裏板は1枚板。 真っ黒く写っている表面からも、虎斑のような、面白い木目が見えている。 また、周辺に見えるチャンネル彫りからも、ひょっとして手工品ではなかろうかと思った。 考えてみれば、古いものでは手作り以外の、機械加工なんてものはなかっただろうし、 ニスの色味からして、ルーマニアやポーランドなど、東欧の製作ではないかとも推測した。 テレビで見る外国のオケ団員の中にも、かならずこうした黒いヴァイオリンを持っている人のひとりや 二人は目にする。 オークションのスタート価格は12,000円。 500円ステップで、最終日、制限時間ギリギリまで高騰し、 結局、自分が考えていた予算の上限いっぱいの価格で落札することができた。 古いものだけに、汚れやすり傷はあったものの、板の割れなど、致命的なものはなく、 つくりそのものは、わたし自身がつくったものよりよくできていた。 指板は、通常のもの(27センチ)より1.5センチは短くできていて、いかにも、 あまりハイポジションを使わなかった時代の、「オールド」らしいもの。 ただ、ネックのカエデがおどっていて、スクロールのムキが2、3度も左に傾いてたこと。 そうした修復は経験がなかったが、カエデそのものが堅木だけに、削っていても曲がってくるようなことは経験している。 湿らせたり、熱を加えて修整し、固い黒檀の指板を固定すれば直るのではなかろうか。 弓も、1/3ほどの毛が残っていたが、スティックの、木の腰(バネ性)はあり 毛替えさえすれば使い物になりそうで、これは早速、毛を張り替えた。 |
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ニスのこと
折角、いい板を使っているのに、その木目を生かすような塗りではなかったこと。 パフリングもよく見えないほど、周辺部も黒く、厚く塗ってあるので、思い切って、ニスは全部剥がした。 これはそれまでの2台と違い、アルコールで拭くだけでは汚れは落ちても、ニスそのものは落ちにくいものだった。 オイルの溶剤でも短時間では溶けず、結局、ペンキの剥離材で落とした。 今までのように、ニスを落とせば、ある程度、白木地が見えてくるものだが、 木地が出ても、それは木地そのものが黒っぽく着色されているかのようだった。 ひょっとしたら、以前、本で読んだことのある「過マンガン酸カリ」で白木を着色したものか。 あるいは、オールドの木でつくったというブリッジなど、エイジングを重ねたカエデは黒く変色するものもある。 そうした、間接的な紫外線暴露による、何年もほったらかしたようなシーズニングやエイジングを重ねたものか。 すべて、推測する域をでない。 右の写真は、ほぼニス塗りが完成した状態。上の写真と比べても、変わった杢がきれいにでるようになった。 あとは、短かった指板を標準のものと取り替えれて、アクセサリーをつければ完成となる。 結局、この一台は、アンサンブルの本番とか発表会など、 自作のもの以外に気分を変えたいときなどの「よそゆき」用として使っている。 ちなみに、この、独特な「杢」の雰囲気から、アンサンブル仲間・K女史から「虎の目石か猫目石にそっくり!」との発案で、 私はこの楽器のことを「キャッツ・アイ」と呼んで愛用している。 以上のほか、鈴木ヴァイオリンの初代・鈴木政吉No.W4の修復レポートは こちらから→ (Dec.2001追記) 鈴木ヴァイオリン3/4・No.220 1972年の修復は こちら→修復過程をスライドショウにしてあります。(Feb.2003) なお、修理・修復を目的とした「リペアー」のページは こちら から。 Back to Remaking 2 製作はこちら→ Making_Index 修理・修復ページはこちら→ Repair_Index |
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