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鈴木バイオリン・政吉 No.W4 & 特 No.2 Dec. 2001 |
鈴木ヴァイオリン・初代「政吉(1859-1944)作」 機種 No.W4 2001年12月のはじめ、知人からの電話。 その知人の、またその知り合いから頼まれて、古い鈴木を1台修復して欲しいとのこと。 なんでも、それは故人の遺品だったものらしく、永らく放っておかれた状態のものだが、これからは大切に保管したいからだという。 そこで、最低条件で使える状態にして欲しい、という。 ラベルは見覚えのある鈴木バイオリン、しかも初代の政吉・W4。 これと同じものを、アンサンブル仲間のS・Kさんや、教室の後輩・Gさんも愛用している。 政吉翁のものは、リメイクの最初に紹介したように、一度、経験しているので、二つ返事で承諾した。 ◇ まずは結果から |
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[ Repair Report ] 鈴木ヴァイオリン特 No.2 -1966 11.Mar.2002 教室の発表会の日、ピアノ伴奏の、「譜めくり」の応援に呼ばれてきていた アンサンブル仲間のW.Yさんから、「鈴木の古いものを一台、見て欲しい」と頼まれた。 彼女は、わたしの所属する地元アンサンブルに入っている、明るく愉快な人。 近隣の街に住み、自宅で、ピアノの教室をしている方だ。 その楽器は、何でもピアノ教室をしている彼女のお弟子さんのものだという。 翌日、お宅の方に出向く用事もあり、早速、拝見。 三十数年の昔のものらしい、いかにも古くて安そうな卵形のハードケース入り。 でも、中の楽器は保存状態が良かったらしく、程度はいい。 それでも、持ち主は、「これ、もうダメでしょうね」と彼女にいっていたという。 確かに、弓の毛は「お岩さんの乱れ髪」状態。 少なくとも2、30本が切れてバラバラしていた。 |
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W・Y先生へのリポート ◇ メーカー ラベルに記されている 1966年(昭和41年)当時、鈴木バイオリンの、この[ 特 No.2 ]という機種がどれぐらいのグレードであったか、 私には分かりません。 名古屋・鈴木バイオリンの歴史の中では、初代が政吉。 このヴァイオリンは、その長男の梅雄が代表取締であった時代のものということになります。 梅雄の弟・鈴木喜久雄は疎開先の木曽福島で「鈴木バイオリン楽器」を興し、 その弟・鈴木慎一も、やはり疎開先の信州松本で「才能教育・鈴木メソード」を創始しています。 その、木曽鈴木バイオリンが1960年頃に出していたヴァイオリンの価格表が手元にあります。 それには4/4一台が、1,800円から、2,500円、3,200円、中略、13,000円までの7つのグレードが記載。 当時、高卒の初任給が、一流企業の高い方で10,000円弱程度でしたから、 今の価値にすると、5,000円がおよそ10万円程度でしょうか。 さて、本機の、目の細かなフィドラ・バック(水平のヴァイオリン杢のこと)の裏板からすると、 量産品の中でも「上クラスのグレード」のものという感触はもてます。 もともと、この鈴木バイオリンは、世界的に見ても機械的な「量産メーカー」として成功を収めたメーカーだし、 またその当時、経済も高度成長期にあたり、輸出においても世界最大のメーカーになっていたでしょう。 (写真は、修復後のもの)そうした時代に、この楽器は生まれたものです。 |
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◇ 所 見 ◆カビの汚れ 裏・表とも、ニスの表面にロジンの粉、カビが付着。 これは、使用後にロジンや手垢などをよく拭かずにケースの中に放置して置いため、 そこに付着した有機物を餌にカビ(ほとんどが白カビ)が発生したものと推測できます。 細かなところに、2、3カ所のキズがあり、これはニス塗りのレタッチで埋まります。 ◆駒は外れていましたが、そのままでも使えます。しかし、正しいフィッティング(削り)がなされていません。 下の写真は、現物をそのままスキャンしたもの。現状のものは、指板の延長線から見ても上のアーチがやや強く、 移弦には弓の移動量(角度)が大き過ぎ、演奏しにくいということになります。 また、高さも少し高過ぎます。高過ぎるということは、指で押さえる量も多くなり、 正しいポジションで正しい音程にはなりません。また、厚味も厚過ぎ。 こうした、駒の「高過ぎ」や「厚過ぎ」、それは結果として「重い」ということになり、 反応の悪い、こもりぎみの、 ミュートをかけたような音になってしまいます。
そのために、「厚みの調整」や「肉そぎ」といって、不要部分を削り取ることも追加して、私なりに正したものが写真の右。 全体の形、それに線のひとつひとつにも、フィット・マンの美意識があらわれるところ。 これで、繊細な弦楽器の部品にふさわしい形として生まれ変わったでしょ (^^)。 ◆ペグ 永い間使われなかったため、ギシギシしたきしみがあり、 実用にはならないので、実際に使えるような、使いやすいようにしました。 ◆弦は、古くてよくありませんので、ドミナントに替えます。 ◆弓は、毛替えするだけで、ほとんど問題はありません。 ◆ケースにも、ところどころカビが生えていました。 金属の止め金部分に錆びがでています。また、表面に貼りつけてあるレザーのところどころに、 剥がれやほつれが見られます。これらは、体裁の良いように修復しました。 また、あご当てとテールピースの接触部分も削って調整しました。 以上が、お預かりした時点での所見と修復内容で、レポートと同じです。 Back to Remaking 1 製作はこちら→ Making_Index 修理・修復ページはこちら→Repair_Index |
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