broken_viola1 | 大きく割れたヴィオラの修復 1 | HOME |
このドイツ製のヴィオラも、あちらのオークションで入手したもの。
ちょうと゜、駒や魂柱のあたりが大きく割れていたせいか、思いの外、安く落札することができた。
しかし、ほどよい古さと、各部位のつくりは筆者の好み、悪くはない!
現 状 | |
ご覧のように、A線側エフ字孔・上の丸からサドルにかけて一本の割れ。もうひとつは、外側の丸から真下に一本。 そのため、二本の割れのため、その部分が取れている状態。 ただ、そのままでも弾ける状態の楽器は、一般の人たちも入札するので、そうした面では競争が多くなるのは必定。 それにこれくらい壊れている方が、小生の修復技術の腕が鳴る。 ボディ・サイズは393mmほど、その大きさも筆者の好み。 |
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裏板のカエデ材も、まぁまぁというところ。 しかも、周囲のエッジ処理も筆者の好み。チャンネル彫りなど、 いい仕事をしていることが伺えます。 |
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小型ヴィオラの割りに、写真のようにペグボックスはチェロ・タイプ。 なかなか堂々としています。 ただ残念ながら黒檀のペグが一本と、ナットとサドルが無くなっていた。 指板は、ちょっと明るい色の縞黒檀、真っ黒ではなくても、 天然素材としてこれも嫌いなタイプではない。 |
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割れた表板を剥がし、蓋をあける | |
表板の割れの修復が主目的であることから、 これは、まず、表板を剥がした。 ご覧のように、表板は割れたところが何カ所もあり、 あちこちにパッチが貼ってあった。 裏板も、センターのみに7カ所、パッチの補強がされていた。 |
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外枠式でつくられたもので、コーナー・ブロックはあとから、 お情け程度の板が貼られている状態。 外枠式=コーナー・ブロックがない=安物の量産タイプと、 根っから嫌う人もいることは事実。 それはあくまで製作方法の違いであり、所定の素材が使われ、 つくり方であり、一定の鳴りがある楽器であれば、ボクはかまわない。 カレーが食べたい真夏の暑い日に、ひとつの皿に盛られた 「ライス・カレー」でも、ソースが別になった「カレー・ライス」でも、 どちらでも構わないのと一緒、カレーとして食べられたらいいのだ。 |
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ご覧のように、表板内側は30カ所もパッチで補強しているほど、 大小様々な割れに対処して修復されていた。 それは、裏を返せば、前のユーザーは『それほどまでにして、 この楽器に対しての愛着があった』と思うべきもの。 またこのリペアー師の修復は実に丁寧で、細やかな修復痕が伺える。 |
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ラベルは、ストラド型1734?年型というもの。つくりやラベルからすると、 ドイツやチェコなど、家内・量産体制のところでつくられたものだろう。 |
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やれるところから、少しずつ・・・。 | |
裏板は、硼砂などの薬剤処置をしたものか、表板から比べると ずいぶんくすんでいて汚かったので、きれいにし、 削り足りないライニングのテーパーから、大きく削り取った。 |
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不用な部位を少しでも減らしたいことと、リブでさえ共鳴板の一部、 その振動を妨げたくないという配慮からで、ついでに、 少し厚めのリブそのものもスクレーパーで削って厚さを減らした。 |
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いつもの通り、まず、全体の板厚のデータをとり・・・、 | |
そして、赤いボールペンの数値は、修正後の板厚の数値。 | |
とくに、周辺部の厚いところを意図的に修正。 | |
ちょうど、魂柱のところに付いていた魂柱パッチは、 きわめて丁寧に埋め込まれていた。 |
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つまり、右のイラストのように、表板そのものに楕円の彫り込みをし、 それにぴったり合わせるようにして、スプルス材が埋め込まれていた。 木目方向を、ほんの僅かにずらすことにより、振動の伝達効率に 影響でないように、しかも、パッチとして補強の目的を達成できるよう、 という配慮がなされていた。 ということから、今回は、それより二回り大きい面積で付け直す所存。 |
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