Cello Repair1-3
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バラバラなったチェロの修復 V

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治具さえできていれば、あとはそれを使って機械的に貼るだけ・・・です。

◇ リブ・アッセンブリー 

ヴァイオリンのリブ巾はたったの30mm、このチェロのリブは、エンドピン側が122mm、ネック側が116mmと、やや下ぶくれ。
強いていえばただ巾が広いだけのことで、ニカワの貼り付け作業にはそれほど差がありません。
内型・外型、それにコーナー部の当て木をつくったりした手間を考えると、ほんと、あっけないぐらい早く貼り終わりました。
まぁ、気をつけることといえば、その巾が広い分、巾に対して均等に圧力をかけて貼ることでしょうかね。

リブの組立が完成したら、裏板用のライニングの接着です。

これには、すべて剥がれたもののを、接着面の汚れをスクレーパーできれいにこすり落とし、ヴァイオリンやヴィオラ同様の貼り方で貼りました。

いままで、繰り返し書いてきましたが、このような場合、貼るものvs貼られるもの、両方の接着面はきれいになっていなければ最良の接着力が望めません。

だから、手はかかっても、ここはきれいにしなければ絶対にダメです。
(上のリンクでは、↑その重要性をイラストを入れて説明してあります。)
そのアップ写真です。
下のライニング・トップの削りもそうですが、ここで接着について一言。

じつは、筆者は内装業ではプロ、永年、新築やリフォームの現場で、壁紙を貼ったり、クッション・フロアーを貼ったりしているわけです。

貼るもの、貼られるもの、すべてそうですが、接着面をできるだけ平らにして貼ることが肝要で、そのための下地処理をしっかり行います。
そのために、前に塗ってあったニカワくずの凹凸を少しでも削り取ったり、場合によってはほんの少し削ってでも、平らにする必要があるのです。
リブのトップとライニングのトップができるだけ平らに仕上がるように貼ったつもりでも、
乾いてみると、コンマ何ミリかの段差がついていたりしますから、それをカンナで平らに削ります。

上述したように、そのまま貼ってしまうとある程度はニカワの固形物でついたとしても、
接着面積が半分になるか、倍になるかという、接着強度に大きく影響してくるわけです。
◇ 裏板接着の当て木 

ここまでくると、間もなく裏板の接着、ヴァイオリン用のスプール・クランプ(下の写真中央の2つ)に長いボルトを付け替えれば用が足りますが、ただ、大きい分、 スプール・クランプの数がいっぱい要ることになります。

ヴァイオリン用のスプール・クランプは、24、5本を一セットとして、何セット分も手持ちがあるからそれは問題ないのですが、その分だけ、長いボルトを買うか、つくらなければなりません。

それで、ここはコンパネを外形に合わせて切り抜き、上下から圧力がかけられるような「押さえ具」をつくってしまえば、ご覧のように、上下・半分ずつ、ボルトも、二組で9本だけで済みます。


インナー部だけ、仮固定を兼ねスプールクランプを使おうかと思います。

小さなヴァイオリンのときとは違い、一周を一気に貼るというわけにはいきませんから、左右、2工程に分けて貼るつもりです。

そうすれば、締め具も片側分だけで済むことになりますね。

右の写真は、もう実際に裏板を貼っているところの写真です。

裏板も無事に貼り終えましたから、当初からの予定通り、ここで内型を組んであったネジを取り外し、型を外します。

案の定、楽にバラすことができました。 

市販の6mmボルトは、地区内の大型ホームセンターを何軒もハシゴして回りましたが、結局、最大L=150mmのものしか売っていません。

リブの最大幅が122mm、裏板や表板のエッジの厚さはそれぞれおよそ6mm、それに12mmのコンパネ2枚て゜サンドイッチしますから、どうしても150Lのボルトでは届かないのです。

それで準備したのが1000mmの全ネジボルト、これを180mm程度にライト・カッターでカットし、片側をストップ・ナットで固定して使いました。
下の写真は、次の工程・裏板のもう片側を貼りながら、表板用のライニングを接着しているところ。片側とはいっても、道中が長い分、手際よく、要領よく貼る必要があります。

湯煎用の小さいボールにニカワの容器を入れたまま、手元の近くにおき、ほどよい筆を使ってニカワを塗り、冷めないうちに手早く締めつける。

ニカワが乾く間、作業ついでに例のギブスの凹面を利用し、本体をやさしく置いておく作業台もつくりました。

あれだけバラバラだったこのチェロの本体も、ここまでくると、ようやく元の姿に近づいてきた感じ・・・。



製作仲間であり、無二のメーラーであるHさんには、この修復過程をレポートし続けていました。

そのHさん、『片側ずつ貼るということは、細いヘラのようなものでニカワを差すかのですか?』という質問がありました。

そうなんです。片側がニカワで固定されていますから、その付け根の部分はニカワが塗りにくいわけですね。

下の、写真の大きな刷毛は、壁紙や襖の張り替えのときに使う、表具や内装業者専用の、糊を塗りつけるための「糊刷毛」。
 
昔のものは、取っ手の部分が柾目の杉板でできていましたが、化学糊などのボンドを使うようになってからは、ご覧のようなプラスチックの取っ手が主流。

それが、永年、使っていて手入れが悪かったりすると、毛束を差し込んであるプラスチックが大きくふくれあがったり、割れたりもします。

程度問題で、エポキシ樹脂のような特殊な耐水性の接着剤で貼って直したりしたこともありますが、それでも修復不可能という場合もでてきます。普通なら、もうそれは廃棄処分しかありません。
 
『もったいない主義』のケチなボクは、もともとが数千円した刷毛ですから、それでも毛の部分だけでも何かに利用しようと、とって置いてあるのです。毛の質はいいですからね。(ブタ毛?)
 
その毛を使ってつくったのが、「ニカワ専用筆」の各種。
 
竹の柄の、いちばん上のものが、太くて短いもの。

太いということはある程度の含み(ニカワを吸い取る量)があります。
 
毛が短いということは、毛先にある程度の力が加えられますから、普通より、やや固めのニカワを塗るのに適します。
 
そして、二番目のものが、ある程度の太さで長さもあるもの。
 
三番目のものは、細くて長さがあるもの・・・という具合に、使うTPOに合わせて、いろいろつくってあるのです。

『弘法筆を選ばず』といいますが、ボクは筆を選びます。



今回は、もちろん上から3番目、細くて長いものを使いましたよ !(^-^)


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