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木工の楽しさ・おもしろさ No.2 フラッシュ構造
構造・目的に合わせ、大きさ、デザインが自由
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パソコン・テーブルは、むかし、PC-8801時代に一緒に買ったときの遺物。 永い間、事務所で雑物置き台として眠っていたものでした。

2000年 3月、以前から使っていたバリュースターの後、エプソン・エディキューブに入れ替えることになってから、 また、このテーブルのお世話になることになったのです。

しかし、手頃な、上に載せるプリンター台がありません。

それなら好きな大きさ・デザインで作るしかない。でも、テーブルは事務機器、それに見合うよう、 台の制作方法は「フラッシュ構造」にすることにしました。

手当てした材料は、アイボリーのポリ・ベニヤ、3mmのものが2枚、それに、芯材にするラワン板・適当数。

それだけです。


デザインも、前や横から見た感じで圧迫感のないよう、横断面は、上にいくにしたがって巾を少し傾斜をつけ、左右の頬立て(サイド)にしても、 右の壁際を高く、左の部屋側を低く押さえました。



写真では分かりにくいでしょうが、その頬立ての上の角も、
手前の角だけ、50アールほどの丸みをつけ、見た目を柔らかくした。

また、台の高さもディスプレイや本体がぴったりおさまる高さに設定、
そのため、無駄がなくすっきりしています。
  
  *



PCラックでは、それほどの加重がかかりませんから、
芯材は、ラワンやエゾマツなど、なんでもかまいません。

なお、カマチ同志を釘で打つ必要はありません。

表板・裏板同志で、しっかり接着するから不要なのです。
さて、そのフラッシュ構造ですが、それはどういうものか。

これは、ドアーなどの建具、タンスやサイドボード、それに食器棚、書棚などで、デザインがシンプルなものをつくるときの、ひとつの製造方法です。

使用する材料が、「ムク材」ではない場合に多く用いられている工法で、書棚の段板が、薄くても丈夫にできているものは、だいたいこの作りになっています。

ドアーや引き戸でも、中が中空な分、軽くて、丈夫、さらに狂いにくいわけです。

早い話が、鉄の棒でも、ムク材とパイプ状のものを比べた場合、折り曲げるいわゆる「単純梁構造」は、パイプの方が軽い割りに、ずっと丈夫ですよね。

フラッシュでも、芯材に、二枚のベニヤをサンドイッチにしただけのもの。それだけで、思った以上に丈夫にできるのです。

普通の大工さんだと、分厚く、いかついムク材や集成材を削ったり切ってきて、それでたたいてつくります。

人が乗る訳ではないし、そんな分厚いものは必要ではなく、また重々しすぎます。

フラッシュは、つくる方法さえ覚えてしまえば、それほど難しいものではないし、なにしろすっきりと、外からは釘一本、見せなくて済みますかね。

ともかく、ベニヤとラワンのサンドイッチをつくればいいのです。





















釘やスクリュー・ビスで締め付ける所だけは、最初、片面だけにベニヤを貼っておき、 組み立ててから、もう一方の面を貼り付けます。だから、釘が見えないのです。
ベニヤは、あらかじめ所定の大きさより1mmほど大きめに切っておきます。

芯材の外形も、ベニヤ同様、1mmほど大きめにしておきます。それは、2枚のベニヤと芯材と、3枚が重なる訳ですから、 後から3枚いっぺんにカンナで仕上げた方がきれいに揃うからです。

この作品では、プリンターを載せるための棚板部分、それに前に出ている巾45mmの横框(ヨコ・カマチ)など、左右から締め付けられ、 中に入ってしまう部材の巾に関しては、ぴったりしたサイズに切りそろえておいてもかまいません。

芯材は、上下・左右、それに、釘で締め付ける部分や、段板を入れる場所にはには必ず入れます。所詮、中に入って見えませんから、ホゾ穴をほって接合する必要はありません。

ただの「突き付け」でかまいません。

ただし、正確さと、仕上げのきれいさのために、必ず、ぴったり付くように、曲尺を使ったりして、切りそろえます。

その接合部には、ズレが出ないように、図のように波釘やホッチキスで固定します。

矢印のところで釘(または木ネジ)+ボンドで
縫いつけ、固定してから表面のベニヤを貼ります。








ベニヤと芯材の接着には、普通の、あの白い木工用ボンドを用います。

塗る面積が多い場合には、プラ容器のノズルから絞り出してつけるのではなく、ほどよい大きさのブラシや刷毛で塗ります。

圧着方法は、真っ平らな21mmの厚くて丈夫なベニヤを台にして、コンパネ・ベニヤとサンドイッチにして、クランプで締める方法がひとつ。

でも、クランプだと周辺しか締まりませんから、小物向きです。中央部には、重い重しを乗せて圧力をかけるような工夫をすれば、この作品程度のものは作れます。

本格的にするなら、鉄骨や太い角材でしっかりした枠組をつくり、同様の板ではさみ、さらに平均して圧力が加わるよう、 3寸角の角材を補助として十文字に組んでから車のジャッキーで締め付けます。

しかも、書棚ほどの大きさのものだと、2点、3点と、同じ圧力で締める必要があります。

ただし、ジャッキーで圧力をかけたら、鉄骨が曲がった、なんてことのないように、よほどしっかりと枠組みつくる必要があります。
ちなみに、建具屋さんや作りつけ家具屋さんなどの専門家は、専用の大型プレス機を使っています。

プレス機や鉄枠だと、いっぺんに何枚ものフラッシュが圧着可能。

仕上げ面のベニヤの接着には、合成ゴム糊系(G-10など)のものがよく、また、安全です。

この接着剤は、薄くのばして両面に塗布し、10、20分のオープンタイムをおいて(乾かし、手で触ってもネバネバしなくなって)から、貼り付けます。

貼り付けには、ベニヤと芯材との接着面が、良く密着するように、筆者は、適当な当て木をあて、ゴムハンマーでたたいてつけています。

ただし、この接着剤は、一度つけるともう取れませんから、ずれないように、慎重に貼り合わせることがポイントです。

 
今回は、小口だけ、アクセントとしてニスを塗って仕上げました。

なお、両面がポリ仕上げですから、ニスは比較的、ぞんざいな塗り方でかまいません。白い部分にはみ出したり、ついてしまったニスは、 溶剤で簡単に拭くことできてきれいに拭き取れるからです。

それ以外の方法だと、小口に、ポリ・ベニヤと同色のメラミン化粧板(デコラ板)を細くさいて貼り、あとからヤスリで面を取って仕上げる、 という方法もあります。
しかし、市販のメラミン化粧板は、910×1820と、ベニヤ一枚分の大きさでしか手に入りませんから、あとあとのことを考えないと、 小口だけのことで、大きな無駄になってしまいます。

ということもあり、今回の場合、筆者はアクセントをかねて塗装仕上げにしたのです。
毎日使っていても違和感のない
女房のような存在?かな・・・
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