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ウクレレ制作  2002.5 〜

ヴァイオリンをつくるものがどうしてウクレレなんかを?とお思いでしょう。

話せば長くなりますが・・・、
きっかけはひょんなことからはじまりました。

4月のある日、音楽関係の知り合いから一本の電話。

『じつは、隣のM市・生涯学習センターで、6月に[ウクレレ・キット制作と一曲マスター]という講座があるんですが、
その講師役に、ヴァイオリンづくりの経験を活かして、
ぜひ、すみやさんを・・・というお願いなんですよ』、というもの。

実は、わたしには青年期のサラリーマン時代、
独身寮の仲間たちと「ハワイアン・バンド」を結成していた経験があり、
ウクレレどころか、いまだにスチールギターもお蔵入りのまま保存してあります。

依頼した方は、ヴァイオリン制作の技術的ノウハウで、ウクレレ制作を、・・という単純なお考えのようでしたが、
まぁ、こちらとしても、好きなことで社会のお役に立つならと、喜んで承諾したわけです。













関係者との打ち合わせの際、講座で使用するキットを見せてもらったら、学校・教材用品(音楽・工作)としてのもの。

そのため、表板、裏板、側板とも「シナ・ベニヤ合板」を切り抜いただけのもの。
指板はプラスチックの一発・成型品。

ネック、ブロックとも、版画に使うホウノキのような素材で、とくに、ネックには、4カ所に接ぎ合わせのある。

組み立て自体も、接着剤の乾燥時間やニス塗りの乾かす時間をのぞけば、いかにも簡単で、 1〜2日でできそうな中学生向きというようなキット。

価格は、2,500円だということでした。(右の写真)

ただ、ここでひとつの問題が・・・。

カリキュラムの作成についても、生徒の前で指導するにあたっても、講師がヴァイオリンを何台かつくったことがあっても 「ウクレレ制作・未経験」では話になりません。

そこで、経験のためと、指導要領を把握するために、事務局からサンプルを一セット回してもらうことにしました。

さて、いざキットを目の前にして開いてみると、あまりに簡単すぎるもの。

「お手本用」としてつくるのだから、その程度の材料なら在庫の端材がいくらでもあるし、 原木から切り出して、ここはいちばん、イロハからつくろうと決心したわけです。

 

教材用・ウクレレ組み立てキット一式

左から、ぐるっとまわっているのが側板、その真ん中にある四角い木片はブロック、その下がテールピース、ペグ、ナイロン弦ほか。 中央が表板、その下が裏板。
左下は、150番と300番程度のサンドペーパー。
ネックと黒いのが指板。
4本の曲がった木は、側板を固定するためのリブ材。
太めの輪ゴムは、接着に際しての締めるためのもの。
それに、原寸大の図面と手順通りの解説パンフ。

もし教室で、生徒の作業に不都合があった場合・・ということも考慮して、そうした際にも利用できるようにキットと同じ形の内型・ 外型からつくることにしました。

キットの表板から、内型用と外型用としての「1/2テンプレート」をボール紙に写し取り、切り抜いて作成。(白いボール紙)

それをもとに、コンパネに転写、かたち通り、ジクソー゛切り抜いてペーパーで仕上げる。

ネックと表板、側板には、ヴァイオリンをつくった例の「富士山のカエデ」を使用。とくに、裏板と側板には、 独特の斑模様があるものを選んで切り出しました。これは、あえてわたしの手作りである独自性をだしたかったからです。(写真下・右)

裏板は、ヴァイオリン同様、中心線の1/2で切り出すことで、斑模様がほぼ左右シンメトリーになるようにして接ぎ合わせ、ネックはもちろん、一本の素材からの切り出しです。

表板には、マホガニーっぽい(あとでニス仕上げして、そう見えるような)木理の細かい部分のラワン材で代用。

指板とテールピース(緒止め)には、手持ちのローズウッド(紫檀=床柱の切り落とし材)を切って用いることにしました。

キットの側板は、巾がぐるっと一週・一定でしたが、わたしは、ネック側で50mm、エンド側で61mmと、やや下ぶくれにし、 共鳴箱の体積を増やしました。

これは、共鳴させる音量の増大を考えてのことです。

また、キット付属の弦は、見るからに「釣り糸のみちいと 」程度のもの。こちらは、ギター用ナイロン弦のいいものを使うつもり。

それにプラス、有効弦長を、キットが355mmに対して、こちらは370mmと長くのばし、張力をやや強め設定しました。

たった4%の長さのことですが、その効果を期待してのことです。

『講師のお手本につくったものが、生徒のつくったキットより鳴らない』、では話になりませんからね。






















裏板・表板とも、ミシン・ノコで切り抜く際には、テンプレートから写し取った鉛筆の線の外側、つまり、予想仕上がりサイズより、 1mmほど大きめに切り出しておきます。

キットの裏板・表板は合板ですから、すべて真っ平ら。

わたしは裏板のみ、板厚6mmに切り出したその目一杯、ゆるやかなアーチをつけました。

表板も表側はフラット、裏側だけに、許される範囲でアールをとってスライスしました。

ヴァイオリンの16〜7mmの高低差のあるアーチから比べると、たった6mmだけのアーチでが、 これは、内部での音の反響・響きを考慮してのことです。

サイドの素材にも表板同様、写真のような斑模様が入っています。

側板は1.3mm厚、水で湿し、ベンディング・アイロンであらかじめ型通りに曲げておいたものを、 仮付けしてあるブロックに、下の写真のように外枠も用いて、隙間のないように正確に貼り付けます。

裏板のグラデーション(厚味)は、だいたい2.3mm程度で、キャリパーでいちいち測るようなことではなく、 指で触れた感触と、タップ・トーンだけで全体のグラデーションを判定。

3弦の解放音「C」程度に設定。 まぁ、これくらいなら多分、よく響いてくれるでしょう。


側板のアッセンブリーにしても、正確さを期すためと作業のしやすさから、写真・左のように内型と外型も使いました。

気まぐれに、表板にはマホガニー色のニスを薄く塗って、汚れ防止効果と、色具合のテスト。


これで、指板とテールピース以外の、主な部品はほぼ準備できて出そろったことになります。(5/12)










これまでの写真では裏が分からなかったでしょうが、「内型」の裏側には、ライニングを貼るためのギャップ8mmを、 スペース用の横木2本で持ち上げて、上下ブロックを圧着してあります。

手前側のライニングは、すでにニカワで接着済み、向こう側は竹製の洗濯バサミで圧着中。

このライニングは、ヴァイオリン同様、表板・裏板の接着をしっかり確保するためのもの。

つまり、側板の厚さ1.3mmに、直接、表板・裏板を貼っても、強度が弱いわけです。そこで、2mm厚×6mm巾の ライニングを足すことで、接着面積が1.3+2.0mmとなり、「接着補助材」として機能するわけです。

側板同様、ライニングもあらかじめ水に濡らし、ベンディング・アイロンで曲げて、外周の形をつくっておきます。

ライニングを貼ったら、平らな表板からスプールクランプで接着。

スプールクランプは、ヴァイオリン用のものに8mmボルト・長さ100mmのものに取り替えて流用。

接着後、あらかじめ大きめに切り出しておいた表板・周囲の出っ張り分を側板にそろえてペーパーで削り取ります。

いよいよ、ウクレレの箱らしい形になってきました。(5/13)

以下は、次のページに続きます。↓





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