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木工の楽しさ・おもしろさ No.7
木彫・裸婦像『希望』 
2005.4
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もうだいぶ前、仕事(本業)の打ち合わせにいったときのこと。

知り合いの大工さんの新築現場で、きれいな木の残材を見つけました。

「これ、何の木?」と聞いたら、「カエデだよ〜、何かに使うなら持っていっていいよー」という答え。

3.5寸×3寸×長さ30cmほどの、本当の切れ端、床の間の上カマチに使ったものだという。

ヴァイオリンには使えないが、カエデならもらっていかなくては、と、遠慮なくいただいてきたもの。

さて、何に使ったらいいか? 大きさが大きさだけに、たいしたものは作れないが・・・・

さて、この作品は、5月5日から一週間、沼津市・マルサン書店3F催事場で開催される

我が母校、高校・美術部OB展に、「木工」として新作のヴァイオリンとともに出品する予定。

恩師、先輩、それに同期の仲間から、先月、急に連絡があり、未完成だったものを、急遽、仕上げたもの。












今回の木彫のきっかけになったのは、実は大昔、
結婚以前につくった粘土の塑像であり、それが右の写真。

書店で見つけた「塑像をつくる」というマニュアル本を衝動買いし、
ついでに、粘土や石膏を画材店で買い、マニュアル通りに実行したもの。

まず、つくろうとするもののデッサン画を描きます。

細い角材を使って十文字の骨組みをつくり、粘土の食いつきがいいように、
その木の骨には麻縄でグルグルと巻きます。

粘土をくっつけていき、デッサン通りの形に仕上げていき、
粘土が軟らかいうちに、石膏像を造るために雌型をとります。

その型は、いくつかに分割して雌型をつくるため ブリキの切片を、線状にに差し込みます。
型が外れやすいように、おおむね、ブリキの切片を凸部に挿し込み、切り目を入れます。

そして、あとから石膏の雌型を剥がしやすいように、
お湯で溶かした石けんを水を全面に塗りつけます。

そこに、すき間が空かないように、ぶつけるようにして溶かした石膏で覆います。

所定の厚さに石膏をゴテゴテと塗り、生乾きになったら、 今度は、パーツごとに分離するようにブリキの線に沿って、固まった雌型の石膏をはがします。

はがした雌型を再び組立、麻ひもで巻いて、また石膏を加え、しっかり固定します。

その内側に、ふたたび石けん水。 それから、ゆるい目に溶かした石膏を流し込み、
すき間が空かないように、隅々まで行き渡るようにまわして、石膏を追加。

十分、乾いたところで雌型を割って外し、できた石膏像を取り出します。
小生のヴァイオリン同様、この「塑像」も独学独歩、お金をかけずに膨大な時間をかけてつくったものの、塑像ではなく『粗造』であることには間違いありません!

それでも、自画自賛、つくって40年ほど経ちますが、我が事務所のインテリアに。

お金を拾ったら、いつかブロンズ化したいと思っていましたが、
いまだに生まれたままの姿?・・です。


小生が青年期につくった塑像

『夜目、遠目、傘の内』という、「ちょっと目美人」のたとえ通りの
駄作ですから、日頃は、昔、娘が使っていた麦わら帽子を
写真のようにかぶせ、ロマンチックなムードに見えるようにしています。

まぁ、今から思えば40年以上も前から、道具づくりは好きでしたね。

当時、家にあった厚手のベニヤで製作用の回転台をつくったり、
竹を割り、細く削ったり、曲げたりして、マニュアル本に書いてあった
各種のヘラをつくったり・・・それで、粘土をこねくりまわした次第。

結果として、粘土が不足した分、背中の後ろを逆にそいで間に合わせた・・という、前、および斜めからの鑑賞用なんです。

ヴァイオリン同様、やわらかく美しい曲線で、女体美を表現したつもりですが、当時、モデルなんていませんから、首の筋など、 自分を鏡で映してつくりましたから、ちょっと筋肉質であることはやむを得ません。

さて、こちらは胸像、

今度は小さくても全身を彫ってみようと思い立った次第。











粘土の塑像と木彫との大いなる違いは、塑像なら良くても悪くても
失敗することが少ない・・ということです。

塑像だと、やってみて悪ければ粘土を足すなり、多すぎたら削れば
済みますが、木彫ではそれができません。

もし、削りすぎてしまったら、それはもう致命的になってしまいます。

小さくても全身となると、顔から手や足など、微妙な要素が多いのです。

相手は固いカエデ、あまり力を入れすぎると、手などは折ってしいます。

顔だって、鼻を削りすぎたら・・・・、
それは、胸にしても、尻にしても、髪の毛にしても一緒。

というように、完成まで、まったく気が抜けないのです。

足の下の台部分が、いただいた原木のままになっています。

ニスは、ヴァイオリンに塗ったものの残り物。
こちらはバックスタイル。 これも未完成のまま、しばらく事務所に飾っていましたが、知人が来ても、お客さんが見ても、インテリヤ・マンの事務所として、あまり気にとめるようなことはありませんでした。

ほんとの所、事務所内があまりに雑然としていて、
すっかりとけ込んでしまっている、というのが事実でしょう。

でも、友人などに説明するときには、
『製作者としては、夢と希望に充ちた若い女性が、
寝て起きたあと、伸びをする瞬間のポーズ』といいます。

『誰の作?』、と聞かれたら、当然『オレ』、と答えます。
『このモデルは、奥さんの若いときで゜すか?』と聞かれたら、 
『いいえ、全くの木偶の坊(デクノボウ)だよ』、と答えます。

ほんと、このモデルはピノキオのガイコツのようなもの。












嘘も隠しもなく、このモデルは大昔に買った木の人形。

クロッキー・デッサン用の人形で、人体の動きをスケッチするため、
若いときに買ったもの。

白木だったものも、いつしか茶色になっているほど古いものです。

この人形は、関節が、おおむね人間の動きとほぼ同じ程度に、
自由に動かすことができます。

このモデルを上のポーズのようにしてデッサンし、
そのデッサンから立面、側面、平面の、簡単な図面をおこし、
 原木にカーボンで転写、それから少しずつ彫っていきました。

写真のポーズは、軽く走っている姿勢。

これも事務所に置いていますが、ときどき、ポーズを更新しています。

家内は、身内に不幸があったときなど、
「ねぇ、地蔵菩薩か観音様でも彫ったらァ・・」というのですが、
まだまだ仏様に近づくような、そんな気にはなれません。

やはり、ヴァイオリン同様、美しいもの、きれいなものがいいですよね。

『これは、全然、美しくない?・・』、
それはまぁ、個人の主観ということで、どうぞ、ご勘弁を!
 

若き日に感動を受けた、上野・西洋美術館(松方コレクション)でみたオーギュスト・ロダンの彫刻の数々。

「永遠の青春」、「接吻」、「鼻のつぶれた男」、それに、大理石のうつぶせになった女性像などなど、おおいなる影響を受け
いつの日か、自分も少しずつ創作していきたいと思うのですが・・・。

猫や犬、リスなど、かわいらしい瞬間のポーズもいいし、魚類やそのほかの生物も悪くありません。

チェロもつくりたいし、まだまだやりたいことも多いので、なかなか思うようにはいきませが
形のないものから、徐々に形を浮き出させていく、それはとても楽しい作業です。

2005.4.21

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