人類史に疑惑?(9)

 

 前回はちょっと寄り道をした感じとなったが、今回は、前々回の「資料集」を参考に、人類史を覆す発見があったとの噂について更に考えていきたい。先ずは、一連の情報の中から、大体共通するところを取り敢えず纏めてみることにする。

(1)寒冷地帯で遺跡が発見された。
(2)年代測定の結果は恐ろしく古いものだったが、確定はしていない。
(3)遺跡で見付かった人類のDNAを分析したところ、衝撃的なことが分かった。

(1)についてはシベリア説とアラスカ説があり、広範な地域に亘って発見されたとの情報もある。
(3)については
(3a)遺伝子の欠陥とは無関係で、単に現在優勢な単一起源説が崩壊し、多地域進化説が優勢となる。
(3b)遺伝子変異が認められ、環境問題とも関係している?
という2説
に大別されると言えよう。(3a)に関連する情報としては、コーカソイドと明らかに継承性のある塩基配列を持つ古い人類が発見された、というものがある。

 よく考えてみると、これらの中には相互に矛盾する情報があることに気づく。仮に、寒冷地帯で遺跡が発見され、人類の遺体または遺物を測定した結果、恐ろしく古い年代が出てしまったのなら、塩基配列の特定ができるのか、疑問である。故に、(2)と(3a)の両立は難しいように思う。また同様に、(2)と(3b)の両立も難しいのではなかろうか(素人なので、間違っている可能性も充分あるのだが)。
 そうすると、可能性がより高そうなのは、(1)(2)の組み合わせか、(1)(3)の組み合わせということになる。複数の発見が混同されているのか、あるいは、デマまたは勘違いがあるのかは分からないが、それはともかく、複数の情報の中から、より可能性の高い筋書きを推測していきたい。

 仮に、前々回の「資料集」で噂されているような数々の重大発見があったとして、恐らく最も可能性が高いのは、(3a)または(3b)なのではなかろうか。寒冷地帯、特に「緯度上では信じがたい」で遺跡が発見されたとしたら、その時点で話題になる可能性が高い。恐らく、発見された遺跡または人類の遺体自体は、それほど珍しいものでもなく、DNAを分析したところ、大変なことが分かった、というのが最も可能性が高いのではなかろうか。そうすると、(2)はかなり怪しい噂ということになろう。
 では、(3a)と(3b)ではどちらの可能性が高いのかというと、これは(3b)の方だと思う。例えば、

 

80 名前:  投稿日:01/10/06 03:44 ID:btJL8Feo
一応、所長の許可をもらって現地スタッフに確認したんだけど、
政府としての発表はないらしいよ。
実態は分からないけど、歴史は変更も修正もされないとの事。

ただ、急速に環境問題に取り掛かるらしい。
これについては、発表というより宣言のような形で行う可能性はあるみたいよ。
発見との関連性は不明だが、遺伝子が変異した理由が判明したのではないかと思われる。

驚異に感じていたのは、その変異した遺伝子が単一の物からではなく、
複数確認された為に繁殖していた可能性を懸念したから。

でもこれも現在の状況を見れば否定的意見が主流で、結局は一つの仮説として宇宙線による突然変異と考えたみたい。
ただし、なんでそれが環境問題につながるのかは分からない。
全く関係のない事かもしれないし・・・。

 

というレスがあったことも傍証の一つなのだが、何よりも、今のところ、DNAを取り出して分析できた最古の人類は、後述する65000年前の事例を遡ることはないからである。現生人類であるホモ=サピエンスの出現は十数年前に遡るとされているので、多地域並行進化説をDNA分析で証明するのは、現在の技術では困難ということになる。
 もっとも、多地域進化説の大御所であるアラン=ソーン氏が、昨年になってオーストラリアで発見された65000年前の人骨から取り出したDNAの塩基配列(前述した事例)は、現生人類のそれと著しく異なっていて、多地域進化説の決定的証拠である、と発表されたのだが、これも既に疑問が呈されているようであるし、何よりも、現生人類との遺伝的継承性がなければ、単一起源説を揺るがすものとは到底いえない。
 結局のところ、数十万年前の世界各地の人骨からDNAの塩基配列を特定でき、しかもそれが、現在の世界各地の地域集団と明らかに継承性を持つというようなことが証明されないかぎり、分子遺伝学の分野から多地域進化説を証明することは難しいだろうし、そのような可能性は現時点では極めて低いと言わざるをえない。故に、最も可能性の高そうな筋書きを推測すると、以下のようになるのではなかろうか。

 ある場所で、人類の遺体が複数?確認された。それらは、遺伝子を取り出して分析できるだけ保存状態がよかった(つまり、あまり古いものではない)。複数?の遺体には奇形が認められ、遺伝子にも変異が認められた。遺体は複数である可能性があるため、繁殖により奇形または変異が遺伝した可能性のみではなく、場合によっては既存の遺伝学の理論を見直す必要性さえ出てきた。だが結局のところ、これは何らかの原因による突然変異という結論に落ち着きつつありで、既存の遺伝学の理論を見直す必要性は低くなった。また、人類史や世界史のみならず、複数の学問の通説を大幅に見直す、というような必要も特にはなくなった。故に、この情報が誇張されてネットで流れたこともあったが、大々的に発表する必要がなくなったので、現在では沈静化して、最近では目新しい情報が流れることもなくなった。

 うーむ、これではあまり面白くないなあ・・・。

 

 

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