というわけで今回から特別企画でお送りする「バカ100連発」ですが。なんでわざわざ「名作劇場」なんて銘打ってるのかはよく判りません。まァとにかくバカがキラリと光る名作をオレことホークが勝手に紹介してまいります。という企画だよ!そんなことはタイトルを見れば3歳のヤリ族の子供でも判ります。 さてそんな名作選の1発目はマンガです。 『どらン猫小鉄』。『じゃりン娘チエ』のスピンオフ・シリーズであります。ということもまァ、タイトルを見れば判りそうなもんですが。どうも何かこういう、見れば判るようなことをダラダラ書くのは嫌いですよ。 何だかんだ『じゃりン娘チエ』というマンガも単なる下町人情喜劇的な受け取り方をされており、オレ全巻持ってるんですよ、なんて話をするとゲーッなんて反応が返ってくることもままあるんだが、実はその認識はビッグな間違いなのである。 アル中。離婚。火事。バクチ。暴力。失業。やくざ。 "gambler. junkie. killer. thief. cop."といえばハーベイ・カイテルが主演したバカ映画の傑作『バッド・ルーテナント』のコピーだが、そうした人生の暗黒面。それらどう考えてもネガティブな出来事が『じゃりン娘チエ』ではごくごく当たり前のこととして描写される。まァそれでベタベタやられたらそれこそ絶対読みたくねえマンガの筆頭になるわけだが。『人間交差点』じゃねえか、それじゃ。そりゃオレだってわざわざそんな辛気臭いマンガ読みませんよ。または別にオレも心暖まりたくてマンガや小説を読むわけじゃない。そんなわけで回り道はしましたが、とにかく『じゃりン娘チエ』というマンガは読んだことのない人には想像もつかないほどクールかつドライな作品なのである。離婚とか夜逃げとかアル中とか、とにかくそんなこともまま起こるだろう人生、という姿勢。そうした人生を必要以上に嘆くでもなく、逆に「だからこそ明るく生きる」と何ら根拠のない、気色悪い開き直りをするでもなく。だから何というか実に大人の。そう大人の態度。要するにハードボイルドですか?そうハードボイルドだな。考えながら文章書くなよ!まァそういう、実に現実的なア、アティ、アティチュード(舌かんだ)があるから『じゃりン娘チエ』というマンガは非常に偉いのだ。 そんな大人の態度。それが最も端的に、かつ信じられないほど狂った形で現れているのがこのハードボイルドの傑作『どらン猫小鉄』なのであります。
以上カバーの煽りをコピー&ペーストしましたが、これは早い話が『用心棒』であり、ということは『荒野の用心棒』でもあり、ということは『ラストマン・スタンディング』でもあるんだが、まァもとを正せばハメットの『血の収穫』ですな。といった下敷きがあるというのはまァ誰にでも判ることですが。問題は上記の作品をモチーフにしながらこのマンガがどれよりもかっこよすぎる、ということであります。作者はるき悦巳が「『じゃりン娘チエ』では恥ずかしくて描けなかった」という男の世界。そんな照れが実はすごく重要だとオレは思うんですが。そういう美学がないからベタベタベタベタした寒い作品が世に溢れかえるんです(まァ敢えて名前は挙げませんが、いくらでもありますな)。ただ、その美学でやりたいことを抑えてきた作家が敢えて直球勝負を仕掛けてきたらどうなるのか。
…冒頭からいきなりこれですよ。まだ高校1年生だったオレはここでもう10カウント取られ、床屋の順番待ちで出会ったこのマンガを20分で読破、感動のあまり黙って持って帰ったのだった。さて猫の小鉄がチエちゃんの家に居着く以前を描いたこの作品。「男気」に「男泣き」、「漢と書いて男」、とかく「男」という言葉が大安売りされがちな昨今、じゃあ本当の男って何なのよ!と聞かれたら。その答はすべてこの一作の中にあるんですよドンドンドンドン(おなじみ、机を叩く音よ)。というわけでオレことホークが久しぶりにお送りする「バカ100連発」、とにかく見てくれ!そしてビリビリ来てくれ!
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