Sample is Best.
Sample is Best.

ある日(笑)。放課後になって葛飾は科学部の部室に向かおうとした。
部室の入り口付近で1人の男が葛飾を呼びとめる。
きらめき高校の(特に女の子の)情報に詳しい早乙女好雄である。

葛飾「おう。早乙女か。」
好雄「お前に用のある娘がお呼びだよ。」
葛飾「誰?」
好雄「きらめき高校のスーパーアイドル藤崎詩織ちゃんだよ。」
葛飾「?」
首をかしげる葛飾に早乙女がすかさずツッコむ。
好雄「”?”じゃねえよ。スーパーアイドル藤崎詩織ちゃんを知らないのかよ。」
葛飾「分かる訳ないだろう、そんなこと。知るよしもなければ、必要も無いと思う。」
好雄「かぁ。お前はなんてもったいないことを言うんだあぁ。」
葛飾「それよりも、その藤崎さんとやらが俺に用があるんじゃなかったの?」
葛飾のこの言葉に呼応するように好雄の後ろにいた女の子が口を開く。
藤崎「私、藤崎詩織といいます。」
葛飾「葛飾達夫です。」
藤崎「さっそくですが、これなんですけど。」
好雄「んぁ?なんだこりゃ?」
葛飾「ああ、これか。入試に出ていた数学の問題だ。」
この数学の問題はこういう問題であった。

ドラゑもん・のび太・スネ夫・ジャイアンの4人でじゃんけんをする。
このときに4人があいこになる確率を求めなさい。
ただし、ドラゑもんは”グー”しか出せないものとする。
また、ドラゑもん以外の3人はどんくさくて、
ドラゑもんがグーしか出せないことに気がつかないものとする。

好雄「そういえば、あったっけ。」
藤崎「葛飾さんがこれを正解したという情報を聞いたから、質問をしたかったの。」
葛飾があきれ顔でこたえる。
葛飾「どこでそんな情報を耳にしたんだか。まぁ、いいか。」
藤崎「どうやっても、答えが”27分の9”にしかならないの。」
好雄「先生の確認ミスかなんかじゃないのか?」
藤崎「そう思って、先生にたずねたの。そうしたら、
   答えは、”27分の9”でも”3分の1”でもないというの。」
葛飾「・・・・。」
葛飾は、「なんだそんなことか」と思いつつ、無言になった。
好雄「おい、葛飾。お前はどう思うんだ?」
葛飾「藤崎さんといったね。
   ”27分の9”ということは、全部のグーチョキパーの出し方が27通りで、
   そのうちあいこになるのが9通りという判断をしたのでしょう?」
藤崎「うん。そうなの。」
好雄「葛飾、お前よくわかったな。でも、なんで27なんだ?」
葛飾「ドラゑもんが1通り。あとの3人が3通り。3×3×3×1=27ということ。」
好雄「ほぉ。」
葛飾「でも、あいこになるのは9通りじゃないよ。」
藤崎「え?」
葛飾「まぁ、そういう間違いをした人は多いだろうけど。」
9通りではないという葛飾の言葉を聞きショックを隠せない様子の藤崎。
そんな藤崎の様子など気にも留めない葛飾に藤崎はたずねる。

藤崎「じゃ、じゃぁ何通りだというの?」
わからないからといって安易に答えを聞く藤崎の態度に多少懸念を持つも、
ただ単に、”藤崎が点数の高い成績を取れればそれで良いのだろう”
と思った。葛飾にしてはめずらしく、低く沈んだ声でこたえを言った。
葛飾「正解は、27分の13。」
藤崎「あいこが・・13通り・・なの?」
葛飾が無言でうなずく。
信じられないといった表情の藤崎に葛飾がくぎをさす。
葛飾「あとは自分で考えましょう。」
藤崎「うん。わかったわ。考えてみる。」
そう言って藤崎は去っていった。
早乙女が葛飾に小声で話しかける。

好雄「なんだよ。もったいないなぁ。」
葛飾「なにが?」
好雄「もっと丁寧に対応してあげれば、もっと喜ばれたのによぉ。」
葛飾「別にそんな必要もないだろう。」
好雄「まぁ、いいけどよ。俺も帰るぜ!じゃあな。」
早乙女の言葉はどこか葛飾にあきれているような感じがあった。

そんなこんなで葛飾がようやく、部室についた。
扉を開けるとそこには椅子に脚をくんですわっている紐緒さんがいるではないか。



紐緒「聞こえていたわよ。災難だったわね、おつかれさま。」
葛飾「あれを9通りってこたえるのは発想能力がないことのあらわれだと思う。」
結奈の表情がこころなしかやわらかくなる。
紐緒「なかなかいいこというじゃない。でも、こたえをいってよかったの?」
またも毒舌委員会副部長(仮)の葛飾達夫の毒舌が冴える。
葛飾「あの調子じゃぁ、なんで13になるのかはわからないでしょう。」
紐緒「まぁ、計算がいくつも必要だからめんどうよね。」
葛飾「めんどうってわかってたから、僕は全部数えましたよ。
   まぁ、全パターンが27しかないってわかってるからこそ使える手段だけどね。」
紐緒「そう。ところで、それよりもつかれているのでしょ?」
葛飾「まあね。あんなのがあったあとだから。」
結奈が笑顔で怪しげな液体の入ったビンをさしだす(笑)。
紐緒「これを飲みなさぃ。達夫君。」
なんと葛飾は無言でそれを受け取り、一気に飲みほしてしまったのだ。
紐緒「ふふふ。本日の実験。大成功ね。」
葛飾「え?・・え!?じゃぁおいらが実験台・・?いや、実験体・・かな?」
紐緒「まぁ、そんなところよ。」
葛飾「でも、成功してよかったね。」
紐緒「これからも頼むわよ。私のモルモットちゃん。」

葛飾「・・・・・(*^^*)。」
言葉こそなかったが、結奈に頭を抱えられて上機嫌の葛飾であった。
人体実験をするにも、相手がバカだと楽ということを結奈のみならず達夫も身を持って感じたのだった。

ドラゑもんの問題についての補足があるけど見てみる?
そうね、かえりましょ。
それじゃ、そろそろかえるわよ。
さぁ、かえるわよ。