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第11章 アルプを走るSL

◎ひとり

 7月21日、とうとう最後の行動日になってしまった。もう今日は山には登らず、自由行動の日である。皆はグリンデルヴァルト周辺を散歩すると言っていたが、自分はちょっと一人になりたかったので、一人でブリエンツ(Brienz)へ行くことにした。

 グリンデルヴァルトから登山鉄道を降り、インターラーケンでスイス国鉄のチューリヒ行きに乗り換え、ブリエンツに向かう。この路線は車窓のブリエンツ湖が美しい。

◎ミニSL

ブリエンツロートホルン鉄道のSL

ブリエンツ湖を背景にブリエンツロートホルン鉄道のSL→

 ブリエンツはブリエンツ湖のほとりの小さな街であるが、ここからその裏のロートホルン山頂までミニSLの登山列車が走っている。実を言うとこれに乗りたかったのだ。

 急なアルプを登る登山列車なので、汽車が斜めに台車に着いている。そのせいで鉄道ファンには結構有名である。自分も小さい頃、御花畑の中を走るこのSLの写真を見て、いっぺん乗りたいなぁとずっと思っていたのだった。

 お目当てのSLはブリエンツの駅前から出発である。ブリエンツに着いたときは、既にSLが止まっていて、煙を上げていた。急いで切符を買って目の前のSLに飛び乗った。

 列車は、SLと客車のわずか2両編成で、汽車も客車もミニサイズ、黒部峡谷鉄道のトロッコみたいなものを思ってもらえばいい。これがガシャガシャと音を立てながら登っていくのは、SLならではの味わいだ。

 ブリエンツ湖を右に左に見て、樹林限界を越えたところが、プランアルプと言う駅。そこで給水と列車のすれ違いのため、しばらく停車。

 そしてそこからが、この鉄道のハイライトだ。雄大なアルプの中を、SLはドンドン煙を上げながら登っていく。後ろにブリエンツ湖を見ながら登っていくと、やがて彼方にユングフラウ三山が見えてきた。スイスならではの風景だ。汽笛の音が、谷中にこだまして勇ましい。

◎アルプのハイキング

 出発して1時間後、ロートホルン山頂駅に到着した。この山頂からの展望も申し分ない。北側はお花畑を持つなだらかな山々、そして南側はブリエンツ湖の向こうにベルナーオーバーラントのアルプスの山々。昨日登ったユングフラウもしっかり見える。

 「あの山を登ったんだなぁ」
 感慨もひとしおである。旅はまもなく終わり。

 しばらく展望を楽しんで、下山にかかる。下りはプランアルプ駅までアルプ地帯をハイキングだ。

ユングフラウ三山

←ユングフラウ三山

 前方にアルプスを見ながらのハイキングは最高。あたりは一面のお花畑。牛の群れに囲まれたりもする。時々登ってくるSLがあたりの風景にアクセントをつける。こういう場所をハイキングしてると、もうこれ以上の贅沢などない気がしてくる。この素晴らしい瞬間が、永遠に続いてくれればいいのにとさえ思った。

 ゆっくりのんびり行きたいところだったが、後の計画があるので、少しかけ足で降りた。やっぱり日本人である。一つでも多くを見たいという気持ちが先行する。

 1時間半ほど歩いて、プランアルプ駅に着いた。そこで上から降りてきた列車に乗り込み、ブリエンツに降りた。

 1両しかない客車の中では、ドイツ人団体が既にアルコールで出来上がっていて、次から次へと歌いだす。しまいには自分まで、つきあわせられた。オレオレとか言いながら皆と一緒に歌っていたら、またたくまに、ブリエンツの駅に着いた。

◎バレンベルク民家博物館

バレンベルク民家博物館

バレンベルク民家博物館→

 これからバレンベルク民家博物館へ行く予定だが、バスの時間があったので、スーパーで買いだしをして、湖のほとりでしばし、ぼけ〜とする。こんな時間を持つのも久しぶりかな。今回の旅はとにかく忙しかったから。

バレンベルクにて

 バレンベルク博物館は、スイスの民家ばかり集めた野外博物館で田舎の民家の写真を撮るのが好きな自分としては、ぜひ一度行ってみたかった。かなり広い敷地にスイスの民家が、あちこちに建ててあって、じっくり見ればかなり面白そうであるが、時間がかかる。

 しかしあまり時間がなく、やっぱりかけ足の見学となったのであった。でも面白かった。写真も結構撮れた。

 博物館から、グリンデルヴァルトへ戻る。途中で土産を買って、宿へ戻った。

アイガー残照

アイガー残照


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