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第5章 ブライトホルン

ブライトホルン

トロックナーシュテーク駅よりブライトホルン

◎さらに腹痛の犠牲者が。

 7月16日、今朝もモルゲンロートが美しかった。が、今日はベッドから見ただけで、また寝る。結局起きたのは、7時過ぎ。8時前にホテルを出た。

 いよいよ今日から登山開始だ。今日はまずマッターホルンへの予行練習と高度順化をかねてブライトホルン(Breithorn)に登る。

 ブライトホルンは標高4164m。登山口のロープウェー終点、クラインマッターホルン駅は標高3884mだから、標高差300m弱の軽い登山だが、高度順化と足ならしには最適である。

 ツェルマットの奥の、ヴィンケルマッテン(Winkelmattenn)と言うところから、ゴンドラに乗り、途中ロープウェーに乗り換えて、トロックナーシュテーク(Trocknersteg)に着く。

 ここで昨日までなんともなかったYさんが、調子が悪いと言うので、しばらく高度順化を兼ねて小休止。Yさんが体調を崩したことで、これでOさんを除いた全員が吐いたり体調を崩したりしたことになる。やはり地球の裏側から急いでやって来て、すぐに山に登るのは少し無理があるようだ。

 しかしOさんは日頃から環境の悪いところで仕事してるだけあって丈夫だ。
  「わしは少々のもん食ったって、腹なんかこわさんよ。
   日頃から貧しい食事をしてるからな」
 と豪語する。しかし奥さんはしっかり腹をこわしてるんですけど。

 自分は今日は昨日よりは、体調は良くなっているが、まだ腹の調子は悪い。

 トロックナーシュテークでスケッチしたり、マッターホルンを眺めたりして、Yさんの回復を待って、クラインマッターホルンに上がった。

◎登山開始

 クラインマッターホルンで、いよいよ登山の準備。ロープウェーで、一気に上がってきたが、ここはもう標高3884m。富士山より高いのである。準備をするだけでも息が切れる。

 駅のトイレには「走るな」と書いてあった。トイレに行こうとして、かけ込んだ観光客が、息切れしてよく倒れるのだそうだ。

 歩き始めたのは11時ちょうど。

カストルとポルックス

ブライトホルン南方のプラトーからカストルとポルックス

ブライトホルン

←プラトーよりブライトホルン山頂

 クラインマッターホルンからは、大きく円弧を書くようにうかいして、大雪原の上を歩いていく。どこまでも広い大雪原と、後ろにそびえるマッターホルン、その向こうにはモンブランさえも見える。そして眼前には、今日の目標ブライトホルンだ。

 ブライトホルンは、ツェルマットから見ると、大きな雪壁を見せて登るのが難しそうな印象を受けるのだが、裏側(イタリア側)は平らな大雪原のはてに、雪の大斜面を見せていて、登るのはそんなに難しくない。

 この大雪原から見たブライトホルンは、井戸尾根から見た巻機山に似ている。我々はブライトホルンを「スイスマキハタ」と呼んだ。ま、スイスまで来て日本の山を思いだす必要もないのだが。

マッターホルン東壁

←ブライトホルンよりマッターホルン東壁

 登山ルートは、最初はずっと平らだったので特に苦しくはなかったが、巻機山に似た大斜面を登る頃から息が切れてきた。さすがに4000mは空気が薄い。しかし、心配していた高度障害は特に出ず、息は切れるが、ピッチだけは快調だ。

 途中、小休止を取ったところで、アイゼンをつけた。


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