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第8章 下山

マッターホルン山頂よりモンテローザ

マッターホルン山頂よりモンテローザ

◎マッターホルン頂上より下る

オーバーガーベルホルン

←マッターホルン山頂よりオーバーガーベルホルン

 風が強く寒かったこともあって、早々と頂上から退散。先ほどどうやって降りるんだと思った岩場も、ガイドの見事な確保で、懸垂下降して難なくこなす。所々、ガイド用に鉄棒が打ち込まれていて、それにザイルをクルクルと巻き付けて確保するのだが、実に素早い。懸垂下降するときも、あっという間で、どんどん降りて行ける。一般のパーティだったら、確保やら何やらでかなり時間を食うところだ。

 しかしやはり下りは神経を使うせいか登り以上に疲れた。Kさん、Hさんのパーティには、下りはじめてすぐに会い、Yさんとそのガイドにはフィックスロープの所で会った。Yさんも片腕で、かなり疲れていたようだがペースはかなり速い。O夫妻とは、クランポンを外すところで、会った。

 ソルヴェイヒュッテってこんなに遠かったっけなぁと思いながら下って、ようやくヒュッテに到着。そこで少し長めの休憩を取った。

◎猿回し

 ソルヴェイからは、最初少し険しい岩場があるが、その後はどんどん下るだけだ。ウィリッシュに、「Right!」「Left!」「Straight down!」とか言われながら下る。猿回しの猿とは良く言ったもんだ。

 しかし、おかげでルートファインディングの心配も無し、確保の心配も無し、ただ自分の体力のみでマッターホルンに登れる。それでも自分の足でマッターホルンに登ったことには違いない。

 途中、5人組の日本人パーティに会った。彼等はルートがわからず、適当に登っていたら4級クラスの岩場が次々に出てきて、結局ソルヴェイヒュッテにすらたどり着けなかったそうだ。ヘルンリヒュッテからソルヴェイヒュッテまでの道は、どこでも通れるようでどこでも通れない。日本の山のように、赤いペンキで道をつけてるわけではないので、ルートファインディングが難しい。

◎ヘルンリヒュッテへ戻る

 朝と違って、うって変わって明るい岩場をどんどん下り、ようやくヘルンリヒュッテへ。最後の岩場を降りるとき、ウィリッシュが言う。

 「ちょっと待て、これが最後の岩場だからな、心して降りろよ」
 そして、その岩場を降りると、
 「Congraturation!」
 と言って、肩をたたいてくれた。そう、とうとうマッターホルンを登ったんだ。あらためて実感がわいてきた。

 ヘルンリヒュッテに戻ったのは、11時42分。往復7時間あまり、ウィリッシュは「昼前に戻れるのはめったにないんだ」と言ってくれた。

 ヘルンリヒュッテまで降りてきて、腕時計を見たら、そのガラスが割れていた。いつの間に割れたのだろう。全然気付かなかった。

◎ヘルンリヒュッテの前で

 小屋の前で、他のメンバーが降りてくるのを待つ。僕のすぐ後に、Mさん、1時間ほど遅れて、Yさんとそのガイド、そしてK・Hさんのパーティ。

 あと、O夫妻が降りてくるのを待っていると、先程会った日本人のパーティが降りてきた。結局頂上は断念したようだ。

 そのパーティの中の、商社に勤めると言うおばさんが、我々の会社の名前を見て、
  「あぁ、S社の方ですかぁ、おたくにはいつも迷惑かけられてるんですよねぇ。」
 何も山に来てまで仕事の話しなくてもと思うが、その人の言うことが、いちいち身に覚えあるので、素直に聞き流していた。

 1昨日ブライトホルンで会った夫婦も戻ってきていた。やはり頂上は断念したとのこと。
 「うちのおとうちゃん、やっぱり高山病にかかってしまいましたわぁ
  また今度来ますわぁ」
 相変わらずのん気な夫婦だ。

◎さらばマッターホルン

ヘルンリヒュッテよりマッターホルン

ヘルンリヒュッテよりマッターホルン→

 O夫妻はかなり遅れているようだ。結局頂上まではいけなかったようだが、「夫婦でどこまで行けるか試してみたいんや。」と言うことだったから登れなくてもいいのだろう。やがて、O夫妻がヘルンリ尾根を降りてくるのが双眼鏡で見えたが、かなり遅くなりそうで、そのままでは2人がヘルンリ小屋まで降りてきても、ツェルマットまで降りる時間はなさそうだった。そのため、僕とMさん、Yさんのガイド組み3人だけ先にツェルマットへ降りることにした。

 ガイドのウィリッシュ・ガブリ氏に別れを告げ、ヘルンリヒュッテを離れた。本当になごりおしいが、もう2度と来ることはないだろう。7年前の思い出と重なって、なごりおしかった。

 ヘルンリヒュッテから、シュヴァルツゼーまで何度も何度もマッターホルンを振り返りながら、下っていく。3人とも、ほとんど無言だ。あの口数の多いMさんでさえも無言だ。

 ダラダラと登山道を下っていって、ツェルマットへ降りる最終のロープウェーに乗った。

◎Congraturation!

 ツェルマットの街では、昨日ヘルンリへの登りで話をしたアメリカ人に再び会った。
 「マッターホルン登ったのか?」
 「そうだ」
 「Congraturation!」
 「Thank you!」
 回りにいた人まで、口々に祝ってくれた。

 ホテル・ビナーでは、宿の人達が、皆で「Congraturation!」と祝ってくれた。少し誇らしい気持ちがした。

【コースタイム】

 ヘルンリヒュッテ(0424) −−− ソルヴェイヒュッテ(0620,0625) −−
 −− マッターホルン頂上(0750,0800) −−− ソルヴェイヒュッテ(0947,1000) −−
 −− ヘルンリヒュッテ(1142,1545) −− シュヴァルツゼー(1650,1720) −−
 −− ツェルマット(1750)


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