希望の力

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第四章 自分と自分

第3話 モーレ目覚める(1)

「豊錐、一緒に帰ろう」
「べつにいいけど、掃除があるから遅くなるよ」
「じゃあ待ってる」
「わかった、待ってて」
そして15分後
「おまたせ」
「遅いぞ」
「ごめんごめん」
「じゃあ帰るか」
「そうだね」
すでに掃除がおわって綺麗になっている下駄箱のある更衣室。豊錐のクラスの掃除が遅かった事もあるが人がいなかった。普通ならばこの時間であれば誰かいてもおかしくないのだが・・・
「少なくない?」
豊錐の質問のほとんどは主語がないので何が少ないと言ってるのかわからない。
いつもならば予測できるが今回は気になる点がないので中井は豊錐に聞いた。
「なにが?」
「人が」
「そうか?」
「絶対そうだって」
「別にそうは思わないけど」
「ならいいけど」
中井達は靴を履き替え階段を下った。
「やっぱり少ないって」
「豊錐、なぜ気になる?」
「色々とあって」
「色々って何だよ」
「色々と」
「さあ隠していてもいいことはないぞ、吐け」
まさか特殊な力をもっている奴(ゲノン)がくるときに人がいなくなるとは言えないので豊錐は中井をからかった。
「見ている人が少ないと悪口言ったときに中井さんに殺されるから」
豊錐はそう言うと中井から逃げた。
「おい豊錐、逃げるな」
「だって逃げないと殺されるから」
「豊錐許さん」
豊錐は階段を二段飛ばして下りた。中井も急いで追っかける。
「中井さん、冗談だって。怒らないでよ」
「冗談でも許さん」
最後の五段を飛んだ豊錐に息を切らしながらいった。
「じゃあジョーク」
最後の一段まで一段一段駆けていった言った中井に向きを変え、笑いながら言った。
「冗談もジョークも変わらないだろうが」
中井は出口のドアを開けようとしている豊錐にいった。しかしドアが開ける前に中井に追いつかれてしまった。
「さあ捕まえたぞ」
中井は豊錐の首をしめながらいった。
「悪かった、悪かった」
「今度また同じようなことを言ったら許さないからな」
「解かった。言わないから腕はなして」
豊錐がそういうと中井はやれやれと言わんばかりの顔で腕を外した。
「しょうがないなー」
豊錐やれやれといわんばかりにそう言い、しゃがむ振りをしてかぎを開けた。
「しょうがないだと」
「やっばー」
そういうと豊錐は慌てて扉を押し開け走った。
「豊錐まてー」
「追われてる時に待て、といわれて待つ人間は少ないって」
「屁理屈言うな」
「単に一般論を言ってるだけじゃん」
豊錐は階段を飛びおりた。左右を確認し駅の方を見ながら
「左に人いないな。よし逃げよう」
「豊錐、何もしないから待て」
「やだ、絶対何かたくらんでそうだもん」
中井は階段を駆け降り始めていた。
「やば、追いつかれる」
中井が階段を駆け降り始めたと同時に御門駅の入り口の方に走っていた。
「まるであの時みたいに人がいない」
豊錐は子声で口にした。
「豊錐、なに言った」
「まさか河本君がいるのでは・・・」
御門駅出入口より見覚えがある人が・・・。
「やっぱり・・・」
豊錐はこういう予感は当たってほしくないと思った。
「豊錐、待っていたぞ」
ゲノン(河本)が豊錐の方に歩きながら言った。豊錐は関わりたくないのでごまかすために
「河本君、わるいけど今日は用事があるからまた今度ということで」
と言いながら左手を振った。
「見逃してやろう、とでも言うと思ったか?」
「あれれぇー。河本君、この前と言葉変わってるよー。おかしいなー」
「あっ・・・」
ゲノンはかなり動揺していた。しかしどうして動揺しているのか豊錐には分からなかった。
「これぐらいで動揺してるようなら勝てないね」
やれやれと言わんばかりに手のひらを額にのせた。

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