希望の力

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第四章 自分と自分

第4話 モーレ目覚める(2)

「豊錐、知り合い?」
中井がきいてきた。
「中井さん。いつのまに居たの?」
「おい豊錐、気付けよ」
「まあいいや」
「それで知り合い?」
「小学校の頃の友達」
「どんな話をしてたんだ?」
「中井さんが神だなんて話しはしてないから安心して」
「そんな話してたのか」
中井は豊錐を叩こうとした。しかし豊錐は避けた。その手がゲノンに当たりそうになった。豊錐は中井の手をひいた。なんとか間に合った。
「中井さん。初めて会った人に殴るなんて野蛮だなー」
「豊錐がよけるからだろう」
「中井・・・彼が神モーレの生まれ変わりなんですね」
「やっぱり、俺が神だのなんだの言っていたんだな」
「中井さん待って俺はまじ言ってないから」
「豊錐ゆるさん」
「河本君が余計なことを言うから中井さんが怒っちゃったじゃないか」
「まだ前世の記憶は戻ってないのですね」
そういうとゲノンは中井を殴ろうとした。
「中井さん、めがね落としたらごめん」
豊錐は急いで中井の手を引いた。
「うわ」
中井は当然驚いた。しかし豊錐が引いたおかけでゲノンの攻撃をかわせた。
「豊錐、なかなかやりますね」
「なぜ中井さんを殴った」
「殴ればあなたのように力を使えるようになると思ったからですよ」
「わるいが君の妄想に中井さんを付き合わせる気はないんでね」
「私が言っていることが妄想ではないことを気づかせてあげますよ」
そういうとゲノンは豊錐の左眼を殴った。
「いたっ」
「豊錐、大丈夫か」
左眼を両手で押さえている豊錐に中井は心配そうに言った。
「大丈夫、じゃあ帰ろうか」
「逃げるのですか」
「悪いがおまえを相手する気はないんだ」
「豊錐いいのか」
「だって中井さんに迷惑かかるだろう」
「別にそんなこと気にしないのに」
「ついでに、面倒だから」
「人が静かに聞いてれば、好き勝手いいやがって」
「河本君だってすき勝手言ったじゃないか」
「うるさい。きっとお前を苦しめればモーレも記憶を取り戻すだろう」
「どうして君はそうなるのかなー」
「豊錐どうするの」
「中井さん、先に帰って」
「どうせなら豊錐がどうなるか見るわ」
「・・・じゃあ帰るか」
「豊錐、逃げるのか」
「ああ、逃げる」
豊錐がそういうとゲノンは中井の首をつかんだ。
「おい、その手を離せ」
豊錐は目で相手を殺すようにいった。ゲノンはあわてて手を離した。
「中井さん大丈夫?」
「俺が何かしたか」
「さあ思い出せモーレ。俺たちが何をしないといけないかを」
「河本君の幻想にはつきあえない。仲井さん下がっていて」
「・・・えっ」
「喧嘩に巻き込まれたくないでしょう」
「まあ」
「じゃあさがって」
豊錐はいつもからは想像できないぐらいの強さで言った。
「わかった」
豊錐らしからぬ口調に驚き中井は下がった。
「さあ来れるものなら来い」
豊錐は起こり口調で言った
「じゃあ行ってあげますよ」
そうゲノンは言うと豊錐に殴りかかった。
「遅い」
そういって豊錐は腕を取り背負い投げをした。中井はいつもの豊錐ではないことを見て取れた。本当はこんなに恐ろしい性格であると感じ取った。
「うっ」
一瞬のうちにゲノンの体は地面にたたきつけられた。しかし豊錐は攻撃をゆるめることもなく
「倒れている場合じゃないだろう」
と言いながら腹を蹴った。中井は見ていられなかった。人生で初めて残酷なことを目の前で行われていると思った。
「まだ懲りてなさそうだな」
もう一度蹴った。
「中井さん帰ろうか」
豊錐は手を中井に差し伸べ言った。しかし中井は豊錐の一言にさえおびえていた。しかしどこかで同じ事があったように感じた。
「おびえないで、見た目は痛そうかもしれないけど強く蹴ってないから」
やはりどこかで覚えがある、中井はそう思った。
「中井さん聞いてる?」
中井はボーとしていた。豊錐の声が届いていないようだった。今さっきのようにおびえている様子もなかった。

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