神奈川県南足柄市足柄万葉公園の万葉歌碑
静岡県と神奈川県をつなぐ足柄街道(県道78号線)の県境付近に足柄峠があります。富士山を見渡すことのできる峠です。この峠から数百m神奈川県側に足柄万葉公園があります。
神奈川県の足柄上郡・下郡、南足柄市の一帯は、古来、アシガラ又はアシガリと呼ばれ、この地を詠んだ歌が万葉集に17首あります。足柄万葉公園には、そのうちの7首が歌碑となって置かれています。
今回、この公園を訪ねたきました。しかし残念ながら、7基あるはずの歌碑のうち、どうしても6基しか見つけることができませんでした(2010/7)。
下の写真は入口です。この道を進むとすぐのところに、最初の歌碑があります。
その1 「足柄(あしがり)の」
足柄(あしがり)の 御坂(みさか)畏(かしこ)み 曇夜(くもりよ)の 吾(あ)が下延(したば)へを 言出(こちで)つるかも (巻14-3371) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 足柄の坂の神が恐ろしいので、心の奥深くにしまっていた恋人の名を告げてしまった。どうしよう。
その2 「足柄(あしがら)の」
足柄(あしがら)の 御坂(みさか)に立(た)して 袖振らば 家なる妹は 清(さや)に見もかも (巻20-4423) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 足柄の御坂に立って袖を振ったなら、家に居る妻ははっきりと見るだろうか。
その3 「足柄(あしがり)の」
写真なし。残念ながら、「足柄のままの・・」の歌碑を見つけることができませんでした。
足柄(あしがり)の 崖(まま)の小菅(こすげ)の 菅枕(すがまくら) 何故(あぜ)か巻(ま)かさむ 児ろせ手枕(たまくら) (巻14-3369) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 足柄の崖に生えた小菅で作った枕をどうしてしているのか。私の手枕をしなさい。
その4 「足柄(あしがり)の」
足柄(あしがり)の 吾(わ)を可鶏山(かけやま)の 穀(かづ)の木の 吾(わ)をかづさねも 穀(かず)割(さ)かずとも (巻14-3432) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) (足柄の、私を心に懸ける可鶏山の穀(かづ)の木ではないが)私を誘って欲しい。穀の木を割いてばかりいないで。
その5 「足柄(あしがり)の」
足柄(あしがり)の 箱根の嶺(ね)らの 和草(にこぐさ)の 花(はな)つ妻(づま)なれや 紐(ひも)解(と)かず寝(ね)む (巻14-3370) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 足柄の箱根の山の和草のような花妻だから紐を解かずに寝るのだろうが、でもやはり共寝をしたい。
その6 「鳥総(とぶさ)立(た)て」
鳥総(とぶさ)立(た)て 足柄(あしがら)山に 船木(ふなき)伐(き)り 樹(き)に伐(き)り行(ゆ)きつ あたら船材(ふなき)を (巻3-391) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) トブサを立てて足柄山に船材を伐(き)り、伐って持っていってしまった。惜しい木を伐ってしまった(いい娘だったのに)。
その7 「わが背子を」
わが背子を 大和へ遣(や)りて まつしだす 足柄山の 杉の木(こ)の間か (巻14-3363) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) わが夫を大和へ送り出して「まつしだす」足柄山の杉の木の間よ。
所在地
神奈川県南足柄市矢倉沢 足柄万葉公園。
行き方
足柄万葉公園は、足柄街道(県道78号線)の、神奈川県と静岡県の県境近くにあります。足柄峠の400m程北東(神奈川県側)です。下の地図のマークの辺りが「その1」の歌碑の場所です。「その2」以降はその先にあります。