茨城県土浦市朝日峠展望公園万葉の森の万葉歌碑
茨城県土浦市の表筑波スカイラインの朝日峠展望公園の中の万葉の森(→地図)にある万葉歌碑を探してきました(2010/6)。この万葉の森には、万葉の花にちなんだ歌の刻まれた30基の歌碑があるそうです。今回そのうちの26基だけ見つけることができました。どうも小道一本分見落とした感じです。
下の写真は、朝日峠展望公園のガイドマップです。駐車場の南側(地図上では上)が谷になっており、その斜面に万葉の森があります。
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以下に、歌碑を順に掲載します。順序は、私が写真を撮った順序です。本来の順序があるのかどうかはわかりません。
訪ねたのが6月だったため、草が生い茂っています。最初の数基は草を少しよけて写真を撮ったのですが、私と相性の悪い草があったようで、腕にじんましんができてしまいました。その後は草にできるだけ触らぬよう、草もよけずに写真をとったため、歌がよく読み取れないものもあります。そのようなわけで、十分に注意はしましたが、歌の特定に誤りがあるかもしれません。そのあたりを確認したり、残りの歌碑を探すために再挑戦するとしたら、季節は秋か冬ですね。
その1 「うまら」
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道の辺(へ)の 茨(うまら)の末(うれ)に 延(は)ほ豆(まめ)の からまる君を 別(はか)れか行(ゆ)かむ (巻20-4352) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 道のほとりのいばらの先に這いつく豆のように、からみつく貴女を置いて別れて行くのだろうか。
その2 「やまぶき」
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山吹(やまぶき)の 立ちよそひたる 山清水(やましみづ) 酌(く)みに行かめど 道の知らなく (巻2-158) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 山吹の花が美しく飾っている山の泉を汲みに行こうと思うが、ああ、道が分からない。
その3 「筑波嶺(つくばね)の」
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筑波嶺(つくばね)の 裾廻(すそみ)の田井(たゐ)に 秋田刈る 妹(いも)がり遣(や)らむ 黄葉(もみち)手折(たを)らな (巻9-1758) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 筑波山の裾の周りの田に秋の稲を刈っている乙女のもとにやる黄葉を手折ろう。
その4 「はり」
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住吉(すみのえ)の 遠里(とほさと)小野(をの)の 真榛(まはり)もち 摺(す)れる衣(ころも)の 盛(さか)り過ぎゆく (巻7-1156) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 住吉の遠里小野の美しい榛で摺り染めにした衣があせていく(盛りの年が過ぎていく)。
その5 「にれ」
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おしてるや 難波(なには)の小江(をえ)に ・・ あしひきの この片山(かたやま)の もむ楡(にれ)を 五百枝(いほえ)剥(は)ぎ垂(た)れ ・・(長歌の一部) (巻16-3886) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 食物になっている蟹の身になって、その苦しみを詠っている。
その6 「うのはな」
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卯の花(うはな)の 咲くとはなしに ある人に 恋ひや渡らむ 片思(かたおもひ)にして (巻10-1989) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 卯の花のように、心を開くことのない人に、私はずっと恋いし続けるのだろうか。片思いのまま。
その7 「さくら」
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あしひきの 山の間(ま)照らす 桜(さくらばな)花 この春雨(はるさめ)に 散りゆかむかも (巻10-1864) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) あしひきの 山の間(ま)照らす 桜(さくらばな)花 この春雨(はるさめ)に 散りゆかむかも。
その8 「あさがほ」
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展転(こいまろ)び 恋ひは死ぬとも いちしろく 色には出(い)でじ 朝顔(あさがほ)の花 (巻10-2274) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 転げまわるほど恋いに苦しみ死ぬようなことがあっても、はっきり顔色には出すまい。朝顔の花のようには。
その9 「をみなへし」
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女郎花(をみなへし) 咲きたる野辺を 行きめぐり 君を思ひ出(で) たもとほり来(き)ぬ (巻17-3944) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 女郎花が咲いている野辺をめぐって、貴方を思い出しながら私は回り道してきました。
その10 「すもも」
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わが園の 李(すもも)の花か 庭に降る はだれのいまだ 残りたるかも (巻19-4140) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) わが家の庭の李の花だろうか。それとも、庭に降った雪が残ったものだろうか。
その11 「はじ」
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ひさかたの 天(あま)のと開(ひら)き 高千穂(たかちほ)の 岳(たけ)に天降(あも)りし 皇祖(すめろき)の 神の御代(みよ)より はじ弓を 手握(たにぎ)り持たし ・・ (長歌の一部)(巻20-4465) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) (大伴家は)先祖代々勇敢に戦い、立派に天皇家にお仕えしてきた。あさはかな思慮で大伴の名を消してはいけない。
その12 「こなら」
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下野(しもつけの) 三毳(みかも)の山の 小楢(こなら)のす ま妙(ぐは)し児ろは 誰(た)が笥(け)か持たむ (巻14-3424) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) (下野の三毳山の楢の若木のような)美しいあの娘は一体誰の妻になるのだろう。
その13 「はぎ」
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指進(さしずみ)の 栗栖(くるす)の小野(をの)の 萩(はぎ)が花 散らむ時にし 行きて手向(たむ)けむ (巻6-970) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 指進の栗栖の小野の萩が散るころには故郷に行って幣を手向けよう。
その14 「もも」
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春の苑(その) 紅(くれなゐ)にほふ 桃(もも)の花 下照(したで)る道に 出で立つ少女(をとめ) (巻19-4139) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 春の苑は紅にかがやいている。桃の花の色で赤く輝く道に出で立つ少女よ。
その15 「あしび」
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磯(いそ)の上(うへ)に 生(お)ふる馬酔木(あしび)を 手折(たを)らめど 見(み)すべき君が ありと言はなくに (巻2-166) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 岸のほとりに咲く馬酔木を手折ろうと思うのだが、それを見せたい弟がこの世にいるとは誰も言ってくれないのです。
その16 「からたち」
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枳(からたち)の 棘原(うばら)刈り除(そ)け 倉立てむ 屎(くそ)遠くまれ 櫛(くし)造る刀自(とじ) (巻16-3832) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) からたちを刈り払って倉を建てよう。屎は遠くにしてくれ。櫛を造るおばさんよ。
その17 「ねぶ」
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昼は咲き 夜は恋ひ寝(ぬ)る 合歓木(ねぶ)の花(はな) 君のみ見めや 戯奴(わけ)さへに見よ (巻8-1461) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 昼は花開き夜は慕いあって寝る合歓木の花を、主君(私)だけが見ていてよいのでしょうか。お前も見なさい。
その18 「かには」
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あぢさはふ 妹(いも)が目離(か)れて 敷栲(しきたへ)の 枕もまかず 桜皮(かには)巻き 作れる船に ・・ (巻6-942) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 妻から遠くはなれ、柔らかい枕もせずに、桜皮を巻いて作った船の両舷に梶を通してここまで漕いでくると、淡路島の野島も過ぎ、印南の端から辛荷島の辺りから我家の方を見ると、青い山々のどこにあるかも見えずに、白雲が重なってきている。漕いで廻る浦のどこでも、行き隠れする島のどの岬でも、いつも家のこと思いだされる。旅の日数が長いので。
その19 「かはやなぎ」
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山の際(ま)に 雪は降りつつ しかすがに この河楊(かはやぎ)は 萌(も)えにけるかも (巻10-1848) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 山の間にはまだ雪が降っているが、さすがにこの川の柳はもう芽をふいたなあ。
その20 「つた」
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石綱(いはつな)の また変若(を)ちかへり あをによし 奈良(なら)の都を また見なむかも (巻6-1046) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 岩を這う蔦(つた)のように、また若返って奈良の都をまた見るのだろうか。
その21 「なつめ」
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玉箒(たまばはき) 刈(か)り来(こ)鎌麻呂(かままろ) むろの木と 棗(なつめ)が本(もと)と かき掃(は)かむため (巻16-3830) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 鎌麻呂よ。玉箒を刈りとって来い。むろの木と棗の下を掃除するため。
その22 「たちばな」
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橘(たちばな)の 寺の長屋に わが率寝(ゐね)し 童女(うなゐ)放髪(はなり)は 髪上げつらむか (巻16-3822) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 橘寺の長屋に連れてきて寝た、童女放髪の少女は、もう髪上げして他の男と結婚したろうか。
この歌碑に刻まれているのは上の歌ですが、「たちばな」と題するなら下の歌の方が少しばかりよいのではないかと思います。
橘(たちばな)の 照れる長屋に わが率寝(ゐね)し 童女(うなゐ)丱(はなり)に 髪上げつらむか (巻16-3823) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 橘の実の輝く長屋に連れてきて一緒に寝たおさげ髪の少女は、丱(はなり)に髪を上げただろうか。
その23 「なでしこ」
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野辺(のへ)見れば 撫子(なでしこ)の花 咲きにけり わが待つ秋は 近づくらしも (巻10-1972) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 野辺を見ると撫子の花が咲いていた。待ち望んでいた秋が近づいているようだなあ。
その24 「たく」
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水沫(みなわ)なす 微(いや)しき命(いのち)も 栲縄(たくなは)の 千尋(ちひろ)にもがと 願ひ暮らしつ (巻5-902) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 水の泡のようにはかない命ではあるが、栲縄の千尋の程も長くあってほしいと願ひ暮らしている。
その25 「まつ」
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磐代(いはしろ)の 浜松が枝(え)を 引き結び ま幸(さき)くあらば また還り見む (巻2-141) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 磐代の浜松の枝を結び無事を祈るが、もし命があったら再び帰り路でこれを見るだろう。
その26 「あぢさゐ」
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紫陽花(あぢさゐ)の 八重(やへ)咲くごとく やつ代(よ)にを いませわが背子(せこ) 見つつ偲(しの)はむ (巻20-4448) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 紫陽花が八重に咲くように、長く生きて下さい。貴方。私はその立派さみながらお慕いしましょう。
所在地
茨城県土浦市小野朝日峠展望公園万葉の森。
行き方
表筑波スカイラインの朝日峠駐車場の近くです。下の地図のマークの辺り一帯です。