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動き検出スイッチ

筋ジストロフィーの患者用支援ツールとして、指のわずかな動きを検出し働くスイッチを試作しました。その結果は、動きセンサー(指の微小な動きにより抵抗値を変化させる器具)を「指の微小な動きを検知する −筋ジス患者さん用のツール−」に、その動きセンサーの信号から指の動きを判定する回路を「信号判定器 −動き・変動の有無を判定する−」をブログに書きました。

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動き検出スイッチとしての全体の働きをここにまとめて紹介します。全体は上の写真のとおりです。

このスイッチは、「動きセンサー部」と「動き判定回路」とで構成されています。前者は、写真の左上の白い小さな筒が二つある部分で、二本の指に固定します。後者は、AD変換と動き検出とラッチ&タイマー機能を持っており、写真のケースの中に組み込んであります。以下に順に書きます。

動きセンサー

動きセンサー

動きセンサーは、直ぐ上の写真のようになっています。白い筒(15mm程の長さ)が二つありますが、これらの間隔に変化すると両者をつないである銅線(右側の筒に固定)が左側の筒の中を摺動します。指を動かせる方向に合わせて(最も動きが大きくなる方向に)二つの筒を貼り付けます。使い方のイメージは、下の写真のとおりです。接着の様子が分かりやすくなるようにここではセロテープでとめてあります。実際には、肌にやさしい絆創膏などを使っています。この写真は、小指と薬指の間隔を変えられる場合の例です。指が曲げられる場合は、関節を挟んだ状態で貼り付けてもよいかと思います。

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動きセンサーの動作原理は、黒鉛(鉛筆の芯を削った粉)の中に線材をスライドさせることにより生じる抵抗値の変化を検出する、というものです。黒鉛と線材の間の接触抵抗が変化することを利用しています。線材としては、写真では銅線を用いました。その後、ピアノ線も試してます。銅線の場合は、使っているうちに曲がってしまい、元のようなまっすぐな状態には戻らなくなるため、動きが悪くなります。ピアノ線だと弾性がありますので、曲がることはあまりないと思われます。

この動きセンサーを患者さんに実際に使ってもらっていますが、意図した時に大体ON/OFFできたようです。現在、動作を試してもらっているところです。が、使えているのが患者さん自身の工夫によるところもあり、今後もいろいろと改善の余地はありそうです。使用感を伺ってまた改善をしたいと思っています。

動き判定回路

上の動きセンサーの出力は、写真のプラスチックケースに入力しています。ピンジャックでつないでいます。ケースにはPIC(ワンチップマイコン)を用いた動き判定回路が納められており、電圧の変化を読み込み、本物の動きか否かを判定します。この動き判定結果は、スイッチ出力になっており、写真左下のピンプラグを制御される装置につなぎます。

この回路は、「AD変換」と「動き検出」と「ラッチ&タイマー」の機能を持っており、ワンチップマイコンPICで実現してあります。PIC12F675という8ピンのPICを使いました。これは内蔵クロック(4MHz)の場合3V(つまり電池2本)で動作します。入力はアナログ(AD変換)2チャンネル、デジタル出力1チャンネルを使いました。

入力には、動きセンサーからの信号と、タイマーの時間を設定するためのボリュームがつながれています。

この回路は、入力信号がある程度以上の変化をしているとパルスを出し、変化が少ない時はノイズとみなし、パルスは出しません。具体的には、入力信号の差分絶対値を基に、積分操作を組み合わせて検出するようにしました。判断に際して、感度だけでなく、積分におけるリーク量をパラメータにしてあります。

出力するパルスの幅は、写真右上のつまみで設定します。パルス幅は0.1秒から1分程度まで変えられるようにしてあります。なお、一旦パルスを出した後は、1秒間は動きセンサーに反応しないようにしてあります。また、つまみは、電源スイッチを兼ねています。電源は、単3電池2本使います。ケースの蓋を開けると四角の赤い押しボタンがあり、これを押すとボタン内蔵のLEDが光り、電池の有無が判断できます。

出力はパルスと書きましたが、実はスイッチです。つまり、ON/OFFするリレーのようなものです。実際は、フォトMOSスイッチを使っており、ケースの中の回路とは絶縁された状態でピンプラグ出力になっています。大電流、高圧の回路でなければ大抵の回路は駆動できるはずです。以上のようになっていますので、殆どの場合、ラッチ&タイマーを別に用意する必要はありません。

なお、動き判定回路の出力をつなぐ装置が、大きな電流、高電圧で駆動する必要がある場合は、それなりのリレーが必要です。逆に、後段にMOSやTTL回路をつなぐのであれば、出力段には、高価な?フォトMOSスイッチ(無電圧スイッチ)ではなく、安価なフォトカプラー(オープンコレクタ)も使えます。