車は迷走しつつも日没前に、なんとか海へとたどり着いた。
海岸線を眺望できる場所に車を停め、二人で外へでる。
潮の香りは日常とかけ離れたものを感じさせる効果があるのだろうか。
自分たちはずいぶん遠くまで来たのだなどと、感傷的な気持ちが湧いてくる。
11月の中旬ではあったが、日差しは暖かく吹く風も心地良かった。斜めに伸びた影がボクのあとを付いてくる。
幼い頃は長く伸びた影が、自分とは別の意識を持った生き物のように思えて、怖かったりしたのだ。だが成長するにつれ、いつの間にかそんな事にも平気になって行く。
波の寄せる音と海鳥の鳴く声が断続的に耳に届く。
消波ブロックに当たって飛び散った波の飛沫をかすめる様に、
彼らはボク達の前で見事な急降下を見せてくれた。
おそらく此処が終着地なのだろう。そう思って進藤に尋ねてみた。
「ボクを連れて行きたかった所って、結局何処だったんだ?」
「全部。」
即答された。
「全部?」
「そう。ココもそうだし、車ん中も、途中のコンビニも全部。」
「……」
「オマエと一緒にどっか行けたら、それで良かったんだ。
それが目的。オレはそれが楽しいの。」
「……そうか…」
「うん。そうなんだ……」
静かだけれどとてもきっぱりとした口調で言われた。
澱みも迷いもなく、清々しいくらいにはっきりと。
某かの意味がある。
考えていないように見えても、その行動には彼なりの理由がある。
ボクには思い至らず、気づかない事があるのだ。
最近になって、彼がボクを介して『何か』を得ようとしているのではないかと思うようになった。
それが『何』であるのかわからないが、ボクといる事で彼はその『何か』に近づくのだろうか。
進藤から電話を受けた時に感じた幾つかの事柄…あえて気にとめない様にして
意識の底に深く沈ませたものが、微細だが刺激を受けた事で静かに浮きあがりはじめた。
太陽の傾きが深くなり、空の色も刻々と変化する。
絹雲は空の遙か高くにあり、太陽の光を受け美しく輝いていた。
夕焼けの空で一番最後まで輝きを見せてくれるのはこの雲だ。
そういえば…あの日の空もこんな風だった。
空にすっと、刷毛で牽いたような白い筋雲。
キミが電話をかけて来た日、雨上がりの空には虹が架かっていて…
久しぶりに見た虹だった。
儚くて、美しくて。
キミは見なかったのか?
本当に?
いや…
見ていたはずだ。
どうしてだろう。
何と言うことのない会話だった。
気に留めるほどの事とも思えないのに、何か深いところで引っかかりを憶える。
何気ない風を装いながら、すぐにでも会話を打ちきりたい様子で…
あの時のキミが気になる。
これは重要な事なのだろうか、そうではないのだろうか。
そんな事もわからないまま、それはずっとボクの中で消化される事なく、
形をとどめたまま残されていたのだ。
Drive.3
2003.02.08.up
Sentence Sayumi-Watayuki
ヒカルの車は日産のCUBUという事にしています。
特別深い理由はないのですが、
若い人が好みそうで
実用的でもあるかなと思いまして。
荷物もいっぱい積めそうです。
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