Drive AKIRA SIDE

Drive 5-1


彼の事を理解したい

誰よりもわかりたいと思っている

過去も、現在も、未来だってそうでありたい


彼が持ち続けている謎、それが何かを知りたいとずっと思い続けていた。
だが機が熟していなければ、打ち所がずれていたら、何か行動をとったとしても
それは有効には働かず無駄な手になる。

それに…彼は「いつか…」とも言っただろう?


進藤が時折見せるボクへのこだわり。

違和感を感じたあの時の態度。

普段は楽天的に物事を捉える彼が、 特定の事象に限っては否定的な態度を示す事。

色々なものが絡み合って、自分には正しい姿が見えていない気がする。
知っておくべき事と放置しても良い事の境界が曖昧になっているのだった。
そしてそれを深く辿って行けば、その根元は彼が何者かという事に尽きる。
こだわりを持っているのは進藤だけではない。ボク自身もそうなのだ…
他人から見れば「執着」と呼ばれるほどのものをボクも彼に抱いている。
それは自覚している。

ボク達の間に横たわるものは、出会った頃から少しも変わっていなかった。
どれだけ進もうと、たどり着く先はいつも同じ場所なのだ。 そう思うと舌の付け根のあたりから、苦い物がじわじわと口の中に広がっていくようだった。

小さなため息を気づかれないように一つ吐き、進藤の方へ向き直った。



「詮索するつもりは無いんだ。ボクにはわからない事なのだろうから。
ただあの時のキミが気になっていたんだ。前は好きだったけど、今は違う…
そんなニュアンスに取れたから…」

「いや、だから…」

「違うんだ……もうこの話はいいんだ。すまない。
勝手に持ち出して、一方的に終わらせてしまうようだけれど…」



この話はもうこれで終わらせたい。その方が良い。

だがそうは言ったものの、その後は適当な話題も見つからず、二人とも黙りこんでしまった。 沈黙は胸に重く、とても和やかな雰囲気とは言い難い。気まずいというのはこういうものかと思う。 その場の空気を変えたいと思うのだが上手い手も思いつかない。 進藤も視線をあちこちに彷徨わせ、落ち着かない様子だった。


風が冷たく感じられる。
少し寒くなってきた、そろそろ車に戻った方が良いだろうか。
ボクが意を決して声を掛けようとした時、進藤がぽつりと呟いた。


「オレさ…昔は好きだったんだよ。オマエの言う通りにさ。」

「……」

「"あれ"って綺麗だよな…綺麗だし好きだよ、オレ。
好きだったんだけど、いつからか見るのが……何でかな…ヤなんだ…」

「…どうして?」

「見るとせつない…」

「刹那い…?」

「何て言うか…せつなかったり、哀しかったりすんの。見てるオレが…」

「……」

「…そこに在るのに、ちゃんと見えるのに"あれ"は幻だろ?
空気の中に水の粒があって、太陽の光があたって、光の屈折?プリズム?
そういうもんだって。

…近づく事もできないし、手で掴める物でもない。現実のものじゃない。
でも…さ…幻と思える事にだってホントがあるかもしれないじゃないか。
たとえ姿がみえなくても、そういう事はきっとあるってオレはさ…そう思ってる…だけど……

でもやっぱり"あれ"を見てるとさ、ああ…消えちまうんだって思う。まぼろしなんだ。あんなに綺麗なのに。 地上と空の間を繋ぐ橋を架けても結局は……消える。

虚しくならねえか ? そんなの…なんで見せるんだろ。最後には無くなってしまうのに。」

「……」

「オレ…何かが目の前で消えて行くのなんて、見たくないんだ…」









Drive.5-1
2003.02.22.up
Sentence Sayumi-Watayuki