進藤と出会う前────
ボクが抱いていた"漠然とした不安"というものを、具体的に『こういう物だ』と
説明するのは難しい。それは本当に"漠然とした感情"で、きちんとした形のある物ではなかったからだ。
人から何故と問われても、明快な答えを出せず、整理も出来ず、自分自身でも持て余す感情だった。
あの頃のボクは自分でもそれとは気づかずに、暗澹とした深い森の中に独り立っていたのだった。
暗くぼんやりとした纏いつくような霧の中で、僅かな一歩を踏み出し倦ね、躊躇っていた。
日が傾いてからの風は冷たい。ボクの髪を軽く掬い、襟元を風が抜けていった。
鮮やかな色を周囲に散らしながら、太陽は水平線すれすれまで下がって来ている。
もうほんの僅かなうちに、繻子を幾重にも重ねたような夜の帳が、辺りを覆い包むのだろう。
薄暮時は物の境を曖昧にする。
現実と非現実。過去と現在。自分の心の在りようまでも。
目の前に広がる色彩は印象派の絵画を覗くようだった。
現実感をあまり感じられず、それ故にたそがれは美しいのだと思った。
確かなものとしてボクの前に存在していた道は、いざその時期を迎えた時、
おぼろ気で頼りなく霞んで見えた。
道は延びているのに
進むべき場所がどこかを知っているのに
何かがボクを押しとどめていた
父の様に…真っ直ぐ進んで行けば良いと思っていた。
そうする事がもっとも望む場所へ近づく方法とも信じていた。
だからこそ、独りで歩くのだと決意もしたのだ。
誰かと肩を並べて進む事など望むべくもなく……
そういうものだと思っていたのだ。
……それでも……
ボクは
渇望していたのだ…
自身を変えるほどの、何かの訪れを…
キミと出会うのを
ボク達の出会いは、この邂逅は必然だったと思っている。
ボクはキミとの、キミはボクとの出会いを待っていたのだ。
何かが謀ってボク達を引き合わせたような…そんな風にさえ時折思う。
もし────
引き合わせてくれた誰かがいるとしたら…
それは……
きっと……
Drive.6-1
2003.05.26.up
Sentence Sayumi-Watayuki
塔矢アキラが進藤ヒカルと出会う前の自分と、以後の自分を、
どのように整理し捉えているのだろうというのは
私にとって大変興味のある部分です。
アキラスキーな方が、そういう心理を詳細かつ克明に小説で
書いて下さらないでしょうか。そしたら、私、絶対読むんですけど!!
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