「…虹の橋…」
「行くだろ?キミも。」
「ああ…もちろん。」
ほんの数分前まで、ボクの心をじりじりと焦げつかせていた思いは、
彼の声を聞いた瞬間どこかへと霧散してしまったようだ。
秘かに胸の奥深くで一つだけ息をつく。
これは安堵なのか何なのか。
ボクらがここへ来るまでの歳月と拘わりは、けっして短くも平坦でもなかった。
むしろ起伏は多すぎたほどだ。 失望や焦燥。収められない苛立ちに苛まれた日々…
落ち着いて安定した関係を保てるようになった今を、ボクは素直に嬉しいと思っている。
だから…
そういう応えを当然の事と思っていたボクは、頷いたあとの進藤の表情に困惑してしまったのだ。
「進藤?」
「…………」
「どうかしたのか?」
さっきまでとは違う顔をしている。……ああ…と、思う。
この表情も、この態度にも覚えがある。いつでも忘れた頃に不意に見せられる。
何かとても言いた気で、それなのに話すつもりはなく、隠す事さえもしない。
時々であっても、彼が見せるそういう掴みようのない態度は、ボクの神経に酷く障る。
それはボクの側に、対応の仕様がないからだ。
彼の方から一方的にされるコレは…
苛立たしい。
ボクだってこんな事に慣れているわけじゃない。
そうされる事に平気でいるわけではないのだ。
やっと納めた物を起こさないで欲しい……
どうしたところで手がだせない物ならば、それを匂わせたりしないで欲しいのに。
進藤はボクの胸の内に対して、いつも呆れるほど興味を持たない。
そんな事は必要ないとでも思っているのだろう。
だからこれもまたそうなのだと…
そんな風に、腹を立てかけていたら……
「…オレを置いて…」
微かすぎて聞き取れないほどの……
掠れるような声で……
「オレより先に……」
「 ? 」
「……オレの前からいなくなったり……しないでくれ」
咄嗟には理解できなかった。
いなくなる…
キミの前から?
誰に言っているんだ…
それはボクに対して……?
キミと進む道。それは終わりもなく、遥かで長く遠い道だ。
共に歩むのはキミしかいないと、ボクは自分の目で見極めそう確信したのだ。
キミがボクに決意を告げに来たあの日から、今日ここへ至るまでの歳月は、ボクの決意をより一層強固なものにしていった。
今は確かなものとして、お互いの存在を認めあってもいる。
ボク達はお互いに必要不可欠なものになっていたし、
自らを常に高めて進んでいけば、この関係が揺らぐこともない。
それなのに────────────
こんな事を直接口に出されたのは初めてだった。
Drive.6-2
2003.05.26.up
Sentence Sayumi-Watayuki
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