Drive AKIRA SIDE

Drive 8


「キミには驚かされてばかりだけど…」

「え?」

「不思議だよ。自分の方が先に…とは思ったりしないのか?」

「オレ?」

「そういう可能性だってあるじゃないか。」

「ああ…それ、考えたことなかった。」

「まったく、(苦笑) キミは…」

「そのあたりすっかり抜け落ちてたみたいだ。あはは…いいよ、呆れられても。
オレって何かいっつも考えが足りないんだよな。
お前の事、脇目も振らない奴って思ってたけど人の事言えねぇよなぁ。
…てか、お前さ、来月誕生日じゃん。」

「…そうだけど、そんな事知ってたのか。」

「それくらいはな……」

「ふうん…」

「ふうん…って…やっと18だろ。なぁ、お前は免許取らねぇの?」

「どうしようかな…あまり今は必要を感じてないから…。」

「取れる時に取った方が絶対いいって、これからは時間作るのも今以上に難しくなるんだぜ。」

「どこかへ行くだけなら電車の方が時間も正確だし速い。それに移動の手段としてなら、人は足りてるよ。」

「それって、アッシーには不自由してないって事かよ。」

「そう。市河さん、芦原さん、それに緒方さんもかな。(笑)」

「おっ緒方先生…?!」

( 笑… )

「マジかよ…」

( 笑… )

「〜〜っ」

「でも、車があったら…」

「うん?」

「目の前に虹が見えていて、車があったら、追いかけてみたくなるかも知れない。」

「はあ? 何、突然…」

「この間写真集を頂いたんだ。」

「誰に。何の?」

「後援会の方。カメラを趣味にしていらっしゃるんだけれど、特に風景写真がお好きな方で、そういう物を集めた写真集。」

「ふーん?」

「その中に、虹に向かって走る車の写真があった。」

「……」

「とても荒涼とした…砂漠のような場所で、 車が一台、虹に向かって疾走してる。
このドライバーは、どこかにある虹の脚を目指しているんだと思ったよ。」

「……」

「その写真には"RAINBOW CHASER"ってキャプションが付いていたけど、ボクにはそう見えた。 "RAINBOW CHASER"は"空想家"って意味もあるそうだけど、夢を追えるのは人間の特権だよ。」

「気に入ったの?」

「うん…あの車は走り続けて、いつかは望む場所へたどり着くように思う。」

「……それ見たいな、今度見せて。」

「いいよ。」

「道……このまま真っ直ぐでいいの?」

「もうすぐ高架があるから、そこを潜ったら、次の信号で左折。」

「はい、はい。」

「帰りはスムーズだな?(笑)」

「うるせぇ。…お前さ…ナビ慣れてるよな?」

「そうかな。」

「そうだよ。地図見るの上手い。」

「誰でも出来るだろう?そんなの。(笑)」

「………。(ムカッ)」

「ボク達はつき合いは長いのに…」

「うん?」

「今までこんな風に話をした事はなかったんだな。」

「…ああ」

「話せて良かったと思うよ。ボクは………」

「…なぁ、虹って現実には行けないんだよな?」

「うん。虹は空中に架かる橋だからね。」

「でもさ、お前にとっては、プラスで前向きのイメージなんだな。」

「それはきっと色彩が…あの色がそう思わせるんだよ。」

「色?」

「昔は手に入れられなかったんだよ。あんなに美しく鮮やかな色はね。
でも人はただ夢想するだけの生き物じゃない。違う方法で近づく術も知っている。」

「虹を掴むってのは、夢を叶えるって事だろ。何色を掴むんだろう?」

「虹色はひとつじゃなくて、全ての色を指しているだろ。」

「そうなのか?だからたくさんの人が憧れるのかな。」

「…あ、進藤、次の信号を左折だよ。」

「お ─── し。」







帰りの車中でボク達は途切れる事なく会話を続けた。
軽口だったり、よく考えれば意味深い事かも知れなかったり。
でも実際のところ、意味なんかあっても無くてもどうでもよかった。

たわいのない事を語り合う。
そういう時間が今日のボクらにはとても必要だったと思うのだ。









Drive.8
2003.05.26.up
Sentence Sayumi-Watayuki







これを書いているとき、脇に色彩に関する本を
何冊か置いていました。(置くだけ…笑)
彼らの使う碁石の色は白と黒で無彩色ですが、
盤上で作り出す世界は多彩で、限りがないのですよね。