オバチャリダー北の大地を行く (3)

8月20日 (5日目)

朝起きたとき、この旅初めての筋肉痛になりました。 やっぱりあのにっくきアップダウン!!
今日もお天気が良さそうです。 簡単に朝食を済ませ、8:30に出発。
遠別道の駅富士見で焼きとうもろこしを食べて少し休憩しました。 どこでも道の駅は公園のようにきれいです。トイレもピカピカ、とても気持ち良い休憩が出来る所です。 次は「稚咲内のサロベツラーメン」で待ち合わせることにして、先にジョージが走り出しました。 私は花で飾られた牧場の写真など撮ったりしながら走ったり、止まったり・・・
ある場所では農家のおばさんに、「これいかが?」と野苺を両手にいっぱいもらってしまいました。 これも昔を思い出す懐かしい味です。 甘味と酸味がお日様に包まれて、野原の香りをちょっと振りかけたような美味しさです。 ジョージの為に半分ポリ袋に入れ、残りはその場で「おいしい、おいしい!!」と食べてしまいました。
天塩の町に入った所で道が左右に分かれています。
「左: サロベツ経由 稚内」 「右: 稚内」
もしかしてジョージは間違えたのでは・・・?と不安が頭をよぎります。 でもまあ、地図も持っているし、・・・ イヤB型だから何するかわからないし・・・ ・・ 稚咲内で会えなければ、今日の目的地、稚内温泉に行ってるだろうし・・ まあなんとかなるでしょう。

天塩川を渡っていよいよサロベツ原野です。広い! 広すぎる! 

左は海、右はどこまでも続く原野、 前にも後にも車が一台も見えない、たまに車やライダーが通っても、あっという間に過ぎ去って静けさだけが残ります。 チェーンのチリチリいう音だけが小さく心地良く聞こえます。

北緯45度、「北半球の真中」という碑の所で休んでいるチャリダーがいました。
   「もう、向かい風がひどくて、ひどくて、15km/h しか出ないんですよ――」
あら! じゃあ私は追い風方向だったの? スイスイ走っててちっとも気が付かなかった. 「ラッキー!!」

左前方の雲の上に利尻富士が見えてきました。

この景色、何に例えたらいいのでしょう。 海、その上に山、真直ぐな道、広がる原野、各色の野の花・・いわゆる「全部あり!」という感じです。
この季節、利尻富士はなかなか見えないそうです。「運が良ければ・・」と言われてました。 なにか良いことがありそうです!!
 
(写真はあまり良い出来ではありません m(__)m )

少し進んだところでライダー2人に呼び止められました。
「ブルーのシャツ着た男の子から待つようにって伝言です」
「それはそれは、どうもありがとうございます。お世話さま!」

やっぱジョージ間違えたな! いざという時はライダーか車を止めて伝言を頼むという方法を教えておいて良かった。待つこと20分、ユラユラとやって来ました。 展望台まで行って何か変だなと近くの人に聞いてわかったそうです。 よほどあせったのでしょう。もう少し行けば稚咲内に左折する道に出たのに、天塩まで戻りガンガン走って来たらしいです。
野苺を食べさせ少し休憩させました。

「お昼食べたら大休止ねっ! ねっ!」と言うジョージとゆっくり、のんびり走りました。 「僕、死ぬかと思ったヨ!」 「でも、とにかく何が何でも宗谷岬に行けば会えると思ったんだヨ!」 初めての迷子で心細い思いをしたんでしょう。
 でも、段々逞しくなったね! ジョージ君!!

昼食、大休止後 Tさんというチャリダーと話をしました。 千葉の自宅から新宿まで来て自転車と最低限の物を買い4日間で青森まで自走し、宿泊はほとんど駅寝か、公園のベンチ。 テントは持たず寝袋だけです。 札幌の農家に泊めてもらい、それじゃ寒いでしょと、Tシャツ、Gパン、雨具までもらい(それまではゴミ袋をかぶってた)、ライダーから、旗とソックス、カバンをもらい、・・・ 28才人生模索中強者清貧チャリダーです。 ジョージはいたく感動しています。 スタイルや贅沢中心の若者が多い中、こんな生き方もあるって知ることはジョージにとって良いことだと思いました。
Tさんも今日の目的地は稚内温泉だというので、ジョージは大喜びです。 並んで走ると危ないとTさんに教えられ2人は縦列で先に出発です。 私は例によって写真を撮りながらマイペースです。 途中「こおほねの家」で「写真を撮らせてください」と言われ、走りながらピースしてるところを撮ってもらいました。 ああああーー住所言っておけば良かった!

稚内温泉まであと3kmという所から、足の指先が痛くなって来た。 メーターを見ると100km近くなります。 私の体力、足力の限界かも!トウクリップをはずして踵でこぐ。 スピードも中々上がりません。
5:45やっと到着しました。 温泉センター「童夢」の前に居る2人を見つけました。 温泉入ってからライダーハウスに泊まるというTさんと別れ、私達は宿を探さなければ。 今日は走ることに夢中ですっかり忘れていたのです。 2〜3あたってから「船員保険組合保養所 宗谷パレス」に落ち着きました。 ただし夕食はもうだめということです。
荷物をほどいてから、早速さっきの温泉センターへ。 2日ぶりのお風呂です。 ここの施設も最高です。 広々、ピカピカ、温泉も色々あってこれで大人¥300とは・・安くて感動です。 夕食は2階のレストランで済ませました。 かえって安上がりでした。
もちろん2日ぶりの「生ビール!!」 ん―――ん!! サイコーです。

                        本日の走行距離 102km
                         ジョージ: 約150km

8月21日 (6日目)

2日ぶりのビールで夕べは本当に良く眠れました。
9時に出発して、すぐノシャップ岬に着きました。 T さんは、昨日ここで夕日を見ると言ってました。今ごろは宗谷に向かって走っていることでしょう。
大きな町が近くなってくると、車も人も多く家並びも混んできます。久し振りの市街地でなんだか走りにくいので、ゆっくり、のんびり稚内を目指します.

「日本最北の駅、稚内」、 旅人は誰でもここに立ち寄ります。
ライダーにも、チャリダーにも トホダ―にも ここはひとつの区切りです。
駅の前には、荷物満載のオートバイや自転車がずらっと並んでいます。
みんな写真を撮ったり、広い構内で休憩したり、絵葉書を書いたり、旅人のサロンになっています。
ライダーとチャリダーは一目で違いがわかります。 風から身を守るため長袖の皮ジャン、皮パンツ、皮ブーツと全身皮づくめがライダーです。 一方、チャリダーは半袖か袖なしのTシャツ、半パンの軽装で真っ黒に日焼けしています。

Tさんが居ました。 昨夜ライダーハウスに泊まって風邪をうつされたそうで、今病院に行ってきたところだと言います。 T さんはやさしいので、 ジョージは大喜びで遊んでもらっています。 自転車でゆっくり旅していると、楽しいことのひとつに「再会」があります。 
私は、 駅から少し入った所のコインランドリ―で洗濯開始です。

その間に、お土産を買ったり、交友の輪に加わったり・・・・
駅員さんにお願いして、みんなで線路で記念写真を撮りました。
「最北」、 「終点」・・もうこの先は線路はありません。

駅前のスーパーで買い物して、明日の宗谷の宿に予約の電話をいれて、さあ出発!
今日中に宗谷まで行ってしまっても良いのですが、帰りは24日と決めてあるので時間を持て余してしまいそうなのと、楽しみは先に延ばしたい、もうちょっと心構えをして劇的に最北端に到着したい、色々考えて記念日は明日にすることにしました。
というわけで今日は「緑と太陽のキャンプ場」というところでキャンプです。

到着してみると、あまりきれいな所ではないようです。 芝生ではないので、地面もかたくペグもなかなかはいらない。 ここでは皆バンガローに泊まるのでしょうか。 いやがるジョージともう一人の私を抑えつけ、なんとかテントを張りました。
それにしても虫が多すぎます。 さっきのコンビニまで虫よけスプレー等を買いに行くことにしました。

買い物を済ませ買える途中、国道沿いにきれいなトイレパーキングを見つけました。 芝生の広々とした公園です。 植木を整理していたおばさんに、恐る恐る聞いてみました。  「ここにテントを張ってもいいですか?」
「ハイ、イイヨ! そのかわりゴミはちゃんとしてね!」
思いもかけないやさしいその言葉に、拝まんばかりに
「ハイ,ハイ! モチロンでゴザイマストモ、 アリガトウゴザイマス!」

急いでジョージの所に戻り、テントやら何やらざっとたたみレッツゴー!
ここは「言問緑地公園」と言います。 トイレはきれいだし、テーブルセットはあるし、芝生はフカフカだし、海は目の前だし、はるか先に宗谷岬も見えるし・・・最高です。
今日のメニューは「サトウのごはん」とレトルトカレー、それにホタテのバター焼きです。採れたての地元のホタテをバターでジューッと焼いてお醤油で味付けました。  
こんなおいしいホタテ食べたのは生まれて初めてです.もちろん、ビールもワインの小瓶も買ってあります。

食事をしてたら、チャリダーがひとり通りかかりました。 稚内の駅で会った人のようです。 そろそろ夕暮れも近いのに何処にいくのかしら。 「オーイ!」と手を振ると、こっちに入って来ました。 やっぱり、Oさんでした。
「メグマ沼でキャンプしようと思ったけど、蚊が多くて・・・」ということでした。
そこから宴会の始まりです。 彼は1ヶ月かけて北海道一周するそうです。真っ暗な中、ランプとロウソクの明かりだけでワイワイとおしゃべりしてしまいました。 
あっという間に10時になってしまいました。 もう寝ましょう。
明日も良い日でありますように。

                       本日の走行距離:  25km

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