オバチャリダー北の大地を走る(ヨロヨロ編)(1)
1998年5月3日 (1日目)

   ガラ空きのJASで私は女満別空港に着いた。 羽田は大混雑だったのに、この便は人が数えるほどしか乗ってない。 皆、暖かい沖縄方面に行くんだろな。 輪行にも大分慣れたし、特にJASは取り扱いが丁寧で、手渡ししてくれるから、去年みたいにプッチンパッキングでぐるぐる巻きにしてない。ディレーラーの所だけプッチンでくるんだだけです。 
係りの人が横のドアーからエッチラオッチラ持ってきてくれた。 私より背の低い、お歳を召した方だったからかえって恐縮してしまう。  さあーホッカイドー!! 気温8度、風速5m、曇り、やっぱ寒い。 フリースの手袋と帽子をかぶり、気合を入れて10:30走り始める。
 目指せ美幌峠!イエーイ!!  

この旅がどんなに辛いことになるか、この時はまだ気がついてない。 そりゃそーだ、体調こわして3ヶ月、胃が変で食事はいつもの半分以下、風邪が直らず鼻水ズルズル。 ブルーな気分が続いていたから 「きっと気のせいだ、北海道走れば直る!」なんて言って、トノもいつになく積極的に賛成してくれて大量の薬持参で出かけてきた。 この時極度の貧血だったなんて帰って検査を受けるまで知らなかったのです。 

まず、コンビニを探そうと国道39を市内方面へ向かう。 国道とは云え車の数も少なく左右には畑以外何もない。 ああキモチイイ、やっぱホッカイドー! 時々晴れ間も見え、走っていると少し汗ばんでくる。 途中で手袋をハーフに代え、帽子も取って鼻歌交じり。 市街地に入る前にコンビニがあった。 ポカリスエット、ミネラルウオーター、飴を買う。 
国道243に入った所で 「美幌峠25Km」の標識が出ました。 さあ、あとは一本道です。 道はゆるく登りが続いています。 今回は無謀にも 「兆戦+克服+達成感―(病は気から)=元気」という図式で行こうと思ったので、初日に峠を入れてしまったのです。

畑はまだ芽が出たばかりの小さい苗がお行儀良く並んで、黒々とした大地の方が多いです。 道の左側に枯れた草原が広がり、陽を浴びてキラキラと輝いてます。 写真を撮ろうと自転車を止め、ちょっと早いけど休憩です。 こういう時間がずーっと続けばいいな!

 20分もぼーっと休憩してしまいました。 いざ出発。 登りが段々きつくなってきました。 ライダーがひとり、「ピース」をしながら通り過ぎて行きました。 今年初のピースです。 なんだか嬉しくなってしまいます。 それにしてもダラダラ登りばっか。 (・・だって峠だもん!) もろに足に来ます。休み休み登ることにします。
 (あのガードレールが切れるまで)
 (次のコーナーまで)
 (1000数えるまで)
 (バスが5台通ったら) 等など小さい目標を決めて休みます。 そして鼻をかみます。
両足着いて休んでいると、RVに乗った4〜5人の若者に「ガンバッテー」と声をかけられました。
ヨッシッ!ガンバルゾー!とまた漕ぎ出し、そしてまた休みます。 そしてまた鼻をかみます。

 「体力もないのに、なんでこないなことしてんのやろ?」 ・・(なぜか大阪弁)
 「死に急いでるんかい?」
 「こんなことになんのいみがあるっちゅうねん?」
 「ハラヘッター!」

もう1:00になってしまった。 予定ではこの時間には峠に着くつもりでしたから、食べ物はなにも買ってない。 羽田でモーニングセットを食べたっきりです。 ああ、どうしよう! そうだっ、機内で出た菓子パンを食べずにそのまま持ってきてる。 
大事にそのパンを食べましょう。 パンを食べながら、フっと泣きたくなってきてしまいました。 もう駄目なのかな、・・・
私っていつもそうだ、自身過剰で突っ走って、途中で挫折しそうになる・・・。 やっぱり、もう駄目なのかな・・・
ヒッチハイクしちゃおうかな?と頭をよぎります。
 
 目の前の枝にコガラがやって来て「♪ツッピーツッピー♪」と鳴き始めました。
「ガンバレ、チャコチャン、ナクナ、チャコチャン」・・・そう聞こえました。
そうだよね、頑張ろうね。
ヨッシッ! ガンバルゾ―! 今度は無理せず、乗ったり、歩いたり、休んだり、少しづつ、少しづつ・・・
いいんだよね。 今の自分に出来る範囲でやれば・・・ いったいどの位乗ったのか、どの位時間がたったのか。
大きくコーナーを回った所から右の上の方に建物が見えました。 あとちょっと、あとちょっと!
やっと、やっとの到着です。 すでに3:00になってました。
風が強く、とーっても寒いです。

ひなびたレストハウスで、ひなびたラーメンを食べ、ひなびたコーヒーを飲んで大休止です。
展望台に上がると、下に屈斜路湖、横に雄阿寒岳、雌阿寒岳、遠くに摩周岳、反対側には大雪山系、すばらしい景色です。デモ寒い!

あんまりのんびりもしていられない。 早くしないと川湯温泉に今日中に着かないかも知れない。 今回はゴールデンウィークということもあって、全部宿を予約してきてしまったのです。
 さあ、準備を整えて下りです。 下りはアッという間に終わってしまいました。 屈斜路湖を回りこんだところからまたまたすごい向かい風です。 一体どういうこと?
最初の予定では、プリンスホテルでお茶して・・と思っていたけど、時間がないので横目で見て通り過ぎる。 今向かい風だから道道52号を左折すれば、森もあるし、風が少しは和らぐはず。 ・・・残念でした! どう言う訳か今度は北風、エエー、エエーそうです、向かい風です。 なんでこうなるの?
川湯まで17kmもある。 時間はどんどん過ぎて行く。 もおアカン! コタンの資料館の電話で宿に遅れることを知らせる。 川湯まであと10kmとなったら休憩しようと自分を励ましウンウンとペダルを漕ぐ。 メーターを見ると、時速8kmとなっている。 メーターこわれちゃったのかな? 宗谷の時はもっとすごい風で15Km出てたのに・・・。
休憩する場所を探していると川湯まで8kmの所に、砂湯というドライブインみたいなお土産物屋さんがあった。 やーっと休憩!
 [只今暖房中、お気軽にお休みください]と書いてある。 中には飲用温泉57℃がプクプク涌き出ているコーナーもある。
私は外のベンチで一休み、だって太陽が出ててウンウンやってると暑いですからね。  湖面に夕日が映えてキラキラ輝き、昔見た映画のワンシーンのようだ。 そして正面にあの美幌峠が見える。
この旅はなんなんだろう? 現実からの逃避かなー?
・・北風ってことは、明日は追い風になるはずだよね、気をとりなおして出発!
右側の白樺林が黄金色に染まり、なんとも言えない奥深い神聖さがある。 良く見ると何か動いている・・・エゾ鹿だ、4匹もいる。クリっとした目でじーっとこちらを観察(?)している。 ダイジョブ、ダイジョブ、邪魔しないからね! 

 
夕日も落ちようとする6時、やっと今日の宿、国民宿舎川湯パークにたどり着いた。
 「自転車は玄関の中に入れたほうがいいですよ・・」ととても親切
でも、ヘロヘロの足で階段を登って2階の部屋に行くのにはマイッタ。 食事に降りる時もガクガクしている。
運動の後の食事はなんておいしいんでしょ・・でも半分しか食べられない。 走っている時は、胃の痛みも感じなかった。 痛みや苦しみにも優先順位があるっていうことかな?
食後今日初めての薬をザクザク飲んで、明日に備えて早寝しましょう。

今日の走行距離: 76Km
無謀!(T_T)

 

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