「しょうがない、このまま寝かせておくか」 ため息混じりに、伸は呟いた。 どうせ当麻のことだから、夜明けか朝頃眠りについたに決まっている。起こすのがかわいそう……と言うより、起こしたらやっかいだからと言う理由は、もしかしたら理由になっていないかもしれない。 「さて、それじゃ、当麻が起きるまで昼食でも作っていようかな……」 居間に移動する。開けた冷蔵庫の中は卵とタマネギとじゃがいもと調味料くらいしかなくて、半分呆れながらも、伸は早速腕を振るいにかかった。 本日の昼食。じゃがいもの細切りでハッシュドポテトを作って、なすを揚げてたれをかけて、ついでになすを焼いて、簡単にコロッケなんか作ってみて……。 料理しようにも作れる材料が全然なかったにしては、まずまずの出来ではなかろうか。 もちろん、あの食欲魔人の当麻がこのくらいの量で納得なんかしてくれるはずもないだろうけれど。 「ま、その辺はあとで諸悪の原因に買い物をつきあってもらえばいいとして」 時計を見れば、いつの間にか昼の時間はとっくの昔に過ぎていた。そろそろ起きてくるだろうと思っていた食欲魔人は、しかしまだ起きてきそうにない。 そうこうするうちに、時間がどんどか過ぎていく。もちろん伸としては、その間にどんどん掃除も洗濯もこなしていったのだけれど。 「……いくらなんでも遅すぎ、だよねぇ」 14時をすぎても、肝心の部屋の主は、未だに夢の住人なのだ。 「うーん、どうしようかな?」 廊下を、わざと音を立てて歩いて、枕元まで近寄っていく。 こっそり忍び足になんてならなくっても、もちろんこんな事くらいで当麻は目覚めたりしない。当麻が目覚めるとしたら、それは決して騒音や雑音なんかではないのだ。 せっかくだからやっぱり寝かせておく どうせなので起きてもらう |