One Tube Super Reflex Radio(Jan 27〜. 2019)
はじめに
今年もOneTubeCompの季節がやってきた。昨年秋、公募の案内がFacebookの真空管無線機のサイトであり、早々に受信機部門とトランシーバ部門にエントリーした。
ここでは受信機部門の実験と製作について記すことにする(トランシーバ(3A5+2FET)部門は今後別頁で紹介する予定)。
さて受信機部門だが、昨年はHi-gm5極12GN7Aを使用したストレートレフレックスラジオに終始した。それなりの成果を得たのであるが、BC帯全体に渡る安定な利得確保や選択度それに運用性はスーパーヘテロダインには及ばないとあらためて感じていた。
そこで、今回のレギュレーションが複合管の使用やヘッドフォン受信がOKとなったこともあり、スーパーヘテロダインで挑戦してみる事にした。
スーパーにしたことで、IF周波数は固定になり受信周波数に関係なく安定な選択度や、場合によっては安定な再生が得られる可能性もあり、面白いOneTubeCompになりそうだ。
どんな回路に…
まだ構想段階だが、下図に全体の構成を書き出してみた。
アンテナコイルの同調側をタップダウンし低Zで取り出してDBMのRFへ入力、一方局部発振は6AW8Aの3極部で行い、カソード出力をDBMのLoへ入力。DBMのIFは455KHzに変換され、タップダウンされたIFTの1次側へ接続しステップアップ、2次側は6AW8Aの5極部でHi-Zで受け増幅しプレート側IFT1次側はタップダウン、2次側でステップアップされ負倍電圧検波されAF+DC信号を得る。これを再びグリッド側へ戻してAF増幅し小型スピーカーやヘッドフォンを鳴らす。IFは固定周波数のため、最大利得に調整し易く、選択度が受信周波数により変わらない。更に軽い正帰還によるIF再生増幅も可能で、利得の拡大も期待できる。
と調子良く記したが果たしてどうなるだろうか…。
ちなみにDBMは過去の実験結果から、低損失で大きなLoレベルを必要としないMiniCircuit社のADE-1を利用する。また、5極管部がセミリモートカットオフの6AZ8も試してみたいので、9Pinプラグ変換を製作し、6AZ8のPin番号を6AW8AのPin番号へ変換するアダプタも製作する。
色々構想を練ると、"Super Heterodyne IF-Reflex with Regeneration"…と何でも有りのラジオになるかも知れない。

12GN7Aレフレックスラジオを親にしてDBMテスト
OneTubeCompetition2018へ出展した12GN7AレフレックスラジオをIF段以降に見たて、そこへDBMをつなぎ、SGよりLo周波数を放り込みローカルのJOPK(882KHz)を受信してみる。
DBMはMiniCircuit社のADE-1。ここでの目的はLoにどれ程の注入レベルが必要かを確認すること。写真はADE-1以外のDBMも持ち出してテストしている様子。下が12GN7Aレフレックスラジオ。
12GN7Aレフレックスラジオの最低受信周波数が正確には分からないので、600KHz辺りに合わせておき、局発を600+882KHzを放り込むと見事にJOPKが聞こえる。DBMの入力は80m長Windomが直接続でアンテナ同調回路は入っていない。
この時少なくとも0dBmのレベルが必要で、理想的には10dBm程度が好ましい事が分かった。なお0dBm以下でも周波数変換は行われるが、ロスや歪みが増えてくる。(Feb 4.2019)

DBMとIFTの整合を考える
DBMの各ポート(RF/Lo/IF)のZは50Ωである。IFTへの整合を考えると、IFTの1次側コイルをタップダウンするか、同調容量を分割するなどの手法が考えられる。前者はハニカムに巻かれたコイルに手を入れるのは至難の業だしコールドエンドにLを追加しても取り出し端子が無い、後者はZ比率から直列にするCを求めれば良いがIFTに取り出し端子が無い。それで、あっけなくIFTの1次コイルを取っ払いリンクコイルを巻くことにした。
写真はそのリンクコイルの様子。2次側は数100KΩオーダーで受ける予定なのでほぼオープン。SGから455KHzの信号を入れ同調を取り、2次側につないだオシロスコープ(1MΩ/10PF)の表示が最大になる様にリンクコイルの巻き数や位置を決定する。ここでは通過ロスを減らす目的で、コイルは2次側コイルの上に巻いている。
これで電圧利得で30倍(29.5dB)程度が得られている。(Mar 30.2019)

外見から入る悪い癖・・・ダイアル目盛と箱
電子回路を頭に浮かべながら入れ物のイメージを膨らませていた。やっぱりラジオはダイヤルだよなぁと妙なこだわりが有り、一般的に販売されているダイヤルは使いたくない。幸い大きめのダイヤルノブは複数種ありそれから選択することにするが、問題は目盛板。一番の顔と言って良いかも知れない。それで、幾つか自作してみた。円盤は印刷が出来るCD。プリンタ付属のアプリで背景に目盛画像を流し込む。原画はJacsonBrotherのダイアル目盛でスキャナで取り込み修正した。テキストを入れたければ円周上に配置もできる。オーナーのプリンタはCANONのTS9039。ただ問題が有って12cmCDはOKだが、8cmCDにはアプリが対応していない模様。それで12cm用のアプリで、画像を縮小して流し込み何を逃れる。ただ、もうひとつ問題があって、8cmCDで印刷の出来る製品は世の中にそんなに出回っていない。ようやく見つけても12cmCDの様に格安ではない。 写真は12cmCDに印刷した目盛板。これをフロントパネルにレイアウトするとぐっと締まってくる。下は8cmCDに印刷し直したモノ。
ところで箱は昨年同様にニトリで販売している木製箱を利用することにした。(Apr 20.2019)



いきなり製作が始まる
(May 6.2019)



コンバータ(周波数変換)部
本単球スーパーラジオの心臓部(?)であるDBMを使用した周波数変換部。アンテナコイルと局発コイルはTrラジオのOSCコイルをそのまま流用。測定するとQ=120程度あり採用に拍車を掛けた。本当の採用のきっかけは、低Zのリンクコイルと共振側コイルのタップ。DBMとの整合性を高めるために好都合だった。
また当初はエアVCを使う予定だったが、小型化するためにポリVCを利用。コイル群とポリVCを蛇の目基板に並べ、裏側にDBM(ADE-1/MiniCircuit社)を配したのが写真。 (May 9.2019)



いきなり組み立てが始まる
(May 10.2019)



木箱フロントパネル製作
(May 12.2019)



パイロットランプ・AF端子・電源を組み込む
455KHzレフレックス…-100dBm(40%変調、AF出力S/N=10dB)
882KHz(JOPK)…-93dBm(40%変調、AF出力S/N=10dB)
(May 14.2019)



周辺検討整理
前回からも気になっていたAGC。AF検波出力をDC分も重畳された形で帰還していたが、どうしてもAFのf特に影響する。それで、6AW8A/Pのプレートから小容量で取り出して別個に検波(整流)してDCを生成し、抵抗経由で帰還させてみた。AGCの動作レンジは拡大されるのだが、問題はAF-GAINを絞り切っても音が出る、6AW8A/P自身が大入力時に検波動作をしてしまう模様。絞り切っても音が出るのが嫌で、結局元の方式に戻した。 (May 16.2019)



作業に区切り
週末1泊で出掛けることと、来週からはもう一つのコンペ、3A5トランシーバに専念したいこともあった、この日で作業を区切ることにした。
ANTとGND端子をプリント基板に取り付け木箱左側面の取っ手穴に出した。右側面の取っ手穴はMDF材の残りで塞いだ。音響的なバスレフ効果は背面の開けた5cm穴に依存する。
並行してFacebook「真空管式無線機」サイトへ提出する資料(説明書・写真)の作成を行い深夜までにアップロードした。 (May 17.2019)



基本回路図の変遷
AGC電圧をAF検波と兼用

AGC検波(整流)とAF検波を別々にする