About Audio Hybrid Circuits
音声回路で使用するHYB(ハイブリッド)3例ついて簡単に説明する。パッシブ型HYB(例1/2)は3個のPortA/B/Cを持ち、A-B及びA-Cは相互に信号のやり取りが可能であるが、B-C間は絶縁(理想的には)された回路である。その用途は2つの信号を互いに影響なく混合・分配したい場合や、電話器のように送話器(2Wire)と受話器(2Wire)の信号線を2Wire一本にまとめたい時に必要となる。家庭用の電話器はその恩恵に預かっていると言って良い。オーディオHYBは電話器の歴史と共に発展してきたが、半導体OPアンプが出回った1970年代になると、従来のパッシブ型に変わってアクティブ方が登場した。アクティブ型HYB(例3)はOPアンプなどの増幅デバイスを使用するので、方向性の付き方が前述したパッシブ型とは事なる。
Audio Hybrid Circuit 1 (Normal Transformer Type)
送話器Tの出力はT1のCT(CenterTap)経由でLine側とBalancer側を駆動するが、両者に流れる電流が等しければT1の受話器R側には送話器の出力は現れない。PriコイルとLine及びVR1はブリッジ回路を構成している。
一方Line側からの信号に対してT1は通常のトランスとして動作するので、受話器RはLineの信号を聴くことが出来る。
回路は不平衡で記述しているが、T1のPri側を複巻きにして、片方を送話器Tのコールド側に入れれば平衡回路を構成出来る。
なお送話器Tと受話器Rを入れ替えても同じ効果が得られる。Lineインピーダンスには変動要素があるので、Balancerは実数値はもとより虚数値も含め等価になることが好ましい。
Line側にDCカット用コンデンサを挿入する場合は、バランサーVR1側にもコンデンサの挿入が望ましい。
Audio Hybrid Circuit 2 (U-Pad Type)
このハイブリッドはU-Padを使用したもので、抵抗器によるブリッジ回路で構成されている。抵抗器4本によるブリッジ回路の一辺をLineインピーダンスに見立てたものである。バランスはLineの反対側の辺(これはどの辺でも構わない)の抵抗値を増減して行う。Lineインピーダンスには変動要素があるので、Balancerは実数値はもとより虚数値も含め等価になることが好ましい。
余談だがこの方式は混合や分配回路としても非常に有効である。例えば2台のSG出力を混合する場合互いに影響を与えないで混合することが可能である。また分配する場合も負荷同士で影響しないので、単純な抵抗分配にはない特徴を持っている。
また短波帯程度の高周波でも容易に利用でき再現性がある。高周波の場合は50Ωベースなので抵抗値を50Ωに変更し、高透磁率のフェライトビーズ(FB-801)をコアにした高周波トランスを入出力に設け、HYB側を平衡回路で取り扱えるようにする。
Audio Hybrid Circuit 3 (Active Type)
OPアンプの反転動作を利用したハイブリッドである。送話器Tは送話アンプ「A」で増幅後、バッファアンプ「+1」を経由してLine出力されるが、同時に受話アンプ「B」の「+側」に入力される。また「A」出力は「B」の「-側」にも入力されているので、「B」の出力には送話器出力は現れない。Lineからの入力は「B」で増幅され受話器Rを鳴らす。R1はLineインピーダンス設定用抵抗である。SideToneはブリッジ回路ではないので、原理的にLineインピーダンスの変動に強いと言える。伝送路は不平衡で使用できるため、OPアンプを中心とした半導体デバイスを使った片側接地(シングルエンド)回路で容易に構成でき、かつ利得があるためる多くの連絡装置で使用されている。Telex社のRTSシステムやClearCom社のClearComシステムに古くから使われている。なお平衡ラインとインターフェイスする場合はトランス型に依存する事も多く、適材適所の選択がなされていると言える。
なお図は片側接地で記述しているが接地回路は省略しているので注意のこと。
関連情報
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ハイレベル(パワー)AF-HYBの製作・・・スピーカー出力混合。
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RFシグナルジェネレータの混合・・・U-PADを使ったRF-HYBを混合器に使う。