ハイレベル(パワー)AF-HYBの考察(Sep 26. 2008)
2つの受信機やトランシーバーのスピーカー出力を1個のスピーカーで鳴らしたい場合がよくある。 まさか装置側のアンプ出力をパラってスピーカーもろとも3パラだ!と豪語する方はいらっしゃらないだろうが、この場合装置間すなわちアンプ間の影響を考慮しなければならない。 お金持ちはミキシングネットワークで混合し再びPA増幅してスピーカーを鳴らすかも知れない。貧乏人は多少のロスがあっても構わないと直接抵抗ミックスするかも知れない。 そこでここにHYBの考え方を持ち込む。

平衡型で組む
SGの2信号を合成する場合、単純に抵抗ネットワーク(無方向)でやる場合もあるが、HYBを使用すると信号源間の影響が無くなり、発生したエネルギーのほとんどを負荷へ供給する事が出来る。多少でも信号源間に漏れがあると、2信号の合成時IMDが悪化することを経験している。 そんなわけで手持ちの低周波トランスを利用し、スピーカーZの代表値である8Ωを前提にしたHYBを試作してみた。
回路・・・何て事はない。HYBの中心はCTのある600Ω:8ΩのとトランスT1。このトランスのCTを中心にT3とVRで構成されるブリッジ回路をT2で駆動すれば、エネルギーはT3とVRへ供給されるがT1へは出力されない。逆にT1が信号源になりT3とVRがバランスして駆動されれば、CTすなわちT2には出力が現れない。
以上の理由から・・・

 @Port A(T1)⇔Port B(T2)=×
 APort A(T1)⇔Port C(T3)=○
 BPort B(T2)⇔Port C(T3)=○

 ・・・の方向性が成立しHYBが構成出来る。ただし回路にはバランス抵抗VRがあるため、エネルギーとしては半分(-3dB)になる。
バランス調整は各ポートに8Ω負荷を接続し、T1⇔T2間の漏れが最小限になるようにVRを調整する。 実装する場合は、小バネ接点付きJackを利用して、Plugを抜いた際8Ω負荷が終端されるようにすると良い。 トランスは8Ω:8Ωのトランスがあればそれに越したことはないが、図の様に600Ω程度にステップアップする方が作り易い。 全て8Ωで構成できれば、以下の如くトランスはT1だけで構成できる。
電力損失3dBは大きいとする向きにはこの話はお呼びでないかも知れない。

ローコストに不平衡型で組む
回路を不平衡にすれば部品点数を更に減ずる事が出来る。図はA/Cポートからトランスを排除し、直接スピーカーZで処理する例である。HYB機能はトランスに依存するため1個だけトランスを使っている。この場合2次側巻線があるので、Bポートのみ平衡回路として取り扱え実装時の融通性を持たせている。更に簡単にするにはトランスの2次巻線は要らない。2次巻線の代りに1次巻線の両端をBポートとする。この場合はBポートに接続される装置は完全に平衡回路にする必要がある。


T-1についてはZ比1:1が好ましいが意外と見つからない。それでexST-67B(25Ω/CT:4/8/16Ω)としている。 このトランスの2次側に4Ωと16Ωがあるから、Z比=16/4=4で巻数比=2(Zは巻数比の二乗に比例)となり、4Ω端子(リード線)がCTとして使える。そして1次側は25Ω/CTであるから、巻線の端から見ればCTは巻数比=1/2でZ比=1/4となり、CTは25/4=6.1Ω端子として使用できる。トランスを多用しないのでこちらの方が周波数特性等のレスポンスは良い筈である。
またローコストと記したが、ST-67Bは\1500程度するから必ずしもそうではないのでご注意を。むしろ回路がシンプルと言う主旨で捉えて頂いた方がベターかと思われる。 この様なグッズを用意しておくと、Rxのスピーカー出力をA/Bポートへつなぎ、Cポートにつながれた一つのスピーカーを共有し良好に鳴らす事が出来る。

所 見
2つの受信機出力を混合する目的なら、OPアンプの反転増幅によるイマジナルアースで、信号源間で漏洩しない回路が組める。しかしアクティブ回路なのでICや電源などが必要となりちょっとした混合をするには面倒だ。そうした場合にこの様なグッズを作っておくと便利である。
また違う目的として、2W(2線)式伝送路を使ったインターホンのHYBとしても有効である。この場合は送り側にマイクレベルをスピーカーレベルまで増幅するアンプをつなぎ、受け側はスピーカーをつなげば良い。バランスVRを調整し、自分の声が自分のスピーカーから漏れる量を最小にする。これは中々便利であると共に、2W式電話(一般の加入電話も同じ)を理解する教材として最適である。
関連情報
About Audio Hybrid Circuit・・・Audio-HYB回路全般について。
ハイレベル(パワー)AF-HYBの考察・・・動作原理など。
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