ゲルマニュームラジオにLMF501Tを組み込む

2008年3月、Junk箱の中に昔作ったゲルマニュームラジオを発見。ゲルマニュームラジオと言ってもオペアンプ(LM358)による高利得AFアンプが付いているので、外部アンテナなしでクリスタルイヤホンを鳴らす事が出来た。このラジオは、1980年台に1.9MHz付近に出没したワイヤレス電話を捜索するために作ったものである。当時1.9MHz/CWの運用時、近所からワイヤレス電話の電波発射がありビートで随分と苦労させられていた。高出力の輸出用の製品が国内市場に流れたらしい(その後UHF帯の正規製品が一般化し消えていった)。ラジオの構成は、バーアンテナ(コイル)とポリVCの共振回路で選択した高周波をゲルマニュームダイオードで検波し、LM358でAF増幅するだけの簡単なもの。こんなものでも結構実用になるから面白い。怪電波が出るとこれを手に町内を捜しまわったが結局発信元は分からなかった。アマチュア無線用のアンテナと受信機の方が遙かに高感度だったからだ。その後使途が無くなり四半世紀もJunk箱の一員になっていた。今回、LMF501Tが気に入り空きスペースに実装してみた。大した部品数じゃないが大幅な感度アップで実用性が図られる。忘れられたラジオだったがここに生き返る事になりコイツは喜んでいるに違いない。
写真はLMF501Tを追加実装したラジオ。バーアンテナの効果は絶大であるが、LMF501Tへの接続は共振回路のQを落とさない工夫が必要である。

左は最終的な回路図。バーアンテナのリンク出力をLMF501Tへ入力している。リンクコイルのコールド側はAGC回路からの帰還とバイパスコンデンサが接続される。 この基板をキャンディの入っていたポリ容器に組み込んだ。容器のフタにはポリVC・SW付VR・スピーカーを配し、関係部品は全てフタに固定。元々あったOPアンプ回路は撤去しLM386NのAFアンプを組み込んだ。ところが、転用基板はアース回りが弱くVRが中程になるとモーターボーディング。LM386Nの3番を0.001μFでバイパスし対策。電源パスコンは簡素化し部品数を減らす。
同調回路のコールドエンドは非接地だが、バーアンテナの平衡度を上げる目的でやってみた。元々電池駆動のラジオは全てがフロート状態だから・・・。

写真はポリ容器に組み込んだ様子。スピーカーは透明コーンで直径が50mmの物である。
容器自身がスピーカーボックスとなるので、剥き出しの状態に比べ相当な音質改善になる。容器の鳴りを防ぐために軍手を吸音材にしている。
スピーカー前の穴は、Jigとして金属のパンチング板を当てがい、ハンダゴテのコテ先で溶かして空けた。素材のポリエチレンが溶けてバリになるので、ドリルの歯でこれをさらう。
前述の様に容器の蓋の内側に関係する部品の全てを取り付けている。基板はポリVCが有った場所を切り落としL型に加工した。ポリVCには減速機構は付けていないがノブ径があるので同調操作で不都合は感じない。
写真の様に転がしても良いし、バケツの様に立てて使っても良い。
このラジオが机の端で鳴っていると楽しくなってくる。ちょっとした工作だが、其々に工夫を凝らす事で味が出てきて面白い。
それにしてもこのLMF501Tの能力はスゴイと思う。何しろただのゲルマニュームラジオを、立派な実用ラジオに変身させてしまうのであるから・・・。オリジナルはFERRANTI社のZN414Zだと分かったが、多くのセカンドソースの存在はその能力の高さ物語っていると言えないだろうか。
騙されたと思って是非試作される事をお勧めしたい。

写真はポリ蓋に取り付けた基板・ポリVC・SW付VR・006P電池。基板をL字に切り落とした様子が分かる。
切り落とした理由はSW付VRと基板が接触するから。
スピーカーの固定は、白エンビ板を前面からビス締めされた2本の金属ポストへ取り付ける事で押さえ込んでいる。
VRへの配線は簡素化のためにシールド線は使わずツイスト線を使った。AFアンプの利得が高いので入出力の接近は避ける必要がある。
バーアンテナの効果は絶大で、利得もさることながらはっきりした指向特性を示している。
中波AM放送は垂直偏波なので、バーアンテナは水平になるのが好ましい。
ところが周辺の電気製品からの高周波ノイズも感じるので、ラジオの向きを変えたりして聞きやすい状態を作る。
こうした作業は電磁波の存在を確かめるのに本当に良い教材になる。

 関連情報@:LMF501Tを使ってAMラジオを試作する
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