ゲルマニュームラジオを組む

ラジオ少年の殆どが生まれて初めて作るラジオがゲルマニュームラジオだった。 小学6年の夏休み、TRIOの並四コイルとアルプスのエアバリコンB-15にNECのゲルマニュームダイオードSD-46を木片に乗せ初めてラジオを作った。オーナーのラジオライフのスタートだった。
2008年4月、「ラジオ製作教室」に出展するために、ICによるAMストレートラジオ2台を作り上げると、何故か原点を見たくなり今の感覚でゲルマニュームラジオを作ってみた・・・大型のコイルとエアバリコンetc。
写真は再び木片に乗せたゲルマニュームラジオ。コイルは75mmφステアタイトボビンに巻いた超大型で、インダクタンスは90μHとAM用としては少ない。2連エアバリコンを並列接続してこれを補うが容量は約700PF。ゲルマニュームダイオードは1N60。前面に白塩ビ板をあて同調ノブとイヤホンジャックにハンドルを配し、後方にはアンテナ端子を設けた。
アンテナ及びダイオードとコイルの接続点はタップダウンが可能だが、実験では特にその必要はなかった。
アンテナ端子を無線機のシャシにワニ口でつなぐとイヤホンが鳴りだす。アンテナは数10PFのコンデンサを介してACラインをアンテナ代わりにしても同様だが、この場合はブーンとHum音が入る。オーナーの環境(放送局まで3km)ではPC用のアンプ内蔵スピーカーに接続すると程よき音量で鳴った。

こんなに簡単な仕掛けでラジオが鳴るなんて・・・これは40年以上も前に体験したあの感動と同じである。やはり鳴った瞬間はいつまで経っても同じである。
左はその回路図。抵抗は1MΩ程度が適当と思われるが、実装はしていない。またコイルのタップについても前述の通りで十分な分離が出来ており必要なしと判断、アンテナとダイオードはコイルのホットエンドへつないだ。
アンテナには静電容量が有るので、直接コイルのホットエンドにつなぐとバリコンの同頂点に変更を及ぼす。アンテナにもよるがLow-Z(電流腹)ならタップダウン、Hi-Z(電圧腹)やACラインなら数十PFのC経由でホットエンドへつなぐのが実用的と思われる。
Hi-Qの大型のコイルとエアバリコンにより良好な分離が得られている。経験的には並四コイルで組んだゲルマニュームラジオとは比較にならない程分離が良く出力も大きい。
それにしてもこんなラジオでも強電界地域なら十分実用になり、アンプ内臓のPCスピーカーをつなげば普通のラジオとして使えるから面白くなる。


 関連情報@:LMF501Tを使ってAMラジオを試作する
 関連情報A:ゲルマニュームラジオにLMF501Tを組み込む
 関連情報B:1球2ICスーパーラジオの試作・・・真空管とICのコラボ
セラミックイヤホンvsクリスタルイヤホン
ここまでずっとクリスタルだと思っていたイヤホンの中を覗いたらセラミックだった。概観は全く同じだったので気にもしていなかった。クリスタルイヤホンのインピーダンスは電子部品図鑑サイトによると190KΩ(1KHz)程度あるらしい。セラミックの8.86KΩ(1KHz実測)とは20倍も違うが、共振回路に対してそれほど負荷にならないのはAF(1KHz)での値だからと考えられる(ダイオードをタップダウンしてもホットエンドがベターだった)。

セラミックイヤホンのインピーダンスは如何ほど?
余り明確なスペックが見当たらないので私的な測定を試みた。低周波発振器出力Vo(1KHz)をVRとイヤホンの直列回路に接続。VRの両端電圧Vrとイヤホンの両端電圧Veが等しくなるようにVRを調整する。イヤホンの虚数分がよく分からないが、大まかにはこのときのVR値を読めばイヤホンのインピーダンスとしても良さそうだ。
ちなみにVo=0.472V、Vr=0.327V、Ve=0.327V・・・VR=8.86KΩ
Vo=Vr+Veとならないのはイヤホンに虚数分があるためで、周波数が変わるとVr/Vo比が変わってくると思われる。虚数分はイヤホンに後述の如く導通が無い事から容量性と判断できる。
ちなみに流れている電流I=0.327V/8.86KΩ=37μA
実はもう一桁くらいインピーダンスが高いかと思っていたので、やや驚いているのが偽らざる心境だ。ただデジタルテスターのオームレンジ(DC)をイヤホンに当てると、その瞬間ポコッと音がするが抵抗値は∞を示す。
ちなみに手持ちクリスタルイヤホンは経年変化で素子が不良だった。

セラミックイヤホンが聞こえるレベルは如何ほど?
これも実に興味ある話だが試しにやってみた。あくまでも私オーナーの耳での話だが。普通に聞こえ出すのが-20dBs(77.5mV)、0dBs(775mV)では煩い。聞こえる実用限界は-60dBs(0.775mV)で、-70dBsでは周辺にノイズがあると判別できない。また+20dBsを入れると耳が痛くなり思わずイヤホンを外してしまう事になる。

以上が判明すると理解が深まる
セラミックイヤホンのインピーダンスと鳴らすのに必要なレベルが分かると、ゲルマニュームラジオについての理解がより深まる。つまり、放送局の送信所が放つ電波を、検波(ゲルマニューム)回路までにどの程度確保しなければいけないかが見えてくる。

分離と音量はトレードオフ
分離を良くするためにHi-Qのコイルを使用する。ところが共振回路にはダイオードとセラミックイヤホン及びストレー容量などが負荷されてQが低下する。放送局間の周波数が数百KHzも離れている地域ならまだしも、当地は63KHzしか離れていない(JOPR:864KHz/5KW、JOFG:927KHz/5KW)し出力の大きい方に接近しているから、分離を考慮してコイルへのダイオード接続点をタップダウンする。確かに分離は改善されるが今度は音量がガタ落ちになる。アンテナ端子のタップダウンも同様である。ここまで来ると後は捕捉長のある長いアンテナやHi-Z入力の増幅器に依存する事になり、共振回路はなるべく負荷Qを高く取れる環境を作る段階に入る。