MRF429プッシュプルPAユニットで600W級HPA(SSPA)を実験する(May 2008)

2007年6月2日、転勤送別会を静岡の無線仲間が企画してくれた際、沼津から駆けつけてくれたJA2XCR丸尾OMからアマチュア無線にも使えそうなPAユニットをプレゼントされた。
このユニットはMRF429プッシュプルのもので、MP(マッチドペア)が使われているスグレモノ。丸尾氏によれば27MHzの工業用高周波電源のPAに使われていたC級アンプらしい。有り難く頂戴し転勤先に持ち込んだ。製造元は分からなかったがロゴマークから日本高周波製と思われる。プリントパターンはプッシュプルを意識したシンメトリックな配置の両面基板で、高周波への理解が高いことを伺わせた。
その後何もしないまま1年近くが過ぎた2008年5月、ひょっとしたら50MHzで使えないかとこのPAに興味を持ち始めた。それで早速、仕様は50Vであるが手持ち電源が無いため13.8Vを掛け動作テストを試みた。その結果50MHzはATTに近い状態で、現状では増幅など望むべくも無かった。しかしHFのハイバンド10〜28MHzに於いては増幅が出来る事を確認できた。ただ何しろコレクタ電圧13.8Vでノンバイアス(C級)動作なので本当の所は良く分からない。
ユニットを提供していただいた丸尾氏や、SSPA製作で有名なJA0TJU真貝氏の助言を仰ぎながら、このPAと闘う日々が始った。
写真はJF2KTV外岡氏提供のヒートシンクに乗せ(ビス留めはしていない)、13.8Vを掛けてテスト中のスナップ。


MRF429プッシュプルPAユニットの内容

PAユニットの回路図を起こしてみた。以前から気になっていたのだが、出力側は良くアマチュア用のPAで使用される形のトランス構造をとっていないからだ。
確認すると両Trへの電源供給はテフロン同軸をトロイダルコアに巻き、両端の芯線とシールド線(ホット)を両コレクタへ其々につなぎ、反対側(コールド)のシールド線と芯線を50V電源へ接続する 。
両コールド側にはセラミックコンが3個ずつシンメトリックに分散配置され強力なバイパスを行なっている。
RF出力はセラミックコン3個並列のカップリングにより取り出される。
更にテフロン同軸を巻いたフェライトコアトランスを2個でバラン形式でインピーダンス変換が行なわれRCAコネクタに出力される。
入力は巻数比2:1のトランスでインピーダンス変換され抵抗群を経由しTrのベースをドライブしている。
TrはノンバイアスでC級動作と思われる。ただコレクタ側のトロイダルトランスから1ターンのリンクコイルによるNFBがベースに掛けられている。
写真はヒートシンク上に3mmビスでマウントした様子。ヒートシンクの肉厚は10mm程度あるため、ハンドドリル愛好家としては腕の見せ所だった。2.5mmの穴を8箇所に掘り3mmのタップを立てた。

46V電源を用意してテストする

50V電源を探し求めたがアマチュア向けでリーズナブルなモノが見当たらない。このためアマチュア無線用13.8Vのスイッチング電源を複数用意する事にした。将来ケースやキャビネットへの実装も考慮し、余り大きなものは敬遠した。その候補にあがったがALINCOのDM-330MV(15V可変/32A)。実は単身赴任先の現用機でもある。
この電源の出力を3個トーテムポールに接続して45〜46Vを得る算段で、ネット販売店に3個まとめて見積もりを打診すると松本のハムセンアライさんが送料・手数料含めて一番安かった。早々に購入したが、この電源って当然AC側とDC側の絶縁はOKであるが、DC側を筐体から浮かす事が出来ない事が分かった。まぁしゃあないかと、3台の出力をつないだが、各筐体間で電位差が出るので注意しなければいけない。
写真は46V電源をPAユニットに供給しテスト中のスナップ。24MHz/CW約15W程度でドライブすると出力400Wに達する。 このときのコレクタ電流は約10A・・・まだ余裕があるが区切りの良いところで止めた。この状態でCW連続Keyingを30分続けると出力は380Wに低下、ヒートシンク(自然空冷)温度は27℃だったのが55.8℃まで達した。電力が20W低下するのはアンプが原因かエキサイタ(IC-756)なのか未確認。
とまぁここまではまぁまぁだったが、スペアナ波形を見て絶句。ノンバイアス(C級)なので当たり前なのだが、殆ど高調波発生器状態。したがって上記出力は当てにならない。そのレベルは基本波と変らない状況で、CWなら何とか使えるかと思ったけどちょっと真面目にやらないといけない。この状況は出力を低下させても殆ど変化は無い。ちなみに現状では50MHzは入力SWR超高、利得殆ど無しで期待薄。 やっぱりHF専用か?。それにしても音も立てず簡単に出力だけは出てくるTrやFETのアンプはスゴイ。入力は46Vx10A=460Wだから効率82%(高調波含む)で、80Wしか熱になっていない。ちなみにドライブを上げると出力500Wを得る事が出来るが、これは全高調波を含んだ値。

MRF429プッシュプルPAユニット回路図

図は基板から書き取ったものである。入力は巻数比2:1コンベンショナルトランスだが、出力側はテフロン同軸をフェライトコアに巻きつけた伝送線路型トランスを使用している。Trのバイアスはノンバイアス。ベースにあるコイル2.2μHのコールド側を取り出してそこへバイアス電圧を供給すればAB級動作が行える。
この出力は負荷試験によると50Ω相当なので、2台の出力を合成するには合成とZ変換を行なう必要がある。このこのノウハウは友人のJA0TJU真貝氏から助言を頂いている。
なお回路図で入力端を見ると100PFと220PFが並列に入っている。合計で320PFもあり低Z回路と言えど容量としても大きい。恐らく目的周波数でのSWR改善のために挿入されたものと思われる。
また各Trのコレクタから100PFが接地されているが、これも目的周波数での利得を狙ったものと推測している。
これらはワイドレンジのf特を期待するには邪魔者かもしれないが、取り敢えず実験はこのままの状態で続ける事にする。
回路図をクリックすると拡大表示します。

電力合成・出力整合トランスを作る

JA0TJU真貝氏の助言で出力合成・整合用トランスを巻く。出力合成はFT-114-43#コア1個に同軸3.5D-QEFVを4回。テフロンが最適だが手持ち関係でこれを使った。整合トランスはFT-114-61#コアを2個重ね、3.5D-QEFVを5回(ローバンド除外)巻き、更に1mmテフロン線を4回同軸に沿わせた。これらのトランスを50mmX100mmのガラスエポキシ基板上にRCA-JACKと共に配した。作りっ放しだがSWRは30MHzで1.4、50MHzで1.6であった。

電力合成・出力整合トランスを調整する

入力ポートAにアナライザBR-510Dをつなぎ、他ポートを50Ωダミーで終端しSWR特性を診た。作りっ放しの状況は前項で記した。試みに入力ポートA・B間に指を当てると50MHzのSWRが激減。これは!と思い、18PFのディップマイカを並列につなぐとSWRが低下。最終的に2個(36PF)接続すことで、1.9〜50MHz間でSWR=1.1以下を実現した。ちなみにSWR=1.5は77MHz、SWR=2は99MHzで示した。Cの効果は100Ωのj成分のキャンセルか?。

電力分配トランスを作る

Z=50Ωのエキサイタ出力を2系統のZ=50Ωの負荷(PA)に分配する。 負荷側相互にアイソレーションの必要は特に無いと言う考えで、50Ω負荷を2系統パラレルにして25Ω駆動する。 大型のフェライト・メガネコアに50Ω:25Ω(Z比2:1、巻数比√2:1)のトランスを巻く。 √2=1.414は面倒なので≒1.5と読み替え、50Ω:25Ωは巻数比1.5:1とする。 コアは43#材で、これにテフロン線を3T巻き50ΩポートA、2Tタップが25ΩポートB/Cとなる。
参考:Z比∝巻数比の2乗、但し周波数特性を含む
写真はプリント基板にRCA-JACKを含めて取り付けた様子。図は回路図。GND回路は電線で配線するより思い切ってプリントパターンを利用した方が良い。これで1.9〜50MHzまでSWR=1.1以下が得られる。ちなみに170MHzでSWR=1.3を示した。

入力分配&出力合成を試す

入力電力分配器(以下入力分配器)と出力電力合成&Z変換器(以下出力合成)を使い2ユニットへの電力分配・合成テストを行なった。写真がその様子。 右上が入力分配器で左下が出力合成器。其々のRF配線は等長のRCA-RCAケーブル(3D-2V)で行なっている。
無調整だが、この状態で50Wでドライブすると安定に合成出力500W(24MHz/CW/ノンバイアス)を得る事が出来る。
この時の電源電圧は46Vで電流は約16Aなので、入力電力=46Vx16A=736Wで、効率=500W/736W=68%。
・・・待てよ!それにしても過去に1ユニットでテストした時の特性が出ていない。即ち利得の低下と合成出力が伸びていない。
過去のテストでは1ユニットで15Wドライブで400Wを出力していたのに・・・26倍の電力利得が、2ユニットで10倍程度になっている。
入出力のSWRは良好だし、コアやアイソレーション抵抗の発熱も無い。更にドライブを増すと合成出力は600Wに達するが、入力トランスが小型のため飽和して発熱を招きインダクタンスがとれなくなりSWRの上昇が始る。
利得はバイアスを与えれば改善されるとは思うが、それにしても解せない。もう一度1ユニットでの特性を診てみようか・・・色々と楽しませてくれる。
しかし静粛に500Wupを出力する姿には真空管アンプとは違う感動がある。

RCA-Plug&Jackは何処まで使える?

昔COLLINSEのKWM-2の背面を見たら、ANT-JACKがRCAだったのに驚いた(絶縁はステアタイトだが)事がある。理由も無くMコネを使っていた少年には新鮮だった。習慣は恐ろしいもので、根拠が無くても繰り返す内に何も疑問を持たなくなってしまう。これは危ない事なので、時として自分のやっている事を客観的にチェックする姿勢が必要だと思う。
それで、ここで扱っているRCAコネクタが如何程のモノか測定してみたのが左の図。長さ25cmのRCA(P)-RCA(P)ケーブル(写真の物)の両端に変換コネクタを取り付けSWRアナライザ(BR-510D)と50Ωダミーロードを結ぶ。これから見る限りSWR上は144MHz辺りまでは問題なく使える。430MHzまで素直に悪化しているように見えるが、実は途中に凸凹が発生している。なおBNC-BNCケーブルの場合は430MHzまでSWR=1.1以下を示す。
ここでは既に500W以上の電力をRCAコネクタに浴びせているが、発熱やSWRの悪化など問題は生じていない。一部にRCAコネクタはオーディオやビデオ用と決め付けている向きがあるが、KWM-2の例を見るまでもなく馬鹿には出来ない。カバーが金属製なら同軸関係やシールドもある程度は保たれる。機械的条件が整のう場所なら大いに使うべきだろうとう考えている。

HPAユニット単体の入出力特性を確認

このページの最初でユニットの入出力の確認をしたが、特性をとっていなかったので詳細を測定してみた。
エキサイタ出力を25Wまで1Wステップで調整して出力を読んだ。左のグラフがその様子。入力1Wと2Wはエキサイタの調整が出来なかったのでイメージであるが、そんなに間違いは無いと思う。
当初の確認では15W程度のドライブで400W以上を出力したと記してあるが、この数字は入力ラインのCを外したりして状態を変えているので、余り参考にならないだろうとここで言い訳しておく。
動作状況は、オリジナルノンバイアスで・・・Vdd=46V、25WドライブでIc=10A(入力反射=1.5W)、入力=460W、出力=340W、コレクタ効率=74%、コレクタ損失120W。
エキサイタ:IC-756(24MHz/CW)。入出力電力計:Bird4410A/Bird43。
さて問題の入出力特性だが、出力200W程度まではリニアに伸びているがその先はなだらかに寝てくるが飽和感が無い。もう少しクリップ状になるのかと思っていたが意外と素直な特性だ。これにBiasを流しAB級動作に持ち込めば、利得も含めて改善されるかもしれないと期待を持つのはどうだろう・・・。
またコレクタ損失は定格の半分程度なので、リニアリティを気にしなくても良い用途なら、1ユニットで軽く400Wを超える勢いである。

HPAユニット2台の合成動作

HPAユニット単体の動作を確認したので、引き続き現状での2ユニット合成特性をとってみた。
X軸は前項と同様のスケールで0〜25Wまで入力し、その時の合成出力をY軸で示している。
カーブは単体の時と似たような形をしている。素人考えで、単純に飽和出力が倍近くになる事を期待していたが、以外や以外殆ど伸びていない。
動作状況は、オリジナルノンバイアスで・・・Vdd=46V、25WドライブでIc=11.5A(入力反射=3W)、入力=529W、出力=395W、コレクタ効率=75%、コレクタ損失134W。
入力ドライブは50Ω:25Ωトランスで2ユニットをパラ駆動している。
次なるテストはこれをアイソレーショントランスにしてみる事だ。
ちなみにドライブを増し50Wにすると出力も500Wに上昇する。また両ユニット間に位相ズレがあって出力が伸びないのではないかと思い、試しに入力分配ケーブルの片側を1m程度にしてみると大変、予想はしていたが出力合成トランスのアイソレーション抵抗100Ω直ぐ煙を上げた。
現状で400W程度の出力でCW-Keyingしてもアイソレーション抵抗の発熱は殆ど無いので、出力側の状態は悪くないと見ている。
ただ出力300W程度までのリニアリティは格段に良くなっている。Biasを与えれば相応の改善が期待できると思う。

電力分配トランスをアイソレーション化で試す

入力ドライブをパラレル接続分配トランスで実験していたが、動作データがシングル時の倍にならないのに疑問を持ち、アイソレーショントランス化してみる事にした。
試しに同軸ケーブルをめがねコアに3T巻き込んでみた。
このままだと分配出力B/C-Portが50Ωだと入力A-Portが25Ωでミスマッチになるので、前回パラレル分配に使用したトランスを50Ω→25Ω変換に利用する。ところが50Ω→25Ω変換をやらないで、直接ドライブした方が結果的にSWRは良好だった(25Wドライブで反射=5W)。
結果はある程度予想はしていたが、パラレル分配トランスとほぼ同等の結果となった。 って事は他に理由がある・・・。



合成前出力を確認する・・・思いがけず

今までの実験から診て、どうも入力側には問題はないような気がしてきた。
そこでパラレル分配トランスで分配駆動した状態で、それぞれのPA出力を出力合成前で確認してみた。 写真はその様子。
各PAユニットの出力を直接Bird43(ダミーロード終端)で読んでいる。25Wドライブで、それぞれの出力は300Wを示した。この時Ic=16A。ちなみに片ユニット負荷を外すと出力は350Wを示しIc=15Aを示す。
これには正直驚きで、もう少し早く気付けば良かったと反省している。
と言うことは出力合成の問題?、待てよ・・・ノンバイアスでC級動作なので高調波発生器だと以前書いたことを思い出している。
先ず電力計が表示している電力の素性・・・ハーモニックスが電力の中心を占めているとしたら、合成器の調相がシビアになるかも?・・・アイソレーション抵抗の発熱やコアの発熱は無いからそんな事ぁ無いか?・・・と色々と想像が巡り楽しい。
当面ノンバイアス状態でテストすると宣言していたが、動作環境を変更する必要が出てきた感じがする・・・。
余談だが、系統変更はRCA-PinコードとBNCコードの差し替えで対応している。その素早さを始めとする利便性に驚いている。これをNコネやMコネでネジを回してやっているとそれだけで苛々してくるに違いない。


再び単体ユニットに戻ってBIASテスト・・・このユニットはMPではありません

ノーBIAS動作が高調波発生による電力合成の不具合原因と考え、再び単体ユニットでテストを始めた。 2ユニット用ヒートシンクへ既にセットされたユニットを外すのは厄介なので、別のヒートシンクとユニットで組む事にする。
ユニットの位置をヒートシンク上で決め、ビス位置を罫書きセンターポンチを入れる。2.5mm穴をハンドドリルで開け、3mmのタップを立てる。
ユニット側は、ベースRFCのGND側を浮かし、ここにBIAS用ダイオード(GND向き)・RFパスコン0.01μ・AF用パスコン1000μFを入れる(回路図)。
BIASは3V/Reg電源より抵抗を介しダイオードへ与える。33Ωで約250mAx2程度のIcを得る事が出来る。調整は抵抗か供給電圧の増減で行なう。
下の写真は出力電力表示が250W(24MHz/CW)時の状況。左がノーBIAS時(BIAS電源供給カット)でベースRFCのコールド側はDC的には接地していない。右がBIAS時でIc=250mAx2時。BIASを500mAx2、750mAx2としても、或いはドライブを下げ出力を50W以下に低下させてもこの傾向は殆ど変わらない。正直言って非常に酷い状態だが、Tr式広帯域PAの裸特性はこんなものなのだろうか?。
なおサンプラーである方向性結合器のf特が6dB/OCTなので、この表示はオクターブごとに-6dBの補正をかける必要がある。高調波もさることながら、基本波と3次高調波の近傍に見えるゴミも気になる。発振か寄生振動しているのかも知れない。
スペアナはADVANTEST R4131A(10KHz-3.5GHz)。

24MHz/CW
(350W)


None Bias


Bias

BIAS状態の入出力特性は・・・

BIAS(Ic)を流したことによる入出力特性の変化を確認する。ノーBIASの時と同じスケール上にプロットしたのが左図。出力250W付近の直線性が改善されている。周波数は24MHz/CW、入力はBird4410A/4410-4、出力はBird43/1000Aを使用。BIASは250mAx2推定(温度で変化)。25Wドライブ時の入力反射=0.9W、出力=350W、Ic=9.5A。この状態で2合成すると多少の改善を見ることが出来るかも知れない。下は新に測定したInput-Ic特性。MPでないのでIcが前より低めなのか・・・?。

この出力にLPF(30MHz)を挿入したらどうなるか・・・

BIAS(Ic)を流したことによる入出力特性の変化を確認したが、これはバイポーラTrによるSSPAの限界を見たような気がする。
結局外部フィルターの力に依存するのが一番手っ取り早いと言う事か・・・。
それで帰省(080727)の折に実家から持ち帰ったSHINWAのLPF/1003(LPF)を出力に挿入して測定してみたのが左の写真。
周波数は24MHz/CW、入力はBird4410A/4410-4、出力はBird43/1000Aを使用。BIASは250mAx2推定(温度で変化)。25Wドライブ時の入力反射=0.9W、出力=280W、Ic=8.5A。
写真からは第2次高調波で-45dB、第3次高調波で-35dBとなっているが、-6dB/Octの補正をかけると、2次で-51dB、3次で-43dBと読み替えられる。
さらに気になるのは1次の近傍の不要成分の輻射が6dB程増加している。
これらの値を見るとこんなものかとも思えてくるが、現実はどんなものだろうか。
VTPAでπL出力なら、これよりはるかに良い数字をいとも簡単に実現できるのだが・・・SPPAの場合は周辺への依存度が高く難しい。

←Bias & via LPF/SHINWA"1003" 24MHz/CW(280W)

オシロスコープで波形を見ると
写真左はBIRD43/1000Aの表示。ドライブレベルを落とすと波形の尖りは低下し綺麗になるが正弦波からは遠い状況は変わらない。またBIASを0〜500mAx2程度に変化させると先の膨らみ状態が若干変わる程度で劇的な変化は無い。
写真右は写真左の状態で出力側にSHINWAの1003を挿入したもの。見た目にはほぼ正弦波に見える。AFアンプならこれで合格だと思うが・・・。こう言う写真を見ると、歪んだ波形も各種正弦波の集合体である事が何となく分かり、教科書を見ているようだ。オシロスコープはTEKTRONICS 475(200MHz)。

BIAS 250mAx2
None LPF
(350W)


BIAS 250mAx2
via 30MHz LPF
(280W)
COFFEE BREAK・・・波形は同一スケール&レンジなので尖頭値の相対差で電力比を見てみる。尖頭レベル(電圧)を比較すると2.8目盛と3.5目盛。波形が異なるのでやや難があるかも知れないが・・・電力比(オシロ)=10log(2.8/3.5)2乗=10log0.64=-1.94dB。一方前述BIRD43/1000Aの表示から相対差を見る。電力比(BIRD)=10log280W/350W=10log0.8=-0.96dB。この約1dBの違いってBIRDの特性とやせ細った波形(ハーモニックスを含む)それにLPFの損失によるものと理解して良いのだろうか・・・当然誤差も有るだろうが。要するに何でも有りで余り根拠の無い話で失礼でした。

各ユニットにBIAS基板を取り付ける

BIAS回路の状態は、今までバラック実験状態で明確にしていなかったが、一定の形にして組み込んだ。この作業は現在手持ちする3枚のPAユニット全てで行なった。
写真がその様子。18mmx8mm程度に切り出したガラスエポキシ基板のガラス面に強力両面テープを貼り、PA基板の両ベースRFC間に敷く。 銅面に両RFCのコールドエンド、バイアス用ダイオード(1N1007)、パスコン(2種)を配置する。 RFパスコンは念のため機構的にシンメトリックな位置に接地する。 赤赤金銀のモールド抵抗風の部品がRFCで2.2μH。 不足と思われる場合は各ベースRFCのコールド側から同じモノで接地する。ここに3〜5V電源から33Ωを介して供給する。 この基板を両面テープで貼り付ける手法は、困った時にスタンドオフ端子(ランド)としても使えるので好んで使っている。
なにしろ最近の両面テープや接着剤の強度はバカにできない。



再び元のユニットで単体と合成特性をみる

今日080803の福井は異常に暑く、室温は35℃に達し最悪の作業条件だった。バイアス電流だけで、触れる範囲ではあるが大分ヒートシンクの温度が上昇した。
ここで今まで関係したPAユニットの整理を行なう事にする。
UnitA:合成用A基板
UnitB:合成用B基板
UnitC:単体テスト用
今回は単体でのテストを踏まえ、再び合成用を取り出して入出−出力/コレクタ電流特性をとってみた。
入力はシングル動作及び合成動作に関係なく両Unitを並列ドライブしている。
データは同じグラフ上に展開し動作状況を見易くしてみた。左図にその結果を示す。
図から見る限り、ノーバイアスで行なっていた時のデータと同じ傾向である。即ちUnitA及びUnitBのシングル動作の特性(出力電力)が合成データに現れていない。
新たにIcの変化を追加しているが、10Wドライブ付近からシングル動作時の伸びが悪くなりかなり寝ている。
これらを見ると、ユニットと合成器間の問題のような気がしてきた。
バイアス:250mAx4(推定)、Vc:46V。入力電力計:Bird4410A/4410-4、出力電力計:Bird43/1000A。ダミー:Bird8404/Heath cantenna。室温35℃。


ユニット〜合成器間の接続条件を変更してみると・・・

単体ユニットの出力やコレクタ電流(Ic)が合成時に反映しないのは、各ユニット〜合成器間の整合の問題ではないかと思えてきた。
その最中大久保氏から興味あるデータだ!とするメールが入り、更に「合成経路長を変えてみたら!」とする助言が届いた。
ウッ・・・測定器レベルでのSWR特性は確認しているし問題ないと考えていた・・・。
整合状態が悪ければ経路長を変更すればZ変換が可能だ。そうか!と手を叩き約150cmの等長の同軸2本を用意し(従来は25cm)、ユニットと合成器を結んだ。
その様子をグラフにプロットしたのが左図。前項のグラフの合成出力とIcカーブはそのまま残し違いが分かるようにした。圧倒的な直線性と合成出力の増加が実現している。
なーんてこったぁ!である。

・・・となると何処まで出力が伸びているのかも気になってくる。
左図は入力を40W(各ユニット20W)まで増加した状況を新たに取り直したものである。
明らかに劇的な改善が実現している。ちなみに出力600Wが得られる時に入力は43W(各ユニット21.5W)で、Icの合計は23.5Aであった。
今までのIcの流れ方から見て付加が軽い(Z>50Ω)状況と思われ、経路長を150cmにする事でZ≧50Ωに近い状態になったと推測される。
Z = jZc・tanβl (Zc:線路特性インピーダンス、l:線路長、β:2π/λ)・・・が合成器側のZと併せ、程々の値を示している思う。後で計算してみたいが、大電力運用中の真のZは測定し難いので無駄かもしれないが・・・。
当然周波数によって影響されるのでマルチバンドには向かないから、この後の作業としてZ変換トランスの巻数の最適化が必要になりそうだ。


合成トランスをチェックする

ここで以下の実験を試みた。
@Z変換トランスの巻数変更
現在5t:5t:4t(5t:5t:は3.5D-QEFV、4tは0.75sqテフロン線)であるが、4tを5t及び3tに変更してみたが、4t辺りがベターだった。
AZ変換トランスを使わないで合成トランスから直出力
これは@より更に軽負荷になるため、20cm同軸では@より悪い結果になる。
Bめがねコア合成トランスに変更
入力分配用(前述)に製作したもの(3t:3t/同軸)を強引に出力合成に使ってみた。これが以外や以外、20cm同軸では不整合を起こし合成出力は400Wどまりだが、150cm同軸でつなぐと500W超(24MHz)、7/28MHzでは600W超を示しコアの発熱は殆ど無い。巻き線が細いためその発熱がある程度であった。

何れにせよ、同軸長やバンドにより整合状態が大幅に変化するので、何らかの対策を取る必要が有る。
めがねコアは秋葉ラジオデパート3Fの斉藤電気で大型めがねコア(#43材)として売られているもの。同軸は1D-2V相当の極細同軸(耐熱)。このサイズだと3tもしくは4t巻くのがやっとである。しかし不整合状態とはいえ3tで7MHzで600W超を記録しており驚きであり新しい発見である。写真はその模様。


メガネコア合成トランスをテフロンワイヤーで試作する

ここで、前述のメガネコアによる合成トランスを、テフロン線のバイファイラで試作して試みた。
前述のトランスは1D-2V相当の同軸ケーブル3tx2によるバイファイラだった。ここでは0.75sqテフロン線2tx2によるバイファイラである。
手持ちのガラエポ基板が底をつき、残っていた切れ端を利用して作ったのが写真のトランス。アイソレーション抵抗は実験中誤って異なった経路長で電力合成した時に発熱し、文字印刷が一部消えてしまったモノ。
ここでの目的は"1D-2V同軸"vs"0.75sqテフロン"の比較にある。前者の極細同軸で想像以上のデータだったので、線を太くすれば更に改善されるだろうと言う読みである。
結果はまずまずというより更に良好であった。巻数が2/3に減っているのでf特に変化があるかと思われたが確認できるレベルではなかった。
これで600W程度の合成を行ない、数分間Keyingしても暖かい程度の温度上昇であり驚いてしまう。


8月中旬になりお盆回りで帰省のため暫く更新ができないでいる。
大久保氏や真貝氏をはじめ、帰省中には井上氏(サムウエイ)からの助言などもあり、新たな戦略で臨んで見たい。


Coffee Break Harf Year (Aug 2008-Feb 2009)

出力Z変換トランスをテフロンワイヤーで試作する

半年振りの2009年2月15日、半年振りにSSPAを突く。突いたと言っても、作業が中断した昨年8月の状況を再現した程度だが・・・。
実験ベンチは半年間放置したままだが、接続状況を慎重にチェック。思い出すまで時間を要した…情けない。RFはエキサイタの出力側SWのダミー側から取っていた。コレクタ電源48Vを入れ、続いてゲートバイアス電源3Vを入れる。そしてドライブレベルを徐々に上げ25Wにする。周波数は24MHz帯でCW。400W超出力があり「オー!」と自己満足。しかし精密な合成なら600Wが期待できるはずだが状況は昨年8月と同じ。
これだけで終わるのは余りにも芸が無いので、出力Z変換トランスの線材を変えてみる事にした。同軸ケーブルとテフロン腺によるトリファイラトランスを全てテフロン腺に巻き変えた。これは工業用RF電源を作る友人の井上氏からの助言だった。しかし状況に劇的変化は無かった。従来からの課題である1ユニットでの伸びが2合成で再現されないのだ。基板の右は同軸バイファイラ合成トランス、左がテフロンで巻き直したZ変換トランス。
1ユニットでは軽く400Wを出力するが、2ユニット合成では450W程度で飽和感。過去の記述で再三出てくるがこれが当初からある課題だ。合成同軸長である程度のごまかしは出来るのだが、何とか原因を追究したい。位相かZ値かいずれかのミスマッチが考えられる。


合成入力トランス入力端子の位相を観察する

合成トランスの入力RCA-JACKで2台のPAから同軸ケーブル(今回は25cm)を経由した状態でのオシロスコープのCHOPで位相ズレを確認した。電力は合成出力で500W(24MHz/CW)。振幅レベルは1dB以下のバラツキがあったのでオシロスコープの利得でP-P値を合わせている。相変わらず波形の歪が多くそれぞれの系に特徴があるが、相対的な位相差はこんなモノかと思うが如何だろうか。片方をインバートさせてミックス表示させると、本来は一直線になるはずだが凸凹が表示で表示されその振幅は同じスケールで1Div(P-P)程度になる。CHOP表示で3Divであるから相対的にその1/3になる。しかしゼロクロス位相はほぼ一致しているのでもう変えようが無いか・・・。
これでX-Yリサージュを描いてみようかと思ったが、オシロスコープ(Tektronics247)が故障なのか操作ミスなのか表示できないでいる。
このついでに久しぶりに合成出力500W超で連続CWキーイングを約1時間行った(Vdd=46V)。PA基盤のコアや、分配・合成トランスのコア、それにヒートシンクの発熱(ACファンで送風)をみたが問題ない。このときのドライブは約50Wであるが、それ以上の電力(出力600W以上になる)でドライブする入力トランスのコアに温度特性か飽和特がある模様で、入力SWRが急激に悪化する。音も立てずに500W超を出力する姿には驚かされる、と言うより気味が悪い。ところで将来の実装を考慮しCOSELの48V電源を物色している。


合成入力トランス出力25ΩラインをCで補償する

らちの開かない状況を見かねたのか、知人のI氏からCCI社では合成トランスの出力側とZ変換トランスを結ぶ部分に100PF程度のCがGND間に入っているよと助言があった。て事は合成後の25Ωラインの事?。この日も出力500W超で連続キーイングを試みたが、その最中にダメモトで100PFの大型トリマーを手にして基板へタッチさせてみた。パチッとRF電流による突入の心地よい火花が散った。するとどうだろう出力電力計の振れが変わった。慌ててトリマーを半田付けして出力を確認すると600W超に伸びている。それでトリマーを回し最大出力点を探すが、もっと容量を欲しい方向にある。取り敢えず最大容量の100PFとし、多バンドの様子を見るために7/10MHzへ移った。するとこれはスゴイ800W超まで伸びている。詳細は後日測定しグラフ化するが、状況は劇的に変わっている。
図は現在の状況。合成トランスには従来のまま。Z変換トランスは4tのテフロン線トリファイラ。両者の接合点にCo(100PFトリマー)を装荷。PortA-PortB間の補償Cは非実装。

入力分配トランス出力25ΩラインもCで補償する
さらに入力分配器(パラ分配)の25Ωラインに120PF装荷で入力SWR改善。この状態で入力42W、各PA出力約300W、合成器入力同軸25cmで合成出力600W。24MHz、Vcc=46V/IC=19A。合成ロスも殆ど無い。600W出力で約1時間の連続キーイングを試みるが特段の異常は認められない。但しZ変換トランスのコアはそれなりの温度になるが触れる範囲。他バンドの詳細状況は別途調べるが、単体PAユニットの特性がそのまま出ている雰囲気だ。
(合成トランスコア温度:暖かい程度、Z変換トランスコア温度:上昇するが触れる範囲、入力電力計:Bird4410&4410-4l、出力電力計:Bird43&1000A、Dummy:Bird8404、エキサイタ:IC-756)

段々欲が出てきてマルチバンド化を意識するようになる。現状のまま他バンドの出力を確認すると・・・3.5MHは能力外、7MHz:800W、10MHz:760W、14MHz:340W、18MHz:330W、21MHz:450W、28MHz:540Wと言ったところ。14/18MHzは入力SWRが悪化しエキサイタの出力制限がかかっている。

補償したトランスで2ユニット合成の入出力特性を見る
左は上記条件で24MHzのInput-Output/Ic特性(Vcc=46V)。但しZ変換トランスのCo=220PFで最大出力。出力はほぼ直線で伸びている。Icは電源の電流計で読んでいるが目盛りが荒く読み取り誤差が多い。下はCoで補償したトランス。

50V電源(ADA1000F-48)で動作させる

COSELのSW電源ADA1000F-48が到着した。工場出荷時は出力48Vなので、微調整VRで50VにセットしてHPA電源として供給してみる。HPA側の動作確認と電源の動作状況の確認だ。ADA1000F-48は数字が示す様に1KWの能力がある、COSELのサイトによれば自然空冷と強制空冷で取り出せる定格電流が異なる。例えば強制空冷時は21A/ピーク41A、自然空冷時は16.5A/ピーク41.5A(AC200V時)と言った具合だ。
先ず600W出力で60分CWキーイング時の温度上昇を確認した。また電圧が上がった事による信号源Zの変化に対する合成状況の確認する。トリマーを回してCoを調整するとピーク位置が46Vの時より減る方向になった。さらに合成時の出力のが改選され最大出力が伸びた。600Wキーイングを60分も続けるとさすがのBird8404も匂いを発しオイルヒーターと化す(来月の電気代が気になる)。HPAの放熱については幾つかのファンを用意して適正化を行った。例えば送信開始時の600W出力が60分キーイング後においても維持される事を条件としている。その結果PAPST/3212(15V)2個を12Vで使用する事で実現。電源のADA1000F-48は自然空冷だと相応の温度上昇があるが、写真の様に軽い吸出しで劇的な改善を得る事が出来た。
写真の左が電源のADA1000F-48、中央はHPA2ユニット(前後に電力分配器と合成器)と送風ファン2個、右はBird43(1000A)。

左はVcc=50Vでの入出力特性。Vcc=46Vとの違いを比べるために前項の特性も併記している。またVcc=50VでのCoの値は、600W程度で最大出力に調整すると約150PFになった。これはVcc=46Vの場合は220PFに比し明らかに異なっており興味を引く。なお電源を交換した事によりIc値を読む事が出来なくなている。
心配していたCOSELの電源ADA1000F-48の動作は今のところ完璧に近い。電源投入時のラッシュ電流もコントロールされており実にスムーズなスタートを見せている。今までの電源は電源投入時のラッシュが大きく電源SWで火花を散らし易かったが見事である。大きさや重量も驚く程小さくケースへの収納に弾みが掛かりそうだ。もう少し早くこの電源の存在に気付けば良かったと悔やんでいる。価格もALINCOのDM-330MVが3台分よりリーズナブルであるから。
HPAの冷却は重要な課題だ。ヒートシンクのサイズが限られているためファンに大きく依存する。一定量の風量が得られると600W出力キーイングを60分続けた後でも出力の低下が無く驚く。また出力合成・Z変換トランスへも風が流れるように工夫を凝らす。ちなみにダミーを気遣いながら800W出力で20分程度連続キーイングを行っても出力の低下は確認できない程であった。この際、ヒートシンクや出力合成・Z変換トランスのコアは素手で触れる範囲であった。冷却が如何に重要な技術であるかが身にしみて分かる。

最大出力(ローディング)とCoの関係の考察
先にも記したが、各段階の出力で最大値を求めるとCoの値が微妙に変わってくる。気になり800W出力で出力最大になるようにCoを調整した所、150PF→220PFになった。この時の出力は900W近くに達する。過去のデータを整理し、出力最大とCo値の関係を見ると・・・。
@Vcc=46V時・・・600Wで約220PF(Ic=25A)
AVcc=50V時・・・600Wで約150PF(Ic=?)
BVcc=50V時・・・800Wで約220PF(Ic=?)
・・・となっている。この違いは出力に応じてデバイス側のZが変動(Vcc一定に対しIc増加・変化)しているためと考えられる。したがって直線性を見る場合はどの出力に負荷側を合わせるかがポイントになる。
ここでは飽和出力(或いは運用最大出力)にCoをセットしておかないと適正負荷にならず、入出力特性の高出力側が湾曲して来る。
上のグラフはその傾向が現れている。出力飽和点付近でCoを最大出力にセットすれば湾曲点が更に高い方へシフトすると思われる。右はその考えに基づき、Co調整を800Wで行ったものと600W(前掲)のものとの比較。800Wで行うと相当な改善が見られる。しかし何処に仕様を置くかは難しい。
余談だが、この状況を見るとマルチバンド化は、こまめにCoを切り替える(そう言うメーカー品もあるらしい)か一定の割り切りが必要に思われる。或いはリアクタンス分を極小に追い込んだトランスの製作が必要になりそうだ。広帯域アンプなのに薮蛇になりそうな雰囲気もある。


ダミー(600W連続)を気遣いながら入力を瞬間的に60Wまで上げると、出力は950Wを超えた辺りで飽和領域に達する。これは出力Z変化トランスよりPAユニット入力トランスの飽和の方が早そうに見える(入力SWRから)。
更に65〜70W程度に上げると出力は1KWに達する。この領域では既に出力Z変換トランスは飽和領域に入っているものと推測される(コアの発熱から判断して)。コアのスタック数を増したら1KWを安定にクリアするかもしれない。
現状では各コアの発熱とBirdダミーロードのブッチンを気にしながらの作業(測定)である。
言葉だけでは分かり難いので入力70Wドまでの入出力特性をとったのが左のグラフ。当初に比べると相当な改善が見られ、非常に良好な状態と言えないだろうか。
共振に依存しないTr方式のHPAの動作は手軽そうに見えるが、実はリアクタンスは多かれ少なかれついて回る。今どの辺りで動作しているのか、或いは影響の無い領域は何処なのかと言った事を常に意識しなければいけないと反省している。・・・ここはAFじゃなくRFなんだと。
ところでIcが読めないと全体の状況が掴み難い。実装を視野に入れて電流計やケースの物色を始めようと思う。

キャビネットへの実装を考える

電気的には未だクリアしない課題が有るのだが、気分転換に収納するキャビネットの工作を始めてみた。ケースはTKACHI電気工業のMS149-37-35BSとそのシャシであるMSC37-35を秋葉原東京ラジオデパートのSS無線から取り寄せた。バイポーラTrのHPAなので冷却が命とばかり、大型の吸入口を前面パネルの左右に配置する思い切ったデザインにしてみた。中央にはヤマキの額縁メータを配置して雰囲気を味わっていたが。福井では気の聞いたSWが手に入らず困惑していたが、それでも何とか工夫してMIYAMAのDS-326を取り付けてみたのが下の写真。ワープロでプリントアウトしたシールでレタリングしてみたが随分と印象が変わってくる。まずまずのルックスじゃん!と自己満足。ケースは型名が示す通り幅370mm・奥行350mm・高さ149mmである。


フロントパネルのレタリング(暫定)と同軸リレー

左は雰囲気を出して作業に変化をつけるためにフロントパネルのレタリングを試した。といってもメーターセレクトとバンドセレクト表示を追加しただけだが・・・。MeterSelectとかBand表示はしていないので、最終的にまとめたものを貼り付ける予定。
下は2回路2接点の同軸リレー。リレーは松下電工のAR1021、ケースはタカチのTD5-8-3N、RF配線はリン青銅板を中心に使用した。Mコネクタを基本にしたが、エキサイタ(TRCV)側はBNCにした。その理由は店にMコネが3個しかなかったから手持ち品を使っただけの話。これでSWR=1は144MHzバンドにも及んだ。電源端子はDC-JACKにしてある。このリレーは方向性があるので注意する。DC-JACKの横に小穴が2個見えるが、実はCMカプラの内臓を考えたのだが、余にも狭いので取り敢えずここでは断念し、外から銅テープを貼っている。


ケースへの実装を考える(内部・背面配置)

入力分配器と出力合成器の設置場所に苦慮していたが、取り外しが楽な様にSSPAのヒートシンクへL型金具で固定しPA基板と同じ高さで並べた。一体になるのでケーブルの抜き差しが最小限に抑えられる。 背面の吸出しファンは風量を考慮して決める。ここでは事前テストの結果PAPST社の90mm角とした。ファンの前にSSPAユニットを置く。エアは前面両サイドのネット穴から入り、SSPAのヒートシンクを通過して外部に排出される。この際電源やRFトランス等の発熱を巻き込む。同軸リレーは背面の一番端の最下部へ。30MHz/LPFは右側面へ内側から固定。。バンドLPFは未だテストしていないが30MHz/LPFの上かメーターの奥にスペースを使う。SSPAの基板面が露出しているので、眺めていいるとサブケースで覆いたくなってくる…。余談だが3D同軸のMPコネを買いに行ったら何と\750…とたんに財布の口が閉じ口は開いたままに。秋葉なら\150なのに…。


分配器・合成器の取り付け方法見直し

入力分配器と出力合成器の取り付け方法を見直した。これにあわせ合成器基板のサイズ修正を行う。
写真左はLアングルに入力分配器と出力合成器を固定。さらにBIAS用DC-JACKと3端子REG(5V)を取り付けた。配線はここから基板へ行う事にした。現時点でトランスの巻線は全てテフロン線に変わっている。その理由は、同軸ケーブルはスペースファクタが悪く、ここで扱う周波数では特性の違いは感じられなかったためだ。


写真左はパッケージ化されたSSPAユニットの裏側。写真上はその上面で、分配・合成のRCA-RCAピンコードによるジャンパーが行われている。
大分雰囲気が出てきた。

何となく形に・・・(内部レイアウトと背面レイアウト)

現状のレイアウト状態を写真に記録した。トップビューとリアビューを示す。トップビューは各ブロックの位置関係が分かる。DC12V電源は小型のACプラグと一体構成になったSW電源を使用している。これをAC側はファストン端子でつなぎ、DC側はDC-JACK経由で出力している。SW電源は両面テープでシャシに固定している。壊れた時は特殊な加工をしなくて済む様にしている。リアビューは本邦初公開かと思う。パネル左下の内側からリレーボックスが入出力Mコネを除かせている。中央は90mmファンPAPST3412。RCA-JACKは右が外部スタンバイ用、左がALC用(未配線)。今回はヒューズを止めNFB(15A)としてみた。この状態で運用しようと思えば24/28MHzで可能と思われる。しかしバンドLPF・CMカプラ・ALC等の開発・実験要素と、メータ回路の配線と総合的内部シールド機構の製作等が残っている。


マルチメータの目盛板を作成する

マルチメーターの目盛板を作成。Yamakiメータのビス4本(裏2本・横2本)を外して分解、アルミ製目盛板をビス2本外して取り出す。目盛版をスキャナーでPCに取り込み、作画ソフトで目的に合ったスケールを入れる。メーターは可動コイル型DC電流計なので目盛は基本的にリニアスケールである。表示スケールはドレイン電圧(Vd/100V)、ドレイン電流(Id/30A)とし元の目盛を利用した。電力(Po/600W)は元の150W目盛の4倍値を書き込んだ。ただ検波ダイオードの特性があるのでリニアリティは別途。高質紙へプリントアウトして切り出し、ビス穴を焼ゴテ先端で開け所定の位置にビスと両面テープで固定する。左は新旧の目盛板と分解したメーター。下は作成した目盛版を実装した様子。これで大分雰囲気が出てきた。


Icメーターの分流器

Yamakiの電流計が200μA/FSなので、これを30A/FSで使うための分流器を製作する。正規の30A分流器がYamakiの製品にリストされているが高価なので低抵抗値の5%級セメント抵抗を並列につないで代替する。
Yamaki額縁メーター用の分流器(30A用)と倍率器(100V用)を計算する。このメーターは200μA/0.3V(FS)、内部抵抗Ri=1500Ωでこれらは既値である。

@測定電流I=30A(FS)にするための分流器Rsは、メーター電流をIm、メーター端子電圧をEとすると・・・Rs=E/I-Im=0.3/30-0.0002≒0.01Ω
A測定電圧E=100V(FS)にするための倍率器Rmは、メーター内部抵抗をRiとすると・・・Rm=(E/Im)-Ri=(100/0.0002)-1500=498.5KΩ

分流器は0.04Ω/5Wのセメント抵抗(5%)を4本並列につなぎ構成する。仮に電流30Aが流れるとP=0.01Ωx30A=0.3Wが消費される。このセメント抵抗は秋葉原東京ラジオデパートの桜屋電機のサイトショップで入手した。
写真は分流器に使用したセメント抵抗(4個)とテスト風景。直列に10A程度の電流系をつなぎ振れを確認する。

CMカプラ(FWD/REF_POWER計)について

FWD(進行)電力とREF(反射)電力はCMカプラ出力でメーターをマイナス電位で振らす。FWD出力はVR経由でALCに、REF出力はSWR悪化時の検知にも流用出来るのでSSPAでは重要な部分と言える。
CMカプラはリレーボックスへの実装を試みたがスペースの問題で方針変更。手元にあった1979年に購入のDAIWA/CN-510のCMカプラを流用した。検波出力がプラス電位なのでダイオード方向を逆にする。またFWDとREFで抵抗定数が異なる場合がある(REF側が小電力)のでこれも是正する。ここではFWDもREFも同じスケールにしている。Mコネを生かすためにSSPA背面パネルに21mm丸穴を2個と3mmの小穴1個を開けセルフタップビスで固定。
校正は概値電力をFWDで表示させADJ-VRで調整する。そのときREFのヌル点をカプラ内のTCで調整する。続いて経路を逆にして同様の調整を行う。
写真左は背面パネルに取り付けたCMカプラ。下は背面側からの様子。1979年の購入・・・はさすがに汚れが目立つ。


メーター切替SW回りの配線

前後するが左はメーター切替SW周辺の様子。50VラインからのRm(498.5KΩ…実は500KΩ)経由でVc、そのリターンラインのRsからのIc、CMカプラからのFWD/REFがADJ-VR経由で2回路5接点のロータリーSWへ配線される。SWは切替時に一度開放になる物を選び不要な結合を防ぐ。倍率器や分流器のために電源をメーター周辺に導くのはリスクを伴うのでやらない。電源側で処理した低レベルのDCを引き込む事とする。写真はその様子・・・左上に50Vリターン回路に挿入した分流器(白セメント抵抗)と、リード線諸共に収縮チューブに収めた倍率器(黄色)が見える。ラグ端子にはFWD/REFレベルADJ-VR(50KΩB)も。右のSWはバンドLPF切替用の2回路6接点。下は久し振りの前方からのスナップ。メータはVc≒50Vを示し、メーターランプやSWのランプも灯してみた。また吸入口のネット内側にエアフィルタを貼った。クリックすると、400W/CW-Keying時のメーター切替ビデオが見られる。



左は改修したCN-510のCMカプラと実装時のメーター回路とALC回路。
ALC電圧の取り出しはカプラのFWD出力を抵抗分割してVR経由でRCAコネクタへ出力している。
同時にFWDメーターへ50KΩVRで供給する回路がパラ接続される。VRは約35KΩ程度であるが、メーター切替SW側でオープンになるので、その動作でALC電圧が変動しないように、またALC端子にエキサイタをつないだ事でメーターの振れが変動しない様に、信号源(検波出力)より大分高い抵抗値になっている。
REF側はFWDも同様の不可状態になるように22KΩで終端している。
偶然だと思うが、メーターに振られたスケールと実際の電力はまぁまぁ合っている。
CN-510の改修についてはCMカプラの流用と題して別項にまとめている。