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1年生からの贈り物
 


 高山佳己 トップHP

私だけの大切な宝箱にそっとしまってある1年生の「とっておきの姿」をプレゼント!


 小さな一年生の担任をやっていると「先生,お若く見えますね」と言われることがある。それは一年生のほのぼのとした「優しさ」「純真さ」の世界にふれているからに違いない(と私は思っているー)。この世界,まさに子供たちからのプレゼント。私だけの大切な宝箱にそっとしまってある。今回は,その宝箱の中から,『とっておきの姿』をお届けしよう。 
■みんなで使うもの■
「教室にあるもので、みんなで使うものには何があるでしょう」
と私は,子供たちに,こう尋ねた。「サッカーボール」「テレビ」「学級文庫」「ロッカー」「机」「椅子(いす)」「黒板」「チョーク」…と,次から次へと出てくる。実物を指でさしたり、掲げたりした。授業は順調。私は満足していた。
 ところが,最後にとんでもないものが出てきた。ある子が自信を持って発表する。
「高山先生で〜す!」 
 一瞬,耳を疑った。一体私は何なのだ!?と思う間もなく,
「そうだ。そうだ。」
と声が上がる。
 その声は,たちまち教室中に広がっていった。私が唖然(あぜん)とした顔でいると,
「だって、高山先生、みんなで使うよ」
と追い討ち。そして、
「そうそう、高山先生、みんなの役に立ってるもん!」
思わず「そりゃ、うれしいなあ…」と私。
■駅のプラットホーム■
 遠足の事前指導。教室の中を駅や電車の中に見立てて,電車に乗る練習をした。素早く安全に乗る方法,一般乗客に迷惑をかけないマナーを身につけるためである。
 何回かシミュレーションを行い,私は最後に
「みなさん,合格!」
とキッパリ言った。
 ところが,子供たちは,しいんとしている。「やったー」と大喜びする子が一人もいない。でも,顔を見るとにこにこしている。
 一人の女の子が私にささやいた。
「あのね。ここは,駅のプラットホームだから,大きな声を出してはいけないの。」 
■セミの赤ちゃん■
 掃除が終わった後,金原君が,セミの幼虫を教室に持ち込んできた。(掃除の時,何をしていたのか想像がつくのだけれど)あっと言う間に黒山の人だかりである。私は,
「このセミの赤ちゃん,どのくらい土の中にいたと思う?」
と尋ねた。「一日」「一週間」「一年」と,いろいろ出る。
「このセミの赤ちゃん,みんながオギャーって生まれたときから,ずうっと,暗い土の中に眠っていて,今日ようやく穴から出てきたんだよ」
と教えると
「へえーっ…」
と驚嘆の声。続けて
「この幼虫,二時間かかって殻を脱ぐんだよ」
と私。すかさず森田君が,
「僕知ってる!最初は白いセミなの。それで段々色が付いていくの」
と,ぺらぺらとしゃべりだした。私はさらに尋ねる。
「それじゃー,殻を脱いで大人になったセミさんは,どのくらいの間,生きていると思う?」
「分からない」「一週間」「六年間」とこれまたいろいろだ。私はやや声を落として,
「セミさんは,大人になったら十日間しか生きていられないの」
と語る。 
「へーえ…!」
とまたもや驚嘆の声。
 今度は森君が,
「僕,セミにおしっこ,かけられたことある!」
と言いだした。私は,にこにこして
「そう,森君におしっこかけるのも,その十日のうちにするんだよ」。
 セミの赤ちゃんは運動場の片隅のクスの木の根元に戻されたのであった。