「普通にやってれば,二回試験は恐れる必要はありません」

しかし,教官の「普通」と修習生の「普通」の開きは大きい。

実務法曹となるための最後の試練,後期修習。




懐かしがっている暇は無い
1年ぶりに帰ってきました! 懐かしいです。発車メロディがなぜか途中で途切れる池袋駅の東武東上線も,樹林公園を優雅に散歩するゴールデンレトリバーも,なぜか料金先払いの西武バスも,寮の門にいる警備員のおっちゃんも,白壁に囲まれてただただ殺風景な寮の個室も,教壇から一望できる階段型教室も,すべて1年前のままです。ついでに,戻ってきた自分も,1年前のまま・・・だったら非常にまずいわけですが(汗)。

クラスの顔ぶれも懐かしいですね。まぁ,正直に言うと,名前を忘れてる人も何人かいましたけど(苦笑)。名簿を見てあわてて思い出しました。つくづく1年という歳月の長さを感じます。前期に比べると,みんな表情がどことなく自信に満ちているような気がしました。「実務修習を,頑張った人と,そうでない人との差の開きは大きい」・・・かつてそうおっしゃった教官の言葉が頭をよぎります。

大講堂で開始式を終えた後,教室で一人ずつ,実務修習で印象に残ったことを話していきました。「色々な事件を見れて,充実した1年を過ごした。ただ,研修所的な勉強はほとんどやっていないので,2回試験は心配だ。」といったコメントがほとんどですね。なんせ,あさってには早速,民裁の起案を控えてますから。どこか不安のただよったコメントが多かったです。自分も含め,修習生の偽らざる本音でしょうね。

引き続いて,民裁・刑裁の講義がありました。刑裁では,なんと抜き打ちテストが!! 一部の人は,55期の先輩からあらかじめ情報を得ていたようですが,ほとんどの人は寝耳に水。自分は,前日の夜中に噂を聞いてたんですが,もう既に手遅れでした。証拠意見と刑訴法309条の異議をごっちゃにした答案を書いて,見事に玉砕ですよ。新実例刑事訴訟法をしっかりと読み込んでおけば解ける問題だったようですが。・・・それにしても,抜き打ちとは・・・。後期修習は,本当に容赦なしなんだなと,身をもって感じた出来事でした。懐かしがっている暇は,どうやら無いようです。
Date: 2003/07/02



傍聴席弁護人?
2日目の講義は,検察と民弁です。いずれも,前期とは教官が交代したため,軽い自己紹介から始まりました。まぁ,自分的には,このあたりがちょっとした息抜き時間なわけですが,修習生の中には,こういった教官の自己紹介まできちんとノートをとってる人もいますから,恐れ入ります。

検察は,昨日の民裁・刑裁と同様,わりと前期修習のおさらい的な講義でしたが,民弁は結構厳しかったです。相続事件の法律相談記録に基づいて,弁護士としてとるべき行動を検討するというもので,事前に宿題も出されていました。・・・もっとも,自分を含め多くの修習生は,昨晩のクラスコンパで飲みまくりだったため,ほとんど手つかずの状態で臨むことになったわけですが(苦笑)。それでも,いざ授業が始まると,どうにかこうにか形を作れるあたり,修習生というのはさすが優秀な人間が集まってるなぁと感心させられました。

あと,来月に実施される刑事模擬裁判の配役の希望調査がありました。「裁判官」「検察官」「弁護人」「傍聴席裁判官」「傍聴席検察官」「傍聴席弁護人」の中から,自分のやりたい配役を選んで,そこに名前を書き込むんですね。自分は何をやろうかなーと迷いつつ,みんなの様子を窺っていると,どうやら「傍聴席弁護人」が最も人気が高いらしく,あっという間に定員まで埋まってしまいました。おそらく,一番ラクだという考慮が働いているのでしょう(苦笑)。・・・あ,いや,決してサボりたいわけじゃないと思うんですよ。ただ,模擬裁判は2回試験(卒業試験のことです)直前の時期に実施されるため,できれば試験勉強に時間をとりたいという心理がどうしても働いてしまうわけです。修習生というのは,そういう弱い生き物なんです。自分も,本当は「弁護人」をやりたかったんですが,直前期に試験勉強ができないのはやっぱりつらいと思い,「傍聴席検察官」を選んでしまいました。・・・もっとも,そのかわりに,民事の模擬裁判(交互尋問)では代理人役をやることにしたので,そちらで頑張ろうと思ってます。今までの模擬裁判では,裁判官役しかやったことがなかったので,ちょっとどきどきしますねー。
Date: 2003/07/03



「私が起案の採点をしている時の顔は,修習生に見せられないですねぇ。」
後期修習も始まったばかりだというのに,さっそく民裁の即日起案です。全く書ける気がしないので,昨晩は,白表紙を朝の4時半ころまで必死で読んでました。一夜漬けでどうにかなる類の物でないことはよくわかってるんですが,それを承知の上でついつい悪あがきをしてしまうのが,修習生の悲しい性です。実務修習を経てきたというのに,万が一,前期よりもグレードダウンした起案を書いてしまったら,それこそ教官は激怒するでしょうから・・・。教官自身,「私が起案の採点をしている時の(恐い)顔は,修習生に見せられないですねぇ。」と冗談でおっしゃってましたが,その言葉自体が既に修習生にとってはものすごい威嚇力を持っているわけです(苦笑)。

今回の起案は,とある所有権移転登記請求事件を素材に,訴訟物,当事者の主張の整理,争点及び事実認定その他について記載せよというものでした。前期修習と微妙に問いかけの仕方を変えるなど,ひっかけ方がなかなかいやらしい・・・。自分,気づかずに,あやうく訴訟物の具体的説明まで書いてしまうところでした。当事者の主張整理は,白表紙で昨晩漬けておいた知識を殴り書きです。で,結論としては,直感的には請求認容かなと思ったのですが,何を血迷ったか,請求棄却で書いてしまいました(汗)。しかも,時間不足のため,最後の小問は手つかずのままです。・・・・自分は,実務修習で一体何をやってきたんだぁぁぁぁぁ・・・・。疲れ果てて,部屋に戻ると,死ぬようにベッドに倒れ込んで朝まで眠ったのでした。
Date: 2003/07/04



関東版「讃岐うどん」に挑む
せっかくの休日にコンビニ弁当も味気ないかなぁと思い,駅前まで昼食を食べに行くことにしました。研修所前の停留所から,バスで15分。和光市駅前で降りて,ふと見ると「讃岐うどん」と書かれたのぼりが目に飛び込んできました。そこはうどん屋ではなく,ごく一般的なフランチャイズ系の軽食レストランだったので,ちょっと心配だなぁと思いつつも,ふらふらと吸い寄せられてしまい,気づいたときには「ぶっかけうどん」を注文してました(笑)。で,運ばれてきたうどんを食べて,一言・・・。

「なんじゃこりゃあああぁぁぁぁぁぁ(『太陽にほえろ!』の松田優作風に)」

率直に申し上げて,かなりいただけなかったです。ぶっかけうどんといえば,醤油のように濃いダシが決め手なのに,おそろしく薄いダシを使ってるんですよ。まるで食後のそうめんつゆのようでした。あと,大根おろしの量も無駄に多すぎですね。ただでさえ薄いダシを,より一層水っぽくしてどないすんねん,という感じです。讃岐っぽいのは,固めのうどんを使ってるところだけのような気が・・・。これで900円もとるなんて,もし高松だったら,客がキレて暴動起こすんじゃないかと思いましたね。

ま,今回のお店は,一般のレストランでしたから,仕方ない面はあります。聞くところによると,高松のうどん屋が東京に支店を出している所もあるのだとか。来週は,そちらにチャレンジしてみようと考えております。おいしいうどんを食べないと,やっぱり勉強も調子でないですからね(どんな言い訳やねん)。
Date: 2003/07/06 (休日特別版)



久しぶりの抗弁
今週は,月・火・水・木と4日連続で起案があります。前期修習の日記でも書いたとおり,研修所の起案は,朝の10時から夕方の5時までぶっつづけで記録を検討し書面を作成します。しかも,後期の場合,全ての起案は卒業の可否に直結すると言われているため,みな戦々恐々としているわけでして・・・。1年間実務修習のぬるま湯につかってきた修習生を無理矢理引きずり出し,冷たい滝の中へぶちこんでお経を読む修行をさせているような感じでしょうか。まだ火曜日だというのに,もう明日休んでしまいたいぐらいの疲労感です。

今日は,民事弁護の起案でした。とある売買代金請求事件を素材に,最終準備書面を作成せよというものです。手続の流れからして,ちょっと原告側が不利なケースなので,できれば被告側の準備書面を書きたいなぁ・・・と思ったのですが,無情にも問題文は原告側に立つよう要求していました(苦笑)。後期修習では,なんか,やけに形勢不利なケースについて起案をさせるものが多いなぁと感じます。それがすなわち起案の難易度にも直結してくるわけでして,さすが教官室もぬかりないなぁと感じます。

さて,研修所に戻ってきて1週間経ちましたが,記録の読み方にしても,メモの取り方にしても,ポストイットの使い方にしても,まだ今ひとつしっくりきません。思い立ったところにポストイットを貼っていくと,記録を読み終えるころには,数え切れないほど大量のポストイットが貼られていて,何が何やら訳が分からない状態になってたり・・・(汗)。あと,実務修習では全てパソコンで起案をしていたので,手書きによる起案に非常に違和感を感じますね。パソコンだと,とりあえず思いついた部分から書いていって,あとでカット・ペーストで編集すればいいわけでしょう。そのクセが抜けなくて,1つの問題点を見つけたら,もうそれを書かずにはいられないんです。書きたくて書きたくて,どうしても我慢できないんですよ(苦笑)。で,記録の吟味が十分でないまま,見切り発車に近い状態で起案を書き始めてしまい,最終的にはぺらぺらの起案ができあがるわけです。書きたい気持ちを抑えることを覚えないと,この先かなりまずそうな気がしてきました。

久しぶりに書くからまだカンがつかめてない,という「久しぶりの抗弁」は,そろそろ通用しない時期に入ろうとしています。
Date: 2003/07/08



ホッチキスをめぐる不毛な争いに,大いなる疑問を感じる
起案ラッシュ・3本目は検察起案です。とある公務執行妨害・殺人未遂事件を素材として,起訴状を作成し,事実認定上・法律上の問題点及び情状を記載せよというものでした。

正直言って,自分はあまり刑事系科目が得意ではありません。検察も,前期修習の起案でとっても嬉しくない評価を一度戴いた経験がある上,記録の分量が多いため時間不足に陥る可能性が極めて高いんですね。そんなわけで,今日は他の科目以上に気合いを入れて記録を検討しなければ,と思って起案に臨みました。もっとも,昼食の時に,中庭でいずみちゃん(研修所のいずみ寮周辺に住みついている猫)が寝そべっているのを発見してしまい,つい一緒に遊んでしまったのですが・・・(おいっ)。

それでも,今日は初めて30枚を超える起案を書きましたよ。刑事が苦手な自分にしては,よく頑張りました。メインと思われる殺意の認定にもう少し分量を割ければよかったのですが,なんだか広く浅くといった感じの起案になってしまった感はあります。起案終了後にクラスの雰囲気を見ていると,どうやら今日はみんな割と書きやすかったようですね。・・・それでも,いざ採点されて戻ってくると,実はしっかりと点差がついてそうなので恐いんですが。

さて,起案を書き終えると,ホッチキスで端をとめて,5時までに提出することになっています。そのために,教室の前のテーブルには,小ホッチキス3個と,大ホッチキス2台が備え付けられているんですね。自分,普段はあまりたくさんの枚数を書かない(書けない)ので,小さなホッチキスで十分足りてるんですけど,今日は珍しくたくさん書いたため,大きなホッチキスを使わなければならなかったんですよ。ところが,今日はみんなたくさんの分量を書いているため,提出時間間際になって,大ホッチキスに人が集中してしまったのです。しかも,タイミングの悪いことに,こういう時に限って大ホッチキスが1台壊れてたり・・・(汗)。そうすると,残りの1台を取り合うことになるわけです。そらもう,この争いは熾烈ですよ。ホッチキスの順番待ちをしてる間に提出時間が過ぎてしまっても,大目に見てもらうことはできません。全て形式的に一律に「時間外提出」のでっかいハンコを押されてしまいますから,みんな必死なんです。・・・このシステム,なんとかならないんでしょうかねぇ。法律のプロフェッショナル養成機関で,ホッチキスの取り合いをするなんて・・・やってて悲しくなってきますよ。次回の起案あたりから,「マイ・ホッチキス」を持参する人も出てくるかもしれません。
Date: 2003/07/09



確かに,全然違う
「実務修習を経て帰ってくると,さすが起案内容のレベルが前期とは全然違います。」 そんなことを,教官の誰かが言っていた気がします。当時は「ほんまかなぁ」と半信半疑でしたが,いざ実務修習を終えて帰ってくると,この言葉が真理を言い当てていることがわかりました。・・・ただし,逆の意味で・・・。そう,前期修習と比べて,自分の起案のレベルは明らかに落ちてしまったのです。自分が前期修習中に書いた起案を改めて読んでみて,愕然としました。ここ数日書いた起案と比べると,間接事実の拾い上げ方も,供述の信用性の評価も,文章の読みやすさも,すべて前期修習の時の方がはるかに上なのです。かなりショックを受けました。これは,冗談でも謙遜でも脅しでもありません。裁判官志望から弁護士志望に転向し,それほど成績を意識する必要がなくなったことは事実ですが,まさかここまで自分の中でモチベーションが落ちているとは自覚していませんでした。・・・57期のみなさん,そしてこれから修習生になるであろう受験生のみなさんに言っておきたいのですが,実務修習というのは,単に「出席」しているだけでは全く力が付きません。本当に自分が実務家としてその事件を「受任」したというぐらいの気持ちで,その事件について自分なりに徹底的に調査し,自分の能力の120%ぐらいの起案を書くつもりで頑張らないといけないのだろうと思います。少なくとも,意識としては,そういった気持ちがないといけない。そのへんの考えが甘かった自分は,後期修習になって,それこそ他人の倍以上勉強しないといけないような状態になってしまいました。

今日は,とある殺人未遂事件を素材とした刑裁の起案が2コマ,昨日の検察起案についての討論が1コマでした。討論というのは,修習生をいくつかのグループに分け,その中で,起案上問題となる点について各々が書いた見解をお互い述べ合って意見を集約し,最後に各グループでそれを発表し合うというものです。これ,実は結構,精神衛生上よくありません。というのも,他の人の意見を聞いていると,自分が書き落としたポイントに次々と気づかされるからです(汗)。自分は,昨日の検察起案と今日の刑裁起案(いずれも殺人未遂のケースだった)が頭の中でごっちゃになってしまっており,その時点で既に論外なんですが,内容の面においても肝心のポイントをまるっきりはずしてるらしいことが判明しました。・・・今晩はもう,部屋でお菓子を大量にヤケ食いして寝ることにします。
Date: 2003/07/10



スピーキング能力
なぜか研修所に住み着いてしまった,野良猫のいずみちゃんです。非常に人なつっこく,また,所かまわずゴロゴロと寝そべるその仕草が可愛らしいこともあって,寮生の間ではひそかな人気者となりました。まだ生後1年弱のようですが,これだけ人によくなついているのは,きっと57期の修習生がこの子をさぞ可愛がってあげたからでしょう。夕方になると,いつも,疲れ切った修習生を出迎えてくれ(エサをせがんでいるだけ,との説あり),寮生にとっては心を癒してくれる貴重な存在です。・・・もっとも,修習生が和光にいるのは,4月から10月の間だけ。冬になったら,実務修習で留守になります。そのため,いずみちゃんは冬を越すことができるのか,非常に気がかり。修習生の今後のメンタル・ヘルスケアのためにも,研修所サイドの柔軟な対応を期待したいです。

さて,今日の午前中の修習は,刑裁起案のグループ討論(ディベート)でした。検察官・弁護人・裁判官のグループにそれぞれ分かれ,代表者が3分間で各論点につき立論・反駁をするというものです。・・・自分は基本的にしゃべりが苦手なので,この手の企画はなるべく避けてきました。でも,いつまでもそれじゃあいかんやろと思い直し,今日は代表者として演壇に立つことにしたんですね。・・・で,その結果はというと,惨憺たるものでして,えらい格好悪い目に遭いましたよ。2つある論点のうち,片方だけで2分30秒も使ってしまい,もう片方にはほとんど触れることができないまま終わってしまいました。その後,他の修習生がきちんと時間どおりに主張を終えていくのを見て,自分は本当にスピーキング能力が無いなぁと痛感しました。それを再認識できただけでも,意味はあったと思いますが・・・。

午後からは,「法律相談ロールプレイング」がありました。これは,修習生2名が弁護士に扮して,法律相談を受けるというものです(なお,相談者役は,現役の弁護士が担当します)。テーマは,賃貸借と売買です。これは準備がかなり大変だったと思うのですが,弁護士役の修習生はかなり雰囲気出てましたね。途中で「うーん」などと詰まっちゃうと不安を与えるんですが,割とテンポ良く次々と話を進めていってました。自分は傍から見るだけの役でしたが,ここでも他の人たちのスピーキング能力を見習わないとと再々認識させられたのでした。
Date: 2003/07/11



木を見て,森を見ず
先週行われた刑裁・民裁起案の講評・・・。修習生の視線は,教官が携えてきたその大きな紙袋(採点済みの起案が入っている)に注がれます。起案が返却される時の,期待と恐怖の入り交じった複雑な気持ちは,まさに中学や高校における中間テストと同じ感覚ですよ。ちなみに,今回の起案では,クラス内でトップの人には金色のシール,2位〜5位の人には銀色のシール,このままではヤバイよという人には黄色のシール(通称イエローカード)が貼られていたようです。幸い,自分,イエローカードだけは免れました。任官志望の修習生が書いた優秀起案のコピーを求めて,大多数の普通の修習生は今日もさまよい歩いております。

起案の講評では,民裁なら要件事実の解説,刑裁なら各問題点についてどのような証拠からどのような事実を認定すべきであったのかが説明されます。この講評を聞いていて思ったのですが,教官のコメントのニュアンスが,前期と後期では明らかに変わっていました。前期では「まぁ,たしかにこうも考えられるし,ああも考えられるけど・・・」みたいな言い方だったんですが,後期になると「本件で,売買契約の成立が否定されるわけがない。」「本件で,殺意が否定されるというのは,絶対にありえない認定だ。」などと,非常に断定的かつ厳しいコメントが出るようになったんですね。・・・民裁で,その「ありえない」認定をしてしまった自分って,一体・・・(汗)。

結局ですね,証言ひとつひとつの細部にばかりこだわっていると,こういう「ありえない」と言われる認定に行っちゃうのかなと。たとえば,反対尋問で証人が言葉に詰まる場面が多かったりすると,なんとなく印象として,相手方の言い分の方が正しいように思えてくるんですよ。でも,事件を全体として見たら,やっぱりこの認定はおかしいと,こう気づくべきなんだろうと思うわけです。木を見て森を見ず,ではいけないなと。むしろ,木を見て,森を見て,さらにその森のある町全体を見てこそ,当然あるべき常識的結論に行き着くのかなという感じがしています。

そういえば,前期修習の時に,「自分より目上の誰かになりきって,もしその人ならどういう判断を下すか,考えてみよ。」というお話がありました。なるほど・・・。確かに,刑裁修習の時のあの部長なら,「かっとして頭が真っ白になったって? そんなはずないんじゃない?」とか言いそう。次回の起案からは,部長の力をお借りすることにします(笑)。
Date: 2003/07/14



実務修習を懐かしむ
先週まで起案ラッシュだったことに対応して,今週は起案の返却ラッシュです。今日は,午前中に刑弁の起案が返ってきました。今回は,特にイエローカード等の成績の目印はつけられていない模様。もっとも,起案の講評を聞く限り,それほど出来は良くなさそうです。とある強盗被告事件について控訴趣意書を書けというものでしたが,修習生の間でも,窃盗+暴行,恐喝,横領,占離横領,あるいは無罪と,考え方はバラバラ。さすが1クラス70人もいると,色々なことを考える人がいるなぁと思わず感心してしまいます。正解かどうかはともかく,こういった様々な可能性をきちんと検討した上で結論を出している修習生はすごいなぁと思いますよ。自分の場合,かなり「直感」に頼ってるような気が・・・(汗)。

午後からは,刑事共通問題研究。これは,実務修習で見聞した刑事事件についてあらかじめレポートを提出し,一部の修習生がこれを発表するというものでした。なぜか自分も発表者に当たってしまいましたが・・・。ある修習生に話を聞くと,「発表で当てられないよう,あえてマイナーなテーマを狙ってレポートを書いた」のだとか。そのスジ読みの鋭さには感服です(笑)。

扱われたテーマは,被害者保護,否認事件における証拠の同意不同意,検察官調書の読み聞けなど。自分は,執行猶予期間満了の切迫事案の処理(執行猶予がもうちょっとで切れそうという場合に,弁護人が意図的に訴訟手続を引き延ばしてよいか)について発表しました。いずれも,各々の修習生が実際に経験した事件であるため,発表にも熱がこもり,話の内容も具体性・自然性・合理性・迫真性がありました(笑)※。企画として,非常に面白いと思いましたね。話を聞いていて,みんな,実務修習地を懐かしく思い出していたに違いありません。

※「具体性・自然性・合理性・迫真性」
 →刑裁の起案において,証言や供述が信用できるかどうかを判断する際のチェックポイントとして,研修所で叩き込まれる4要素。ただし,この基準をあまり重視することは危険であり,むしろ他の証拠による裏付けの有無等を中心に検討すべきであるとされる。
Date: 2003/07/16



「あの問題点,書いた?」
ご覧のとおり,過去の日記を閲覧しやすいよう,フレーム形式に改造しました(直接この日記へジャンプされた方は,トップページから再度入ってみて下さい)。各クールの日記の冒頭には簡単なキャプションも付けて,読み物っぽくしてみましたよー。昔からこの日記を読んで下さってる方も,最近ここにたどりついたという方も,ぜひ一度ご覧下さい。・・・各日記の分割作業には,結構な手間暇をかけましたので,見て頂かないと苦労が報われません(苦笑)。

さて,今日は刑裁の即日起案がありました。内容は,とある恐喝未遂・住居侵入・現住建造物等放火被告事件について,判決書および事実認定上の問題点を書けというものです。今回は,比較的固い証拠が揃っていたので,少なくとも「結論をどっちにしようか」と迷う必要はありませんでした。ただ,こういう問題の場合は,書くべきことが色々と思いつくため,それを全部書こうとして逆に時間不足に陥ってしまうというパターンが多いです。記録を検討する際に,事案の把握と問題点の発見,間接事実のピックアップを全てマルチタスクで出来ればいいんですけど,シングルタスク脳の自分にはなかなかそれがうまくいかなくて,結局,同じ供述調書や実況見分調書を何度も読んでしまっており,それが結果として時間不足につながっているようです。このままではまずいんですが・・・。最初に読んだ段階で,どれだけ精度の高いメモを作れるかがポイントのような気がしています。

起案が終わると,いたる所で「既遂時期の論点,書いた?」「自然発火かどうかの点,書いた?」といった会話が始まります。このへん,受験時代の答練などと大差ないですね。・・・もっとも,起案の素材となる記録には,教材としての性質上,必ず落とし穴が隠されていますので,修習生同士で答え合わせをしても,実際の所あんまり当てになりません。仲間内で多数派になっていても,いざ講義を聴いてみると全然違った,というのはよくあることです。・・・・それに,起案をようやく書き終えて一息ついてる時に,さっそく自分のミスや見落としを指摘されたら,なんか腹立ちません?(笑) そんなこともあって,自分はこの手の会話,ちょっと苦手なんですよねー。書くかどうか微妙な問題点を指摘することよりも,みんなが書いている問題点を丁寧かつ説得的に論じることの方が大事なんじゃないのかなぁ・・・などと斜に構えて偉そうなことを考えたりしながら,一人,教室を後にするのでした。
Date: 2003/07/18



刑弁をなめるな!
研修所で学ぶ5科目のうちで,最も勉強のやり方がよくわからないのが,刑事弁護です。弁論要旨には,特に定まった書き方があるわけでもないし,書くべき内容も事件の内容や検察官の立証方法に応じてケースバイケースなので,対策の立てようがないというのが実際のところなんですね。そんなこともあって,刑弁の起案については,修習生もついついなめがち。

・・・しかし,今日の刑弁起案は,「刑弁をなめるな!」という教官室の叫びが聞こえてきそうな難問でした。記録を1ページめくると,そこに書かれていた罪名は収賄罪。賄賂性とその認識が問題となった事案でした。それを見て,なんとなく嫌な予感はしたんですが・・・。案の定,調書を読んでも尋問を読んでも,ことごとく供述が食い違っていたり,同じ人間が前後で違うことをしゃべってたりで,全くとっかかりがつかめません。これほどまでに,何を書いたらいいのかわからない起案も珍しいです(汗)。

・・・でも,よく考えてみたら,今までの起案でとっかかりがつかめていたのも,それは自分の実力ではなかった気がします。普段の起案では,たいてい証人尋問のあたりで,検察官や弁護人が「それは,客観的状況からみておかしいんじゃないですか?」とか「それは矛盾しませんか?」などとしゃべってくれてるんですよ。で,こちらはそれを読んで,おぉなるほど確かに矛盾してるなぁと気づかされ,そこをとっかかりに起案を書くわけです。・・・でも,それって,自分自身が問題点や矛盾点を発見してるわけじゃないんですよね。記録の中の検察官や弁護人に教えてもらってるだけですから。そうすると,今回のように事案が錯綜してきて,検察官や弁護人も上記のようにポイントの見えやすい尋問をしてくれていないと,全くとっかかりがつかめなくなってしまうわけです。なんか,かなり不安になってきました。刑事弁護は,例年,二回試験で不合格になる人が最も多い科目とされています。果たして今年は大丈夫なんやろうか・・・。とにかく,刑弁に対する考え方は改めようと思いました。
Date: 2003/07/23



特等席
自分は寮の6階に住んでるんですが,グランド方向が一望できて,なかなかいい眺めです。昨日は,近所で花火大会があったようで,部屋の窓からきれいに花火が見えました。日曜日とかは少年チームのサッカーの試合も見ることができますし,意外と特等席の部屋だったりします(笑)。

さて,今日は2週間ほど前に書いた民弁起案の返却,講評です。返却された起案は,アルファベットで8段階(A,A−,B+,B,B−,C+,C,C−,D)にランク付けされていました。自分は,さぞひどい出来だろうなどと思っていたら,思いのほかB評価でした。事実の拾い上げは明らかに不十分でしたが,その分,余計なことも書いていないため,「すっきり整理されています」というコメント・評価につながったようです。・・・怪我の功名というべきか(苦笑)。でも,いざ講義を聴いてみると,拾い上げるべき事実それ自体は,なんてことない事実なんですよねー。「○○は課長の立場にある」とか,「○○は大会社であり信用がある」などなど,あまりにも当たり前すぎてスルーしてるような事実が,実は大事だったりするんです。そこに気づけるかどうかで,起案の説得力が変わってくるんでしょうね。

午後からは,刑弁起案の講評です。昨日,さっぱりわからん!と思ってましたが,いざ講義を聴いてみると,きちんと刑事事実認定の本に書いてある内容だったんですよ。やっぱり,この本はきちんと実務修習中に読んでおくべきでした。・・・先日,刑裁教官が「今から刑事事実認定の本を読む必要はないですよ」とおっしゃってたんですが,あれは別に甘い言葉でも何でもなくて,むしろ「今頃から読んだってもう遅い(実務修習中に読んでなきゃだめだ)」という意味に解釈すべきものなんでしょう。・・・まぁ,あんまりマニュアル的にこの本に頼るのは良くないんでしょうが,最低限,目の付け所ぐらいは頭に入れておかないと,そもそもとっかかりすらつかめないという状態に陥ってしまうことを,身をもって知りました。
Date: 2003/07/24



「金菓子 益三(かねかし・ますぞう)」
今週の締めくくりは,検察起案です。内容は,業務上横領で警察から送致されてきた事件について,起訴状を作成し,事実認定上・法律上問題となる点について検討せよというもの。さっそく弁解録取書と被疑者調書をぱっぱっとチェックしてみたところ,なんと,研修所の記録にしては珍しく「ミトメ事件」(被疑者が全面的に犯行を自白している事件)であることがわかりました。おー! なんて修習生に優しいんだ検察教官室!! ありがとう!!!

・・・しかし,そう思ったのは束の間でした。確かにミトメ事件ですから,事実の確定はそれほど問題ないのですが,法律的にみてそもそも業務上横領罪の成立を認めてよいのか根本的に疑問の生じる事案だったんですね。「横領」の意義,横領と背任の区別,詐欺罪と横領罪の適用関係といった,受験時代に勉強したかすかな知識を絞り出すのにえらい苦労しましたよ。・・・おかしいなぁ,たしか司法試験に合格してるはずなんですけど(汗)。結局,いくら考えても決断がつかないので,自分は警察の判断に厚い信頼を置き,横領を維持して起訴しました。(←検察としてのチェック機能ゼロやん(苦笑))

ちなみに,研修所の記録は,全て実在の事件を使用していますが,プライバシー保護のため,当事者の名前と住所は書き換えられています。これがなかなかユニークなんですね。今日出てきた貸金業者は,「金菓子 益三(かねかし・ますぞう)」という名前でした(笑)。また別の起案では,関係者にタイガースの選手の名前が使われてたり,あるいは政治家の名前が登場することもあります。記録を読むときに,「おっ,今回の登場人物は何のテーマかな?」などとついつい思いをめぐらせてしまうと,起案の時間をどんどん浪費してしまうので注意が必要です。
Date: 2003/07/25



楽勝の推定?
起案ラッシュ前半戦も,今日で最後。締めくくりは民弁起案でした。この起案については,民事保全法から出題されるということがあらかじめアナウンスされていたんですね。保全といえば,前期修習の時の起案がえらく簡単で,答案を早出しする人が続出したという伝説の起案です。自分の頭の中ではもうすっかり「保全起案=楽勝」という経験則が成立してました(苦笑)。そのため,週末もそれほど保全の対策をせずに,起案に突入。その結果,どうなったかといいますと・・・なんと,記録を読んでも,どの仮処分を選んだらよいのかすらわからないという(汗)。これはさすがに焦りました。幸い,今回は白表紙参照可だったから助かりましたけど,これがもし,昨日の一夜漬け知識だけだったら完全にアウトでしたよ。・・・勝手な経験則は,作らない方が身のためです。

夕方からは,高松でお世話になった指導担当の先生に電話で色々と教えていただきました。というのも,実は,あさってに実務修習レポート(民事)の発表をしないといけなくなったんですよ。自分,これで刑事も民事も社会修習も,全て発表者に当たってしまったことになります。・・・一体,どういう基準で発表者を選定しているのかと,小一時間問いつめたいところですが。他にも,民事交互尋問(模擬裁判)の準備もしないといけないし,なんだか起案が終わっても一向に時間のゆとりがなく,バタバタと一日が過ぎ去っていくのでした。
Date: 2003/07/28



どんな道を選んだとしても
昨日に続いて,午前中は民裁起案の講評でした。起案などで事実認定をする際に,自分がいつも迷うのは,証言の信用性の判断です。証言を全体としてみて信用性を考えるのか,それとも,証言の一部分だけを取り上げて信用性を考えるのか。・・・この点,ある教官は「証言の一部だけを信用して,残りを信用しないというような,証言のつまみぐいをやるべきではない」とおっしゃいますし,また別の教官は「証人がウソをつく場合,最初から最後までウソということはありえない。一応真実を話しつつ,大事なところでウソを織り交ぜて証言するのが通常だ。」とおっしゃいます。そうすると,こちらとしては,証言を全体としてみればいいのか,それとも部分部分でみればいいのか,非常に頭が混乱してしまうわけです。・・・もっとも,前回・今回の起案の教訓からすると,少なくとも民裁の場合は,割と後者に近い考え方で,すっぱり割り切ってブロックごとに心証をとった方が良さそうな印象は受けました。

さて,講義後は,クラスのとある友人を誘って,渋谷にある讃岐うどんの店へ行ってきました。お互い,実務修習を経て志望を変更した者同士。飲みながら,あれこれと愚痴りあいです。・・・その愚痴の中に見えたものは,修習生なら誰しもが感じている苦悩,迷い,そして決断。普段口にはしないけれども,心の中では何かザラついたものを感じている,そんな本音が,うどんを挟んで熱く繰り広げられたのでした。

そして,最終的に到達したひとつの結論。それは,「結局,どんな道を選んでも,どうせ後悔する」ということでした。つまり,弁護士として働いていれば,きっと「裁判官になっとけばよかったなぁ」と思う瞬間があると思うんです。逆に,裁判官になったとしても,「弁護士にしとくべきだった」と思う瞬間がいつか来ると思うんですよ。とすると,あまり先々のことまであれこれと考えて思い悩んでいてもしょうがないわけです。それだったら,現時点で自分がベストと思う道を選んで,あとはもうその直感を信じて突き進もうじゃないか,と。・・・飲んでて半分わけのわからない状態になりながら,おおよそそんな話をしていたような気がします。
Date: 2003/07/30



バッジで信頼関係は築けない
今日の目玉は,なんといっても模擬接見でしょう。これは,修習生が弁護士役を担当し,被疑者(に扮した現役の弁護士)から事情聴取をするとともに,今後の刑事手続等について説明をするというものです。教室の中央に机を向かい合わせにし,その中間にガラスのついたて(声を通すために丸い穴がたくさん開いてます。刑事ドラマなどでよく見るアレですね)を設置して,教室を模擬接見室に見立てて実施します。被疑者役の先生も「いかにも被疑者」という感じの髪型・服装で登場してきて,かなり雰囲気出てました。

被疑者は,とある外国人。オーバーステイ(不法残留)で逮捕されたという設定でした。・・・が,そこまで被疑者が話したところで,突然,誰も予期せぬ出来事が! なんと,その被疑者が泣き出してしまったのです。何を聞こうとしても,泣き崩れてしまって,全く事情聴取できない状態なんですよ。これには,弁護士役の修習生も焦っている様子でした。・・・被疑者役の先生,まさに迫真の演技です(笑)。我々は冷静な人間だけを相手にしてればいいわけじゃないんだぞ,という教官の強烈なメッセージが,そこには込められていたんですね。・・・幸い,今回の弁護士役修習生は非常に温厚な2人でしたので,どうにかなだめながら,事情聴取が続けられました。で,そうすると,実はこの外国人は警察から殺人の嫌疑をかけられており,今回もオーバーステイで別件逮捕された疑いがあるという真相が明らかになっていくんです。なかなか見応えありましたよ。

接見を見てて改めて思ったんですが,被疑者に対して不利な話をするというのは非常に難しいですね。特に,今回のように被疑者が泣き崩れているときに,「あなたはこれから20日間勾留されます。オーバーステイで強制的に本国へ帰されるでしょう。」とドライにはなかなか言いにくいわけですよ,やっぱり。被疑者との信頼関係が根底にないと,不利な話はなかなかしにくい。で,その信頼関係というのは,弁護士バッジだけで築けるものではなくて,まさに自分の価値が問われるんだろうなぁという気がしました。
Date: 2003/07/31



逆鱗
後期修習のメインイベントのひとつ,民事交互尋問(模擬裁判)です。今日は第1回ということで,争点整理手続と和解が行われました。とある動産引渡請求事件を素材に,裁判官役・原告代理人役・被告代理人役の修習生が各々の主張をあらかじめ準備したうえ,法廷に見立てた教室で実際に手続を進めていきます。・・・自分は,証人尋問担当なので,今日はひたすら傍聴でした。

争点整理も和解も,実務修習では幾度となく見てきたわけですが,実際にやるとなると,そう簡単ではありません。議論が紛糾してしまい,なかなか思うように争点整理が進まないんですね。双方代理人とも,自分に不利な争点整理をされては困るという意識が強いため,なかなか譲らないわけです。証人尋問の時間や方法までもめてました(苦笑)。

で,そんな状況に,しびれをきらした教官が,終盤になってついに激怒したんです。「そんなバカなこと,あるわけないでしょう!」「そんな主張をするのは,代理人としてみっともないよ,全く!」・・・クラス全体が,一瞬凍り付きました。

教官の指摘それ自体は,ごもっともなんです。・・・でも,自分の気持ちとしては,70名の修習生+2名の教官が注視する衆人環視の中で4時間もの間,模擬争点整理と和解をこなした裁判官役・代理人役の修習生に対して,ただただ素直なリスペクトの眼差しと暖かい拍手だけを送ってあげたかったです。せめて,今日だけでも。・・・そんな自分の考えは,甘っちょろいのかもしれませんが。少し後味の悪さを感じてしまった締めくくりでした。
Date: 2003/08/01



嵐の前の静けさ
今週は,実は起案がひとつもありません。なぜこういうカリキュラムになっているのか,その理由については修習生の間でも説が分かれているのですが,
?司法試験委員を担当する教官が,論文試験の採点で忙しい
?起案の返却ラッシュで修習生をヘコませ,「勉強しなきゃ」という気にさせた上で,勉強の時間的余裕を与える
?修習生に事実上の夏休みを与える
といったことがささやかれています(笑)。ともあれ,今週は比較的,時間のゆとりがありそうです。・・・もっとも,お盆が明ければ,人間の限界への挑戦・二回試験直前起案ラッシュが待ちかまえていますから,嵐の前の静けさといったところでしょうか。

今日は,倒産犯罪に関する講演がありました。その中で,研修所起案と弁護士実務の違いというお話があったんですね。両者の最も大きな違いは,「事実調査」なのだそうです。つまり,研修所の白表紙記録では,あらかじめ全ての事実が与えられていますね。しかし,弁護士実務では,ゼロの状態から出発して自ら事実を調査していかなければなりません。ところが,研修所起案に慣れてしまっている新米弁護士は,ついつい十分に事実を調査しないまま,「それはちょっと無理ですよ」などとクライアントをつっぱねてしまう傾向にあるのだそうです。無理だなどと軽々しく口にするのではなく,粘り強い思考を心がけるのがプロフェッションとしての法律家だ,と講師の先生はおっしゃってました。・・・講演のテーマとは関係のない余談のひとつだったんですが,このお話が妙に印象に残ったのでした。
Date: 2003/08/04



「おまえ,起案よりも日記の方がうまいんだよなぁ。」
非常に難解だった,先日の刑弁起案が返却されました。評価は,4段階中2番目とまずまずでしたが,改めて読み返してみると,見事に刑弁起案の体をなしていません。なんというか,とにかくもう間接事実を少しでも多く拾いあげて,部分点を「広く浅く」とってやろう,という下心が丸見えの起案でした(苦笑)。優秀な人の起案を見せていただくと,やっぱり,読みやすさも説得力も違うんですよねー・・・。

午後からは,社会修習についてのレポート発表がありました。これはなかなか面白かったですよ。刑務所,少年院,児童自立支援施設,老人介護といったメジャーなもの以外に,地方によって実に特色豊かな社会修習が実施されていたようです。発表の中で紹介されていたのは,ホテルマン体験,水族館の清掃体験,脳外科手術の見学などなど・・・。ちなみに,またもや発表者に当たってしまった自分は,新聞記者密着体験について発表してきました。カメラを首からぶらさげて,メモとペンを携え,なぜか幼稚園児のミカン狩りを取材したのが懐かしいです(弁護修習編・11月18日〜20日の日記参照)。

夕方からは,教官を交えてのクラス飲み会が実施されました。後期は忙しいといいつつも,こうして暇を見つけては飲み会があります。教官側も,あまり修習生が「二回試験対策」一辺倒になることを好まないのか,修習生同士で交流の場を持つことに肯定的なようで,飲み会には積極的に参加して下さいます。自分は,お酒も苦手だししゃべりも苦手なので,飲み会は正直億劫なんですが,これも自己鍛錬だと思って,頑張って参加してます。・・・そんな中で,今日最も印象に残った,刑裁教官とのやりとり。

教官「おまえ,起案よりも日記の方がうまいんだよなぁ。」
自分「そ,そうっすか?(がーん!!)」
Date: 2003/08/05



早出・遅出
研修所はなにぶん大所帯ですから,クラスによって登庁時間を「早出(9:35)」と「遅出(9:55)」に振り分けるという扱いがなされています。これ,結構ややこしいんですね。日によって早出になったり遅出になったりしますから。・・・いつか間違えて登庁してしまうんじゃないだろうかと前々から心配してたんですが,今日,ついにその時が来てしまいました。てっきり遅出だと思いこんでいたんですが,現実には早出だったんです。うーん,やってしまいました・・・。初の遅刻です。

さて,今日は,検察起案の返却・講評でした。特にアルファベットの評価はついておらず,「一定のレベルに達してはいるが,今一歩。」といったコメントのみがついていました。ちなみに,隣の友人の起案を見ると,「手堅い起案で,大失敗することはないが,平板。」と書かれていました。一体どちらのコメントの方がマシな成績なんやろう,などとしゃべってたんですが,真相は謎です(苦笑)。

・・・内容的に振り返ってみると,どうも時間配分とか力点の置き方がまずいなぁという感じがします。前半部分にあたる起訴状の公訴事実とかはやたら力が入ってて,余事記載たっぷりなんですが,その後,犯人性→構成要件該当性→その他の問題点,と後に行けば行くほど雑な記述になっていきます。肝心な参考人の信用性の検討を忘れていたり,証拠の摘示を忘れていたり,司法試験レベルの刑法各論知識を忘れていたりと,かなり致命的なミスもありました。

さらに,1罪で起訴すべきところを2罪で起訴してしまったのもまずかったです。今回,警察は1罪で送致してきてたんですけどね・・・。もし現実の実務で,警察の送致事実と異なる罪名で検察官が起訴したにもかかわらず,公判でそれがひっくりかえって警察の送致事実どおりの罪名が認定されたりしたら,検察官としてはめちゃくちゃ恥ずかしいやろなぁ・・・法的判断で警察に負けてるし(苦笑)。まぁ,そもそもそんな起訴状は,上司の決裁の際に思いっきりどやされた挙げ句に訂正することになるんでしょうけど。
Date: 2003/08/06



実務修習をやり直せるなら
今日は,刑事訴訟手続における事前準備のケース研究・討論がありました。クラスをいくつかの班に分割し,とある傷害事件について,期日の前にどういった打ち合わせをしておくべきかという点を話し合いました。

ここでひとつ驚いたのは,みんな実務修習で経験したケースをとにかくよく覚えてるんです。「刑裁修習の時に,かくかくしかじかの事件があったんですが・・・」と,まるで準備してあるかのようにスラスラと説明するんです。実務で見聞したことがきちんと血肉になってるという感じで。自分だったら,たぶんあそこまで説明できないと思うんですよ。自分,起案の成績はぼちぼちですが,実務の身に付き具合はかなり他の修習生より劣ってるのかもなぁと痛感させられました。

さて,学部試験でも,司法試験でも,そして研修所の起案でも,人間が考えることにそれほど大差はないわけでして・・・。この時期になると,修習生の間で,先輩が作成したとされるノートがどこからともなく流れてきます。多くの人がこれに目を通しているせいか,起案ではみんな同じ所で同じミスをするようです(苦笑)。教官もそのへんは完全にお見通しでして,「妙なマニュアルを読まないように」とクギを刺しておられました。・・・もっとも,時間がなくなってくると,つい即効性のありそうなものに手を出したくなってしまうのも,人情ではあります。

実務修習の時にもっときちんと白表紙や論文を読んでおくべきだった・・・と分析するのは簡単ですが。でも,当時は当時で,自分なりに精一杯で,余裕は全くなかったんですよねー。ただ,時間の経過と共に,当時の辛さは忘れていきますから,後になって振り返ってみると「あの時,もっと色々できたんじゃないか」っていう気になるんですよね,どうしても。人生,そんなもんです。おそらく実務に出れば,「二回試験の勉強なんて,たいしたことなかったなぁ。」と思っていることでしょう。
Date: 2003/08/07



後期修習に夏休みはない
お盆休み,もとい,夏期自由研究日を目前に控えて最後の授業となった今日。3コマとも,外部講師による講演でした。テーマは,「民事介入暴力事件」「ADRの将来」「司法に対する市民参加」の3本立てです。

中でも,「司法に対する市民参加」は,近々導入されるであろう裁判員制度についてのパネルディスカッションで,なかなか勉強になりました。裁判員の人数などの関係で,市民の声がどの程度判決に影響を及ぼすのかは不明ですが,判決書は従来どおり裁判官が作成するらしいので,さほど裁判官の意見とかけ離れた結論が出ることはないんでしょうね(かけ離れた結論に至るプロセスを,裁判官が従来通り緻密な論理構成で説示することは不可能だと思われますから)。・・・アメリカのように「陪審の声は神の声」で事実認定を陪審に委ねるような時代が来れば,研修所の刑事裁判科目における事実認定教育は重要性が激減し,授業は180度様変わりするのかもしれません。

さて,明日からは,夏期自由研究日です。二回試験まで1か月を切った今,もはや夏休みはありません。来週からの起案ラッシュに備えて猛勉強しないと,いよいよ本当にしゃれになりませんからね。実家にも帰らず,4日間,勉強の虫になる予定です。類型別とかは起案直前に読めるので,むしろ普段あまりできない勉強をしたいなぁと思ってます。?新実例刑訴,?民事執行・保全,?一審手続解説,?判決起案の手引き,?検察演習問題,ぐらいにひととおり目を通せればいいんですが。どうなることやら。
Date: 2003/08/08



「尋ね猫」・・・その後
名前:いずみ
性別:オス
年齢:不明
体長:約50cm
特徴:白と茶色のウシ柄。
   よく鳴く。よく寝る。(写真参照)
   人を見ると寄ってくる。

ここ数日,いずみを見かけなくなりました。あれだけ毎日,寮の前でごろごろとしていたのに,先日の大雨以降,ぱったりと姿を消しています。どこかに流されて,迷子になってるのかもしれません。あるいは,猫の気まぐれで,新たな遊び場所を探しに行ったのでしょうか。自分の部屋の隅では,まだ買ったばかりの真新しいキャットフードが,寂しそうにたたずんでいます。


※ 後日談
守衛さんに尋ねたところ,いずみは,心ある修習生を通じて,新しい飼い主さんにもらわれていったのだそうです。現在は,名古屋で暮らしているとのことでした。確かに,このまま研修所にいても,秋になれば修習生はいなくなってしまいますからね。・・・ちょっと寂しいですけど,あの子のためにはこれでよかったのだと思います。どなたか存じませんが,どうぞ可愛がってやって下さい。
Date: 2003/08/10 (休日特別版)



一度は超えてみたい壁
休み期間中は,ずっと,電車で1駅のところにある成増図書館で勉強してました。ここは自習がOKで,1人用の勉強机もあり,勉強にはなかなかいい環境です。ちなみに,休み前に立てた計画をどの程度実行できたかというと・・・。?新実例刑訴と,?判決起案の手引きを読むのが精一杯でした。世の中,そううまくいきません。

で,研修所は今日から後半戦がスタートです。実務修習中はたっぷり9日間のお盆休みが与えられますが,後期修習では土日を入れて4日間しか休みがありません。世間はお盆休みまっさかりでしょうが,そんなの関係なしです。修習生も大変ですが,教官も大変です。

今日は,民弁起案(保全)と,刑弁起案(準抗告)の返却。いずれも二回試験とは直接関係がないということで,ややリラックスムードでした。出来のほうは・・・今回は結構書けたんじゃないかと思ってたんですけど,いざ返ってくると,やっぱりいつもと変わらない成績でした。どうやらA評価とB評価の間には,とてつもなく厚い厚い壁が立ちふさがっている模様。この壁の向こう側に行ける日はくるんでしょうか・・・。
Date: 2003/08/13



要件事実ゲーム?
明日からの起案ラッシュに備えて,今日はずっと部屋に閉じこもって民事弁護・民事裁判の勉強です。白表紙,前期の講義レジュメ,クラスの優秀起案,先輩修習生の虎の巻(?)など,目を通さないといけないものは山のようにあります。ちょっと時間が足りない,というような生やさしいものではなく,全然話にならないほど時間が足りません。焦る気持ちがつのります。

と,慌ただしくしていた矢先,高松で一緒だった修習生の4人が,ほろ酔い状態で自分の部屋へやってきました。聞くと,何やら新しいゲームを発明したのだとか。その名も「要件事実ゲーム」。・・・かの有名な「山手線ゲーム」の要件事実版だそうです。まず最初の人がお題(ex.代物弁済)を言い,以降の人が順番にその要件事実(ex.基づく引渡し)をリズムに合わせて言っていき,途中で詰まってしまった人が罰としてお酒を飲むという,間抜けこの上ないゲームでした・・・。これ,やればやるほど自分の知識のあやふやさが露呈して不安になっていく上,酒が回り勉強もできなくなってますます焦るという,日本一精神衛生に悪い宴会ゲームでした。みなさん,こういうゲームはやめましょう(苦笑)。

・・・それでも,高松の修習生と久々に会うとどこかホッとした気持ちになるのは,やっぱり1年間,苦楽を共にした仲間だからなのでしょう。よくいう「同期の絆」は,実務修習でしか築くことの出来ない貴重な財産なのかもしれません。
Date: 2003/08/17 (休日特別版)



オーバーヒート
民裁起案・ラストです。最後は,教官が腰抜かすぐらいの起案を書いてやろう,と思って,2日連続して朝の4時まで起きて勉強したのが,かえって裏目に。フラフラで全然頭が回りません・・・。目は字面を追ってるんだけれども,読んでる言葉の意味がわからない,頭に入ってこないという状態。ぐったりしながら,気力だけで書いた32ページでした。

後期の民裁起案は,「主張整理」と「事実認定」の二本柱からなります。そして,前者で頑張りすぎると,後者で必ず時間が足りなくなるように問題が作られてるんですね。今日の起案もまさにそのパターンで,全7時間の試験時間のうち,実に6時間半も主張整理にあててしまいました・・・。そのため,事実認定は,ろくに証拠も読まずに弁論の全趣旨から認定(ぉぃ)。「二回試験でなくてよかった」「いや,二度あることは三度あるぞ」と,口々に不安をあらわにしながら,教室を後にしたのでした。
Date: 2003/08/19



法曹の果たすべき責任と役割
今日は,後期修習で唯一の自宅起案です。問題文はわずか2行。「法曹の果たすべき責任と役割について,実務修習での経験を紹介しつつ,起案用紙10枚以内で論ぜよ」というものでした。こういう,勉強からちょっと脱線した文章は大好きですので(笑),楽しく書き上げました。・・・どんな起案か,ちょこっとだけご紹介しましょう。

?各々の弁護士が法的知識の研鑽に努めたとしても,市民が司法的解決の敷居を高く感じ,利用を躊躇するようでは無意味である。そこで,市民が法的サービスへ容易にアクセスできる仕組みを作っていくことが,現在,法曹に要請されている重要な責任と役割であると考える。

?実務修習で再認識したことであるが,現実の紛争にあっては,法律解釈を互いに戦わせるといった「空中戦」はさほど多くない。むしろ,紛争の発端や実体がどのようなものであるのかをつかむこと,事件の落ち着きどころがどこあるのかを考えることが大事であると感じた。そこで,法曹は,社会的事象に広く精通し,これを紛争解決にフィードバックしていく責任と役割を果たす必要があると考えた。

?紛争解決それ自体とは多少離れるが,関係者に対する心情面でのケアをすることも,民事事件・刑事事件を問わず,法曹の果たすべき重要な責任と役割であると考える。裏を返せば,法曹の仕事は,「事件」を扱うというよりも,「人」を扱うのだということを意識することに他ならない。

?以上,縷々述べてきたが,結局のところ,弁護士志望である私が感じた法曹の責任と役割は,「利用者本位に徹する」ということに集約される。法律知識の研鑽の重要性はもちろんであるが,それのみをふりかざしてビジネスライクに事件を処理されることは,誰も望んでいないからである。教官の失笑を恐れずにあえて言えば,「血の通った弁護」をすることこそが,弁護士の果たすべき責任と役割だと考える次第である。

・・・とまぁ,こういった話を書いて,提出してきました。実際の起案では,修習中に扱った数々の事件を色々と思い出しながら,適宜織り交ぜて書いていったので,非常に懐かしい気持ちになったのでした。
Date: 2003/08/20



大先生,降臨?
後期修習の大イベント,民事交互尋問(第2回)が実施されました。前回の争点整理(8月1日の日記参照)に引き続いて,今回は原告・被告双方の本人尋問です。

自分は,被告側訴訟代理人として,原告に対し反対尋問をする担当でした。尋問時間も20分と短く,それほど重要視はされていないパートでしたが,それでも,いざやるとなるとものすごい重圧です。しかも,自分はこれまで裁判官役しかやったことがなかったため,これが尋問初体験なんですよね。・・・前日の夜は,あーでもないこーでもないと質問の準備をするうちに,朝の4時半を過ぎていました。これほど気の重い夜は,今までになかったですよ。

今回,原告本人の役を担当するのは,検察官志望の非常にしっかりした修習生だったんですね。従って,これは一筋縄ではいかんぞと。そういう思いが,冒頭からありました。なめられてはいけない。・・・そう考えているうちに,ある弁護士が自分の頭に浮かんだのです。それは,高松修習で見た某ベテラン弁護士で,「要件事実は教えられへんけど,ケンカの仕方ならいつでも教えたる」と修習生にのたまった豪傑の先生でした。これだ。これしかない。そう思った瞬間,自分の頭にその先生が降臨してきたのです(笑)。

その結果,自分の尋問は,相手にケンカをふっかけんばかりの,挑戦的な尋問になっていました。
「要するに,転売利益を得られればよかったんでしょ?」・・・
「そんな慣行あるんですか? ほんまですかねぇ?」・・・
さらに,相手が沈黙した時には,「書記官さん,調書に『沈黙』と記載して下さい」・・・
すっかり身構えてしまった原告役の修習生は,もはやYesと答えるはずもなく。(傍聴席の修習生はかなりウケてましたが(苦笑))

で,自分は気づいたんですよ。自分の尋問に対する姿勢というのは,どうやら根本的におかしいなと。今日の自分のスタンスは,原告をなるたけ精神的に揺さぶって失言を引き出してやろうという感じでした。でも,尋問というのは,ケンカじゃないわけで・・・。むしろ淡々と事実を問うていくほうが,真実に肉薄できるのかなと。他の修習生の尋問を色々と聞きながら,そう感じました。・・・いや,まぁ,そりゃ実務修習でも尋問はたくさん見てきたわけですけど,やっぱり実際に自分でやってみないと,身にしみてわからないもんなんです。今日は反省させられました。もっぺん尋問やりなおさせてくれー!って感じです,ほんと。
Date: 2003/08/21



「こういう尋問はやめましょう」
民事交互尋問第3回。昨日の本人尋問に続いて,今日は証人尋問が行われました。

自分は今日は傍聴席だったんですが,証人尋問を担当した修習生は,準備がかなり大変だったようです。というのも,証人との事前面接が許されておらず,また陳述書等も提出されていないんです。従って,まさに尋問で何が飛び出すかわからない暗中模索の状態で尋問事項を考えなければならないわけですね。昨晩も,ずいぶん遅い時間まで,被告代理人グループが寮で打ち合わせをやっていました。途中で,たこ焼きを差し入れに行ったところ,もうみんなぐったりしていて,机の上にはチューハイが数缶転がっているという状態(笑)。

さて,実際の尋問は,原告側の主尋問,被告側の反対尋問,被告と証人の対質,という順で行われました。最初の原告側の尋問で,被告にとって相当不利な事情がぼろぼろと出てきたんですね。あたかも被告が権利関係の確認を怠ったまま,勝手に物を持ち去ったかのようなストーリーが出てきて。・・・しかし,被告側もさすが十分準備しただけあって,なんとか食らいついてました。たとえば,権利関係の確認の点についても,「あなたは当時,動転してたんでしょう。一言一句やりとりを覚えてるんですか。」と尋ねて,その結果,「はっきりしません」という証言を引き出したんですね。反対尋問というのは,証言を一定程度ぐらつかせれば成功だとされているので,被告側はよく切り返してたなぁと思います。

尋問後は,教官による講評です。その中で,民弁教官から,こういう尋問はやってはいけないよ,というお話がありました。
「証人に評価を求める尋問とか」・・・自分やん!
「一文が長すぎる尋問とか」・・・それも自分やん!
「代理人のストーリーをつらつら述べて,『そういうことでしょ?』と安易に尋ねる尋問とか」・・・全部自分やん!
「そういう尋問はやめましょうね」・・・(汗)

なんか,昨日のことを思い出すだけで,おそろしくなってきました。自分,こんなんで,ほんとに弁護士としてやっていけるんでしょうか・・・。
Date: 2003/08/22



「無罪の推定という幻想」
午前中は,昨日の刑裁起案の講評です。刑裁ラストの起案ということもあって,今までよりもやや難しいという印象を受けました。冒頭手続における被告人の認否が,具体的に何を否認しているのかが少々わかりにくかったため,争点把握でつまづいてしまい,どうもピンボケの起案を書いてしまった感があります。・・・ただ,それ以上にまずかったのは,教官をして「愕然とした」と言わしめた,非常に初歩的なケアレスミスの多さです。単なる算数にすぎない未決勾留日数の計算を間違えてしまったり,私選弁護人がついてるのに訴訟費用を不負担としてしまったり・・・。これが二回試験じゃなくてよかったです。今回の起案は「厄払い」だと考えよう。うん。

午後からは,刑弁起案の講評です。ついこないだ書いたばかりなんですが,今日の講評で早くも返却されました。教官いわく,単に検察官の主張を弾劾して真偽不明に持ち込もうとするだけの弁論は,「無罪の推定という幻想」にとらわれたものであって,「有罪の推定が働いている実務」においては何ら力を持たないのだとか。とりわけアリバイの存在を理由として無罪主張するような場合には,積極的に被告人側のアナザー・ストーリーを展開せよというお話がありました。刑弁最後の起案ということもあり,いつもよりどこか熱のこもった講義でした。
Date: 2003/08/26



「検察起案」と掛けて「天然記念物」と解く。その心は・・・?
いよいよ研修所での起案も,今日の検察がラストになります。1年半さんざん苦しめられ続けてきましたが,最後となると感慨深いものがあります。せめて最後ぐらいは,ぶっちぎりの良い起案を書きたい。教官に吠え面をかかせたい(笑)。そう思って,普段あまり目を通さない「犯罪事実記載の実務」という本にまで目を通して,今日の起案に臨みました。

今日の起案は,とある恐喝事件についての起訴状起案。共犯事件であったため,とにかくものすごいヴォリュームでした。普段の検察起案では,起案用紙は1冊ずつしか配られないんですが,今朝はなぜか2冊ずつ配られていたんですよ。だから,その時点で,なんか嫌な予感はしたんですが・・・。案の定,書くことが多すぎて時間が全く足りず,ひたすら走り書き。しかも,こういう日に限って,なぜかお腹の調子が悪い(苦笑)。自分でもほとんど解読不能な文字で,自己最高の47枚を書いて修習最後の起案を終えました。教官に吠え面かかせるつもりだったのに,逆にこっちが吠え面かきまくりです。

そんなわけで,今日の日記のタイトルにある謎かけの答えは,「トキ(時間)が少ないのが気がかりです。」・・・おそまつ。
Date: 2003/08/27



(作成中)
・民共/演習

民事交互尋問の最終回。今日は,和解手続と判決言渡しです。判決は,見事すべてのグループが原告勝訴の判断で,こちらは4タテを食らいました。

ところで,いつぞやの争点整理の時とはうってかわって,最近,民裁教官の講評コメントが実に優しくなってます。・・・まさか,あの日記を教官自身が読んだということは・・・ない・・・だろう・・・とは思うんですが・・・(汗)。
Date: 2003/08/28



(作成中)
・刑弁/講義
・刑共/模擬裁判

後期修習のもうひとつの大イベント・刑事模擬裁判が始まりました。民事交互尋問の時と同様,机の配置を変えることで教室を法廷に見立てて,手続が行われます。ただ,民事交互尋問では,手続の各段階ごとに修習生が役割分担していたのに対し,刑事模擬裁判では特定の修習生が全ての手続を担うんですね。それ以外の修習生は「傍聴席弁護人」「傍聴席検察官」「傍聴席裁判官」という立場で,周囲から手続を見守ります。

事案は,とある傷害事件で,正当防衛の成否が争われるというものです。今日は,冒頭手続から甲号証(被告人自身の供述調書等を除いた証拠)の取り調べまでの手続が行われました。さすが模擬裁判も数を重ねてくると,だんだんとアグレッシヴになってきます。冒頭陳述に対して異議が出たり,証人の尋問順序の決定で意見が食い違うなど,いきなりの紛糾ぶり。さすがにこんな段階で紛糾することは想定外だったのか,刑裁教官からは「まずは検察官立証の段階であることを意識せよ」とのコメントが飛び出しました。
Date: 2003/08/29



(作成中)
・刑共/模擬裁判(第2回)

模擬裁判2日目です。今日は,被害者の尋問・目撃者の尋問・被告人質問が行われました。・・・といっても,自分は「傍聴席検察官」なので,特に法廷に立つわけではありません。ただ,今日の尋問を踏まえて論告を起案しなければならないので,メモを取りつつ尋問を注意深く聞く必要があります。

自分は,傍聴席検察官チームの速記役を命ぜられたため,パソコンを教室に持ち込み,尋問の内容をひたすらタイピングしていました。・・・なんか,裁判所書記官の方の気持ちがわかりましたね。よく「尋問はゆっくりはっきりと」と言われるんですが,確かに,尋問の仕方によって,記録のとりやすさが劇的に違います。1つの質問を短くしたり,ゆっくり話したり,区切りのいいところでまとめを入れたりすることの大事さを改めて感じました。

ちなみに,尋問の内容はというと,検察官チームは非常に的確かつわかりやすかったように思います。検察側に不利な目撃者証言についても,単なる憶測にすぎない旨を見事に引き出しており,非常にうまいなと感じました。もう,流れは間違いなく検察官側だと思うんですが,さて,結果はどう出るでしょうか。判決は,明日言い渡されます。
Date: 2003/09/01



(作成中)
・刑共/模擬裁判(第3回)

昨晩は,結局,論告要旨の起案で朝の5時頃までかかってしまいました。刑事事件は睡眠をよくとってシャープな頭で望まなければならない,と刑裁教官から言われていたにもかかわらず,寝不足のあまりフリーズした頭で模擬裁判最終日に臨むことになりました・・・。

検察官の論告,弁護人の弁論,被告人の最終陳述が終了し,ついに判決の言渡しです。合計7チームの裁判官役修習生が,それぞれ順番に判決を言い渡していくんですね。最初のチームの裁判長が壇上に登り,クラスが一瞬静まりかえった後,裁判長の口から判決が言い渡されました。

「主文。被告人を懲役2年に処する。この判決確定の日から3年間,その刑の執行を猶予する。」

・・・それは,まさかまさかの検察側敗訴判決でした。弁護側の主張を一部容れ,過剰防衛の成立を認めた上で,執行猶予を付する判断が下されたのです。そして,その後も,5チームが弁護側の主張を一部容れて過剰防衛を認定し,さらに,残りの1チームはなんと弁護側の主張をそのまま容れて正当防衛を認定していました。要するに,全ての裁判官グループが,弁護側を勝たせる判断を下したことになります。・・・これには正直驚きました。自分,昨日の尋問を聞いた時点で,正当防衛・過剰防衛が認められる可能性はかなり低いだろうなぁと踏んでいたので・・・。

で,自分は思ったんですよ。やっぱり(傍聴席)検察官役になると,どうしても事件を検察官の目で見てしまうんだなぁ,と。一方当事者に立ってしまうと,かくも盲目的に自分の側のスジが絶対的なもののように見えて,第三者的視点を持てなくなってしまうのか,と。尋問にしても,自分は検察側に都合のいい事実ばかりが印象に残ってしまったため,裁判官チームがその尋問からどういう心証形成をしているかについて全くスジ読みを間違っていたことになるわけです。・・・「とらわれない目」で事件を見ることの難しさを,改めて痛感させられました。
Date: 2003/09/02



(作成中)
・民弁/起案講評
・刑共/講演(プロフェッショナルとしての刑事弁護)

まずいまずいと思っていた民弁起案がついに返却。案の定,C+の評価を食らってしまいました。Bより下の評価を受けたのは初めてです。なんか,だんだん成績が下がってきてるような気がするんですが・・・(汗)。今回の起案で,自分は,取得時効の「他主占有権原」と「他主占有事情」という基本的事項をいまだに全く理解していなかったことが判明。こわすぎる。これが二回試験でなくてよかったと心底思います。

こんな日記書いてる場合じゃないんですよね,ほんとは・・・。
Date: 2003/09/03



(作成中)
・検察/講演
・民裁/起案講評

二回試験まで,いよいよあと1週間です。今日は受験票が交付されました。そのままバーッと配るのかと思いきや,なんと,?お昼の指定時間に,?各クラスに研修所職員が立ち会い,?修習生全員が指定の座席に着席していることを確認の上で,?修習生を名簿順に一列に並ばせ,?一人ずつ「○○です」と名前を申告して受験票を受け取るという,非常に厳重な手続を踏んで配布されました。受験票をもらうだけなのに,えらく大げさではあります。・・・まぁ,いかなる不正をも絶対に許さない,という試験委員サイドの姿勢の現れでしょう。

もっとも,そのわりに,配られた受験票それ自体は,普通のA4プリンター用紙(しかも藁半紙)に名前・番号・時間を印刷してあるだけという,実に味も素っ気もないぺらぺらの紙だったりするんですが。・・・司法試験の受験票のほうが,よっぽど金かかってるように思います(苦笑)。
Date: 2003/09/04



(作成中)
・刑裁/起案講評
・検察/起案講評

最後の起案となる検察起案が返却されました。コメント欄には,

「二回試験は全く問題ありません。この熱意と能力があれば,将来,法曹として大成されるものと確信しています。」

という,我が目を疑うようなコメントが付されていました。ここにきて,ついに,優秀起案キターーー(゜∀゜)ーーーッ!!

・・・と思ったら,実は,隣の人も,その隣の人も,そのまた隣の人も,ほとんど同じ内容のコメントが付されていたのでした(苦笑)。教官室サイドでも,二回試験直前の修習生の精神衛生を考慮し,とりあえずヨイショして下さってるわけです。あやうく鵜呑みにするとこでした・・・。
Date: 2003/09/08



(作成中)
・民弁/演習
・民弁/講義

研修所の民事弁護科目は,どうしても訴状・準備書面の起案に偏りがちです。今日は,修習の締めくくりということで,実務との橋渡しとして,証拠収集・倒産処理についての講義が実施されました。

倒産処理の講義は,前期修習以来,ひさびさのビデオ講義です。「破産管財人になったら,24時間働く気で仕事せないかん!」「1年後の100万円よりも,今日の10万円。とにかく二束三文でも迅速にバンバン換価していけ!」といった趣旨のお話がなされていました。弁護修習で見てる限りでは,指導担当の先生は飄々と仕事をこなしておられるように見えましたけど,実は破産事件ってすごいハードなんですね・・・。

さて,明日からはいよいよ,卒業をかけての二回試験が始まります。これからの2週間,司法研修所は「不夜城」と化すことでしょう。
Date: 2003/09/09



ペンに願いを
今日からついに二回試験・・・なんですが,午前中は通常どおり講義が行われました。修習期間が1年半に短縮されて,カリキュラムがぎゅうぎゅう詰めになっていますので,二回試験当日にまで授業が設けられているわけです。

最後の講義となる検察問題研究では,「模擬口述試験」が行われました。二回試験は,筆記と口述の両方に合格する必要があるんですね。まぁ,筆記は普段の起案でやってるからいいんですが,口述は司法試験以来なので,かなり不安な面があります。試験官と向き合った瞬間,頭が真っ白になってしまい,とんでもないことを口走ってしまうことも十分考えられますからね。・・・今回の模擬口述にチャレンジした修習生も,「警察から身柄の引渡を受けた検察官が勾留請求するまでの時間は?」と問われて,うっかり「48時間」と答えてしまってましたが,明日は我が身なので全く笑えませんでした・・・。

さて,午後からは,いよいよ二回試験です。今日の科目は「教養」でした。まず最初に,1000人の修習生を大講堂に集めて簡単な説明が行われた後,一斉に試験会場へ移動します。で,クラスとは関係なくランダムに割り当てられた「着席番号」に従って座席に着席。重々しい空気の中,チャイムが鳴ったら,いよいよ試験開始です。・・・ちなみに,今年の教養の問題は,「現代社会におけるモラル」と「コミュニケーションのあり方の変化」のいずれかを選択して論ぜよというものでした。自分は後者を選択しましたが,さてどんな評価を受けるんでしょうか。

本格的な二回試験は明日から。ペンに願いを託します。
Date: 2003/09/10



現代の科挙
二回試験が本格的に始まりました。朝の10時20分から夕方の5時50分まで,実に7時間半ぶっつづけで問題を解くという大変な試験です。また,試験期間も15日間と非常に長期間。その過酷さゆえ,修習生の間では「現代の科挙」とささやかれています。(昔の中国で行われていた科挙試験は,3日3晩,牢屋のような部屋にこもって問題を解いたのだとか。その点,修習生は,夕方6時には帰らせてもらえますから,まだいいですね。・・・もっとも,帰るといっても,「いずみ刑務所」に帰るだけなので,実質はあまり変わらないかもしれません(苦笑))

今日は,二回試験の天王山である民裁が実施されました。今年の問題は,動産引渡請求訴訟をベースに,即時取得・債権譲渡・相殺をからめた出題です。いずれも白表紙に載ってるものなんですが,いかんせん書く分量が多く,全く時間が足りません。・・・今回,自分は,主張整理にあまりにも時間をかけすぎてしまったため,事実認定の部分をほぼ白紙のまま出してしまいました・・・。

あーーーーーーー。やってもうたーーーーーーー。
どーーーーーーーしょーーーーーー。

自分がもし裁判官志望だったら,今ごろ寮の電灯のひもで首つってることでしょう。幸い弁護士志望に変わっていたので,命拾いしました(苦笑)。途中答案(未完成の答案のこと)なんて,今まで書いたことなかったのに・・・。こういう大事なところで普段通りの力を出すっていうのは難しいですね。しょっぱなから二回試験の恐ろしさを身にしみて感じました。これで落ちてたら,本当にしゃれになりません・・・。
Date: 2003/09/11



黒ヒモで結ぶのも「試験」のうち
気を取り直して受験した3日目,民弁の試験です。今年は,所有権に基づく抹消登記請求+その承諾請求をベースとして,毎度おなじみの二段の推定破りをからませた出題でした。また,小問として,登記がらみの証拠収集,保全手続について問う問題も出題されております。

(もっと具体的に書いてくれー!・・・という後輩修習生の声が聞こえてきそうですが(苦笑)。こちとら,いかんせん合格不合格の判断を下される弱い立場ですので,そんな大それたことはできません。ちなみに,二回試験の運営は非常に厳格で,特に問題の流出には最大限の注意が払われています。白表紙記録・問題文はもちろん,下書き用紙・書き損じの答案用紙,さらに使用済みのポストイットまで,全て試験官が回収していきます。)

昨日の民裁起案の反省に立って,今日はかなりペースをあげて起案しました。ほんと,昨日は参りましたよ・・・。二回試験では,試験時間内に起案を書き上げて,かつ所定の黒ヒモで答案用紙と表紙をひとくくりにする必要があるんですね。従って,ヒモでくくる時間も計算に入れておかないといけません。ところが,自分は,ギリギリまで答案を書いていたので,ヒモをとじる時間がほとんど無くなってしまったんですよ。かなり焦りました。焦ってるせいで手が震えて,ヒモもパンチ穴をうまく通らないんですよ(笑)。・・・どうにか試験終了の5秒前ぐらいにとじ終えましたが,非常に精神衛生上よろしくありませんでした。今日は,多少時間の余裕があったので,ゆとりをもってくくることができましたが,起案の内容はどう評価されるかわかりません。相手方当事者に対する反論に終始したような感じになってしまったので,少々不安なんですが・・・。

ともあれ,民事系科目を終えて,ひとまず一段落です。今晩はゆっくり寝て,来週からの刑事系科目に備えることにします。
Date: 2003/09/12



(作成中)
・二回試験(刑事弁護)

刑事系科目がスタートしました。本日の刑事弁護は,放火事件を素材に,自白の任意性・信用性を崩させる問題が出題されました。取調べ中に被告人が計10回も病院に運ばれたり,刑事が「俺の手柄をあげるために自白してくれ」と頼んだりと,もうめちゃくちゃです。今どきこんな無茶な捜査が行われてるとは・・・と逆に感心してしまいました。

まぁ,ポイントを見つけやすい問題ということもあって,出来はぼちぼち。明日からの二回試験後半戦に向けて,英気を養います。
Date: 2003/09/16



(作成中)
・二回試験(刑事裁判)

いよいよ二回試験も佳境に入ってきました。本日の刑事裁判は,住居侵入窃盗で,被告人が犯人性を真っ向から争っているケースが出題されました。修習生的に言えば,一応「直接証拠型」の問題に分類されるんですが,唯一の直接証拠が共犯者の供述であったため,その信用性について丁寧に論じてやる必要がありそうです。・・・もっとも,自分は書いててもいまひとつ説得力が出ず,危うく無罪にしてしまいそうでしたが(苦笑)。なお,小問として,犯行再現写真の証拠能力に関する問題も出題されました。

明日の検察が終われば,3連休です。二回試験中は食堂が使えず,コンビニ弁当ばっかり食べてる気がするので,明日ぐらいは張り込んでおいしいもの食べにいこうかなぁ。
Date: 2003/09/17



(作成中)
・二回試験(検察)

筆記試験最終日は検察です。本日の問題は,いわゆる伝言ダイヤルを利用した昏睡強盗および窃盗の共犯事件が出題されました。ただ,中心的主題がどこにあったのかは,いまひとつよくわかりません(苦笑)。被告人はいずれも自白していたので,犯人性はさほど問題がないものと思われます(拾うべき事実は結構多かったですが)。他方,構成要件該当性・共犯関係も,それほど解釈上問題になりそうな点は見あたらなかったんですね。おそらくどこかにポイントが隠れてたんでしょうけど・・・。それに,昏睡強盗は「起訴状記載例」に載っていない犯罪類型ですし,おまけに共犯事件ということで起案の分量も激増します。最終日とはいえ,非常にいやらしい出題だなぁという感じがしました。

ちなみに,今日の記録は,高松を舞台にした事件でした。そういえば,この伝言ダイヤルを利用して男をおびきよせ,睡眠剤で眠らせて金品を盗むという手口は,自分の実務修習中にも何度か高松で起きており,地域的に結構大きな問題になってましたね。法廷を傍聴したこともあります。記録を見た瞬間,「おっ,あの事件か?!」と思いましたが,さすがにそんなうまい話があるはずもなく(苦笑),似て非なる別の事件でした。

ともあれ,これでようやく筆記試験は終了。あと口述試験が残っているものの,早くも開放的な気分です。自由は素晴らしきかな! この自由な時間を,ぜひとも生産的なことに使おうと思います。

・・・うーん,うーん・・・。

とりあえず,ネットでもするか(笑)。
Date: 2003/09/18



三段ロケット
筆記試験が終わり,次は口述試験です。試験日程は修習生によって違うのですが,3日間のうち2日を使って民事系・刑事系の試験がそれぞれ行われることになっています。自分は,今日は民事系の試験でした。

方式としては,司法試験の口述試験とよく似ています。登庁すると,まずは受験者全員が講堂に入るんですね。で,時間が来ると,「12番の○○さん,移動お願いします。」と係員から呼出しがあり,準備室へ移動。民事系の場合は,ここで問題用紙が配布され,15分間だけ問題文を読むことが許されます。その後,試験室の前に移動し,約10分間待機。手前の受験生が終わり次第,いざ試験室へ入室することになります。・・・呼出しを受けて移動する様が,あたかもロケットのようであることから,修習生が待機する座席のことを俗に「発射台」などと呼んだりします(笑)。

今日の民事系は,無断転貸を理由とする建物収去土地明渡請求が出題されました。訴訟物,考えられる抗弁の種類,要件事実,代理人としての立証活動,保全手続等について,広く浅く横断的に問われています。(近々,再現をアップできれば・・・と思っているのですが,いかんせん時間がないもので。) 修習生みんなが口を揃えるように,試験官は非常に親切です。こちらが答えに詰まっても,丁寧に誘導してくれます。司法試験の口述と違って,泥船もないですし(苦笑)。二回試験不合格者を出すことは,教えている教官自身としてもあまり気分のいいものではないらしく,「なんとか合格させてやろう」と考えて下さっているようです。二回試験の口述で落ちるのは,完黙(=完全黙秘)した人だけだと噂されていますが,あながち嘘ではない気がしますね。

あさっての刑事系口述試験で,長かった二回試験も終了です。
Date: 2003/09/22



口述試験ドキュメント
二回試験・口述の完全再現が出来上がりました。何かの参考にして下さい。
なお,日記は,暇を見つけ次第,追って作成します。

民事系再現: http://www5a.biglobe.ne.jp/~k-otomo/communication/kanri/civil.html

刑事系再現: http://www5a.biglobe.ne.jp/~k-otomo/communication/kanri/criminal.html
Date: 2003/09/24



冷酷非道の企画二係
研修所において,修習生に関する事務を直接取り扱っている部署が,企画二係です。起案の際に記録を配布したり,修習生の遅刻・欠席の処理を行ったりしているのも,この企画二係でして,修習生にとっては最も身近な存在の職員と言えます。

・・・しかし,この企画二係,実に形式的に物事を処理する部署でして,全くといってよいほど融通がきかないことから,修習生の間ではあまり評判がよろしくありません。「起案提出の際に,提出箱の前で念のためページ数を確認していたところ,チャイムが鳴ったとたん,目の前で提出箱のフタを閉じられ,時間外提出のハンコを押された」などといった冷酷この上ないエピソードは枚挙にいとまがありません。

今回,自分もひとつ,めちゃめちゃ腹立つ出来事がありました。・・・自分,実は,家庭の事情で,実務修習地の家をそのまま借りた状態にしてあったんですね。で,修習終了にあたって,この家も引き上げることになったわけです。ところが,明渡・引っ越し予定日の直前になって,そこに住んでいた家族が病気になってしまい,どうしても自分が立ち会わないといけない状況になったんです。で,今日(金曜日)欠席する旨の承認願を提出しようとしたんですが・・・。そしたら,企画二係の職員が一言。

「土日で済ませられるでしょう。業者に言って,日程を変更してもらって下さい。」

こんな直前になって,そうそう日程変えられるわけないやろと。一応業者に確認したところ,案の定,やっぱり難しいということだったんですね。で,その旨加筆し,業者の電話番号も書き添えて,再度承認願を提出したんです。・・・すると,企画二係の職員,今度は何を言い出すかと思えば,

「その業者をキャンセルして,別の業者に頼めば,可能でしょう。業者を変えて,土日で済ませて下さい。」

もう引っ越しの見積もり・手配等まで済ませてあるというのに,それを全部キャンセルし,別の業者で1からやり直せというんです。この人は,そんなことが可能だと本気で考えていたのでしょうか・・・。素晴らしいバランス感覚です。素晴らしすぎて,凡人の自分には到底理解不能ですが。

いくら事情を話しても「過去に例がない」と突っぱねられるだけでして・・・。結局,今日,自分は出席してきました。(その後,明渡・引っ越しのほうは,埼玉−高松間を夜行バスで連続2往復という強行軍によって,どうにか無事終えることが出来ました。案の定,体調は壊しましたが。)

・・・たしかに,修習生の側にも問題があるのでしょう。一時期,外部講師による講演をさぼって寮に戻って麻雀をしたり,ハンコだけを友人に預けて出席の形だけを整えてズル休みをしたりと,無茶苦茶なことをする修習生も現実にいたようです。しかし,そのせいか,企画二係は「羮」に懲りて「膾」を吹いているようにも思われるわけでして,もうちょっと個別の事情を見てくれてもよかったんじゃないかなぁ,という気がしてなりません。

ま,「もう二回試験が終わったんだから・・・」という自分の考えが甘すぎた,と言ってしまえば,それまでなんですが。
Date: 2003/09/26



番号が・・・ないっ!!
二回試験の合格発表の日がやってきました。例年,二回試験で落ちる修習生はごくわずかと言われています(1000人中10人程度)。・・・まぁ,めったなことはないだろう,とは思いつつも,みんなそれぞれ気になる答案が1通や2通はあるわけでして,やっぱりどこか不安な気持ちを拭い切れないままこの日をむかえることになります。その証拠に,この時期,修習生の間では,「刑弁は○○人落ちたらしい」とか「不合格者は,あらかじめ教官から電話で通知されるらしい」とか,本当だか嘘だかよくわからない噂がものすごい勢いで出回ります。

なにやら落ち着かない雰囲気の中,午後5時30分,ついに修習生の運命を決める紙が掲示板に貼り出されました。人だかりをかきわけて,その紙を見ると・・・。

自分の番号が・・・ないっ!!

・・・そう。なくていいんです。実は,二回試験の合格発表は,不合格者のみの番号を掲示し,「それ以外の者は全て合格である」という形で発表されるんですね。従って,番号がないということは,無事合格したということなのです。これで,ようやく『三つ葉』を卒業して『ひまわり』になることが許されました!(注:三つ葉は修習生バッジ,ひまわりは弁護士バッジのデザインです)・・・ちなみに,今年の不合格者はのべ10人だったようです。

さて,お気楽極楽・修習生の身分でいられるのも,あと1日となってしまいました。明日,修了証書をもらったその瞬間,自分は,失敗の許されない実務の荒波の中へ,救命胴衣なしに叩き込まれることとなります。
Date: 2003/10/02



世界でただ一人の法律家になるために
1年半にわたる司法修習も,ついに終了の日がやってきました。今日は,50分きざみで全科目の最終講義が行われました。これまでの講義内容がきちんと身に付いているかどうか確認するために,最終ミニ起案を実施・・・という鬼のようなことはさすがにないわけでして(笑),各教官からはなむけの言葉をいただきました。これらの言葉が,今後,苦しい局面に立たされた時に自分の背中を押してくれることでしょう。一部ではありますが,ここで紹介させていただきます。

<刑事裁判>
・愚直に取り組め(最初の5年間は雑巾がけと思え)
・足腰の強い法曹になれ(風にそよぐ葦のような秀才はいらない)
・人との出会いを大事にせよ(逆立ちしてもかなわない人を探せ)

<検察>
・口うるさい人を大事にせよ(仕事の上で飛躍するためには重要)
・事件関係者を大事にせよ(自分の時間を惜しみなく割ける優しさを)
・事件に行き詰まったときは,「この処理いかんで世の中が変わるわけではない」と割り切って,自分なりに全力を尽くす

<民事裁判>
・初めの5年間が勝負(積極的に教えを請う)
・知ったかぶりをしない(特に,できないことはできないとはっきり言う)
・よりわかりやすく,より丁寧に説明することの重要性

<民事弁護>
・一生勉強と心得よ
・時間を守る(弁護士タイムは一般社会に通用しない)
・1件1件を丁寧にこなし,依頼者に安心してもらう

<刑事弁護>
・決して裁判官の顔色を見て行動してはいけない(自分の正しいと考えるところに従う)
・人の痛みのわかる法曹になれ(「我が身をつねって,人の痛さを知れ」)
・あくまで「仕事」としてやるんだ,と思えば,落ち着いてこなせる

・・・おおよそこういった話をしていただきました。

さて,全ての修習カリキュラムを終え,夕方から修習終了式です。大講堂で所長講話を聞いた後,教室に戻って,教官が一人一人の修習生に終了証書を手渡していきます。「私たちはもう君達の教官ではない。これからは対等だ。」という教官の言葉は,映画『愛と青春の旅立ち』を彷彿とさせるものがありました(注:たしかパイロットになるための学校か何かで,卒業すると教官よりも位が上になるんです。で,教官が卒業生に敬礼するというシーンがあって,それが非常に象徴的なんですね)。・・・ともかく,これで本当に修習生ではなくなってしまいました。

夜は場所を変え,池袋で打ち上げが行われました。飲み会が苦手な自分も,最後ぐらいはつきあいよくしようと思い,1次会の立食パーティーに引き続いて,2次会のカラオケにも参加してきました。そらもう,ダンスあり,研修所替え歌あり,各々の持ちネタを披露し,引越の準備があることも忘れてしまうほどの大盛り上がりでした。

・・・カラオケ店に行って,2時間くらい経ったころでしょうか。おもむろに刑裁教官が立ち上がり,SMAPの「世界に一つだけの花」を歌い出したのです。

     そうさ僕らは世界に一つだけの花
     一人一人違う種を持つ
     その花を咲かせることだけに
     一生懸命になればいい

教官は,この歌を歌い終えると,「じゃ,みんな,元気でなっ!」とだけ言い残し,カラオケ店を後にしました。・・・おそらく教官は,修習生に最後に言っておきたかったことを,この歌の歌詞に託して伝えようとしたのだと思います。

この1年半の修習の中で,我々は,数え切れないほどの人達と出会っては別れ,時には喜び,時には悩み,時にはのたうちまわりながら,ここまで成長してきました。今度は,その苦楽をともにしてきた同志に別れを告げ,実務の荒波へ身を投じる時が来たのです。

そう,世界でただ一人の法律家になるために−。
Date: 2003/10/03



あとがき・・・・場ちがいの向日葵(ひまわり)
「場ちがいの向日葵を見かけたら,僕たちのことを思い出して下さい。」

今年の6月のこと。高松での実務修習最終日に,修習生が指導裁判官に贈った謝辞の一節の中で,こんな言葉がありました。裁判官はみな,「なんのこっちゃ?」という感じの顔をしていましたが,この謝辞には奥深い意味があったのです。

・・・実は,修習生でこっそりと,裁判所の敷地内に向日葵を植えておいたんです。そこは,高松地裁と家裁を結ぶ廊下の脇で,雑草しか生えていない空き地。割と人目につくにもかかわらず殺風景な一角でした。そこに,高松を巣立って弁護士となった修習生8名を象徴して,この向日葵を植えたのです。冒頭の謝辞も,まさにこの向日葵を暗示したものだったんですね。・・・裁判官たちは,あの向日葵に気付いてくれたんでしょうか。



さて,時は流れて,10月7日。二回試験に合格した修習生は、修習終了後、実務庁へ挨拶回りに行くのが慣例となっています。・・・まぁ、会いたい人、会いたくない人、色々いるんですが(笑)、ともあれ,足は自然と高松へ向かっていました。

裁判所長に挨拶をした後,刑事部・民事部の裁判官室へ。全員起立で出迎えて下さいました。3か月前と変わらぬ懐かしい光景がそこにはありました。部長は実にいきいきとしており,そして左陪席はいっぱいいっぱいで首が回ってなさそうという・・・まさに3か月前のままの状態です(笑)。ひとつ違うのは,我々がかつて座っていた場所に,57期修習生がちょこんと座っていたこと。少しぐらい話をしたかったんですが,時間がなかったのが残念です。なにせ,2〜3分程度で移動していきますから・・・。

引き続いて,検察庁の挨拶回りです。検事正・次席検事・指導検事の順に部屋を訪れました。指導検事は,徹夜明けでお疲れの様子。「実務に出たら,もうあんな(修習時代のような)平穏な日々は二度とないからな。」という言葉どおり,地面から天井まで文字通り記録が「山積み」になっていました・・・。実務の恐ろしさを最も教えてくれたのは,検察修習だったかもしれません。・・・ちなみに,自分が最も恐れるところの某検事は,幸か不幸か御不在であったため,ご挨拶をすることはできませんでした。実に誠に本当に残念,残念の極みであります。

最後は,弁護修習でお世話になった先生の事務所を訪問です。こちらも当時のままで懐かしい光景。後期修習での苦労話や, 弁護士として働いていくことの不安,そしてこれから司法はどうなっていくんだろうみたいなことを色々と話していると,2時間ほど経ってしまっていました。お忙しいとわかっていながら,2時間も平然と居座ってしまったあたり,自分も少しは弁護士として図々しくなったのかもしれません(笑)。

・・・ところで,あの向日葵はどうなったのでしょうか。きちんと芽を出し,その花を咲かせたのでしょうか。気になったので,ついでに裁判所のあの場所を見に行きました。地裁と家裁を結ぶ渡り廊下から下を眺めると,そこにあったのは・・・。

そこにあったのは,地面を覆わんばかりに積み上げられた,建築資材の山でした。実は,高松地裁・家裁は,現在新築工事が進められているんです。そのあおりを食って,修習生が向日葵を植えた(はずの)その場所は,建築資材置き場となっており,花が咲いたかどうかを確認することは全く不可能な状態となっていたのです。・・・そう簡単には花を咲かせてくれない。法曹界の厳しさを目の当たりにした気分でした。


※ ご愛読いただき,ありがとうございました。
   今後は,弁護士が1人もいないという,過疎の町で働くことになりました。
   微力ではありますが,法律家のはしくれとして,やれるだけやってみます。
   (http://www.obama-law.com/
Date: 2003/10/07



現行ログ/ [1]




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